佐藤天彦名人に勝利した最強将棋AI『Ponanza』開発者・山本一成が語る強さの秘密
2017年9月29日に最終回を迎える『ニコラジ』。フィナーレに向けて、「ビッグダディ」「ハライチ岩井」「しみけん」など豪華ゲストが連日出演中ですが、ニコニコニュースでは過去放送分から選りすぐりの内容をピックアップ。
今回お届けするのは、将棋AI『Ponanza』を開発した山本一成さんの出演回(2014年3月19日放送分)。将棋電王トーナメントで優勝するなど圧倒的な強さを持つ『Ponanza』の強さの秘密をMCのやまだひさしさんに、山本さんが解説します。
山本さんは「対局前に“ドーピング”をしている」と語りますが、ソフトウェアの“ドーピング”とは一体どういうことなのでしょうか。
『Ponanza』の命名は『Bonanza』へのリスペクト
やまだ:
山本さんは将棋は指せるんですか?
山本:
はい。一応指せますね。
やまだ:
将棋はいつからやり始めたんですか?
山本:
小学生の頃からルールは知っていて、中高大学とやっていて特に大学では結構やっていましたね。将棋は何年やってても楽しめますね。
やまだ:
将棋にゴールはないんですね。でもポケモンとかモンハンもやるんでしょ(笑)?
山本:
どちらもやったことないです(笑)。全部の時間、将棋ですね(笑)。
やまだ:
すごいね(笑)。大学時代は将棋の大会とか出てたんですか?
山本:
全国大会に出てましたね。中高大学も将棋部でしたね。
やまだ:
部長をやってたりしたんですか?
山本:
そこまで強くなかったです(笑)。自分より強い人はいっぱい居たので。
やまだ:
そんなに強い人が居ても『Ponanza』は作れないんだね。『Ponanza』はいつごろ作り始めたんですか?
山本:
大学時代に暇だったときに苦手だったパソコンをやろうと思ったのがきっかけでした。
やまだ:
当時パソコンは苦手だったんですか?
山本:
苦手でしたね。全然わからなくて。ファイルとフォルダの差もよくわかってなかったですね。
やまだ:
意外だね(笑)。それでもくもくとプログラムを覚えていったんですね。コンピュータで将棋を作らせてみたら強かったですか?
山本:
それがものすごい弱いソフトウェアが出来ちゃって(笑)。びっくりするぐらい弱かったです。こちらが8枚落としでも余裕で勝てるぐらいでした(笑)。
やまだ:
誰もやりたがらないソフトだね(笑)。山本さんはそれから強くするために改良を重ねていくわけだ。強くするプログラムっていうのは自分で作っててわかるんですか?
山本:
プログラムは動作を速くすると基本的に強くなりますね。将棋盤を駒を動かしているその処理能力を速めれば、速めるほど強くなると思ってもらえばいいですかね。
やまだ:
なるほどね。そういえば名前の『Ponanza』っていうのは意味があるんですか?
山本:
説明するのも恥ずかしいんですけど、当時評価関数を全自動でやったものすごい強い有名なソフトに『Bonanza』ってうのがあって、それに対抗して『Ponanza』とつけました。
やまだ:
いつかは『Ponanza』は『Bonanza』を超えちゃうの?
山本:
そう思っていたんですけど、もう永遠に超えられないかもしれないですね(笑)。『Bonanza』はすごいソフトウェアですから。
やまだ:
『Bonanza』には山本くんは勝てるの?
山本:
うーん……まぁ今ならちょっと分がいいかなって感じです。
Ponanzaの強さの秘密「試合前は“ドーピング”……」
やまだ:
『Ponanza』はなんでそんなに強いんですか?
山本:
結構、時間をかけてるっていうのが大きいですかね(笑)。強くするには何を評価するかっていうところですが、この手が良いのか悪いのかどう判断するかが将棋のプログラムとして重要なところなんです。そこの精度が良いと強くなりますね。
やまだ:
その精度を上げるためにやってることは企業秘密とかあって話せないですか?
山本:
秘密とかそんなにないんですけども(笑)。何ヶ月もパソコン上でプログラムを回したりとかしてるぐらいですね。今はもう対戦時はコンピュータが自動で考えてますね。あとは対戦前に“ドーピング”するっていうのはありますね。
やまだ:
それやばいじゃん(笑)! 出場停止になっちゃうよ?
山本:
いや“ドーピング”っていうテクニックなんですけど(笑)。最後に人手でチューニングしていくんですよね。評価関数のバランスが悪い時なんかに、例えば飛車の価値を上げたりとかそんなことをしていますね。
やまだ:
なるほどね。人間っぽいこともしてるんだね。ちなみに『Ponanza』にライバルはいるんですか?
山本:
いっぱい居ますね。今回(2014年)の電王トーナメントで準優勝した『ツツカナ』もライバルですし。今回は『Ponanza』が優勝したんですけど、コンピュータ将棋ソフトウェアは一進一退で団子状態なので気が抜けないですね。