マダニを媒介する“致死率最大30%感染症”の恐怖。「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の原因や症状、身を守る方法を解説
今回紹介する、ゆっくりするところさん投稿の『マダニSFTS【2015年愛媛】命を奪う恐ろしいダニ 高致〇率感染症「SFTS」【ゆっくり解説】※虫閲覧注意』という動画では、音声読み上げソフトを使用し、2014年に発生した、SFTSウイルスを持ったマダニに刺された男性が死亡した出来事について解説を行っていきます。
近年増加傾向の感染症「SFTS」
魔理沙:
今回紹介するのは以前からリクエストをもらっていた「SFTS」に関する事例だ。SFTSとは「重症熱性血小板減少症候群」という感染症のことだ。現在、さまざまな感染症が世界中で確認されているし、新型のものもどんどん発見されている。
これも比較的新しいもので、わが国では2015年に初めて人が亡くなる事例が確認されて以来、流行こそしていないものの、非常に恐れられている感染症のひとつとなっている。
必要以上に恐怖を煽ったりするつもりはないが、これは誰にでも起こりうる可能性のあるものなので、その事例紹介とともに、政府で推奨されている予防方法などもあわせて紹介したいと思う。
ただ、今回も例によってその紹介の一部でショッキングな表現をせざるを得ない部分がある。それにこれはあくまでも事故の概要を伝えるものであり、すべての事柄を詳細に、正確に解説する動画ではない。なので、以上のことを理解し、了承できる人のみ視聴してくれ。
それじゃ、さっそくはじめる。愛媛県南部、南予地方にある「宇和島市」。瀬戸内海と太平洋沿岸に位置するこの街は、西側に入り江と半島が複雑に交錯した入り江と半島が複雑に交錯した、リアス式海岸が続き、無人・有人含め、多くの島々が点在する地域だ。
2014年、5月。そんなここ宇和島市のとある病院に、ひとりの男性患者が搬送されてきた。彼は農業を営む男性「Aさん」。Aさんは市内に暮らしており、数日前から軽い腹痛や吐き気などの症状を訴え、それが徐々に悪化。
この日はそれに加え、頭痛や身に覚えのない筋肉痛、そして意識が混濁するなどの神経症状まで現れていた。当初は風邪か何かだと思い、市販の薬でやり過ごそうとしていたAさんだったが、この日は意識の混濁や激しい頭痛などの症状に我慢できなくなり、救急に通報し、病院に搬送されていた。
霊夢:
救急車呼ぶほど辛かったんだ……。
魔理沙:
担当した医師は診察当初、食中毒・感染症などの疑いがあるとみており、市の保健所に連絡。Aさんが直近で口にしたものや、触れたものなどの調査が行われた。
彼の血液を調べた結果、白血球、血小板の減少など、多くの異常が確認されたが、原因が特定できなければ、有効な治療が行えない。医師は保健所と連携し、彼の病気の原因を懸命に調べた。
検査結果、症状、過去の事例なども細かく調べられ、時間はかかったが、ようやく原因が特定できた。それがSFTSウイルス。これは本当に最近日本で確認されたばかりの感染症だったので、特定までに多少時間がかかってしまったんだろう。
SFTS、「重症熱性血小板減少症候群」は、2011年に中国の研究者らによって発表された、新しいウイルス感染症だった。
霊夢:
新型ウイルス……!
魔理沙:
ああ。これは主にダニを媒介して感染する病気で、主に中国、韓国、台湾およびベトナムなど、アジアの広い地域で流行の兆しを見せていたものだった。
霊夢:
外国の病気がどうして……?
魔理沙:
いや、これは最初に発見されたのが中国だというだけで、もともと日本にもあったものだと考えられている。というのも、海外渡航歴のない日本在住の患者から、分離されたウイルスが、SFTSと同定されており、この時のウイルスの遺伝子タイプは、中国などの海外で発見されたものとはまったく違ったタイプのものだったからだ。
霊夢:
じゃあ発見されなかっただけで、もともと日本にもあったんだ……。
魔理沙:
もしくは最近変異して発生したか。これは基本的に、マダニによって感染するウイルスで、人が噛まれることで感染・発症する。
霊夢:
マ、マダニ……!
魔理沙:
ただ、これはヒトだけではなく動物にも感染するウイルスで、マダニに噛まれた犬や猫、野生動物などからヒトに感染するようなケースも報告されており、その動物に噛まれるなど、体液に触れると感染する可能性がある。
潜伏期間は、およそ6日から約2週間ほどと長く、非常に原因が特定しにくいのも特徴だ。発症すると、初期症状として食欲の低下、吐き気、腹痛などが見られる。
重症化すると、失語、記憶・意識の混濁などの神経症状が現れ、呼吸器ヘも影響し、呼吸困難や酸素不足など、命に関わることも珍しくない。実際、Aさんは病院に搬送された後、対症療法などの治療を受け、入院したものの、その数日後に静かに息を引き取った。
霊夢:
う、うわぁ!
魔理沙:
この感染症に対する治療は、対症的な方法しか存在しておらず、有効な薬剤やワクチンはなかった。それにAさんは70代の高齢者だったこと、そして病院に搬送された時点で感染してからかなりの時間が経過しており、重症化してしまっていたことなどから、手遅れになってしまっていたんだろう。
Aさんから詳しい事情は聞けなかったものの、体にはマダニに噛まれたと思われる傷が数か所あり、農作業中に噛まれていたと考えられている。この感染症は、感染者の血液や体液などに触れることで、ヒトからヒトへの感染が報告されている恐ろしいものだ。
しかも2021年の時点で、640名以上の患者が報告されており、潜在的なものも含めると、それ以上あると考えられている。また、届け出があった感染者の年齢中央値が74歳と高く、重症化すると致死率が6.3%から30%と非常に高いことも分かっている。
霊夢:
そんなに高いの?
魔理沙:
ああ。これは感染者に高齢者が多いことや、潜伏期間が長く、原因の特定が難しいことも影響しているんだろう。重症化してから発覚するケースが多いということだ。
先述したような、野生動物や野良猫などに噛まれることで感染した例もあるが、その中で最も多いのが、マダニに噛まれたことで感染したというものだった。ここからはマダニの参考画像を表示するので、虫が苦手な人は注意してくれ。
わが国には命名されているものだけでも、47種類のマダニが生息するとされており、複数のマダニからこのSFTSウイルスの遺伝子が検出されている。その中でも「タトゲチマダニ」「タカサゴキララマダニ」の二種で、ヒトへの感染が確認された。
すべてのマダニがこのウイルスを保有するわけではないが、マダニにはこのウイルス以外にも、日本紅斑熱や、ライム病などさまざまなウイルスを媒介している場合があるので、噛まれないように注意するに越したことはないだろう。
マダニによるSFTSが確認されているのは、主に西日本を中心に、27都府県で、東側ではほとんど確認されていない。マダニは主に動物などに寄生し、その血液を吸うことで生きている。マダニは8本足からなる節足動物で、実は昆虫ではなく、クモやサソリなどに近い生き物なんだ。
「ダニ」と聞くと、じめじめした季節に布団などに発生するイエダニやヒゼンダニなどの、とても小さなダニをイメージする人も多いかもしれない。
しかし、このマダニはそれらのダニとは違い、吸血前でも体長が約3ミリから4ミリ程度もある大きなダニだ。また硬い外皮に覆われているのも特徴だ。
霊夢:
マダニってどこにいるの?
魔理沙:
普段は草むらなどに生息し、近くに動物が寄ってくるのを待っている。吸血対象になる動物が近づくと、体温や呼吸による二酸化炭素、振動などを感知し、素早くその動物に乗り移り、寄生する。野生動物でいうと、キツネやタヌキ、テン、ハクビシン、シカ、クマやイノシシなど、哺乳動物の体毛にくっついていることが多い。
シカなどを解体するとき、必ずと言っていいほど見かけるダニでもある。獲物に飛び乗ったら、そこから約1週間から2週間ほどかけて、少しずつ血を吸う。マダニは吸血すると、その体が何倍もの大きさにパンパンに膨れ上がり、そうなると地表に落下し、卵を産んでその生涯を終える。
マダニはこのような生態があるため、森や林、草むらなどに人が入った際にも噛まれる危険があるし、散歩中の犬なんかも、よく寄生されてしまうことがある。マダニには獲物の体に飛びつくと、皮膚に口を突き刺し、そこから長時間少しずつ血を吸い続ける。
しかし、吸血されてもほとんど痛みなどを感じないため、気づけないことも多いんだ。
この吸血中のマダニを無理やり引き剥がそうとすると、口の一部が体の中に残ってしまい、炎症を起こしたりする場合もあるので、万が一マダニにかまれてしまったら、すぐに皮膚科などの医療機関で処置してもらおう。そこで念のため感染症などの検査もしてもらうといいな。
霊夢:
マダニ怖すぎでしょ……。どうすれば噛まれないようにできるの?
魔理沙:
マダニに吸血されないように予防することがもっとも大切なので、その方法も紹介しておこう。マダニは、主に春から秋にかけて活発に動くようになる。
草むらやヤブの中など、マダニが生息する可能性のある場所に入る場合は、必ず長袖や長ズボンなど、皮膚が露出していないものを選ぶこと。そして、足を完全に覆う靴や、帽子、手袋を着用し、首にはタオルを巻くなど、なるべく肌の露出を少なくすること。
霊夢:
暑い時期にそれはなかなかつらいわね。
魔理沙:
まあ、これはどうしても草の中で作業をしなければならない場合の話だ。そもそも近づかないのが一番の対策だ。その他、白などの明るい色合いの服を選ぶことも対策のひとつとして挙げられるな。
霊夢:
明るい色だとマダニが来ないの?
魔理沙:
いや、来ることは来るんだが、ダニが飛びついた時に、暗い色よりも視認性が高くなるので、噛まれる前に払ったりすることができる。それに天然繊維よりも、化学繊維でできた服のほうがマダニが掴まりにくいと言われているので、そういうものを選ぶといいかもな。
あとは、虫除けスプレーなども効果的だといわれている。その中でも「DEET」「イカリジン」という成分が含まれているものは、特に忌避効果が認められているので、購入する際は裏側の成分表を見て確認するといい。
あと、ペットにも注意が必要だ。散歩などで外を歩いて帰ったあと、体の表面にマダニが付いていないかしっかり確認しよう。マダニは毛の奥に隠れていることが多い。
これは人間の髪の毛のなかでも同じなので、山や林の中に入った後は、必ず入浴して足の付け根や頭皮、わきの下など、見えにくい部分をマダニに吸血されていないか注意しよう。
吸血前のマダニは小さいので、しっかり見ないと見つからない。これから気温もどんどん高くなって、マダニの活動が活発になってくる時期でもある。森や林などの、キャンプで訪れるような自然はもちろん、近所の草むらや公園などにも、マダニは何処にでも生息している。
必要以上に恐怖を煽ったりする気はないが、外で遊ぶときは、この動画の注意を思い出して、少しでもマダニに襲われる可能性を下げてくれると嬉しい。ペットのほかに、小さな子供がいる家庭も気をつけたほうがいいな。
霊夢:
子供は特にいろんな場所に入って遊ぶもんね。
これからアウトドアシーズンになりますが、山などの自然が多い場所では肌の露出を少なくするなど、しっかりと気をつけたいですね。解説をノーカットでご覧になりたい方はぜひ動画をご視聴ください。