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内田裕也の一体どこが”ロックンロール”だったのか? ミュージシャン、役者、”DJ”…様々な伝説を吉田豪&久田将義が語る

 日本のロックの黎明期から活躍し続け、昨年亡くなった女優・樹木希林さんの夫としても知られるミュージシャンの内田裕也氏が、3月に東京都内の病院で肺炎のため79歳で亡くなりました。

 久田将義氏吉田豪氏は自身がパーソナリティをつとめるニコニコ生放送「タブーなワイドショー」において、ゲストのミュージシャン・高野政所氏とともにこの話題に言及。生前の内田氏にインタビューをしたこともあり親交があった吉田氏は、内田氏が予定時間から1時間経過しても登場しなかったという「夏の魔物【※】」の逸話や、“DJ BAD BOY”として登場するものの普通に歌を披露して帰ったというエピソードを披露し、故人を偲びました。

※夏の魔物……正式イベントタイトルは「AOMORI ROCK FESTIVAL -夏の魔物-」。通称「夏の魔物」と呼ばれるロックフェスティバルのこと。画像は内田裕也氏。
(画像は内田裕也オフィシャルサイトより)

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予定時間から1時間経ってもステージに登場せず……内田裕也の“ロッケンロール”伝説

左から久田将義氏高野政所氏、吉田豪氏

吉田:
 今回、裕也さんが亡くなられて、いくつかのワイドショーがボクに「コメントをください」って来たんですけれど、全部「樹木希林さんとの夫婦愛についてコメントをください」って内容で。裕也さんの話でそんなつまらない話しはしたくないっていうか、そもそも普通の夫婦愛の家庭じゃないわけですよ(笑)。

高野:
 なるほど(笑)。

吉田:
 散々もめまくった後で、希林さんが絶対に離婚しないってことで裁判でも戦って、希林さんが鉄パイプでボコボコにしたりもして、でも両者とも大病したことで晩年はちょっと仲良くなりました、という特殊な夫婦愛ですよ。それを求められても、いい話に着地させる技術はないですよ。裕也さんのアウトロー伝説ならいくらでもしますけど(笑)。

久田:
 この人はアウトローだよね。いろいろな組織の集会に出ていましたからね。

吉田:
 裕也さんが挨拶する映像も上がっていましたからね。

久田:
 ああ、某組織かな。でも僕、勉強不足で申し訳ないんだけど、内田さんのロックとしての実力がわからないんですよね。ヒット曲がわからない。これは誰かも言っていたけど。

吉田:
 ロックというジャンルは「ヒット」という基準じゃ測れないし、その象徴みたいな人なんですよ。ボクは本人に言ったことがあるんですけれども、代表曲は全部カヴァー。だけどロックを代表する人。日本でロックというジャンルを作った人。当時、芸能界を完全に占拠していた大手芸能事務所がロックを仕切ろううとした時に、そこに抗って、日本で大規模なロックフェスをやって海外からもバンドを呼んだりとか。

 海外からミュージシャンを連れてくるにしても、それこそフランク・ザッパとかNew York Dolls【※1】とか、なぜそこ!? みたいな人たちを連れてきたというすごさもあるし。 喧嘩をした人の名前を並べるだけでもすごいっていうね。ルー・リード【※2】とかT・レックス【※3】 とかオノ・ヨーコ【※4】とかと喧嘩している人(笑)。

※1New York Dolls
ボーカルのデヴィッド・ヨハンセンを中心とするニューヨーク出身のロックバンド。後のパンク・ロックに多大な影響を及ぼした。

※2 ルー・リード
ブルックリン出身のロックミュージシャン。同時期にデビューしたデヴィッド・ボウイをはじめ、後のパンク・ロックなど音楽界全体に及ぼした影響は計り知れない。

※3 T・レックス
1970年代前半のイギリスで起こった「グラムロック」と呼ばれるムーブメントの中心的バンド。

※4 オノ・ヨーコ
東京出身の芸術家。夫のジョン・レノンと共に平和活動、音楽、創作活動を行ったことでも知られている。

高野:
 すごいな(笑)。ド不良ですね。

吉田:
 そのド不良感を晩年までキープした人。それこそ2012年の「夏の魔物」が裕也さんのライブを見た最後だったんですけれども、最高でしたからね。裕也さんが夜の“6時9分”に登場するはずだったんですよ。ただ、「夏の魔物」はタイムテーブルが押しまくることで有名で、その日も1時間押しぐらいだった。裕也さんはまずその時点で機嫌が悪くて。足が悪かったからステージの横まで車でやって来たんですよ。

 まず時間が押しているし、たしかKING BROTHERSだったと思うけどすぐ近くのステージで爆音でライブをやってるからさらに機嫌が悪くなって、裕也さんが車から1時間出てこないですよ。その間、観客席で掟ポルシェを筆頭にみんなで「裕也! 裕也!」とかコールをして。さらに、の子さん(神聖かまってちゃん)がステージに上がって「内田裕也、出てこい!」とかやったりするカオスな状況で。

 そしてようやく周りの爆音がおさまった瞬間に車のドアが開いて裕也さんが出てきて、ニューイヤーロックフェスでお馴染みのいつものライブがはじまった。あれだけですごいありがたいんですよ。本当に天岩戸が開いた感じ。「あ~! 裕也さんだ~! 本物だ〜!」って。

 控室が全然なくて出演者がみんな同じスペースに押し込まれるカオスなフェスなんですけれども、裕也さんだけ離れのバンガローみたいなところが控室になっていて、僕とPANTA【※1】さんと杉作J太郎【※2】さんと杉作さんの若い衆で挨拶に行って。「お久しぶりです!」って言ったら「おう吉田! 最近有名人じゃねえか!」って言われて「ありがとうございます!」って(笑)。杉作さんの若い衆が「お前ら! PANTAのバンドか?」って言われて、どう見ても違うのにって(笑)。

※1PANTA
ロックバンド「頭脳警察」のボーカルとして活躍。

※2 杉作J太郎
漫画家、俳優、映画監督など、マルチな活躍で知られる。

久田:
 感激するんじゃないですか。

吉田:
 感激しますよね。

久田:
 僕も、運営しているTABLOというニュースサイトに書いたんですけれども、坂口安吾という文豪がいまして、彼の『不連続殺人事件』という作品があるんですよ。

吉田:
 ロマンポルノのね。

久田:
 そう。なかなか映像化しにくいんですけれど、本当に重要な役を内田さんがやっていて、ぜひAmazonプライムでぜひ見ていただきたいくらい。ビートたけし的な演技をするんですよね。

『不連続殺人事件』
(画像は不連続殺人事件 | Amazonより)

吉田:
 「役者・内田裕也」は全部いいですね。

久田:
 素晴らしいですよ。『不連続殺人事件』は本もいいんですけれども、映画化はどうするんだろうって。たぶん30歳ぐらいの時に出ていたと思うんですけれども、すごくいい演技だったので、ぜひ皆さんに見ていただきたいですね。僕、“ロック”は本当にわからないんですけれども、俳優としては素晴らしいんじゃないかと思いました。

「晩年までかっこいいことを、ちゃんとやっていた方」

吉田:
 政所さんはどうですか。

高野:
 内田裕也さんは「NEW YEARS WORLD ROCK FESTIVAL(以下、ニューイヤーロックフェス)」の印象が強いですね。

吉田:
 毎年テレビであんな映像が流れるってね。いま地上波がだんだん整理されてきている中だから余計に目立ちますよね。

高野:
 怖い人しか出ていない(笑)。

吉田:
 しかも昔のニューイヤーロックフェスはもっとすごいバンドが出ていましたからね。世間的な知名度がないけアンダーグラウンドなバンドと、大ベテランの裕也ファミリーだけ。しかも全部怖そうな人。ここ最近も裕也さんのスカイダイビングとか、特殊な映像が年に1回だけ何かのしがらみで流され続けられていて(笑)。

高野:
 でも世の中には、あれをすごく喜ぶ人がいらっしゃる。

吉田:
 僕とかですよ。あれがないと正月がはじまった気がしないです(笑)。最高! っていう(笑)。

高野:
 特殊な世界ですよね。

吉田:
 ニューイヤーロックフェスって、最後のテロップが異常じゃないですか。田辺エージェンシー・田邊昭知社長とか、芸能事務所の偉い人たちの名前がずらっと並んで。

久田:
 すごいな(笑)。

高野:
 もうこのレベルになるとミュージシャンというより、フィクサーみたいな方なんですかね。

吉田:
 ある時期まで、売れたようなバンドは裕也さんを通過しなきゃいけないような時代があって。ニューイヤーロックフェスの怖いところは、当時は大晦日のライブがニューイヤーロックフェスくらいしかなかったから、出るしかなかったんですよ。

 後にだんだん選択肢が出てきたけれども、ある時期まではニューイヤーロックフェスって入った以上は足抜けができない。抜けるチャンスというのは、紅白の出場が決まった時みたいな話もあったくらい。

高野:
 紅白だったら許してくれる(笑)。

吉田:
 一時期は、The Stalin【※】だ何だとか、先端みたいなバンドが全部出ていて。

※The Stalin
ボーカルの遠藤ミチロウ氏が中心となって1980年に結成した伝説的ロックバンド。客に豚の臓物を投げつけるなど破天荒なステージが脚光を浴びた。

高野:
 ヒップホップの人とかも出ていましたよね。

吉田:
 ジブさん【※】はね。ジブさんは毎年出ているのに、つい最近まで「ゼブラ」って呼ばれていましたからね(笑)。

※ジブさん
ヒップホップMCのZeebra氏のこと。

吉田:
 僕のインタビューで「裕也さん、最近いいミュージシャンはいますか?」なんて言ったら「ゼブラはいいよな」って言っていましたから(笑)。でも誰も注意はできない(笑)。

高野:
 本人ですら否定はできない(笑)。

吉田:
 「ゼブラ」と言われると怒るジブさんが、裕也さんには何も言わない(笑)。

高野:
 「どうもゼブラっす」ってなるんですかね(笑)。ゼブさん(笑)。そのくらいすごい方だったんですね。

久田:
 吉田さんもツイートしていましたもんね。あのへんで繋がっているんだと思いましたね。

高野:
 ツイートで流れてきたのを見たんですけれども、内田裕也さんが「DJ Bad Boy」っていう。

吉田:
 高木完さんと。

高野:
 それでDJをするかと思ったら、普通に出てきてひとりで歌を歌った(笑)。

吉田:
 高木完さんが流した曲に合わせて歌っただけ(笑)。「裕也さん、それはDJじゃないです!」っていう(笑)。

高野:
 でも誰もツッコめずっていう(笑)。

吉田:
 晩年までかっこいいことを、ちゃんとやっていた方です。

久田:
 かっこいいですね。あの年代の人、かっこいいですね。79歳でしたか。

吉田:
 大好きでした。

久田:
 ご冥福をお祈りします。  

▼記事化の箇所は23:45から視聴できます▼

久田将義×吉田豪のタブーなワイドショー

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