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後世に語り継がれるライバル史「ジョブズ VS ゲイツ」—— MicrosoftとAppleの駆け引きの裏話を両社元副社長が語る

ゲイツの策略に激怒したジョブズ。両者の対立が激化していく

アップル社の現場からはゲイツに対し、疑問の声が上がり始めた。

ハーツフェルド「私はゲイツを信用していませんでした。Macの開発中、マイクロソフトがMacを真似し、独自のOSを作ろうとしているのではないだろうかという事実に気付いたんです。当時、マイクロソフトの開発者とよく連絡し合っていましたが、Macについて知る必要のない事まで、しつこく質問されました。模造の可能性をジョブズに伝えましたが、彼はそれを信じませんでした」

ジョブズは“Windows”の完成を聞きつけると激怒し、販売を巡り、両者は対立した。激怒したジョブズはすぐにゲイツを呼びつけた。その時の様子をハーツフェルドはこう振り返る。
 
ハーツフェルド「怒り心頭のジョブズを前にゲイツは平然としていました。アップル社の社員に囲まれる中で、マイクロソフトからはゲイツ1人だけです。そんな彼にジョブズは『よくも我々を裏切ってくれたな』と怒鳴り散らしました。しかし、ゲイツは冷静に『それはあなたの見方にすぎない』と反論しました」
ゲイツの攻撃的姿勢はAppleⅡのOSであるBASICの契約交渉で、さらに鮮明となる。この交渉で両者の対立が激化した。

ジャーナリストのクリンジリーは、ジョブズが法外な金額をゲイツに支払った事情を次のように述べた。

クリンジリー「Macのシステムこそ、コンピュータの未来だとゲイツは確信していたのです。だからこそWindowsを開発する必要がありました。交渉の際、ゲイツは無理を承知で法外な金額を吹っかけました。しかし、他に選択肢がなかったジョブズはその要求をのみ、契約延長のため必要以上の額をマイクロソフトに払ったのです。予想以上の大金を得たゲイツはその資金で事業の海外進出を始めました」

古川:
 今、ジョブズから得た資金で海外展開を行ったと語っていますが、実際にはちょっと違っています。フランスやドイツのアップルで成功したトップの社長を引き抜いて、マイクロソフトの支社の社長にしたのです。ジョブズから得た資金で海外展開をしたわけではないんです。

古川:
 「お互いに手を出すのは止めましょう」という1年間の契約を結んで、その契約が終わった次の日にフランスとドイツのアップルの社長を引き抜いたので、ジョブズが本当に怒ってしまったんです。

2007年、対談イベントで2人が登場。ジョブズがゲイツに語りかけた『ビートルズ』の真意

その後もジョブズは宣伝を通じ、マイクロソフトを挑発し続けた。

2006年に発表されたテレビコマーシャルでは、自らを『Mac』と紹介するカジュアルな服装の男性と、自らを『PC』と紹介するスーツ姿の男性が登場する。

女性に互いの良さを聞かれると、Macは「彼は計算がうまくて紳士に見える」と評し、PCは「Macは私より創造的だと思う。ただ、中身は青臭いけどね」と述べ、聞き手の女性が「彼は重症ね」とチクリする。

こうした短い寸劇の中で、MacとPCの機能や性格が比較されるという内容だった。
翌2007年、ジャーナリストのウォルト・モスバーグが主催するメディア・イベントに、ジョブズとゲイツが登壇し、共演を果たす。

この対談では、互いへの敵対心は見られなかった。司会者に「2人の関係において最も大きな誤解は何ですか」と問われたジョブズは「実は、僕たちは結婚していたんだ」とジョークを飛ばす。

そして、テレビコマーシャルの内容について聞かれた際には、ジョブズは次のように答えた。
「あのCMが表現しているのは“敵対”ではなく“友好”なんですよ」

この回答には、流石のゲイツも笑いながら「ありがとう」と返答した。さらにジョブズは続けた。
「『PC』は心の広い人物なんです。彼がいるから物事がうまくいく。貴重な存在だ」

古川:
 2人は喧嘩しているように見えますが、実際にジョブズが語った言葉は、ビートルズの『Two of Us』っていう有名な曲の歌詞をそのまま引用していて、「僕らが一生懸命築いてきた世界っていうのは、残された人生の時間より、もっともっと長い時間を築いてきた。この先の短い時間を大事に生きていこうぜ」という話をしているのです。これを見た後、ビートルズの『Two of Us』を聴くと、「もう涙が……!」という感じになってしまいます。

ビートルズのアルバム『Let It Be』の1曲目に収録されている『Two Of Us』。
画像は『Let It Be』Amazonより。

古川:
 ジョブズが病気で倒れた時も、ゲイツはカリフォルニアまでジョブズに会いに行っていますが、直接玄関をノックすると相手に迷惑かもしれないと思い、こっそりキッチンの裏側のドアに回って、お子さんに「お父さん元気? 今、会える?」とお子さんを通じて、アプローチしました。

古川:
 普通、お互いにもっとわがままな人間だったら、「会いたくない」とか、いきなりドアを叩いて「会いに来たぞ」というふうにしますが、お互いに家族を持って、人とのコミュニケーションのスタイルも会社の経営のスタイルもすごく変わったのだと思います。

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