加藤一二三が対局以外のプロ棋士の仕事「立会人」を解説。必要とあらばトイレのドアをぶち破ることもあるという、その仕事とは!?
プロ棋士のタイトル戦賞金は二位でも出る!?
やまだひさし:
ところで、一番ギャラが高いものって何になるんですか。大きい大会の賞金などになるんでしょうか。
加藤:
タイトル戦がたくさんあるんですけども、タイトル戦の中で一番賞金が高いのが竜王戦です。
やまだひさし:
これが一番高いんですか。
加藤:
一番です。次が名人戦です。竜王戦の賞金【※】は公式に公開されてます。一位や二位の人にも賞金が出ます。昭和35年前後は一位になった人には賞金が出たんですけれども、二位はなかったんですよ。昭和40年くらいからですかね、一位と二位にも賞金が出るようになっています。
※賞金
竜王戦の優勝賞金は4,320万円、竜王戦七番勝負の敗者の賞金は1,590万円。名人戦の賞金は通常非公開となっているが、過去に『将棋世界』誌上で公開された1991年当時の情報によると、対局料、賞金、手当を合計すると約3,500万円程度になる。
やまだひさし:
お若い時に賞金がどんっと入った時は、いくら加藤一二三さんでも、ちょっと天狗になったりしなかったんですか。
加藤:
いえ、まったくなかったです(笑)。
棋士は文系と理系、どちらが有利か
やまだひさし:
加藤一二三さんの苦手なものはありますか。たとえば、受験勉強とか……参考書を暗記するみたいな。そういうのは得意なんですか?
加藤:
私は学科に好き嫌いがあります。好きな学科は歴史、クラシック音楽。西洋の美術も好きですね。
やまだひさし:
苦手で嫌いなものってなんだったんですか?
加藤:
苦手も嫌いも算数と理科です。
やまだひさし:
えーっ!?
加藤:
将棋の棋士には数学で大学を出た者もいます。一般的には将棋というものは理系だと思われています。
やまだひさし:
そう思ってました。
加藤:
私は完全に将棋は文系だと思ってます。何でかというと、将棋というのは盤面をみた瞬間に浮かんでくる景色、この浮かんでくる景色というものをきちんと捉えると良いわけです。だから、私は浮かんでくる景色を見る能力は文系だと思ってます。つまり計算ではないんですよ。
やまだひさし:
数値的なデータで見てるのではなくて、景色として捉えるんですね。
加藤:
景色なんですよ。理系と文系がありますが、ある棋士が言いました。私は体育会系だと(笑)。
やまだひさし:
ひふみんジョークですね(笑)。