一瞬でオタク女子の心を虜にする『HiGH&LOW』の魅力とは? オタク女子たちの熱すぎる2時間トーク
ツッコミどころ満載。だから応援上映が面白い!
※『応援上映』:通常の映画鑑賞のスタイルとは異なり、作品の登場人物と観客が一体となって楽しむ「観客参加型」の映画鑑賞のスタイル。
両角:
今、『HiGH&LOW』は応援上映っていうのをやってるんですよね。応援上映といえば『KING OF PRISM(キンプリ)』というアニメ映画でもやっていましたが、観た時の衝撃も、これにわりと近いんじゃないかと思うんです。
金田:
内容は全然違うけど「脚本はどうなってる?」とか「過剰な世界観」とか、そういう点ではキンプリに近いかも。応援上映がハマる映画ってある程度似てるのかもしれませんね。
両角:
そう、ツッコミどころがある。観ていて「何で?」って思うところが多いというか。
金田:
脚本・演出なんかが若干おかしくて、いろんな映画を観てきて、ウェルメイドな映画に慣れている人達には「えっ、何でそこそう撮る?」とか「そこつじつま合ってなくない?」とか「今のカッコいいセリフ、どうやってその後の展開につながる?」とか、本当に謎ばっかりのミステリーですよ。ただ、応援上映ではそういう隙を見つけてツッコミ入れたりするんですよね。罵倒まではいかない愛のあるツッコミ。そういうのにすごいハマります。
両角:
応援上映で話題になったのがフラッグ。
西森:
これですよこれ。
両角:
オタクは光る棒が大好きなんですが、EXILE文化は旗なんですよね。
西森:
ライブでも光らせないんですよ、EXILEは。めずらしいですよね。
EXILEファンを意識してしまうオタク女子
ひらりさ:
オタクが『HiGH&LOW』応援上映行くと、当然そこにはEXILEファンの人たちもいるわけで、そういう時「あ、どうしよう」って思うこともあるんですよね(笑)。
金田:
あ、でもツイッターを見てる限りでは、けっこうみんな「いいね」って言ってた。1件だけ「え、オタク来るのかよ、やめてくれよ」みたいなのがあって、「あ、すみません」ってちょっと寂しい気持ちになっちゃったけど。うん、ほんとすいません。
ひらりさ:
私、ちょっと反省していることがあって。ライブの時に街を歩いてたら、元々のファンの女の子達がいたんですよ。で、気づいたんだけど、我々は「HiGH&LOW素晴らしい」「LDH最高!」とかまるで自分たちが発見した新大陸のように言ってるけど、彼女たちはすでにそこにいたんですよね。
一同:
そうそうそう!
ひらりさ:
だって、よく考えたら「三代目」ってついているくらいなんだから、そこには当然歴史があるわけで。
金田:
だってコンサートなんて毎回が『HiGH&LOW』な感じなんでしょ? 彼女らにしてみれば「今さら何言ってんの」でしょうね。
ひらりさ:
そう、だから知らない人にはぜひ見に行ってほしいし勧めるけれども、我々もあまり大きな顔はできないって思いました。
西森:
応援させていただいています、みたいな感じだね。
金田:
まぁ、ファンが増えてくれることが嬉しいっていうツイートもあったので、仲良くやっていきたいですね。
ひらりさ:
LDHは「Love、Dream、Happiness」ですからね。
金田:
あ、そうなんだ!(すかさずノートをとる)
■『HiGH&LOW』を生み出した「LDH」が気になる!
両角:
さて、私たちの心を揺さぶって止まない『HiGH&LOW』。そこで気になってくるのがこの作品を生み出した芸能事務所LDHの存在。ここからはこのLDHについてお話していこうと思います。LDHは「EXILE」「三代目J Soul Brothers」などが所属する芸能事務所で、社長はEXILEのHIROさん。ただ普通の芸能事務所と違うのは「エンターテインメントの育成、創造、継続のシステム『EXILEピラミッド』」というものがあるところなんですね。
両角:
ピラミッドの頂上に位置するEXILEを筆頭に、各グループが切磋琢磨をして新しいエンターテインメントの可能性に挑戦していくというものです。これ公式サイトに出ています。
ひらりさ:
要するに、グループを持つことで多面的になるってことですね。
西森:
学校が全国各地にあるんですよね。だからそういうのも含めてってことですね。
金田:
え!そうなの!学校あるんだ。そこにいい人がいると、オーディションに行こうよという口利きがあるんですかね。
ひらりさ:
オーディションの最終選考で落ちた人にスクールを案内して、そこで頑張ってたらまたもう一回、みたいな……。
金田:
うーん、それスクールの学費とかが若干気になるシステムですね。
ひらりさ:
今って小学校でダンスの授業があって、その一貫としてダンス教室に通うという流れがあるみたいですね。
金田:
あ、塾的な? まぁ塾よりかは月謝は高いのかもしれないけど、スターになりたいというよりも、習い事みたいな感じなの?
ひらりさ:
アクターズスクールみたいな感じですかね。
西森:
わりと本気で夢をかなえたい、みたいなことはあるんじゃないですかね。月謝とかにも関係するんじゃないかと思いますが。
LDHの歴史を遡るといろいろ見えてくる
両角:
次にこのLDHの設立についてなんですが、ちょっとフリップをご覧いただければ、と。
ひらりさ:
元々HIROさんは「Choo Choo TRAIN」で有名なZOOのメンバーなんですよね。
両角:
そう、ZOOのメンバーとして活動していたんですが、99年に初代J Soul Brothersを結成するんですね。私、「三代目」って聞いたときに「え、初代と二代目はどこにいたんだろう」って思ったんですけど、ちゃんといました(笑)。
西森:
このネーミングは、ボビー・ブラウンがつけてくれたんですよね?
ひらりさ:
元々このグループのために名前をつけたわけじゃなくて、HIROさんがたまたまボビー・ブラウンと踊ってた時に「きみはジャパンソウルブラザーだね」って言ったのがきっかけみたいですね。で、ZOOとは別にその名義で踊ってたっていう。
西森:
私は、ZOOとボビー・ブラウンが好きだったので、それかなり胸熱な話。
両角:
そして翌年に「EXILE」に改名し再スタート。2002年には、EXILE初期メンバー6人が50万円ずつ出資して「エグザイルエンターテインメント有限会社」を立ち上げた、と。その翌年にモデル事務所と合併してここで「株式会社LDH」が誕生するわけですね。だいたい1年ごとに活動の場を広げていってますね。で「EXPG、EXILE PROFESSIONAL GYM」を作って……。
ひらりさ:
なんか池袋ウエストゲートパークみたいな(笑)。
金田:
あ、これがさっきのダンススクールだ。
両角:
そう。そして07年に二代目J Soul Brothersが結成され、舞台を中心に活動する劇団EXILEを旗揚げ。ジャニーズでいうミュージカルアカデミーみたいな感じですね。09年にJ Soul BrothersとEXILEが合併します。合併してたんですね。
ひらりさ:
合併って言っていいんですっけ。EXILEのメンバーとしても活動して、EXILEを14人体制にするみたいな感じだったような。それまでEXILEって6人でやってたのが、ボーカルが変わる時に一人増えて7人になって、その後さらにライブでパフォーマンスを見せていくために14人体制にしたっていうことですね。
両角:
なるほど。で、その翌年に、私たちも知っている三代目J Soul Brothersになったという。
これで、初代も二代目もいたんだっていうことがちゃんと分かりました。このフリップだと10年で終わっちゃってるんですが、ここから先は西森さんにちょっとお話していただきましょう。
EXILEの路線変更がオタク女子の琴線に触れまくる
西森:
あくまでも私の考えなんですけれども、昔のEXILEって「黒くって、ヒゲをはやしてて、サングラスかけてて、屈強な男性たち」っていう感じでしたけど、今はキラキラした人もけっこういると思いませんか? これは、2006年の9月のボーカルオーディションでTAKAHIROが入った時がその分岐点だったんじゃないか、と。
金田:
強面ではない、甘い感じの顔のメンバーの最初がこの人だったってこと?
西森:
そうそう。その後、TAKAHIROを筆頭にそういう感じの人がどんどん入ってきたわけですよ。たとえば、『HiGH&LOW』の雨宮兄弟の登坂広臣さんが入ったのが2010年。同じ年に、コブラ役の岩田剛典さんが入った。でも、岩田さんはその時はまだゴリゴリのEXILEっていう強面の感じ。それがある時、HIROさんに「がんちゃんは笑顔のほうが似合うよ」って言われた、と。本人はEXILEの強面イメージでなければダメだと思ってたところに、当のHIROさんからそう言われたことで「じゃあ俺は頑張ってフジテレビのドラマに出て、主題歌の仕事を持って帰ります!」となったんですよ。
金田:
え、そんな会話が!?
西森:
そう、いろいろ三代目関連の雑誌読んだけど実際に書いてありますね。で、ドラマにも出るようになって、そっちの路線を拡大していったんです。それ以降、そういう人が増えていきます。たとえば、ワンピースの主題歌を歌ったり。ワンピースの主題歌ってEXILEっぽくないですよね。それが、2015年とか16年にはもっと顕著になっていって、映画出演も相次いでいるんですね。
『オオカミ少女と黒王子』っていう少女漫画原作の映画に『HiGH&LOW』ではヤマト役だった鈴木伸之さんがライバル役で出たり、『植物図鑑』にはコブラ役だった岩田剛典さん、『イタズラなKiss』には佐藤寛太さん、彼は『HiGH&LOW』ではテッツ役でしたね。
両角:
少女漫画原作の映画のヒロインの相手役に、どんどん進出していってる。
西森:
そうなんですよ。GENERATIONSの片寄涼太さんは『HiGH&LOW』には出ていないんだけど、土屋太鳳と『兄に愛されすぎて困ってます』に出ます。これも少女漫画原作。
EXILEがどんどんかわいくなっていく
西森:
あと、TAKAHIROさんはボーカリストの中では大将みたいな存在で、彼は下の人たちをすごくかわいがってるんです。で、この前ライブを観に行った時、片寄くんに「今日もいつもよりかわいかったよ」とか「濡れた子犬こと片寄涼太」とか、そういうことをすごく肯定的に言ってるの。昔のEXILEのイメージとはまるで違うでしょ。これが今の状態なんですよ。
金田:
わぁ~、なんかすっごく心を鷲掴みにしてくるなぁ!
両角:
強面の人達にとっては「かわいい」というのはあまり嬉しくない事だったはずが。
西森:
そうむしろ、一番苦手としている印象なのにね。私がこれまでアジア圏を見てきた限りでは、コンテンツ以外で海外進出できるのってアイドルだけなんですよ。
両角:
「かわいい」は共通認識なんでしょうね。
金田:
もしかしたらEXILEがかわいい路線を取り入れているというのはゆくゆくはアジアも視野に入れてということなのかな。
西森:
たぶん、そうなんだと思う。育て方とか見ても。
EXILEのこれまでの動きのおさらい
両角:
さきほどはLDHの歴史を観て頂いたんですけど、今度はEXILEの歴史をちょっと見てみましょう。
両角:
EXILEもこれまでいろいろ動きがありました。HIROさんが一番長くて89~95年にかけてZOOで活動。99年にJ Soul Brothersを結成。01年にEXILEに改名してデビューし、03年にZOOの「Choo Choo TRAIN」をカバーして紅白出場。私はこの辺の記憶はうっすらあるんですよね。
金田:
あ、このフリップ間違ってるよ、琥珀先輩じゃなくて琥珀さんね。これ作った人の先輩なのかなあ(笑)。
両角:
あ、ほんとだ(笑)。で、2006年にその琥珀さんことAKIRAが加入して、この年に開催されたEXILE VOCAL BATTLE AUDITIONで雨宮兄弟の次男役のTAKAHIROが加入したわけです。この翌年あたりからバラエティーに顔を出していきます。めちゃイケとのコラボでオカザイルが誕生したのは話題になりましたよね。「あ、EXILEってこういう人たちなんだ」っていうのが広まったと思います。で、09年には2代目J Soul Brothersと合併し……、なぜか12年のところにこれが入ってます「HIRO、上戸彩と結婚」。
ひらりさ:
いや、これ重要なことなんですよ。
両角:
やっぱりEXILEを語る上では重要ですかね。そして翌年13年の紅白を最後にHIROさんがパフォーマーを引退、と。
西森:
この頃からEXILEの「かわいい」が加速するんですよ。
両角:
このあたりで自分はプロデューサーとして本腰を入れていこう、となったのかもしれないですね。14年には岩田剛典くんが入って、15年にはHIROさんに女の子誕生……?
金田:
この情報いるの?(笑)
両角:
大事なのこっちですね、EXILEの世代交代。このあたりでパフォーマーの引退がありました。で、この翌年、ボーカルのATSUSHIが海外に拠点を移すと発表。一年間は海外で活動するということで。海外展開も考えているのかなと言った感じですね。
HIROの言葉にオタク女子、どよめく
両角:
今回の『HiGH&LOW』も含めて、LDHを語る上ではやっぱりHIROさんがとても大きな存在なんですよね。どうですか、ひらりささん。自伝を読んだんですよね。
ひらりさ:
そうなんです。HIROさんの自伝の「Bボーイサラリーマン」と「ビビリ」を読みました。やっぱりZOOの時に調子に乗ってしまったことをすごく反省していたようで。
金田:
あ、調子に乗ってたんだ。
ひらりさ:
そう、大人をちょっとバカにしてて、靴がすべるからダンスができないって言ったりとか、インタビューでも「昔ゲイバーに勤めてた」とかウソ言ったりして面白がったりとか。
西森:
うわーライター泣かせ。
ひらりさ:
ZOOが解散してしまって、何もない状態からもう一回ダンスで何かやろうとしても、テレビは全然取り上げてくれないですよね。でもそれに対して「みんな手の平返しやがって」って腐るんじゃなくて「俺がえらいって言われてたのは、レコード会社でスーツ着て働いてるサラリーマンの人達が、俺たちがそう言われるようしてくれていたからなんだ」ってことに気づくんです。そこを自覚したうえで、新しいことをやっていこうとしてるのがEXILEなんですよ。
金田:
あ、すごい、ちゃんと学んでる。
ひらりさ:
そう。あと「Bボーイサラリーマン」にはEXILE結成の最初の頃について書いてあるんでコレぜひ読んでほしいんですよね。その中に「俺はメンバーの一人ひとりを自分の彼女のように思うことがある」って書いてあるんですよ。
ひらりさ:
最初のボーカルの清木場俊介さんについて語ってるくだりがあるんですけど、そこをちょっと読みますね。
「俊も自分の思いを包み隠さず俺に話してくれた」「俺はメンバー一人ひとりのことを知りたくてたまらないし、相手の今の気分がすごく気になる。どんなに仲良くても普通の男友達にそんな感情を抱くことはないから、やっぱり彼らは俺の彼女のようなものだと思う。あの1週間を経て、俊も俺の彼女の一人になった」
一同:
おおおおおおおおお!
金田:
HIROさ~ん、なるほどねぇ~!
両角:
でも、ファンとかメンバーのことをファミリーとか家族って表現するのってありますよね。舞台とかだと、戦友とか仲間とか、そういう感じの表現はあったりするんですけど、HIROさんの場合は彼女なんですね。
ひらりさ:
『HiGH&LOW』はHIROさんががっつりプロデュースしているとは思ってなくて、知ってからびっくりしたんですけど、これを読むとそれも分かりますね。あと『ビビリ』のほうは人生観がメイン。ストーリー調でEXILEの話が時系列で書かれています。上戸彩さんとのノロケ話なんかも。あとパフォーマー引退についても触れていますね。とにかくすごくいろんな概念に対して深く考えている人なんだなぁと思いました。
彼らの「企業っぽさ」が面白い
西森:
私、去年、週刊誌に三代目について、いろんなところに取材もして、かなり長いルポを書いたんですけど、いろんなことを調べていくと、LDHってすごく理念がしっかりした企業なんですよ、その理念に共感してきた人たちが集まっているから、絆が強いっていうかすぐ辞めちゃったりっていうのがないんですよね。
両角:
そういえば西森さん、コンサートのエンディングの話がありますよね。
西森:
あ、そうそう。コンサート、私も何回かしか行ったことがないんだけど、普通ならアンコールがあるところで、来年何をするかっていう告知が始まるんですよ。それを観たあとにアンコールがあるんですよ。株主総会の終わりのほうで「来年はうちの企業はこういうことをやりますよ」みたいなこと言いますよね。なんかそういう感じの企業っぽさがあって面白かったです。
金田:
そうか、ある意味コンサートって株主総会みたいなもんだからね。
ひらりさ:
LDHの社員気分を味わいたいなら、ぜひBボーイサラリーマンかビビリを読んで下さい。