「テラスハウス」木村花さんを死に追いやったのは何か?番組作り、SNSでの誹謗中傷、YouTubeの便乗動画…問題の在りかを探った【話者:吉田豪・久田将義・掟ポルシェ】
恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演中だった女子プロレスラーの木村花さんが、5月23日未明、東京都内の自宅で死亡したと、木村さんの所属団体が明らかにした。SNS上では、番組内での他の出演者とのやりとりをめぐって、木村さんを誹謗中傷するコメントが集まっていた。
久田将義氏と吉田豪氏は自身がパーソナリティをつとめるニコニコ生放送「久田将義と吉田豪の噂のワイドショー」において、ミュージシャンの掟ポルシェ氏をゲストに迎え、この話題に言及。
冒頭に「ネットは腐ってるな」と久田氏が一刀両断。ネット上で見られる誹謗中傷や悪質な投稿に対し、掟氏が「人としてやっちゃいけないことぐらい、わからないように育ってきたのはどうなの?」と述べると、吉田氏は「表現の自由はすべてが許されるわけではない」と賛同し、「何らかのペナルティを与えなきゃダメでしょう」とTwitter社などのプラットフォームを提供する会社へ、規制を呼びかけた。
— 木村花🥀HanaKimura (@hanadayo0903) May 22, 2020
※本記事はニコニコ生放送での出演者の発言を書き起こしたものであり、公開にあたり最低限の編集をしています。出演者はテレワークでの出演であり、この番組は2020年5月24日に放送されたものです。
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■リアリティショーはすべてがリアルなわけではない
久田:
ネットを生業としている人間としても、ネットを使っている人間としても、正直、ネットは腐ってるなって思っちゃいましたね。僕、木村花さんがジュリアさんと試合をしているのをテレビで見て、「本当に可愛い子がいるな」と思った。テラスハウスは全然見てないんですけど、調べれば調べるほどひどいので、腐った人間がいるなと思いました。
吉田:
ボクもテラスハウスは見ていなくて、報道後に関連動画をごっそり見たぐらいなんです。だから、そこは全然詳しくないんですけれど、町山智浩さんもかつてラジオで言っていたように、海外でもリアリティショーに出ている人が自殺に追い込まれるケースが本当に多いんですよね。
リアリティショーはすべてがリアルなわけではなく、番組側が作る部分も相当あったりするわけですよ。それは「ASAYAN」【※】の頃から言われていることで、ある程度編集しちゃうのはセーフみたいなのテレビの文化があるんですよね。
※「ASAYAN」…テレビ東京で放送されていたオーディションバラエティー番組。小室哲哉やつんく♂などのプロデュースで、鈴木亜美やモーニング娘。、CHEMISTRYなどのアーティストやタレントを輩出した。
怒っている映像を別のところに使って、別の文脈にしちゃっているんだけど、「でも怒っている映像自体は本当にあったんだから嘘じゃない」みたいな感覚がどこかにあった。それがいいわけないんですよ。でもそれがある程度アリになっていて、リアリティショーでもその役割に準じたことをやっている人や、本人としては不本意な部分を番組の編集にピックアップされてキャラを作られちゃった人が、本当にそういう人格だと思われて嫌われ、ネットで追い込まれて亡くなるみたいなケースがすごいあるらしいと。
ボクが多少近い経験したと言えるのが、「ラストアイドル」なんです。審査員が独断でアイドルに勝敗をつけるという番組で、ボクが審査員も視聴者もそれほど評価しなさそうな、でも独特な個性や野性の魅力がある女の子を勝たせたことで、炎上したことが2回あったんです。
その場合、怒りを向ける対象はそういうシステムを作った番組側と、審査員のボクであるべきなんですよ。でも視聴者の人は怒りを女の子に向けるんですよね。勝ち上がった女の子に「辞退しろ」と追い込んで、実際ひとり辞退しちゃった。ふたり目もずっと「辞退しろ」と追い込まれ続けたけど、なんとか今でも続けている。
ああいう番組は、ピュアな視聴者が怒ることを「盛り上がり」と捉えて歓迎する部分があるけれど、タイガー・ジェット・シンや上田馬之助の極惡ぶりにピュアなファンが怒るみたいに、怒りをちゃんと受け止められる人がやっているんだったらいいんだけど、そうじゃないわけで。
昔、高橋みなみにAKBのセンターの条件について聞いたら「アンチに耐えられる精神」とか言われたんですけど、前田敦子とかアンチに追い込まれて相当しんどい思いをしたけれど、生き延びたからなんとか今こうやっていい話になっている。
でも、いつどうなってもおかしくない……というものでもあると思うんですよね。
プロレスの場合、ヒールが観客を怒らせるのはいいことなわけで、木村花さんはそこに違和感があったはずなんですよ。ヒールとして、ちゃんと仕事をしたはずが、想像以上に嫌われて。
その結果、女子プロレスでの「ヒールとしてファンから嫌われるっていうのはこのくらいだろうな」っていう基準を、はるかに超えるレベルでの叩かれ方をしたはずなんですよ。よりによって、スターダムという所属団体の中でもSNS担当みたいな役割を与えられていて、嫌でもいろんな意見が目に入っちゃう状況だった。
そして、SNSをやるのがしんどいっていう話もしていたという流れのこれなので、まあ……本当にしんどいニュースですね。
久田:
ありえないよね。
■テラハ好きの視聴者が語る「最近、番組の流れもよくなかった」
掟:
木村花さんを一番最初にインタビューしたのは俺なんですよね。まだ木村響子さんのお嬢さんとして、ちょうどその頃、DDTのアイアンマン選手権でチャンピオンになったというタイミングで、「面白いので取材に行きましょうか」ということで、木村花さんがまだ8歳くらいの頃だったかな。
だから俺の中では木村花さんといえば、子供の姿のままで止まっています。
吉田:
お母さんの結婚式も行っていたよね?
掟:
そうなんですよ。お母さんはすごく明るくて分け隔てのない人なので、今まで仕事をしたことがある人みんなに結婚式の招待状を送ってきてくれたんですよ。それで式に行ったら、格闘技関係者じゃないのは俺といしかわじゅん先生しかいなくて、お互いに「場違いだ、どうしよう」って(笑)。
木村響子さんがリングをやめる少し前に、娘さんがお母さんの意思を受け継ぎプロレスラーになるというところまでで俺の記憶は止まっていて、その後プロレスラーになられて、かなり活躍をされていて。あの時の子どもが、こんなに活躍しているのは嬉しいなっていう気持ちだったんですね。
「テラスハウス」は俺も全然興味がなくて見ていなかったんですけれども、YouTubeでテラスハウスの出演者が、自分の気持ちを話す動画を見たんです。ひとりの女性が、誹謗中傷を浴びてすごく弱っているという話をしている時に、木村さんはそれに対して「そんなの気にしなくていいんだよ」というのをその女性に言っていたんです。
SNSとの付き合い方みたいなものまでちゃんとわかっているはずだったのに、あれだけ他者からの悪意というか攻撃というか、そういうのが束になってやってくると、どうしても気にしてしまうというか。
自分もSNSで攻撃するようなことを言ってくる人がいると、その人がどういうことを言っているのかをさかのぼって見るようにします。この人が不平不満を言いたいだけの人なのか、それとも自分のことをよく知っていて、この発言の真意をわかって怒っているのかを見極めなきゃいけない。
木村さんが亡くなる前にTwitterでいいねをしていたのが、「お前なんかいなくなればいいんだ」みたいな。それに対して木村さんは、「自分が一番そう思っていた」というようなことを書いて亡くなった。
自分の存在について、肯定的じゃない部分が自分の中でずっとあって、そこの部分にちょうど他者の言葉がガッチリはまっちゃって、「自分がいなくなればいいんだな」ということが解決策になっちゃったというのは、本当に残念でならないですね。
自分の気持ちにガッチリはまっちゃったから、「この人の言ってることは間違ってない」みたいな気持ちになってしまったんじゃないのかな。
吉田:
SNSで攻撃的なことを言ってくる人のアカウントを確認すると、政治に怒りまくっている人だったり、無差別で著名人に絡んでいる人だったり、プロフィールに病名が並んでる人だったりしがちで、そっと閉じることも多いですからね。ちょうど木村花さんが亡くなる直前、リアルタイムで彼女のリスカ画像がツイッターに流れてきたんですよね。
いろんな人たちが「連絡してあげてください」ってリアルタイムで関係者にリプライ飛ばしてて。
掟さんとボクの共通の友達で「テラスハウス」好きの人がいて、「最近、番組の流れもよくなかった」っていう話をしていたんですよね。もともと南海キャンディーズの山里さんが非モテキャラとしてキラキラした男女を攻撃することで成立していた副音声が、山ちゃんが結婚したことで丸くなったと思われるのもあれだから、ちょっとキツめの攻撃をするという流れがあったらしくて。
そこでさらに、チュートリアル徳井さんがあの騒動で番組に出られなくなって、フォロー役もいなくなっちゃった。ボクもツイートしましたが、「テラスハウス」のファンが「最近ちょっと副音声を聞くのが辛くなってきた」みたいな話もしていたんですね。
そういう番組側の悪い流れもあって、木村花さんがちょっとした騒動を起こして炎上した回が地上波でも流れたり、その部分がYouTubeでも複数投下されたりのタイミングで、さらにアンチに火がついて一斉攻撃して、彼女が耐えられなくなったっていう流れみたいですね。
久田:
やりきれないですよね。あれは別にドキュメンタリーじゃないですからね。ドキュメンタリーを突き詰めると、盗撮になってしまう。これは映像関係者ともたまに言っている事ですが。だからあれは演出じゃないですか。彼女がちょっと暴れた時とかのシーンを切り取って炎上させるっていうのは、普通に番組側の演出ですからね。
吉田:
こういう時に「この人殺し番組、潰れろ」みたいな番組への攻撃とか、山ちゃんへの攻撃とか、もしくは彼女を攻撃した人への攻撃とか、結局どんどん同じことを繰り返してるような流れになっていくのが、本当にしんどくて。リアリティショー的な番組の問題とかを、本当にちゃんと考えなきゃいけない段階に来たんだろうなと思いますね。
久田:
それは絶対そう思う。
吉田:
昔と違って出演者に直で憎しみをぶつけられる状況になっちゃったので、これはさすがに考えなきゃいけない。
久田:
「テラスハウス」はリアルっぽくしているじゃないですか。でもあれはリアルじゃないですからね。そういう大人の見方をしていない人が、「本気なんだ」みたいな感じで攻撃したと思うんですけど。
吉田:
ネット上で燃えることくらいまでは、番組の盛り上がりみたいに判断していたんだろう けど、それを受け止める人が受け止められるかまでの判断まで、ちゃんと考えなきゃいけない。
それこそAKB48の前田敦子とかが倒れたりした時に、「これは面白いけど危険だ」と宇多丸さんがラジオで言って、「絶対、これはメンタルのドクターをつけないとダメでしょう」って言ったら、秋元康がそれを聞いてドクターをつけるように動いたっていう話を聞いたことがあるけど、本当にそういうケアの面まで考えないと、このままやっちゃいけないことかもしれないなと思います。
■散見される悪質な投稿「何らかの規制を入れないと」
久田:
Twitter Japan社も考えてほしいと思うんだけどね。
吉田:
Twitterもそうですが、「木村花が死んで良かった!」「あいつが悪い!」的なYouTubeのひどい便乗動画とか、何らかの規制を入れないとダメでしょうと心の底から思います。
久田:
僕だったら名誉毀損でどんどん訴えるけど、そうじゃない知識がない人には……。規制されるのはしょうがないよ。人が亡くなっているんだから。
掟:
テレビで話題になった有名人が出てくると、YouTubeとかで「その有名人の娘です」とか「恋人です」と名乗る人が次々現れるじゃないですか?ああいう影響するようなことを言ってアクセスを稼いでお金が入ってくるみたいな、そういうシステムを情報商材として売っている人がいる。
単純な話だと思いますけどね。人としてやっちゃいけないことぐらい、わからないように育てたのはどうなのかな? っていうことだと思います。
吉田:
「これも表現の自由」みたいなことを言ってくる人がいたりとか、コメントを見ていると「番組に出る覚悟がなかっただけだ」とか言っている奴がいて、そういう問題じゃないでしょう。
久田:
違う違う。
吉田:
最低限の常識くらい持っていようよの一言ですよ。
久田:
人が亡くなるようなことを言ったらいけないに決まってるじゃないですか。自分に返ってくるっていう話もあるんだけど、自分に返ってくるような覚悟もないんだよね。規制したほうがいいと思うし、個人的には痛い目にあって欲しいなと思いますよね。そんなことを言っても、亡くなった人は帰って来ないんですけれど……。
吉田:
YouTubeでも、極端にひどいことを言うことでクリック数を稼ぐみたいな前例ができてしまって、次々とそれを真似る人が増えているっていうのがあるんだろうけど。
久田:
腐ってるよ。
吉田:
何らかのペナルティを与えなきゃダメでしょうと思いますよ。
久田:
しょうがない。
吉田:
表現の自由はすべてが許されるわけではないですよ。
久田:
表現の自由って、なんでも自由にしてもいいっていうのが原則なんだけど、その代わり自分に返ってくるという話ですよ。表現の自由は実は残酷な側面もあります。以前、深沢七郎さんの作品に抗議した人間が深沢宅に押しかけ一人を殺めた事件がありましたからね。
吉田:
コメントでも誤解している人がいるんだけど、政治による法規制みたいな話をしているじゃなくて、企業としての姿勢ですよ。Twitterもそうだけど、その辺が結構ザルな部分が多いので、ちゃんとしてもいいんじゃないですかっていうだけの話ですね。
久田:
政治ではなくて、Twitter社としてどうなのか。YouTubeだとGoogleなのかな、会社としてどうなのかっていう話です。政府が出てくるとまた別の違う問題なので、分けて考えてください。人がひとり亡くなっていますからね。亡くなりそうな人もいたじゃないですか。
一般の方にもTwitterやInstagramで、病んじゃっているような人っていると思いますよ。芸能人や著名人だけの話ではなく、一般の方にも同じような体験をしている人もいると思う。誰にでもふりかかってくる問題です。
吉田:
(コメントを読む)「YouTubeはどんどん規制しているよ」って書いてあるんだけど、この番組はYouTubeでもやっているからある程度はわかるけど、規制の方向性が違うというか、AI任せで音楽を使っていると削除されるとか、そういうことばかり反応していて、こういうモラル的な部分に関してはほとんど野放しになっているのが現状ですからね。
久田:
人の命にかかわっている話なので、AIに任せるのはいけないんじゃないですかね。
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