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―ペルリニエ テーマソング「マギアート」MV公開記念 #コンパス×煮ル果実×革蝉対談! テーマソング&MV作成秘話や楽曲に込めた想いを語る

 2025年で9周年を迎えたスマホアプリゲーム「#コンパス」は、ボーカロイドとも深いかかわりを持つコンテンツ。
 ゲーム内に登場するキャラクター(ヒーロー)には必ず、人気ボカロPとクリエイターの手がけるオリジナルテーマソング&MVが作成されている。

 今回、25年5月に実装されたヒーロー「―ペルリニエ」のテーマソングを担当したボカロP・煮ル果実×MVを担当したクリエイター・革蝉の特別対談が実現!

 #コンパス初参加となるお二人によるテーマソング&MV作成秘話や楽曲に込めた想い、さらにはそれぞれの創作論や、ニコニコ動画を懐かしむトークまで盛りだくさんに語ってもらった。

 「マギアート」
 YouTube:https://youtu.be/IMJVU4ztJI0 
 ニコニコ動画:https://www.nicovideo.jp/watch/sm45648328
 楽曲配信:https://nilfruits.lnk.to/magiatoPR

執筆:加藤雄斗(リワークス)


“待望”尽くしの#コンパス×煮ル果実×革蝉

――「#コンパス」はニコニコ動画とNHN PlayArtで制作しているため、ボカロPや踊り手、絵師といったニコニコ動画に縁の深いクリエイターが多く参加されています。良ければお二人がニコニコ動画と出会ったきっかけや思い出をお伺いできますでしょうか。

革蝉:
 私は昔海外にいたもので、当時娯楽がほぼ無くて……。
 インターネットにかじりついてネットサーフィンをしていたような人間なので、ニコニコ動画をよく見ていました。
 実況動画とか曲を聞いたりとか、MAD動画を見て不思議な気持ちになったりとか(笑)。

煮ル果実(以下:煮ル):
 僕はたぶん、友達の家に遊びに行ったときにその友達がニコ生をやっていたんですよね。ゲーム配信だったかな? 
 フリーゲームみたいな作品で、そこに自分も一緒に参加して実況した記憶があって、それが始まりですね。

――配信者デビューしていたんですね!?

煮ル:
 そうです(笑)。何かわからないうちに触れたけど、横から文字流れてくる機能が面白いな、みたいな。
 そこから見始めて、革蝉さんみたいにMADも好きで見たり、当時から音楽も好きだったのでそういうのを探したり。
 「ニコニコ動画流星群」とか見て笑い泣きしてました。当時有名な動画はけっこう見たと思いますね。
 友達に推された「レッツゴー!陰陽師」とかめちゃめちゃ見てましたね。

革蝉:
 懐かしい。私は当時フリーゲームが大好きで、「手描き○○」みたいな動画をずっと漁ってました。
 アニメーションを作るの楽しそうだなと思ったり、そこからボカロの曲を聞き始めたり、遠からずインディーアニメのようなものには触れていたんじゃないかと思います。

――革蝉さんといえばまさに、ご自身で制作されたインディーアニメが注目を集めました。もしかしたらその源流というか、影響を受けている部分もニコニコ動画にあったりするのでしょうか?

革蝉:
 そうですね。
 二次創作で動画を作りたいなと思ったのに結局今まで一度も作ってないのが不思議ではありますが(笑)。

煮ル:
 え、二次創作を一回も挟まずに一次創作者になってるんですか? すごい……。

革蝉:
 落書きで二次創作をすることはあったのですが、アニメーションで手描き○○みたいなものを描いたことがないんですよね。
 頭の中でこうする、こうしたいというのをいろいろ想像して満足しちゃったのかもしれません。

――煮ル果実さんにお伺いしたいのですが、「#コンパス」は楽曲制作で前述のように多くのボカロPさんに参加いただいています。今回9年目にして煮ル果実さんの参加は初ということで、制作サイドとしてもファンとしても念願叶ったものとなりました。「#コンパス」に対してどんな印象をお持ちですか?

煮ル:
 9年って本当にすごいですよね、おめでとうございます! 
 「#コンパス」は自分が「煮ル果実」として音楽を作る前から触れていたコンテンツだったので、今回携われて大変光栄です。
 当時周りの友達もみんなやっていて、今でも続けている友達もいて、ずっと自分の身近にある作品、愛されている作品だなと感じていますね。
 やっと呼んでもらえたという気持ちがある一方で、早く呼んでくれないかなという気持ちもずっと抱いていました。

――煮ル果実さんとしても待望の参加だったのですね。今回楽曲を担当していただいたキャラクターが「―ペルリニエ」。 “わるい魔女”がテーマですが、これまで煮ル果実さんが手がけられた作品、たとえば「バーバヤーガ」でも魔女や魔法のようなワードはよく登場しています。―ペルリニエの印象や、楽曲制作時の思い出を伺えますか?

煮ル:
 お話をいただいたとき真っ先に、難しいなと思いました。
 自分の中で、段々と悪くなっていくキャラを描くのが得意だと思っているのですが、逆に元々ナチュラルに悪い属性のキャラを描いた経験がかなり少ないなと。

革蝉:
 たしかに、そんな印象がありますね。

煮ル:
 でしょう? それと、可愛らしい雰囲気の見た目だけど顔がない、底知れないというか、理解が及ばない存在感が―ペルリニエの魅力だなと感じていて。
 対して自分が描いてきたキャラは人間味が強い傾向にあったので、かなり新鮮に映りました。
 だからこそ今までにないアウトプットが出来るだろうと思って、未開の土地に足を踏み入れるようなドキドキを味わいましたね。
 それがまた嬉しくて、曲を作り始めると楽しくて、本当にあっという間でした。

――革蝉さんは―ペルリニエというキャラクターにどういった印象を抱きましたか?

革蝉:
 見た目がこんなに可愛いのに自分で “わるい魔女”と言ってしまうような“わがままっぽさ”もあって、すごく魅力的だなと思いました。
 その印象を上手くMVに落とし込みたいなと思って、最初からわがまま全開のような感じをイメージしていて。
 執事にマグカップを投げつけるところから始めたら合いそうだなと。

 それと、今回のMVは―ペルリニエの要素だけではなく、煮ル果実さんの世界観も大切にしていて。
 煮ル果実さんの世界観に登場する「ムウ」というキャラも取り入れつつ、―ペルリニエや「マギアート」の楽曲のエッセンスを取り入れて生まれた世界、という解釈で演出しています。

煮ル:
 ムウというキャラは僕の中では結構重要といいますか。
 合成音声というものに関する大切な存在なので、―ペルリニエの世界に触れた、今までとは別の世界のムウを描いてもらえると良いなと思ってオーダーしています。

――今回もうひとつ“待望”となったのが、煮ル果実さんの楽曲MVへの革蝉さんの参加だったとお聞きしています。

煮ル:
 そうなんです。本当に、MVありがとうございました! 
 ずっとお仕事をお願いする機会を探していて、今回ご一緒できてめちゃめちゃ良かったです、絵が綺麗過ぎて素晴らしい……。

革蝉: 
 こちらこそ、楽しく作らせていただきました。
 個人的にもずっと、いつかお仕事をご一緒できたら嬉しいなと思っていたので、今回初めて参加させていただき夢が叶いましたね。
 煮ル果実さんの楽曲を結構聞いていたので、「トラフィック・ジャム」とか「ドクトリーヌ」とか大好きで。擦り切れるぐらいMVを見ていました。

煮ル:
 僕も革蝉さんの映像のファンで、革蝉さんが描かれたMVをたくさん見ています。
 今回の楽曲「マギアート」のMVを革蝉さんに打診したのは僕からなのですが、今回の曲のサウンドで大事にしたい苦味というか、伝えたいことを鋭く描ける、そんな雰囲気を出せる方を探していたんです。
 革蝉さんの絵ってこの世のものならざる雰囲気なのに温かみがあるというか、アナログ感と柔らかさみたいなものもちゃんと持っていて。
 「マギアート」の世界観と革蝉さんのタッチがマッチするんじゃないかと思って、今回お願いしました。

革蝉:
 ありがたいお言葉ですね、本当に嬉しい。

――MV制作にあたり、革蝉さんは煮ル果実さんからどのように内容や方向性をオーダーされましたか?

革蝉:
 最初に煮ル果実さんから概要をお伺いして、エンディングが明るいものか暗いものかどちらにしますかと伺ったのを覚えています。
 煮ル果実さんの世界観はエンディングが明るかったり、暗かったり、両方混ざったようなものも結構あるので、どちら寄りが良いのかなと。
 今回はハッピーエンド寄りというお話だったので、そう意識しています。

 ただ、煮ル果実さんの音楽には若干の毒が忍ばされているようなイメージもあって。
 それが先ほど煮ル果実さんが仰った“苦味”でしょうか。
 その味が個人的にとても好きなので、MVの主役の魔女にとってはハピエンだけど、相手の執事にとってはメリーバッドエンド、みたいな雰囲気を出したいなと。

 2人の感情がすれ違ったままエンディングに行ったら面白いかなって感じで描いていました。
 それと、魔女の成長みたいな部分も大事にしたいということだったので、そこはずらさないようにしています。

煮ル:
 そうですね、MVが目指す方向性や世界観のイメージ、キーワードや歌詞の意味をメモしたものをお渡ししていましたが、見事に表現しきってくださったと思いました。
 キャラクターデザインが送られてきた段階で、はいもう勝ちです、完璧です進めてください! って。
 僕の中で今回楽曲内に登場した魔女は「コーヒーの魔女」、執事は「サイフォン執事」のように呼んでいるのですが、特にMVオリジナルキャラのサイフォン執事が気に入っています。

革蝉:
 ありがとうございます(笑)。
 煮ル果実さんのMVにいつもかっこいいお兄さんが出ている印象があって、私もせっかくなら出したいなーと思っていたので嬉しいです。

――革蝉さんが実際に楽曲「マギアート」を初めて聞いた時の印象を教えてください。

革蝉:
 めちゃくちゃ煮ル果実さんだなって印象でした(笑)。

煮ル:
 そう思っていただける個性があるのは嬉しいですね。

革蝉:
 自分が音楽に詳しいわけではないので上手く言えるかわかりませんが、特にサビ。
 「夜に夜になる 独り 朝に朝になる 独り」の部分から、すごく大きな感情の吐露を感じていて。
 それまでは少ない音で構成されているのに、サビになると音が太くなるというか、音色が一気に増えて引きこまれるんですよね。

 ここをキャラクターに合わせて作れたら素敵なものになると思って、独りっぽさを強く描いていた気がします。
 もっと言えばできるだけ見た人に強く印象付けられるような、サムネに出来るような絵作りを意識しましたね。

煮ル:
 これは僕も初めて聞きました。そこ絶対サムネに良いと思いましたもん。まんまと革蝉さんの術中にハマったひとりです(笑)。

革蝉:
 あとは「そう繰り返す そう繰り返す」という歌詞のところ。
 テーマにコーヒーが入っているので、コーヒーとミルクを混ぜるようにくるくるすると歌詞とアニメの親和性が高そうだなと思いながら作りました。

煮ル:
 そこも完璧だと思いました! 
 この表現を出来るのが素晴らしすぎます。ぜひみなさん、MVでチェックしてください。

――せっかく歌詞について触れましたので、煮ル果実さんは普段作詞がいかに大切かをよく語っていらっしゃいますが、今回の楽曲の作詞で大事にした部分は何でしょうか?

煮ル:
 ―ペルリニエは “わるい魔女”ということで“魔法”という言葉を使うことになるかと思いましたが、僕は魔法に対してネガティブな認識があって。
 魔法は無責任な奇跡というか、何かの犠牲のうえで出来ているものだと思っているんです。無償の奇跡なんてそんな上手い話はないなと。

 今回はそういう意味では代償の部分にあたる、“孤独”とその受け入れの話を表現したいなというのがひとつ。
 もうひとつは、自分にないものに焦がれてしまう寂しさと切なさを出したいなと。
 その思惑は上手くいったんじゃないかと思っています。
 あとはモチーフとなったコーヒーについて調べて、サビで用語を落とし込めたのが気に入っていますね。

――タイトルの「マギアート」も魔法とコーヒー用語を組みあわせた造語ですか?

煮ル:
 そうですね。―ペルリニエのキャラデザを見たときに、自分で顔を描いているのを見て、マキアートというかラテアートを連想したんです。
 僕は曲を作るときにいつもタイトルから決めているので、コンセプトがはまってイメージを膨らませてからは作詞も一瞬でしたね。

 それと、僕は楽曲を制作するときに毎回イメージフルーツを設定するんですが、今回はコーヒーの曲だからコーヒーチェリーにしています。
 安直かもしれませんが。花言葉は「一緒に休みましょう」なので、ぴったりかなと。

――楽曲として特に注目して聞いて欲しい部分はありますか?

煮ル:
 サビについては革蝉さんとの話で触れましたが、僕は間奏部分もすごく気に入っていて。
 2番サビがフル尺に行かず途中で終わるようになっている感じが好きですね。
 今回は全体的に寂しい雰囲気にして、音数もそんなに多くしなかったのですが、間奏だけはギターがめちゃくちゃ目立って聞こえるように意識して作りました。

 今まで聞いていた部分とは全然違う世界に誘うような雰囲気に出来たと思って、かなり気に入っています。
 こういうことをしたのは久しぶりというか、やったことがないかも? 
 難しいパートでもあるのですが、ライブでもやってみたいですね。

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