「握手会」はアイドルを疲弊させる? 現役アイドル×プロデューサー×評論家「人間の邪気のようなものを吸ってしまう」
アイドル戦国時代と呼ばれ、今やトップアイドルから地下アイドルまで、様々なアイドルが活躍している……。そんなアイドルについて、MCに、さやわかさん、アイドル評論家の中森明夫さん、『でんぱ組.inc』(以下、でんぱ組)の生みの親である福嶋麻衣子さん、現役アイドルであり漫画家でもある「ぺろりん先生」こと鹿目凛さんにニコニコ生放送『人類にとってアイドルとは何か?』で語っていただきました。
昔と比べて、アイドルとファンの「接触」の機会が増えていると語る福嶋さん。現在のアイドルシーンにおいて、ファンとの触れ合い「握手会」は逆に彼女たちを疲弊させてしまっているのでしょうか。『でんぱ組』が売れるわけない、と言われ続けた過去のエピソードから、アイドルに必要な「三種の神器」についても中森さんと福嶋さんが語ります。
今はてっとり早くアイドルという方法を選ぶ
福嶋:
昔はアイドルという選択肢がなかったんです。だけど、今はアーティストやクリエイターを目指すために、手っ取り早くアイドルになる方法を選ぶ。アイドルというのを自分のステップアップの入り口として使って、そこから色んな職業を目指す人が多くなっています。
さやわか:
鹿目さんはさっき、タレント志望だったと聞きましたが、タレントになりたい理由はそもそも何だったんですか?
鹿目:
有名になりたかったんです。もともと芸能活動に憧れてたんですけど、学生の頃に「お前がそんなのになれるわけがないだろう」って言われて、それが逆に、なってやるっていう気持ちに繋がりました。
中森:
そういうのがないと、アイドルって辞めちゃうんですよね。今はインディーズのアイドルなら、ほとんどアイドルになれるじゃないですか。でも続かないんですよね。アイドルである状態っていうのがやってみたら大変ですからね。有名になりたいって言うけれど、有名になっちゃったらSNSで毎日ボロクソに書かれたりだとか。スマホで写真を撮られたりとか。昔のスターに比べるとストレスが高いと思う。
福嶋:
今のアイドルは肉弾戦というかファンとの接触が多いんです。人と人とのぶつかり合いが昔のアイドルと比べて格段に多いと思います。そうすると、アイドルをしていると、人間の邪気のようなものを吸ってしまうんですよね。
中森:
一日に何百人の見知らぬ人との握手会。相当なストレスですよ。
福嶋:
よっぽど鋼の心を持ってない限り、一日に何百人と握手するのは大変ですよ(笑)。私は逆に、一日何百人と握手するほうがまだいいと思っていて、それよりも同じ人が200回握手しにくるほうがメンタルにくると思う(笑)。そういうのに耐えられないっていう若い子は多いと思う。15歳くらいの人たちって年上の人と話すのは家族ぐらいしかいないと思います。それで突然、年上の人達に説教とかされて、そんな辛い仕事ないですよ。「有名になりたいと思ったのに、何でおじさんに説教にされなくちゃいけないんだよ(笑)」って、そりゃ辞めるよ。当たり前じゃん!
さやわか:
握手会はおじさんが説教する場じゃないですよ(笑)。15歳くらいの女の子が反射神経的に30秒とかの感覚で200人とかと握手をし続けるのは、普通じゃないです(笑)。
中森:
メンタル面で厳しい状況になりますよね。
鹿目:
握手会とかチェキを撮ったりするんですけど、反射神経が必要で、その反射神経が疲れるといいますか。話すというより、ぱっと対応することが求められるんです。お客さんの名前を忘れちゃって、罪悪感でごめんなさいって気持ちにもなります。
さやわか:
握手会で会っているとはいえ、名前を思い出せないタイミングって来るわけじゃないですか。でも必ずその顔も見ないといけないから、しんどいですよね(笑)。
福嶋:
ぺろりん先生(鹿目さんのペンネーム)は、まだ漫画にすることで昇華できるからいいよ。自分の思いを昇華できない子達は、自分の内面に溜めて、病んでしまう。オタクと「何でそんなこと言うの」って喧嘩ができるアイドルは強いんですよ。言い返せないでずっと説教を聴いちゃうような子は、どんどん負が蓄積されていって爆発しちゃう。
中森:
その負のエネルギーがものすごく溜まっていて、それで発電とかできたらいいなと思いますよね(笑)。
さやわか:
今、視聴者からのコメントで「本当にすみません」ってコメントが多いですが、それが駄目というわけではなくて、握手会に来てくれることはもちろん嬉しいわけでしょ?
福嶋:
すごく良いことですよ! 良い時代になったじゃないですか、アイドルと接触できるなんてね。
さやわか:
昔はアイドルってライブじゃなくて、メディアの存在でしたよね。
中森:
アイドルは、人に好きになってもらう仕事だと思います。では、普通の恋愛とどう違うのかというと、メディアを通して好きになってもらうということですね。そのメディアが71年からずっとテレビだったわけですよ。握手会というシステムの中でやっているとはいえ、直接の触れ合いですからね。大きなホールやテレビモニターの向こう側にいるという感覚とは全然違うわけですから。
福嶋:
メディアで活躍できるタイプのアイドルもいれば、握手会が上手くてファンを増やすアイドルもいます。色々と得意不得意が別れるから、握手会があることによって今までとはアイドルの人気のバロメーターが変わってきている感じはしますね。