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「HIPHOPは“どう生まれたか”より“何を栄養に大きくなったか”が重要」——社会派ラッパーが日本のHIPHOPの扱いに言及【吉田豪×久田将義×Kダブ】

アベノミクスとヒップホップは相反するもの

Kダブ:
 ヒップホップをカウンターカルチャーとして定義すると、見落とすものがある。どっちかというと「サブカルチャーだ」みたいなことを言いたがるんだけど。

吉田:
 これが煎じて、ヒップホップは政治的なものなのかどうかという問題にも繋がってくると思うのですが、本来は政治的なものだと思うんですよ。

Kダブ:
 それは、どこの口から出たかというのが問題なだけであって、政治は意外とヒップホップではあるんですよ。

吉田:
 その“意外と”が癪に障るわけじゃないですか。ヒップホップが政治的という。

Kダブ:
 このポーズが癪に障る気もするんだよね。

画像は自民党新潟LDP新潟政治学校 第2期生募集 公式サイトより

一同:
 (笑)

久田:
 だからヒップホップに乗じて政治効果に。

吉田:
 そもそも自民党が、というのに引っかかるし。

Kダブ:
 「今のお前ら言うな」というね。

 一億総中流【※】化とかと言っている時だったら、別にこれを言ってもなんとなくわかるという感じもしなくもないんだけど、アベノミクスとヒップホップは、僕は相反するものだと思いますよ。

※一億総中流
1970年代の日本の人口約1億人にかけて、日本国民の大多数が自分を中流階級だと考える「意識」を指す。

久田:
 違いますよね。単にKダブさんがプロじゃなくても、いちファンとしては違うんじゃないか、と思いますけれどね。政治と“意外と”ヒップホップ、って。

吉田:
 意外と、が本当に失礼なんですよ。

Kダブ:
 「思う存分ヒップホップをやりたいから、難しいヒップホップは置いておいて、自分なりのヒップホップというところに落とし込んでやらせてよ」と言う人が多くて。そういう人はサブカルチャーとしての技術的、アート的、メンタル的な部分をできるだけ無視しようとする。

 ヒップホップは別にクール・ハークがやる前からグラフィティはあるし、ブレイクダンスもあるし、スクラッチだって何年後かに生まれているし、その間にバンバータとかもいて、色々そこで考え方もどんどん発展していって。

 すごく言いたいのは、「ヒップホップがどう生まれたか」よりも、「何を栄養にしてこれだけ大きくなったか」ということが重要で、本当は「栄養になるものを自分たちも作る」とならないといけない。

 それなのに「あの時はまだこうだったから、これだってヒップホップでいいんだよ」みたいな言い方をされると、「全然70年代の物ではない」と思ってしまうんですよね。でも、警察ですから、僕。

一同:
 (笑)

久田:
 逮捕しますよね。

パーティーで踊ったり楽しんだり……それがマジョリティになってしまった

吉田:
 どうなんですかね、自民党と相性のいい音楽は何かあるんですかね。

久田:
 演歌。だってみんな演歌好きでしょ。でも、山本一太とかはフォークソング歌うのか。

吉田:
 あの人は意外とロックでしたよ。

久田:
 ロックだったっけ。さだまさし系のじゃなかったっけ。

Kダブ:
 小泉進次郎はヒップホップ聞くって聞いたことありますよ。それ、お父さんですよ。

吉田:
 X-JAPAN(笑)。

Kダブ:
 それもお父さんですよ(笑)。

Kダブ:
 麻生太郎とか何聞いているんだろうね。『ヨイトマケの唄』【※】とかかな。

※ヨイトマケの唄
美輪明宏が炭鉱町の劇場でコンサートをすることをきっかけに作詞・作曲した楽曲。

久田:
 『ヨイトマケ』(笑)。

Kダブ:
 炭鉱の出身だからね。

吉田:
 『ヨイトマケ』は圧倒的に反体制ですからね。

久田:
 そうそう。ヒップホップって一応、反体制から来たものじゃないですか。

Kダブ:
 だから、僕はそれを言っているんだけど、それを言うと「そうじゃない」と言われる。

吉田:
 「そうじゃないのもあります」と言い出したらきりがない。

Kダブ:
 だから、パーティーで踊ったり楽しんだり、ということが最初の目的だという。それはそうだけど、その人たちが育っている環境がどれほどネガティブか、ということに想像力が及んでいないんですよ。明日の飯も安心して食えないとか、愛する仕事もないとか。

吉田:
 ドラッグディーラーになるしかないような状況しかない、みたいな。

Kダブ:
 そうそう。親は訳のわからないことで殺されたとかね。そういうのがあって生まれてはいる。

久田:
 元々はそうですよね。そこは押さえておかなければいけないんじゃないかって、僕は思うんですけどね。

Kダブ:
 そうすると、日本人のほとんどがヒップホップに自分が共感できない。

吉田:
 確かに日本にもドラッグディーラーよりのグループとかもあるけれど、当然それだけではないし。

Kダブ:
 でも、30年前と今を比べると、学生の母子家庭率も上がっているし、みんな僕らが若い頃よりも貧困ですからね。

吉田:
 Kダブさんも母子家庭だったわけですし。

Kダブ:
 特に大学出身の、そんなに周りのやつらもひどい状況じゃなかったやつらも、そういうことをわりと言って。「学生の俺達でも、そんなにシリアスにならなくてもヒップホップ楽しんだっていいでしょ」ということなんだと思うんだけど、いつも間にかそっちの方がマジョリティになっちゃった感じはあるよね。

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