「どうして地方は元気がなくなっちゃったの?」前地方創生担当大臣・石破茂氏に聞いてみた
地方創生の鍵「わかもの、ばかもの、よそもの」
山本:
石破さんがこの本の中で「町おこしには3人の人間が必要だ、それはわかもの、ばかもの、よそもの」と言っている。ここを是非解説していただきたい。
石破:
これは一部では根強く言われていたことなんですけどね。私ずっと鳥取で育っていて、悲しいなと思ったのが「若いものは黙っておれ、よそ者は黙っておれ、馬鹿のことを言うな」と排斥されて出ていく人が結構いたんですね。
でも若い人達の視点は大事じゃないだろうか、だって次の時代を担うのは若い人ですから。よその人の視点は「あ、そうだったんだ」と気付かされることっていっぱいありますよね。そして、馬鹿者というと言い方が悪いのかもしれないけど、ユニークな発想って絶対に必要です。
「メキシコの漁師」が教えてくれる幸せ
山本:
石破さんが前地方創生担当大臣として言っている「Uターン組の活力」。日本では田舎で育ってなんとか成功して最後は花の都東京で成功しようという考え方があって。こういうコンセプトが欧米ではあまりないと書いていましたがその辺りをお聞きしたいです。
石破:
「いつかは花の都で」、とか「故郷に錦を飾る」とかね。確かにロンドンとかパリも素敵な街なんですが、そこで成功してお金持ちになって偉い人になって故郷に帰るという価値観はないらしいんですね。日本では一寸法師の「京の都で侍になる」という時代から都で偉い人になって故郷に錦を飾るという価値観が平安時代から、ひょっとしたら奈良時代からあって、それを変えるのはすごく大変なことですよね。
山本:
その中で、私の一番のお気に入りの話が「メキシコの漁師」。これすごいシュールだけどいい話で、ちょっと解説して頂きたいんですが。
石破:
これは私のオリジナルじゃないんですけどね。メキシコの漁師さんの元にアメリカのビジネスマンがやって来て「もっと設備を新しくして、もっと沢山採れるようにしてお金を稼ぎなさいよ」と。漁師は「それで?」と言うとビジネスマンは「その金でニューヨークに来て、会社を起こしてお金を儲けるんだよ」と。漁師がまた「そうなるとどうなるの?」と言うとビジネスマンは「そしたらさ、フロリダとかマイアミで別荘買って、自由な時間、素敵な景色、豊かな生活が手に入る。夢だろあんた」と言うわけですよ。で漁師が「それだったら今やっているじゃないか」と言ったという話なんですけどね(笑)。人間の幸せって何なのだろうか、ということだと思うんですね。
地方の幸せって間違いなくあると思うんですね。例えば東京の人間関係、隣の人が何をしているか分からないのが好きな人もいる。でも地方の濃密な人間関係が好きな人もいるわけですよ。
石破:
私は「東京の富と人を地方にばらまこう」なんてつまんないことを言っている訳じゃないんですよ。東京って金融の中心、文化の中心、色々なものの中心としてこれからも力を発揮してもらわないと困る訳ですよ。だけど、東京に負荷が物凄くかかる時に、東京の力が発揮出来ますか。東京の負荷を減らして、地方の潜在力を増やすことは両立することなんです。
山本:
東京に住んでいる人にとっても必要ということですね。