ダサいロックが、格好いいヒップホップの力を借りる「あやかりフィーチャリング」が今後は増える? 最新ポップス・コラボ裏事情を西寺郷太、宇野維正が語る
エンターテインメントを楽しむための深掘りトークプログラム『WOWOWぷらすと』。番組MCの西寺郷太さん、ぷらすとガールズの笹木香利さんが迎えたゲストは音楽ライターの宇野維正さん。今回のテーマはズバリ「コラボレーションを語る」。
「featuring(以下、フィーチャリング)」という言葉が曲のタイトルに入ることが増えた理由や、過去作も含め名コラボの数々を紹介します。さらに、コラボレーションという切り口から、配信が主流となった現代の音楽シーンを西寺さんと宇野さんの二人が徹底的に語ります。
コラボの代名詞「フィーチャリング」の発祥は80年代の洋楽
西寺:
僕はコラボレーションやフィーチャリングという言葉を、初めて聞いたのがワム!なんですよ。ワム! って、2人組ですけど、『ケアレス・ウィスパー』という曲を、(ワム!の)ジョージ・マイケルがソロで出してるんです。けれど、アメリカではちょうどワム!が有名になりかけていた頃だったから、「ワム! フィーチャリング ジョージ・マイケル」 という名義で出たんですよ。
宇野:
フィーチャリングの使い方としては、かなり異例な使い方だよね。
西寺:
そもそも自分は(既にワム!として)フィーチャリングされているのに、ですよ(笑)。
宇野:
それって「ノーナ・リーヴス【※】 フィーチャリング 西寺郷太」みたいなもんだもんね(笑)。
※ノーナ・リーヴス
西寺郷太さん、奥田健介さん、小松シゲルさんで構成された、1995年結成の日本のポップ・ロックバンド。
西寺:
全然違うグループの人をフィーチャーするんじゃなくて、同じグループの中で特別にこの人をフィーチャーしていますよ、っていうのが80年代初頭は多かったですね。それ以前は「&」ですよ(笑)。「ポール・マッカートニー&スティーヴィー・ワンダー」とか。「フィーチャリング」という言葉は、ヒップホップの人が、自分の本拠地が既にあって、そこに迎え入れて「このラッパー、連れてきましたよ」という時に使い始めたんですよね。
iTunesが関係する、曲名に「フィーチャリング」を付ける理由
宇野:
(曲名に「フィーチャリング」を付けるのは)iTunesの問題なんです。要するにiTunesって、アーティスト名に「&」が入ると、仕様上『ポール・マッカートニー』で検索した時に、『ポール・マッカートニー&スティーヴィー・ワンダー』は出てこないんですよ。だから、『エボニー・アンド・アイボリー・フィーチャリング・スティーヴィー・ワンダー』【※】にする。
※エボニー・アンド・アイボリー
1982年にポール・マッカートニー&スティーヴィー・ワンダーが発売した楽曲およびシングル。「ピアノの黒鍵(Ebony)と白鍵(Ivory)が一つのハーモニーを奏でるように、白人と黒人、無色人種と有色人種、すなわち人類が調和する」というテーマのデュエットが世界で反響を呼んだ。
宇野:
つまり、(フィーチャリングという言葉を)曲の後ろに付けないと、検索性能が急に落ちるんですよ。アルバムに収録された曲名じゃなくてアーティスト名の後ろにフィーチャリングがついていたら、(iTunesでまとめて)アルバムが聞けないんですよ。
西寺:
全部違うアーティストとして認識されちゃうからだね。
宇野:
「さすがに曲名にアーティスト名を付けるのは違うだろう」と、思って実際にそうすると、iTunesで曲を買おうとする時も辿り着けなかったりとか、実害が出てくる。そうすると、やはりアーティスト名はアーティスト名だけでキレイにまとめておいて、曲の方に「ウィズ」や「フィーチャリング」を付けないと、あらゆる意味で、データで音楽を聴くという今の時代の環境にそぐわなくなってしまう。実は結構実用的な問題なんですよ。