行方尚史八段が約23時間にわたった中川大輔八段との“過酷な対局”を振り返る
対局の合間にサッカーの話!?
行方:
朝8時に連盟の掃除のおばさんがやってくるんですよ。開けて(まだ対局をしていることに)ビックリしているっていう(笑)。
山口:
たしかに(笑)。
行方:
しかも10時からその部屋で貸し部屋があったみたいなんですよね。当時、B級1組順位戦って必ず金曜日になっていて、土曜日はアマチュアの大会で使うじゃないですか。貸し部屋があったっていう話は聞いていて、ちょうど9時15分に終わったんで、部屋を変えて連盟の控室に移動して感想戦をやっていたんで。
山口:
大丈夫だったということですね。
行方:
そうですね、アマチュアの大会には影響はなかったんです。
山口:
対局の間の30分休憩って何されているんですか? 寝ているんですか?
行方:
全然覚えていないです。
山口:
そうですよね。極限状態ですよね。
行方:
対局日誌の河口俊彦先生とお話した覚えはありますね。もう亡くなられちゃいましたけども。たしか2004年だからサッカーのユーロがやっていたんですよ。ヨーロッパ選手権の話をされた覚えがあります。
山口:
対局の合間の休憩中に?
行方:
サッカーは好きだけど、今されてもちょっと(笑)。
山口:
(笑)
築地でのビールの味は?
山口:
対局後、築地のお寿司屋さんでのビールはいかがでしたか? 行方先生と中川先生の二人で行かれたんですか?
行方:
あと、そのときの観戦記者。普通はB級1組にはつかないんですけど、毎日新聞の夕刊の特選集みたいなので取り上げることになっていたようで、観戦記者の遊駒スカ太郎さんと三人で行きました。もう火照っているから、とても真っ直ぐ帰る状況じゃないですもんね。
山口:
そういうものなんですね。
行方:
その時間から飲めるところって築地しか思い浮かばなかったので、大江戸線に乗って築地に行ったもののどこに入ればいいかわからないですよ。あんまり行ったことがなかったから。
山口:
場外ですか?
行方:
場内の存在を僕は知らなかったんです。
山口:
そうなんですね。
行方:
なんでも良かったんですよ。
山口:
ビールが飲めれば?(笑)
行方:
ビールが飲めれば。
山口:
そのときの味って覚えていますか?
行方:
うーん、別に寿司の味は覚えていないけど、おそらくビールは4~5本空けて、そうしたらさすがにグタっときたような気がしますよね。
山口:
ということで、築地に飲みに行ったという話でした。
行方:
しかし、若かったんですね。
山口:
面白かったです。河口先生の話が(笑)。
行方:
そうなんですよ。その2年後にはワールドカップの話をしたような覚えがあります。寂しいところはありますけど、そういう話をするような先輩もいなくなっちゃったなというとこはありますね。
■関連記事:
・将棋界の登山家・中川大輔八段が経験した約23時間にわたる対局を振り返る「体力がないと持っている技術を発揮することも精神力を発揮することも難しい」
・23時間を超える“過酷な対局”の記録係を務めたプロ棋士が当時を振り返る「持将棋になってトイレに行けてホッとしました」