「マンガも本人も面白い漫画家ランキング」1位は『水木しげる』「妖怪って本当にいるんですか?」質問への返答がステキ
8月23日に放送されたニコニコ生放送『山田玲司のヤングサンデー』にて、漫画家の山田玲司氏が舞台演出・脚本家の鈴木茉美氏、詩人・脚本家の久世孝臣氏、アシスタントのしみちゃん氏、乙君氏と共に「マンガ家とはどんな生き物なのか」を語る中で、山田玲司氏の選ぶ面白い漫画家のベスト5が発表されました。
第5位 東村アキコ――「周りの人が面白く思ってくれるんだったら、私はパンツを脱ぎますよ」
山田:
これを先に言っちゃうけど、女性漫画家の中で1位です。この人は、つまらない世の中があったら「私が面白くするわ」という謎の何かを抱えている。「殺してしまえ!」というよりは、「盛り上げてしまえ!」の人なんだよね。「周りの人が面白く思ってくれるんだったら、私はパンツを脱ぎますよ」と言うんだよね。すぐに「ケツを出す」とか言うじゃん(笑)? そこの覚悟っていうか……頭がおかしくなっている感じが、やっぱりアッコ(東村アキコさんの愛称)はすごい。
だってこの人は、裏返っていて、純情で真面目な人なんだよ。勉強家だけど、絶対にそういうところを見せないからね。それでいて「ウェーイ!」って俺たちの前に現れるんだけど、「おまえ真面目じゃん」って本人に言うと、キレて「ヤメロー!」と言うんだ。その相克が本人の漫画に全部出ているよね。実は真面目で、実は悩んでいて、実は孤独なんだよね。
乙君:
まあまあ。
山田:
実は孤独なんだよ。そこが全部漫画に出てる。作者自身のエネルギーがすごく面白いなっていう感じ。
第4位 みうらじゅん――「金にならないことでも真剣にやる」
乙君:
みうらじゅんさんって、漫画家なんだ……。
山田:
俺はみうらさんは漫画家だと思うよ。漫画家兼文化人類学者なんだよね。
乙君:
もはや、そうですね。
山田:
だけど、みうらさんは本当に昔から一貫して、クソみたいに面白い(笑)。最初に会った時に面白すぎて俺は打ちのめされたね。だって、みうらさんと一緒の移動のタクシー中でずっと面白いんだよ(笑)。
久世:
へー、そうなんですか……。
山田:
みうらさんは、面白いことを常に仕掛けたいと言っているんだよね。いくつかアイディアを持っているんだけど、俺みたいな初めて会った新人漫画家に、惜しげもなく全部それをしゃべってくれるんだよね。あとは、金にならないことでも真剣にやるところが好きだね。みうらさんって俺に「金に困ってるんだよ(笑)」とか言うんだよね(笑)。
一同:
(笑)
山田:
金に困ってるのは、崖ブームとか、海女ブームとか、演芸ブームとか、わけのわかんないことをやってるからでしょ(笑)。すると、みうらさんは「やらないとねぇ……(笑)」とか言ってさ、「今は天狗じゃないですか、時代は。天狗がキテるじゃないですか!」なんて言ってさ、最高だよね(笑)。
前に、この番組で話をしたけど、俺がみうらさんに取材に行った時に、アトリエで待っていたら、みうらさんが、奥の仕事場から来る時に、サングラスをかけながら「はい、みうらじゅんです」と現れたの! それを見た瞬間に、俺もやろうと思った(笑)。
山田:
だから、今はみうらスタイルをやってますから(笑)。「Keep on Rock’n roll.」って俺はみうらさんに言われたんだよ。そのイカレた態度を続けろと……。みうらさんは「俺は無理をするぞ」と言ったの。「俺は杖ブームと女装ブームが同時に来た時があった。だから女装しながら杖ついてタクシーを止めた時に、運転手に気持ち悪がられた」と、後輩の俺にものすごく真面目に言う。
面白いなあと思うと同時に、この人は悲しみを抱えてるよね。そして仏教信者なんだよ。最近の本も素晴らしい本を出していらっしゃいます。
乙君:
次はみうらさんを越える3位!
第3位 江川達也――「過酷な人生を生きているのに、常にご機嫌」
山田:
江川達也さんは全部面白いぞ! 「こんなことを言ったら嫌われるかもしれない」とか、そういう計算が、まったく出来ない人だからね。つまり、本音だだ漏れ男だから。すごく大変な目に合ってるのに、あの人はそれをやめないからね。
俺はへっちゃらだという顔をして、常にご機嫌。この人のご機嫌イズムは、俺と共通していて、俺はこの人と会っていたら、ずっと笑ってるの。でも、過酷な人生を生きている。この人、お兄さんに告訴されてるしさ。
一同:
ええ!?
山田:
それは、俺が今ここで初めて言っているわけじゃないよ。実は江川さんは、そういうことをFacebookにもガンガン書いているし……「俺は辛いんだ」という話をFacebookで延々と言っている。やっちゃいけないこと、全部やってます!
乙君:
逆に!?
山田:
だから面白い!
一同:
(笑)
山田:
それをやめたら、江川さんは生きやすくなると思うし、才能があるんだから、なんでそんな面倒くさいことをするんですか、と何回も俺は言っているんだよ。でも、「山田くんは才能もないし、絵が下手だから……俺は出来ちゃうから、へへへ(笑)」みたいなね(笑)。
乙君:
ちょっと小島よしおみたいな……。
山田:
「ウェーイ!」とやるんだよ、あの人は。「その感じが、嫌われるんだよ!」と言っているのに、絶対にやめないから。あの人はこのまま60になってもやるんだなと思う(笑)。そのくせ、まっとうなことも、頭のおかしいことも一杯考えてるよね。
だから、あの人は毒舌漫才でつっこみがいない人なんだよ。「違うじゃない」「よしなさいって」と言う人が誰もいないから、俺がやっていたの。そうすると活き活きと毒を吐ける。
山田:
人生を賭けて頭がおかしいことをやっているところも最高だよね。あとはエロを非常に大事にしてるでしょ? そこも非常に正しいと思う。あの人は、永井豪の『デビルマン』で、常識を覆されたんだよ。その漫画で常識を覆される体験がきっかけで学校では教えてくれない真実を漫画から教わったんだよ。
乙君:
覚醒系コンテンツ。
山田:
だから、お客さんが沢山いて、今人気者で、よせばいいのに、全部を裏切るようなことをやって、編集者まで怒らせて、出て行っちゃうの(笑)。
乙君:
孤独な人ですな。
山田:
だけど、面白いでしょ! 横で見ていると(笑)。俺にはない部分がいっぱいある生き方をしているからこそ面白いし、やっぱり『BE FREE!』を最初に見た時、やべえな、この人と思った。そんな人をアシスタントとして、手伝えて嬉しかったしね。だからそういう意味では江川達也は面白いです。