移民受け入れ→治安の悪化、女性の登用→保育園足りない。少子高齢化という“国難”に日本はどう立ち向かうのか
フランスに学ぶ高齢者社会の強みとは?
武見:
憲法は日本の国の将来をどういうものにするかということを考える骨格になるわけだから、それは議論をする時に最も大事なことになることがはっきりしているわけですよ。だからあまり狭い視野だけで、憲法改正を考えないということがやっぱり大事だろうと思いますよ。
その上で、やっぱり国家のビジョンというものをちゃんと持たないと。
片山:
うん。
武見:
そうしたビジョンの中で、憲法というのはどういう役割を果たすのか、その中で憲法のどこを改正すべきかという考え方がなきゃいけない。それを是非、我々参議院の中で、活力ある健康長寿社会というところで組み立てて、もう1つのほうは外政安全保障のほうで、平和主義に基づく現実的な安全保障と。
まさに山本さんが責任者としてやっておられるのを組み合わせて、日本の国が一体これからどんな国になるのか、そしてどういう役割を国際社会の中で果たしていくことになるのか。そういうことがみんな、このビジョンを見ればあっという間にわかるという、ビジョンを私は作ってみたいと思います。
山本:
いいですね。安部政権になってから、3つか4つ分くらいの内閣のいろんな仕事をやっていますよね。おそらく歴史に残ると思うんだけど、いろんなスローガンが出てきて、みんな大事だと思うんですよね。「一億総活躍社会」もそうだしね。
でもそこで、横を刺し貫くビジョンみたいなのが見えにくいというのがあるのだと思うんだけど、それはやっぱり我々が作るってことだよね。
片山:
そうなんですよね。まずアベノミクスの「三本の矢」から「一億総活躍社会」にいって、「働き方改革」にいって、今は「人生100年時代構想」。明日、また会議がありますけども、未来戦略かもしれない。
ただ、共通しているのは、長期少子高齢化が国難であり、それから我が国を取り巻く、安全保障環境と、自然環境。つまり気候変動もひどいじゃないですか。
我が国の強靭性が危うくされていると、その2つの状況に対応しないといけないのですよ。ですから確固たる憲法改正で、確固たる日本の立ち位置を示す。つまり、ブレない日本の信念を示す。これは国民にとって安心感を高めると思うんです。
どうしたって海外の交流が増えますよ。今だって、実際外国人労働者が30万人増えてます。私は単純移民は反対ですよ。フランスですごい苦労しているから反対。
だけどいずれにしても海外とのそういう交流というのは、ネットでもできちゃうんだから。確固たる日本と日本の文化、日本の有様を学んで、日本の国民になるには何が必要かを決めておいた上で、海外とのいろんなクロスオーバーを増やすのであれば、危うくされないんですよ。
今の若い人の中にもそれをしっかり持たせておきたい。それが21世紀を生きる日本人だと思う。
山本:
なるほど、非常に説得力があるんだけど、武見政審会長がいう我々のビジョン、つまり我々は諸外国の中で最も早く少子高齢化、課題先進国といわれるものに突入したと。
これについて、国民皆保険制度は日本くらいのサイズの国で、これだけの低負担で、これだけの医療が受けられる国って、ないじゃないですか。
片山:
ないですね。
山本:
これは、クールジャパンだと思っているんですけどね。しかし人口減少は止められない。高齢化はどんどん進んでいく。この中で我々が世界に向けて、どういうことを発信していけるのでしょうか。
たとえば、高齢化社会の強みのようなものはあるのでしょうか。
片山:
あります。
山本:
それは何でしょうか。
片山:
1982年に大蔵省に入った時に、「国を挙げて長寿の安定な長寿の国を作ろう」といっていたんですよ。つまり平均寿命を延ばして頑張りましょうと。素晴らしい医療、保険プログラムで我が国は年金も皆年金だから、これで老後も安心で、医療もきちっと供給されるのだからいいじゃないって。
つまり昔の言葉でいえば、桃源郷を作ろうとしてた。それを今になって長生きが悪い、あなたたちのおかげ介護費用がかかるといったら、そりゃ立場がないから怒りますよ。
山本:
なるほど。
片山:
だからものすごくたくさんの経験をしている人が、ボケちゃって判断力が間違っていたらいけないし、あと若い人の活躍や発言を止めちゃいけない。フランスで学ぶべきだと思ったのは、公園80歳くらいのお爺ちゃん、お婆ちゃんと若者が全く対等に議論しているんです。
山本:
フランスで?
片山:
それは当然のことですよ。全く対等に友達になりますよ。
山本:
なるほど。
片山:
そうすると、習えるじゃないですか。それこそいい社会ですよね。
60歳定年は崩壊!? 高齢者の定義とは
山本:
武見先生、どうですか。
武見:
それを考える時はね日本だけが高齢化しているんじゃないということを考えるべきです。アジアの他の国も、実は日本より速いスピードで、これから高齢化がどんどん進むんだよ。
山本:
中国も韓国も。
武見:
その国のほとんどは日本が既に経験して、また場合によっては日本がうまく解決しているような問題に改めて直面するんだ。しかも日本の場合には従属人口指数というのが平べったくあった。
山本:
従属人口指数というのは何ですか。
武見:
生産労働人口に14歳以下の子供と65歳以上の高齢者がどれだけ負担をかけているのかを割り算にして出した数字なんですよ。その数字が低ければ実際に負担が少ない。
山本:
なるほど。
武見:
若い人たちは負担なく、一生懸命、自分たちのために稼いで自分たちのためにお金を使える。社会全体の活力が維持できる機会が40年間続いた。だから1960年から2000年までの40年間で皆保険制度を作って、最後の2000年には介護保険制度を作って、高齢化が一気に始まってそれに対応できたわけ。
ところがアジアのほとんどの国は、2000年から始まったり、2020年から高齢化が始まる。しかも日本は7パーセントから倍の14パーセントまで、高齢者人口が増えて、これもヨーロッパから見たら圧倒的に増える速度が速かった。
だけども、それよりも速い18年くらいで、ベトナムとか韓国とか他の国々は高齢化が進んじゃうんですよ。そうすると準備している期間が短いわけ。
山本:
なるほど。
武見:
その短い期間で高齢者のための保険制度を作る。それこそサービスを提供する事業者を育てる。
山本:
事業者が買うような設備だとか機械だとかを作る。そういう生産企業をちゃんと作るとかね。そんなことを今から全部やろうと思ったって間に合わないんだよ。
片山:
だからベトナムなんか真剣に、ダム副首相とかブン大臣とかが、若い国なのに介護保険も技能実習生の介護も真剣にやろうとしてますよ。だってそりゃ、10年か20年でその制度を全部作らなきゃいけないから。
それで中国のほうは、上海とか、ある都市とかではもう進んじゃってますよ。ただあの国は均衡ではないので、どうするのか。これは最大の問題ですね。
武見:
大変だと思うよ。だって昨年の12月の段階で65歳の人口が日本の全人口を上回っちゃったわけ。
山本:
ああ、そうか。割合は少なくても、十数億人いるもんね。
武見:
高齢化のスピードだけで見るんじゃなくて、高齢者人口がどれくらい増えるかという人口の規模で見ていくことが必要です。その割合は少なくとも元々の人口が多いような国、インドネシアとかインドは7パーセントや10パーセントとかいう、とんでもない数の高齢者人口を抱えることになる。
そうすると、そういう国は一斉にそれが社会問題になっちゃうもんだから、今から準備しないと間に合わないし、今から準備したって間に合わないくらいだから、日本がお助けしましょうというのが、「アジア健康構想」ですね。
山本:
ここで片山さんに、話題になった新しい高齢者の定義についてお話していただきたいです。これはなかなか定義できないけれど、やるとしたら基準はどうなるのでしょうね。体力テスト? EXILEの曲を何曲知っているか? とかいろいろいってたじゃない(笑)。
片山:
そのあたりまでいっちゃうとわからないんですけど(笑)。今は人間が60兆個の細胞からできているということも、この10年でわかったんですよね。
山本:
解析も進んで。
片山:
細胞が老化するプロセスも、だんだんわかってきて、いろんな指標を測定して、データヘルスで、「この人は実年齢的には10年くらい若い」とか。「20年前よりは10歳若いから、60歳で定年というのはもうないだろう」とか最悪65歳。65歳まで現役で70歳くらいまでは、ほぼほぼ現役でいいんじゃないのとか。
日本老年学会が今年1月に出した研究成果をちゃんと客観的にとれば、個人差でいいんじゃないと。働き方も、どのくらいの働き方ができるかも個人差でいいんじゃないか、とか。
山本:
それ面白いね。歳じゃなくて、そのジャンルでたとえば、「私はA23です」みたいな。「片山さんはB25」みたいな感じでね。
片山:
そうです。
山本:
そこでこの間の参議院の人事委員会でも、その判断する役目の人が適当かどうかという議論をする場があったんですけどね。昔、20年くらい前の我々が当選した頃は、やっぱり70歳以上は駄目だっていう話でしたね。
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