PPAPにも当てはまる! 浜崎あゆみ、平井堅らを手掛けた編曲家が明かすヒット曲の共通点とは
エンターテイメントを、より楽しむための深掘りトークプログラム『WOWOWぷらすと』。今回のMCは西寺郷太さん、ぷらすとガールズの笹木香利さん。ゲストに編曲家の本間昭光さんをお招きし、編曲家とはいったいどんな仕事なのか、をテーマに語り合いしました。
ポルノグラフィティ、いきものがかり、広瀬香美、浜崎あゆみ、平井堅、KinKi Kids、V6、ももいろクローバーZ、郷ひろみなど。誰もが一度は耳にしたことのあるアーティストの名曲を手掛けた本間さんの、ヒット曲の生み出し方とは何なのでしょうか。
曲が売れるかは編曲家の腕にかかっている?
本間:
イントロって、ほぼ編曲家が作るんですけど……。
西寺:
イントロですべてが決まるというか、曲の出だしが良くないといけない、というのがあるんですけど、それもやっぱり編曲家が?
本間:
編曲家が作ります。頭サビ【※】で始まるものでも、いきなり歌い出すのがいいのか、何かつけた方がいいのか、色々あるんですよね。それを楽曲によって検証するんですよね。商業音楽をやってる以上はセールスが上がって欲しいじゃないですか。
※頭サビ
あたまさび。楽曲の冒頭におけるサビを指す。このような「いきなりサビから始まる曲」のことを「サビ始まり」と呼ぶこともある。
西寺:
「商業音楽をやってる以上は」と言っても、それは吐きそうになるわ(笑)。
本間:
お客さんがイントロを聞いてすぐに「あ、この曲!」ってわかるように常に意識をもって作っています。
本間:
今は編曲を含めて自分たちで作る方が多いですし、そういうチームでやっている楽曲とかが、ヒットチャートを登ったりすることも多くなりましたが、2010年代初頭ぐらいまでは編曲家としての仕事が多かったような気がしますね。
ヒット曲の共通点は「テンポが足して9」
西寺:
有名な話で、ビートルズが『Please Please Me』という、ちょっとロックバラードな曲をジョージ・マーティンという編曲家兼プロデューサーに持って行った時に、「テンポを早くしろ」って言われて、アップテンポの曲に無理くりしたら『Please Please Me』 が流行ったという逸話があります。作った当初、思っていたのはバラードだったのに早くしたり、アップテンポだった曲なのに、ゆっくりしたら流行ったり、テンポによって曲の印象を変えるのも編曲家の仕事です。
笹木:
テンポも変える?
西寺:
もちろん。
本間:
テンポが80【※】周辺だと、79にしたり、81にしたり、1変えるだけでも全然違う。そういうのは経験値なんですよね。あとはね、自分は運とかツキとか考えるタイプだから、テンポの数字が足して9になるとなんか売れそうな気がする(笑)。
※テンポ80
1分間に、四分音符を80回打つ早さで演奏する、ということ。
西寺・笹木:
え! なにそれ(笑)。
本間:
テンポ81は8足す1で9、テンポ90は9足す0で9、テンポ108は……。
西寺:
テンポ117もそうですよね。117は『Billie Jean』【※1】ですよ。『Sexy Back』【※2】も。
※1 Billie Jean
1983年にリリースされたマイケル・ジャクソンの曲。
※2 Sexy Back
2006年にリリースされたジャスティン・ティンバーレイクの曲。
本間:
126もあるでしょ? だから、足して9になると売れるっていう都市伝説ですよ(笑)。だから迷ったら足して9になるようにしてる。シャレみたいに言ってるけれど意外とハマりが良かったりするんですよ。
番組スタッフ:
ちなみにピコ太郎さんの『ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)』も126です。
西寺:
まじすか!
編曲家の立ち位置はレストランに例えるとわかりやすい
笹木:
作曲家と編曲家の違いはなんとなくわかりましたが、編曲家とプロデューサーって何がどう違うんですか?
本間:
レストランでよく例えるんですけれども、同じ玉ねぎでも、玉ねぎを料理するのが編曲家がみたいなもので、これをイタリアンにして欲しいとか、和食にして欲しいとか、フレンチして欲しいとか、それに合わせて料理をしていくのが編曲家。その店自体を作るのがプロデューサー。だから、例えば、フレンチの店を作りました、そこで編曲家は料理人として出ていくというようなもの。
笹木:
プロデューサーで、編曲は別の方にお願いするパターンもあるし、両方やるパターンもあるわけですね。
本間:
そう。小室哲哉さんや小林武史さんが出てくるまでは、分かれていることが多かったですね。プロデューサーという仕事自体が、明確ではなかった 。
西寺:
アメリカだと、アレンジャーでもストリングス担当とか、細分化されているんだけれども、日本はどちらかというと、事務所とかレコード会社の力が強かったので、どんなアーティストであれ、特に80年代は「こんな感じで」って言ったのを、編曲家が意図を汲んで、曲をどんどん面白くしていくっていうのが主流だった。編曲家は事務所とか、レコード会社から依頼を受けて呼ばれたりすることが多かったんですよね。