「豊島? 強いよね」当時のエピソードを佐藤紳哉七段が語る。「リハーサルの方がうまく言えた」「本当は撮りなおしたかった」
ニコニコ生放送で中継された『第3期叡王戦・五段予選』にて、棋士の佐藤紳哉七段が解説として、女流棋士の貞升南女流初段が聞き手として出演しました。
将棋界を盛り上げるためにファンサービスを惜しまない佐藤七段。番組内の視聴者のメールを紹介するコーナーでは、当時話題になった「第62回NHK杯将棋トーナメント」での対局前インタビューについて「本当は撮りなおしたかったけど、(対局前だから番組スタッフが)気を遣ってくれてNGを出さなかった」「リハーサルの方がうまく言えた気がする」など裏話を語りました。
将棋年鑑のアンケートで笑いをとりにいくも、すべってしまう
貞升:
東京都の男性からのメールです。「佐藤七段は15年ほど前、好きな言葉は『ネギラーメンのネギ抜き』と仰っていました。現在の好きな言葉は何でしょうか」ということなのですが、ネギラーメンのネギ抜きがお好きだったんですか。
佐藤:
いや。ただすべっただけなんですよ(笑)。
貞升:
(笑)
佐藤:
おそらく将棋年鑑のアンケートで好きな食べ物の欄があって、面白いことを書きたいなと思ったんですが、すべっていますよね。ただそれだけの話なので、今になって引っ張り出されるのは非常に恥ずかしいです(笑)。
佐藤:
今年の将棋年鑑にもアンケートがあって「利き手はどっちですか」みたいな質問だったんですが、普通は右手とか左手って答えるでしょ? 「真ん中の手」って答えたんですよ。
貞升:
(失笑)
佐藤:
下ネタかどうかはさて置き、それもちょっとすべってますよね。
貞升:
15年前からあまり成長されていないということですか?
佐藤:
なかなか人間は成長しないですよね。
本当は撮りなおしたかった「豊島? 強いよね」の裏話
貞升:
東京都の男性からのメールです。「豊島七段との対局で放ったあの有名なセリフ【※】は、実際どのような狙いがあったのでしょうか。ファンサービスの一環か、話題を呼ぶための戦略なのか、それともほかの意図があったのでしょうか」ということですが、いかがでしょうか。
※あの有名なセリフ
2012年4月のNHK杯将棋トーナメントの対局前のインタビューにて放ったセリフ。対局相手の豊島将之七段の印象について「豊島? 強いよね。序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ。だけど俺、負けないよ」と述べ、対局の抱負について「えー駒たっ…… 駒たちが躍動する俺の将棋を、みなさんに見せたいね」と述べた。この出来事は将棋界だけではなく、ネット界隈でも大きな話題となった。なお対局では敗れた。
動画はこちら『将棋界のスーパースターSHINYA!』
佐藤:
これ、よく聞かれるんです。みなさんに「将棋界を盛り上げるためにやっている」なんて、温かい言葉をかけていただいて、ありがたく思います。なんていうか……これは遊び心ですよね(笑)。
貞升:
これは事前に考えたんですか?
佐藤:
はい、前日に一生懸命考えました。NHKの放送以前からニコ生ではかつらを取ったり、かぶったりしていたので、一定の層のファンから「なんかやってほしい」という期待があったんですよね。
その中でNHKでどのくらいのことができるかと考えた上で、あんな感じになっちゃったということですね。
貞升:
NGとか撮り直しにはなりませんでしたか?
佐藤:
本当は撮り直しさせてもらいたかったですよ!
貞升:
どのあたりですか?
佐藤:
やっぱり「駒たっ、駒たちが……」という部分。「撮り直し」って言われるかなと思っていたんですけど、(番組スタッフの方が)スルーだったので、こっちから「撮り直しさせてください」って言うのも変だし、そのまま撮ったものが流れちゃったという感じですよね。
貞升:
NHKの方は事前に知っていたんでしょうか。
佐藤:
事前にリハーサルをしたので、そこで「なんだこいつ」みたいな感じでしたけど、対局前の棋士には結構気を遣っていただけるんですよね。だから「何、それ」とか言われなかったんです。
貞升:
リハーサル通り、本番にいったんですよね?
佐藤:
はい。ただ、リハーサルの方がうまく言えた気がするんですよね(笑)。(番組スタッフの方が)対局者にすごく気を遣ってくれたあまり、NGを出さなかったんですよ。「対局前にこんなことを何度もやらせるのも辛いだろうな」と思ったんでしょうね。そういうことで、あんな感じのインタビューになりました。
貞升:
なるほど。逆に噛んだりしたからすごい面白くて、注目されたのではないでしょうか。
佐藤:
噛んだのは狙ってやったわけではないんですけれどね(笑)。