「狂ってると感じて貰いたい」──ポプテピ「星色ガールドロップ」予告コーナー監督・山元隼一が語る”短編アニメ製作の仕掛け”【アニメ『おとなの防具屋さん』監督×プロデューサー対談】
「全ての女性冒険者にエロ装備を着て頂きたく」
目のやり場に困る“セクシー防具”に人生をささげるのは眼帯イケメン店主のナーデン。漫画『おとなの防具屋さん』(斐宮ふみ原作)は、そんな彼が営むエロ防具屋を舞台に、主人公のカウツと看板娘のリリエッタによる日常が描かれたコメディ作品だ。
マンガアプリ『GANMA!』やニコニコ漫画で連載中の本作は、2018年10月にショートアニメ化され、大手アニメ配信サイト「dアニメストア」において視聴者数ランキング上位を獲得。
人気の高さから、アニメオリジナルストーリーの続編が製作され、「5分×3話」という構成で『おとなの防具屋さん(裏面)』(以下、『裏面』)が「dアニメストア(ニコニコ支店を含む)」にて、本日より独占配信されている。
監督を務めるのは1期同様、“最強のクソアニメ”として伝説を築いた『ポプテピピック』の「星色ガールドロップ」予告コーナーを担当した山元隼一氏。
限られた5分という時間の中で、山元氏はどんな仕掛けを施したのか。今回は氏に加え、プロデューサーを務める福留俊氏をお招きし、『おとなの防具屋さん』及び『裏面』に詰め込まれた、短編アニメ製作におけるこだわりについて話をうかがった。
写真左:福留俊プロデューサー
©斐宮ふみ/吉開かんじ/洋介犬/むすあき/COMICSMART INC.
「ヤバい」「狂ってる」と思われるようなアニメ作り
──『おとなの防具屋さん(裏面)』1話が、この記事の公開されるタイミングには配信されているということで、まずは『裏面』1話の魅力を教えていただけないでしょうか。
山元:
1話だと“裸メガネ”という装備が登場しますね。
──裸メガネ!?
福留:
夢の防具です。
──これあれですよね、つけると服が透けて見えるっていう……?
山元:
はい。エロ装備の定番みたいなものなんですが、作中では服だけではなく、背景もだんだん透明になっていってキャラも見えなくなって、最終的には全部透明になっていくんです。
福留:
「世界」が裸になりすぎていろいろなものが見えてくるという設定です。
──1話からなかなかぶっ飛んでいる展開ですね(笑)。
山元:
それだけでなく、“おとなの防具屋さん”ということで衣装にも気合を入れてますよ。1期でも数々のエロ装備が登場しましたが、今回もいろいろと取り揃えています。
福留:
スタートはみんないつもの服装なのですが、今回は『GANMA!』の別作品とのコラボもあるので、衣装チェンジがたくさん入ります。
山元:
「5分×3話」という構成の短編アニメなので、ひとつでも記憶に残るような要素を入れないと埋もれてしまうかなと。見た人にいい意味で「これはヤバいな、狂ってる」と感じてもらいたいですね。
©斐宮ふみ/COMICSMART INC.
©斐宮ふみ/吉開かんじ/洋介犬/むすあき/COMICSMART INC.
「無難なものにはしない」という意思
──1期でも実写描写があったり、『裏面』の裸メガネの演出といい、アイデアの幅が広いですよね。
福留:
山元さんがアイデアの神で、いろいろなアイデアを出してくれるんです。本当にすごい。それらを積極的に取り入れていったかたちです。
山元:
たとえば、作画と実写を絡ませたい、というアイデアが出たときに、そのように提案しても大抵の会社では難しいって言われるケースが多いんですが、製作会社の「IMAGICA Lab.」さんが実写も3Dも作画も全部できて。製作面でも柔軟に対応してもらえているため、実現できています。
©斐宮ふみ/COMICSMART INC.
福留:
今回のアニメ化は、1社出資で実施しているので製作委員会もありません。そのため自由度も高く、監督からアイデアをもらって、その場で私が考えて結果をお伝えするパターンも多かったですね。10秒くらいで答えを出したこともありました。
山元:
アイデアを受け止めてくれる器とスピーディーな確認体制、このふたつがあったからこそ、いろいろなアイデアを出せたっていうのもありますね。
福留:
また、たとえばアニメ1期の話の中に、監督のアイデアで場面が何回もリピートしているシーンを取り入れました。
©斐宮ふみ/COMICSMART INC.
山元:
主人公のカウツが鼻血を出してダウンするシーンなんですが、アニメファンと言えば、「エンドレスエイト」 【※】を想起してくれると考え、そのシーンをくり返したんですよ。
※涼宮ハルヒシリーズで描かれているストーリーのひとつで、とある理由により世界がループするという内容。アニメではじつに8話にもわたりループがくり返され、視聴者たちに衝撃を与えた。
福留:
ただこれは視聴者の方々から手抜きという声もあがっていました。視聴者は我々が自由な表現に挑戦することに対しては好意的に受け止めてくれるので、逆に手抜き表現と認識されてしまうのは好ましくないなと、このラインが難しいなと実感しました。
山元:
ほかにも、『裏面』だとキーパーというキャラクターが登場するんですが、某スポーツ選手の方に声をやってもらおうという案がでました。キーパーつながりということで。
©斐宮ふみ/吉開かんじ/洋介犬/むすあき/COMICSMART INC.
福留:
そうでしたね。窓口を調べてオファーを出したのですが、すごく丁寧なお断りのご連絡があったのを覚えています。
山元:
めちゃくちゃ真面目で。
福留:
申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
──福留さんがボツにしたケースってあるんですか?
福留:
基本的におもしろいアイデアは採用する方なのですが、何個か受け止めきれないでボツにしたものはありましたよ。
山元:
某セクシー男優の方にナレーションをお願いできないかという案もそうですね。ボツでした。
福留:
あーありましたね(笑)。ほかにも、アニメ1期最終話の最後に出てくる魔王のスクールアーマーという装備もじつはボツ案がひとつありました。
©斐宮ふみ/COMICSMART INC.
──アニメではセーラー服とランドセルになっていましたが、最初の案はどういうものだったんですか?
福留:
最初に監督からご提案いただいたのはスクール水着とランドセルでした。
山元:
スクールアーマーだからスク水、って思って出したんですよ。
──それはなぜボツに?
山元:
福留さんから「いかん、けしからん」と言われまして(笑)。
福留:
いちばん最後のシーンだったので、そこで、スクール水着にランドセルはちょっと情報量が多すぎると思いました(笑)。