一瞬でオタク女子の心を虜にする『HiGH&LOW』の魅力とは? オタク女子たちの熱すぎる2時間トーク
観終わった後に何しろ言いたくなるのがこのセリフ
金田:
この映画ってオタク女子だけでなく、男性も非常にハマるんですけども、映画を観終えた後にどうなるかっていうと「どうしちまったんだよ琥珀さん!」って言いたくなるのね。
両角:
『シン・ゴジラ』のカヨコの「ZARAはどこ?」っていうセリフと同じで、何か言いたくなっちゃうんですよね。
金田:
そうそう。Twitterでも誰かと対面してても、何か理不尽なことがあるとつい「琥珀さん!どうして分かってくれないんですか琥珀さん!」って言ってしまう。上司が相手でも言いそうになるわけですよ、ええ(笑)。
両角:
オーバードライブした面白さというのがありますね。
とにかくキャラの立て方が秀逸
両角:
これまで説明してきた人達ってみんなキャラクターの立ち方がすごいんですが、特に琥珀さんの魅力がオタク女子的にはグッとくるものがありました。
西森:
あのね、SMAPを例にあげると、彼らはバラエティー番組を通して本人のキャラクターを知ってもらって個々のキャラクターがだんだん確立されていった結果人気が出ましたよね。最近まではこの手法が主流だったと思うんです。で、私はLDHの人達も、まずはバラエティーでキャラを立てていくのだろうと思っていたんですよ。彼らがどんなふうにバラエティーと関わっていくのだろうと思っていたら、違ったんですよね。「なるほど、物語と結びつけてキャラ立ちさせていくのか!」と思いました。まぁ当たり前なんだろうけど、そうかそっち路線をとったのかって思いました。
両角:
私『マジすか学園』(2010年、テレビ東京)に近しいものを感じました。AKB48が出ていたドラマで、いくつかの学校があってそこで喧嘩をしながら「番を張るのは誰だ」みたいな感じのチームもの。あれって、一見みんな同じように見えてしまう人達に物語のキャラを与えることで、彼女たちの差異をつけることに成功した番組なんですよね。この映画でのキャラ立ちってそれに近いものだと思うんです。私、EXILEって全然分からなかったんですけど、映画観終わった後、『Mステ』(テレビ朝日系の歌番組)を見ていた時「あーこの人って、『HiGH&LOW』のあの人だぁ!」って分かるという、ちょっとしたアハ体験がありました。
ひらりさ:
確かに、オタクはフィクションでしか個体を認識できないので(笑)。私も『マジすか学園』でAKB48にハマりだしたことがあって、今回もまったくその手法ですね。
両角:
『HiGH&LOW』ってキャラクターの量がめちゃめちゃありますよね。普通なら1チームだけでやるぐらいのレベルの話を5チームでやるという(笑)。
金田:
うん、正気の人はこういう脚本を立てないと思います。
一同:
(笑)
金田:
私は三次元のこと分からないのでまず映画を観るのが大変でした。でも『HiGH&LOW』に関しては、チームに分けてあるということと、服装がチームによって差別化されているので分かりやすかったです。いちいち「俺たちは山王連合会だぁ!」とか「鬼邪高校だ!」とか言わなくても「あ、学ラン着てるから鬼邪高校ね」「白い服だからWhite Rascalsね」ってパッと見て画面から伝わってくるファッションの情報とか曲の情報とかが重なり合って、ほんと分かりやすくなってました。しかも途中で髪型変えたりとかもしないし。
『HiGH&LOW』のライブってどんな感じ?
西森:
その髪型の話、実はすごい重要。K‐POPの場合、アーティスト写真を見てから本人に会うと髪型もメイクも変わってて「ああもう分からない」って崩れ落ちることがあるんですよ。だから、髪型も変わらずキャラが変わらないのって大事。『HiGH&LOW』のライブって、あれ作品のキャラのままで寸劇とかしてくれるんですよ!
一同:
えーっ、行きたい!
金田:
私もまだライブは観てなくて、どうしようか悩んでいるところなんですけれども……。映画のキャラのままでっていう話だけど、「EXILE TRIBE」の人達って全員がこの映画に出てるわけではないんですよね?
西森:
そうですね。映画に出ていない人もいるのに、どうやって舞台を成り立たせているかというと、たとえば映画の中の何かのテーマを歌っている人は、そのテーマを歌っている歌手として出るんですよ。映画に出ていないからキャラはないけど、パフォーマンスはできる。だから、三代目J Soul Brothersの今市隆二さんも、テーマを歌っている人として出ていて、その横で映画に出ている人がそのキャラのまま寸劇をやっていたりするんですよ。
一同:
へぇ~~~!
両角:
ホントに物語とキャラクターを背負って、その世界観を三次元側に持ってくる感じですね。
西森:
そう、だって車飛んだりしますから(笑)。
両角:
それってほんとに2.5次元舞台というか、キャラクターを平面に近づけて見せている感じがします。
西森:
そう。たとえば『ミュージカル テニスの王子様』に出ているキャラクターの人は、普段はお芝居をしているけれどもライブの時はキャラクターのままで歌を歌いますよね。そういう点でちょっと共通点があると思います。
両角:
だから『HiGH&LOW』のキャラが漫画みたいだっていうのもあながち間違ってはいないですよね。
元々のEXILEファンの言葉に驚き
ひらりさ:
なんかこの『HiGH&LOW』というプロジェクトって、元々のEXILEオタにはそこまでウケてないという話を聞いたんですよ。それは「ドラマ自体があまりパッとしないから」っていう人もいるんですけど、びっくりしたのが「いつもとやってること同じだから」っていう理由(笑)。「え!? こんな刺激のあることをいつもやっていたのか!」 っていうね(笑)。
金田:
あ、そうか。作品ではアクションシーンなんだけど、実質ミュージックビデオのダンスシーンみたいなものなんでしょうね。
ひらりさ:
「ああいうカッコつけ方とか歌とかは私たち普段から摂取してるから」っていう。
西森:
ミュージックビデオでもアクションを担当した人が『HiGH&LOW』でアクション監督をしてるということも関係あるんでしょうね。
金田:
なるほど、いつもあんな感じなのかぁ……。
プロモーションビデオのナレーションはなんとあの人
両角:
『HiGH&LOW』は公式がそれぞれのチームやキャラクターごとに合計20個のトレーラーを作っています。それとはまた別に、一番見てほしいのは「キャスト&ストーリー」というタイトルのプロモーションビデオ。これが映画の冒頭7分ぐらいをそのまま見せちゃう感じなんです(笑)。
しかもあの、説明のナレーションを『エヴァンゲリオン』の碇ゲンドウ役の立木文彦さんが担当しているんですよ。
金田:
前、ライムスター宇多丸さんの『ウィークエンドシャッフル』っていうラジオ番組でお話させて頂いた時、立木文彦さんって総合格闘技のPRIDEのナレーションの人だと教えてもらったんですよ。だから、トレーラーのチームの説明の部分は、PRIDEでいうところのリング入りの時の選手の説明なんだよ、と。
両角:
あっなるほど!
金田:
だから碇ゲンドウをイメージするよりそっちのほうが気持ちが上がりますよね。確かに、碇ゲンドウってそういう説明をする感じのキャラじゃないし、PRIDEのイメージのほうが合ってるなって。内容もすごい凝った感じでキャラを立てて戦うっていう、スポーツでも特にプロレスに近い感じだし、そして絶対ケンカでは死なないというね。
西森:
そうそうそう。
金田:
だからプロレスファンとしてもハマれるんだそうです。
両角:
「無慈悲なる街の亡霊」っていうキャッチコピーも、リング入りの時のキャッチフレーズに近いものがありますよね。
香港映画的アクションに注目
金田:
そういうわけで、これ、いろんな文脈からハマれる映画になってるんですよ。
西森:
私は香港映画オタで俳優オタなんですけど、この映画はいろんな分野のオタがマッドマックス的な感じでこのSWORD地区に集まってくるみたいな感じがします。
金田:
西森さんは香港映画オタとしてハマったんですか?
西森:
そうですね、RUDE BOYSが一番香港映画に近いかな。彼らの場面でアクション監督が一番アクションを楽しんでると思います。RUDE BOYSの時はキックの時に煙が出たりするんですよね。香港映画も殴った時に煙が出るんです。
一同:
え??? どういうことですか(笑)。
西森:
粉仕込んでおくんですよ。
金田:
漫画的に表現してるってこと?
西森:
そう。あと、これはドラマのほうだったと思うんだけど、服を脱いだ時にシャツを掴んだままそれを武器に戦ったりするとか。あれもすごい香港映画っぽいし、その辺のオタを惹きつけるものがあると思うんですよね。実際、『HiGH&LOW』のアクション監督はドニー・イェンの映画にも参加していますし。香港映画を学んだのは2000年代の最初だと思うんだけど、あの頃は香港のアクション映画が一番熱かった頃なので、それを本場で観てきた人が撮っていると思うと、なんかこう胸熱な感じなんですよね。
両角:
そのアクション監督の大内貴仁さんがスタンドコーディネーターを務めた『るろうに剣心』でも、アクションシーンがすごいと話題になりましたけど、あれもキャラクターによってそれぞれアクションが違いましたよね。今回も、殴り方一つとっても、チームごとに違いがある。達磨一家は力でねじ伏せるみたいな重めな感じで、RUDE BOYSはパルクールを使いながらクルクル回ってて、鬼邪高校はもう男のケンカって感じでしたよね。
殴り合いなのに痛さは感じないし男はキレイだし!
ひらりさ:
あれだけやったら流血してそうなんだけど、でもそういうのに慣れていない人が見ても「あ、これは後遺症とか残らなそうな、死者も出ない感じだな」って思えるんですよね。
金田:
なんか全体的にダンスっぽい感じがあるというか、ものすごく痛そうな流血を見せるっていうのもないですよね。
ひらりさ:
そう。この映画って、男の顔をきれいに写すことに心血を注いでいる感じがします。
西森:
スモーキー役の窪田正孝くんの場合、いつも顔に紗がかかっててスローモーションでアップなんですよ。どんな依怙贔屓だっていうくらいにきれい。
ひらりさ:
『シン・ゴジラ』を観た後に『HiGH&LOW』を観たら、あまりにも画面がいつも水平に動くので「えっ この角度でしかカメラ動かないの!?」って思ったんですけど、イケメンの顔をきれいに撮るには適切な方法だなって(笑)
一同:
確かに(笑)。
金田:
でも仕方ないな。やっぱ見せたいのは男のカッコ良さと美しさだから、それを最大限に見せられるよう撮ってるんでしょうね。
西森:
痛さをあまり感じないことについて思ったんですけど、リアリティのある痛さを感じる映画って、必ずリアルな地名が出てくるんですよね、松山とか土浦とか。今回はそういうのがないから現実感もない。
両角:
なんか私たちの世界とは地続きでない、どこかの別の世界でそれが起きているかのような感じですよ。画的なリアリティはあるんだけど、現実感がないから痛さも感じなかった。
あの最後のシーンの裏話に爆笑
ひらりさ:
そういえば100人対500人のシーン、あれは神戸港にセット組んで撮ったんですよね。
金田:
本当にその人数を集めてケンカをさせて、それを長回しで撮っているところがすごい。
両角:
しかも、ドローンを使って上から空撮をして見せているという。
ひらりさ:
あれ世界に5個しかないらしいです。しかも100人対500人って言ってるけど、実際は1000人いるんですよ(笑)。
一同:
本当に!?(笑)
ひらりさ:
公式の設定がひどく過剰に見えて、実は実際にやってることのほうがそれを上回ってるわけですよ(笑)。声優のライブや2.5次元のライブで、あんまり予算をかけていないコンテンツは最後のほうで火花が出たりして盛り上がったりするんですけど『HiGH&LOW』だと最初に無名街がガツーン!となって燃えましたよね。こんなに最初から盛り上がるってことはすごいお金かかってるんだなって思いました。
金田:
最初の段階で盛り上げといて、だんだんしぼんでいく映画もよくありますよね。でも最後の100対500のシーンを見た時に「あ、この映画って時間的にもそろそろって時にちゃんとこういうの出すんだ」と分かってスカッとしました。
三次元の人の顔をまったく覚えられない金田さんのノートに戦慄
両角:
LDH所属の人達が中心ですが、それ以外の役者さんもすごいいい役割を果たしていますよね。メインの中にはLDH以外の役者さんもけっこういましたし。演技の出来る役者さんをメインに据えてるので、演技経験のない人がそこにいても気にならないんですよ。
西森:
底上げされるんでしょうね。
両角:
そう、それで金田さんが打合せの時に私たちを戦慄させたノートがあるんですが……。
金田:
いやいや、普通これくらいするでしょ。だって私、全員知らないんだから。こうしないとまったく覚えられない。
一同:
ホントすごい……。
両角:
劇団EXILEの人のことやら事細かに書かれています。しかもAKIRAさんがEXILEで何年生まれの身長は何センチでっていうことまでびっしりと。
金田:
やっぱり年齢と身長は欠かせないじゃないですか。だって二人の関係が気になる時、身長差も気になるでしょ。琥珀さんと九十九さんは、184センチと183センチで1センチ差か!みたいな。二人が立った時にどのくらい差があるのか、は本当に大事(真顔)。
一同:
そこなんだ(笑)。
金田:
ほんと三代目J Soul Brothersっていう名前も初めて知った単語で、ほんと覚えるの大変でした。
マッドマックスとのつながりに仰天
ひらりさ:
そういえば『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)の日本語版の吹替えをAKIRAさんがやって、それがけっこう非難されたりしてたんですけど……。
金田:
えっ、そうなんだ! 私、素人の吹替えもけっこうイライラするし、洋画にテーマソングを新たにつけるのも本当に苛立たしくて「何のつもりだよ!」って思うんですけど。
ひらりさ:
吹替えではマックスを琥珀さんがやってたんですよ。
金田:
ええええっ!! 琥珀さんが?! 琥珀さん一体何してるんですか! 観なきゃ! そうだったのかぁ。まぁ、あの時は『HiGH&LOW』観る前だから気づきようもないんだけども……。これはちょっと観ないといけないなぁ。
ひらりさ:
そういえば最後にみんなが集まってくるところなんか、めちゃめちゃマッドマックスっぽくないですか。
金田:
ま、その最後のところと無名街のところだけね。あんまりマッドマックスって言うと、ああいう映画なのかと期待させてしまいますからね。あの、違いますからね(きっぱり)。