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執筆業だけで生きていくのは限界なのか? 平均年収は300万、文藝春秋は他の10倍…出版業界のギャラ事情を吉田豪・久田将義が明かした!

 「雑誌に連載を持つ著者だけど、もう限界かもしれない」
 先日、はてなブログに上記のタイトルで匿名の記事が投稿され、話題になっている。記事の投稿者は雑誌連載を持ち、本も出版しているが、それでも年収は300万円から500万円で「かなり厳しい」と、出版業界の現状を赤裸々に綴っている。

 久田将義氏吉田豪氏は自身がパーソナリティをつとめるニコニコ生放送「久田将義と吉田豪の噂のワイドショー」において、この話題に言及。

 サブスクリプションなどの定額サービス時代の到来や、コンビニ各社の雑誌販売の縮小に伴う出版業界への打撃がある中、久田氏は「300万から500万は恵まれている」としつつも、「書いてしゃべれる人じゃないと無理かな」と昔と比較して執筆者に求められているものが変化してきていることを挙げた。

 吉田氏も「いろいろな活動で知名度を上げてそっちでお金を稼ぎながら、紙での取材なり何なりを他の媒体で生かして、なんとなく知らないうちにやっていたことが正解だったんだなと思ってます」と、現状は紙媒体だけでは厳しいと自身のキャリアを振り返り述べた。

※本記事はニコニコ生放送での出演者の発言を書き起こしたものであり、公開にあたり最低限の編集をしています。

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年収300~500万円は意外と平均的

左から吉田豪氏@WORLDJAPAN)、久田将義氏@masayoshih)。

久田:
 記事を見たんですけれど、その通りだと思います。

吉田:
 小説とかを書いてる人なんだろうな。

久田:
 俺もそう思った。だから「ライター」という言葉は出ていなくて、「執筆業」や「作家仲間」と出ていたので、ライターではないんだなと思って。でも連載も持っていて、年収300~500万円というのは、意外と平均かもしれないですね。

吉田:
 いや、いまの基準だったらこれで稼げてる方になるぐらいなんだと思います。

久田:
 たぶんサラリーマンの人もそれくらいでしょう。あと書き下ろしをしている人だったら、本当にこれはきついですよね。連載をまとめたものだったら、まあそんなもんかな。あと初版もだいたいそんなもん。

吉田:
 そうなんですよ。初版の部数もだんだん落ちてきていて。まず、紙の本を出すこと自体が困難になってきている。

雑誌の原稿料が下がっていった時代

久田:
 この方の記事を読んで「経歴10年でも年収300~500万円か」って嘆いていらっしゃると思うんですけど、もっと低い人もいるんですよね。

吉田:
 結構いっぱいいますよ。出版だけで食べようとした人は限界がきて、たぶんかなりの数の同じぐらいの世代の物書きがいなくなった。他にいろいろやっていないと難しくて。

久田:
 そうなんだよね。

吉田:
 ボクもほぼ紙だけでやっていた時代があって、その時期の年商の限界とかは知っているわけですよ。それこそ昔、松尾スズキさんにインタビューしたときに、「このジャンルでの上限はそこか」って松尾さんに言われたことがあって。 その時代だと、出版をメインに活動した場合の年商の限界は、たぶん1000万を超えるぐらいだったと思うんですよ。

 そこからボクはうまいことイベントが増えたりとか、配信とかいろいろなものが増えながら、雑誌はどんどん減っている。それこそボクは一時期20誌以上の連載を抱えたりしていて。

久田:
 それはすごい。

吉田:
 今は相当なくなっているけど、忙しさが変わってないし収入もそんなに変わっていない。なんとなくうまいバランスは取れている。

久田:
 吉田くんや能町みね子さんは特別。やっぱり文章だけ書いて生きる人はいるわけですよ。

吉田:
 (コメントを読む)「ネット原稿はもっと安い」って、それはここにも書いてあったけど、 ボクはネットでやる場合、自分の仕事の最低基準があるんですよ。最低基準でやってるんですけど、最低基準でもネット媒体から言うとボクは高い人として認識されているらしくて。インタビューでその価格は相当ギリな価格設定なんですけどって、それくらいネットはそもそも予算がない。

久田:
 ちなみに原稿で言うと、僕はだいたい25年くらい編集者をやっていて、編集長になってから100冊以上出している経験から言うと、ノンフィクションの世界では400字10000円が10年前ならトップクラスの佐野眞一さんクラスと言われていたんです。だからナックルズの時は10000円は出せないけど、7000円くらいは……ってなっていたんだけど、ちょっと難しくて今は400字で5000円ぐらいで契約するんですけれど、小説はちょっと違うと思う。

 僕はジャンルが違うのでわからないけどね。ネットはまた違うんですよね。

吉田:
 (コメントを読む)「この間、町山さんが……」って、町山さんが言っていたのは、『キネマ旬報』とかの老舗の映画雑誌は原稿料が安すぎるから、『映画秘宝』はそれよりは払うようにしようっていう話なんだけど、それもいわゆる雑誌の基準でいうと別に原稿料が高いわけではないんですよ。

 そして『TV Bros.』がそうでしたけど、最初のギャラの設定からちょっとずつ「すいません、ギャラを下げていいでしょうか」って手紙が来るようになる。この前、休刊号で久しぶりに原稿を書いたんですけど、ボクが書いていた頃の原稿料よりも、さらに安くなってました。

久田:
 でもね、編集長だから気持ちはわかる。原価率下げなきゃいけなくなっちゃって。

吉田:
 そうですね。売れないと製作費を下げないといけない。

久田:
 そうなんです。ライターだけじゃなくて、デザイナー、カメラマン、イラストレーター全部下げたときに全部に電話した。本当に嫌な顔をされるし……そりゃ当たり前だけどね。でも編集長自らが電話して「ごめんなさい」って言うことで、誠意を見せたつもりなんだけど、皆さん、面白くはないですよね。

吉田:
 現状は両立させていくしかないっていうか、いろいろな活動で知名度を上げてそっちでお金を稼ぎながら、紙での取材なり何なりを他の媒体で生かして、なんとなく知らないうちにやっていたことが正解だったんだなと思ってますね。

執筆以外の活動と両立させていくしかない

久田:
 吉田くんは25年前に会ったときから、声がいいし、話が面白いので「ラジオ向きだな」と思ったわけですよ。当時、ライターさんでイベントやラジオをやりたがっていた人もいるんですけど 、その中で生き残ったのが吉田くん。

吉田:
 それこそ映画関係の配信イベントとかたまに見たりとかすると思うんですよ。町山さんは「情報に間違いが多い」と批判されたりするけど、やっぱり楽しげに話す能力が本当に高いんですよ。

久田:
 あれすごいな。

吉田:
 別格なんですよ。やっぱり、暗いトーンで面白くないことを話す人が意外と多いから。

久田:
 普通は編集者やライターとかって、話すのが別に得意じゃなくったっていいんだって。

吉田:
 春日太一さんも、やっぱりいい声で面白そうに話す能力が高いですね。

久田:
 あと青木理さんとかもだけど、ジャーナリストであんなに上手くしゃべる人はいないからね。 受け答えがうまいし、本当に稀有なんですよ。

吉田:
 両方できる人ってそんなにいないですからね。

久田:
 武田砂鉄さんなんかもうまいし。書けて、しゃべれる人っていうのが、今生き残っていらっしゃるんですよ。

吉田:
 久田さんも紙だけでやっていたらとっくに限界が来てますよね。

久田:
 当たり前じゃん!と言うか、そういう編集者が中小の出版社でどれくらいいるか。音信不通になったり、職業変えたり。大手だと編集から販売や紙の仕入れに異動したりで残っている知人もいるけれど。

文藝春秋のギャラは他の10倍?

吉田:
 この話題は具体的な金額込みで「あそこは安かった」みたいなのはいくらでも話せますよね。ボクがよく言う『創』のギャラで衝撃を受けた話とかね。

久田:
 『創』はノーギャラですからね。

吉田:
 ボクがインタビューを受けたら、ビール券が何枚かもらえて(笑)。あとで突っ込んだら、ライターが自腹で払ってたっていうね(笑)。たぶん原稿料はライターに払って、ライターが自腹でボクにビール券を数枚くれたらしいことが後に判明した。

久田:
 「ノーギャラで」とか言うから「え!? いやいやいや……」って。

吉田:
 もはや雑誌っていうものがジャンルとして成立しなくなってきているというか、クラウドファンディングでファンに向けて、会報みたいなものを送るぐらいでいいのかもしれない。

久田:
 これはちょっと別に何か話したいぐらいですね。お互いに25年ぐらいキャリアがあるから、90年代から2020年まで話せるもんね。

吉田:
 でもボクも文藝春秋の『Number』で初めてインタビューをしたときに、他の雑誌とギャラが一桁違った。言っちゃうと、他の雑誌が2万だったら、あそこは20万くれるぐらい。

久田:
 そうだね。それを味わっちゃうとダメ。

吉田:
 文藝春秋で『TITLE』っていうサブカル誌が出たんですよ。ボク周辺の人たちもみんな参加していて、文藝春秋のギャラの基準だったから「やった!」と思っていたら、とあるライターさんが石原慎太郎の批判記事を書いたことが問題になって、『TITLE』が路線変更してボクも含めたサブカル系のライターが一掃されたんです。当時、ボク周辺のライターがみんな怒っていたのは、そういうことだったんですよ。

久田:
 きょうも池袋の書店で見たんだけど、サブカルの棚ってすごい狭いからね。誰も読んでないみたいな感じだからね。

吉田:
 『TITLE』はいい雑誌でした。ボクも大好きですよ。そんな感じですかね。いくらでも話せますよ。

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