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インディーネットミュージックシーンで熱い支持を得るボカロP・電ǂ鯨のボカコレ2023夏曲「シニカリティ」

 ボカロファンの祭典として、近年シーンの一大イベントともなっている『The VOCALOID Collection』(通称ボカコレ)。
 今回紹介するのはそんなボカコレ2023夏にて、総合ランキング14位を獲得した「シニカリティ」である。

取材・文/曽我美なつめ


 楽曲を手掛けたのは、長年ニコニコ動画のみならず多彩なプラットフォームで大勢のクリエイターから熱い支持を得る電ǂ鯨(でんきくじら)。
「創作集団52hz」の首謀者として、インディーなネットミュージックシーンで確かな実力を発揮する彼。その個性が存分に堪能できる楽曲として、多くのリスナーから反響を集めた結果が今回のランキング入りにも繋がっているのだろう。

 今回楽曲に使用されているのは、本来は歌唱ではなく文章朗読を主な役割とするVOICELOIDの琴葉葵。
だが電ǂ鯨といえば、元より「クーネル・エンゲイザー」でその巧みなVOICELOIDの調声には一定の評価を得ているボカロPだ。今作でも当然、素朴ながらもかわいい琴葉葵の声の響きを存分に生かしたメロディ造りがなされている。

 加えて電ǂ鯨の楽曲の大きな魅力となるのは、やはりレトロゲームを彷彿とさせるシンプルながらもセンスの光るエレクトロサウンドだ。
 曲全体を通して非常に多彩さを感じさせる曲展開ながら、一貫したポップで軽やかな電子音もとても聴いていて心地良い。

 一聴するとどこか懐かしさやある種の稚拙さを彷彿とさせるサウンドではあるものの、聴く回数を重ねるうちに、その曲作りの妙に少しずつ気づかされる。
その音楽がツウなカルチャーを好むリスナーに非常に根強い支持を得ているのは、きっと巧みな楽曲細部の作り込みに魅了される人々が多いこともあるのだろう。

 歌詞の内容も“食卓に上がる魚”という身近なテーマを主題としつつ、曲が展開するにつれそこには徐々に、電ǂ鯨ならではの独特な感性が織り交ざってゆく。
 文字の意味だけを追えば非常に突飛な内容だが、タイトル通りシニカルかつ、どこかやや不穏で違和のあるムードも覗かせる。その世界観は間違いなく彼にしか表せないもので、そこに大きな魅力を感じているリスナーも大勢いるに違いない。

 2023年8月の楽曲投稿から約4か月経った現在、楽曲はニコニコ動画で10万再生を突破。
 VOICELOID殿堂入り動画のひとつとして数えられており、電ǂ鯨楽曲としても新たに殿堂入り曲として追加された作品ともなった。
 時代の潮流やトレンドに囚われることなく、今後も根強く大勢のボカロファンに愛される。そんな曲として、今作はこれからも聴き続けられていくことだろう。


「The VOCALOID Collection」 公式サイト

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