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クマ出没情報を地図上に表示するWebサービス「FASTBEAR」が公開 AIが自動でニュース情報を集約して可視化、地域の安全を守る新技術

(以下、プレスリリースより)

 【クマ出没】全国の出没情報を地図で可視化「FASTBEAR」公開
 AIが公式発表・ニュースを自動集約、クマ検出AIカメラ「SENTINEL」も開発中

 東京大学・会津大学発スタートアップの株式会社Aisometry(アイソメトリー)(本社:東京都文京区、代表:松島弘幸)は、全国47都道府県のクマ出没情報を集約し、地図上で可視化するダッシュボード「FASTBEAR(ファストベア)」を公開したことをお知らせします。

 プロダクトURLはこちら: https://fastbear.aisometry.com/

本プロダクトは、

  • 独自のAIエージェントが自治体等の公式発表およびニュースを自動収集し、ダッシュボードへ最新情報を反映。

  • 当社は、過去10年間にわたるクマ・イノシシ等の詳細な出没データ(数万件規模)を保有しており、今後は通知機能の提供や情報収集範囲の拡大を進め、安全対策や戦略的意思決定のデータ分析を支える基盤として機能を拡充していく予定。

 さらに、市街地における侵入を早期に察知するクマ検出AIカメラ「SENTINEL(センチネル)」についても、現在開発を進めています。
 私たちは、クマ出没情報を統合するダッシュボード「FASTBEAR」と、クマ検出AIカメラ「SENTINEL」を通じて、次の実現を目指しています。

  • “情報の分散”を解消し、地域内外から全国の状況までを俯瞰できる形で可視化すること

  • 市街地や生活圏に隣接するエリアにクマ検出AIカメラを配置し、効率的な防衛網(早期検知・注意喚起)を構築すること

  • 収集した膨大な出没データを統一されたフォーマットに変換し、産学連携でデータ分析できる基盤を作ること

 なお、本プロジェクトは、経済産業省が主催する「未踏的な地方の若手人材発掘育成支援事業」の取り組みの一環として、東京大学大学院 工学系研究科 および 福島県立会津大学 コンピュータ理工学部の研究開発メンバーが中心となって企画・構想し、関係機関と連携して推進しています。

FASTBEAR メインビジュアル
クマ検出AIカメラ「SENTINEL」*イメージ

1. 開発の背景

 環境省の公表(速報値 ※1)によれば、令和7年度はクマによる人的被害が230人にのぼり、犠牲者は13人とされています。また、4〜10月の出没数は3.6万件以上捕獲数も9867頭で、いずれも過去最多水準となっています。

 私たちは福島県会津若松市にゆかりのあるメンバーを中心とするチームとして、この問題を「遠くのニュース」ではなく、生活と隣り合わせの現実として受け止めてきました。
 出没が市街地や人家の近くまで及ぶ状況では、安心して外出することすら難しくなります。
 現場では、日々の出没対応に追われる職員の負担、情報の真偽確認に伴う疲弊、そして誤情報が生む不安の拡大など、複合的な課題が生じているという声も聞かれます。
 さらに、出没情報は自治体のWebページや報道などに分散し、更新頻度や表記も統一されていません。
 複数ルートで情報が更新されるほど、住民の不安や現場の混乱が増え、限られた人員で対応する自治体の負担も高まります。

 その結果、地域の混乱が長引き、注意喚起、パトロール、捕獲・誘導などの対策が後手に回りやすくなります。
 国も「クマ被害対策パッケージ」等を通じて対策強化を進めていますが、現場の運用負荷を下げる“仕組み”はまだ十分とは言えません。

  • 誰かが守ってくれるのを待つのではなく、守る仕組みをつくる。

  • 出没情報が散らばっているなら、集めて見える形にする。

  • 現場の一次情報が足りないなら、検知の目を増やす。

 私たちは、安全が揺らぐ現実に向き合い、この状況を打破するために開発を開始し、サービスをいち早く公開しました。
 FASTBEARは「不安」を増やすための地図ではなく、行動を早くするための地図です。SENTINELは「怖がる」ためのカメラではなく、被害を未然に防ぐためのカメラです。
 これらのプロダクトを通じて、私たちの住む地域全体を守りたいと考えています。

(写真右から) 代表取締役CEO・東京大学大学院 松尾・岩澤研究室 / 松島弘幸、会津大学 中里研究室 / 佐藤丞 | 開発メンバー: 筑波大学大学院 / 三好悠仁、会津大学大学院/ 嵯峨 陽希 他

 ※1 環境省 速報値
 クマの出没情報(速報値):https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/syutubotu.pdf
 R07年度人身被害件数(速報値):https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/r07injury-qe.pdf

プロダクトの概要

1. クマ出没マップ 「FASTBEAR」

 プロダクトURLはこちら: https://fastbear.aisometry.com/

1.1 47都道府県の出没情報を集約し、地図・ログで俯瞰

 FASTBEARは、都道府県単位で散在する出没情報を収集し、地図とタイムラインで確認できるダッシュボードとして提供します。
 地域をまたいだ状況把握が可能となり、自治体や施設管理者が「自分のエリア周辺のリスクが上がっているか」を直感的に把握できることを目指しています。

FASTBEAR ダッシュボード画像

1.2 AIエージェントが「自治体発表とニュース」を自動収集し、継続的に更新

 独自に開発したAIエージェントが、自治体等の公式発表およびニュースを自動収集し、最新情報を反映します。
 自治体・報道はそれぞれ異なるフォーマットで公表されますが、AIにより一定の形式へ整理し、比較・参照しやすい形で提示します。

 また当社では、過去10年間にわたり数万件規模のクマ・イノシシ等の出没データ(出没場所、時間帯、状況等)を保有しており、今後の分析・通知・対策提案の基盤として活用します。

情報収集フロー図

1.3 通知→地図へジャンプ”の導線で、初動判断を速くする

 出没情報の価値は「知る」だけでなく、「次の行動につながる」ことにあります。
 FASTBEARは、通知や共有が発生した際に、ユーザーがワンクリックで地図や詳細ページへ遷移できる導線の整備を進めています。
 今後、メール・LINE等の通知手段や現在地を起点としたアラート通知を拡充し、ニーズに合わせた配信設計へと発展させていく予定です。

通知イメージ

1.4 収集したデータを統一したデータフォーマットにし、データ分析基盤とする

 当社は、すでに過去10年間にわたるクマ・イノシシ等の詳細な出没データ(数万件規模)を保有しており、今後ともAIによる情報収集範囲の拡大を進めていきます。
 現状、各自治体が公表するデータにはフォーマットのばらつきがあります。
 それを一つのデータベースに研究しやすい形式にまとめることで、産学連携でこのクマ出没の異常事態に対する原因究明、被害抑止に向けたデータサイエンスに基づく意思決定を可能にする基盤を作ります。
 収集したデータは、AIによるクマ出没予測への活用など様々な科学的なインサイトを社会に提供します。

2. クマ検出AIカメラ「SENTINEL」

 SENTINELは、市街地や生活圏に隣接するエリアでクマの侵入を早期に察知し、関係者が迅速に対応できることを目指すクマ検出AIカメラです。
 現場で使える“一次情報”を増やし、確実な情報に基づき注意喚起や巡回・誘導の意思決定を支援します。
 SENTINELで得た画像付きの確度が高い情報を、FASTBEARにリアルタイムで反映し自治体発表や報道ベースの情報と統合した意思決定を行う設計です。

2.1 導入コストを抑えながら敷く検知網

 我々が開発するAIカメラは、低コストで検知網を整備できます。
 市街地付近に監視カメラ(SENTINEL)群を整備することで、クマの出没に対する防衛網を敷きます。
 自治体や報道の情報を大量に保有するFASTBEARと連携することにより、さらに強固かつ精緻な市街地防衛を行うことが可能になります。

検出網イメージ
クマ検出の様子(開発中)
屋外でのイメージ

導入により期待される効果

  1. 迅速な出没情報の把握と連携

    自治体・報道から統合された更新情報に加え、ユーザーが設置するAIカメラからの一次情報が加わることで、関係機関への情報連携が迅速化し、注意喚起や巡回判断、捕獲・誘導に向けた初動を支援します。

  2. 出没データに基づく中長期的な安全対策

    過去10年間の出没データ(場所・時間帯・季節等)に、今後のAIカメラによるデータ蓄積を統合して分析することで、ゾーニング計画、重点監視エリアの設定、効果的な捕獲・予防策の検討などに活用できます。

  3. 人的負担・監視コストの軽減

    AIカメラによる一次情報の把握・裏取りが進むことで、広範囲を人手で巡回・監視する必要性を減らし、自治体職員や猟友会等の負担軽減につながります。

  4. 既存システムとの連携による情報活用

    自治体の情報公開基盤や防災情報システムとAPI連携することで、新たなシステムを一から導入せずに、出没情報を防災・安全情報と統合して提供できる可能性があります。

今後の展望

 今後、自治体・関係機関とのフィールド実験を実施し、FASTBEARおよびSENTINELの実運用に向けた改善を進めていきます。
 あわせて、通知機能やデータ収集範囲の拡大など、ヒアリングを踏まえて機能拡充を段階的に行う予定です。
 さらに、過去10年間の数万件規模の出没情報を統一形式で分析し、必要に応じてデータ提供・AIによる活用支援にも取り組んでいきます。

 本取り組みは、経済産業省が採択する「未踏的な地方の若手人材発掘育成支援事業」の枠組みと共に、地域課題の解決に直結する実装と検証を重ね、現場で使われるプロダクトとして完成度を高めていきます。

会社概要

  • 会社名:株式会社Aisometry (Aisometry Inc.)

  • 所在地:

    • (本店) 東京都文京区本郷6丁目25−14 3F Hongo Egg内

    • (福島県オフィス) 福島県会津若松市一箕町大字鶴賀字下居合145番地2 会津大学 産学連携センター内

  • 代表者:代表取締役社長 兼 CEO 松島弘幸

  • ホームページ:https://aisometry.com/

  • 本件に関するお問い合わせ: hiroyuki.matsushima@aisometry.com

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