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「これからの文壇はお笑いが席巻する」——ビートたけしが語る“お笑いと文学”の密接な関係

ビートたけしがもっとも幸せを感じる瞬間

中井:
 何をしているときが一番幸せですか?

たけし:
 まあ、やっぱり自虐的なゴルフだね。

中井又吉:
 (笑)

又吉:
 自虐的なゴルフ。

たけし:
 ああ、OB。ああ、また入らねえ。ああ、帰りの道が混んでいると。

中井:
 楽しい時間が幸せなんじゃないんですか?

たけし:
 もう自虐的なのが楽しいね。うわあ道が混んでやがるというのが嬉しいね、意外に。

中井:
 そう言うときが幸せなんですか?

たけし:
 料理屋の飯が不味いとかね(笑)。

中井:
 ひどい(笑)。

たけし:
 こんな値段を取るのかよと言って、ワインを飲んで、まあいいやという。だから、その分だけその店の悪口で稼いでやるかと思う。

中井:
 それをネタにしてやろうという。

たけし:
 そういう店には倍稼いでやると思うよ。とにかく、ひどい目に遭った自分が好きなんだよね。

後輩の面倒見がいいエピソード

又吉:
 たけしさん、僕らからしたら大先輩なんですけど、すごく不思議な方だなと思うところがあって。初めてご一緒させてもらったとき、収録が終わったあと、相方と一緒にたけしさんの後ろを楽屋までずっとついていったんですよ。

 もしかしたら何か声かけていただけるかなと思って。そうしたら、たけしさんが「お兄ちゃんたち、コントとかネタとかやってんの?」みたいなことを言われて。「あ、やらせていただいてます」と答えたら「じゃあ今度何か、もしあれだったら持ってきてよ」みたいに言ってもらえたんですよ。

又吉:
 すごい嬉しくて、すぐ準備して、ほとんど無理やりですけどDVDを送りつけて。で、たまたまその1週間後ぐらいですかね。収録でご一緒したときに「たけしさん、すみません。DVDを勝手に送らせていただいたんですけど届きましたか?」と聞こうと思ったら、「1本目のネタは……」と、もう見てくださってたんですよ。

中井:
 へえ。

たけし:
 俺は、意外に見るのよ。お笑いのビデオ。

中井:
 そうなんですね。

たけし:
 見ておいて、早く潰すやつは潰さないと(笑)。

中井:
 早く芽を摘んでおこうと(笑)。

たけし:
 俺はお笑いが好きだから、面白いと思った人がいたら、たまにやる特番で「たけしの選んだお笑い芸人」なんていって番組に出したりするし。

中井:
 でも、それはかなり嬉しいですよね。その時はお礼を言って?

又吉:
 もちろんです。

これからの文壇はお笑いが席捲する

たけし:
 又吉が芥川賞を取ってくれて嬉しかったのは、俺はずっと小説家とかそういうエライ人の足をひっぱろうと思っていたから、裾野を広げてくれたことだね。下手をすると又吉君は、萩本欽一とかあの辺のクーデター的な存在に近いぜ?

 バラエティー番組の司会は、みんなNHKのおさがりみたいな笑いも知らない人がやっていた。それを萩本欽一さんが司会をやって引きずり降ろしたでしょ? その後は、紳助だ、さんまだ、俺だと行って、メインの司会を全部お笑いにしちゃったんだから。

中井:
 そうですね。

たけし:
 俺は、これからの文壇というのは、お笑いが席捲すると思っている。

中井:
 おお、その旗手が又吉さんだと。

たけし:
 そうだよ。そんで、1番儲かるのはだいたい2番手だから、どうにかついて行って(笑)。

一同:
 (笑)

中井:
 どうですか? この巨匠にして、2番手につきたいと言っていますが。

又吉:
 いえ、僕より先に本をいっぱい出されてますから。

中井:
 そうですよ。

たけし:
 それが、なんの反応もないんだよ!

中井:
 その反応が欲しいというのが、今回の……。

たけし:
 いいよ、お笑いにとっては。だって芥川賞だよ?

中井:
 そうですよね。

たけし:
 芥川賞作家が万引きで捕まるという、食い逃げとかさ。

中井:
 絶対ないですもんね。

たけし:
 拾い食いとか。

中井:
 絶対にやらなさそう。

又吉:
 それが振りになりますもんね。

中井:
 振りにね。

たけし:
 お笑い界から文豪が出るというのは大変なもので、又吉作品の頭の方をちょっと読んで、「うわ、俺はこれ書けない」とショックを受けた。で、これは自分も書けると思ったらいけないと思った。

 こういう表現が俺もできるなんてやると真似になるから、出来ないものは出来ないとして、自分なりの書き方で書かなきゃなと。変な意味だけど、自分が上手く文学的な表現を出来ないことを又吉が教えてくれた。ありがたい。

たけし:
 じゃあ俺は違う方法で、もっと単刀直入に漫才とか落語表現でがんがん行こうかなと思った。余分なものを切り捨てるというか、きれいな装飾が出来ないんだったら、シンプルに行こうかと。

 俺は前から、漫才師は自分たちでネタを作って、その想定で簡潔に言葉を選んで、少ない時間でお笑いに持って行く能力があるんで、それはある程度の本にさせてくれれば、装飾ができるんだから、文学のチカラはもちろんあるはずだって言ってたんだよ。

 俺は自分で書いて失敗したけど、お笑い界から成功者が出て良かったよね。お笑い芸人が芥川賞作家であることは良いと思うね。


 2人の対談をノーカットで収録した番組は、『アナログ』の発売日に合わせて、9月22日(金)の23:00~ニコニコ生放送で公開されることになっている。

「なぜ『アナログ』を書いたのか」
「どのようにして書いたのか」
「物語はどう創られたのか」

 ビートたけしと又吉直樹のクリエイター論がたっぷりと詰まった番組は、言わずもがな、濃密な内容になっているので、ぜひとも、当日のタイムシフトを視聴して頂きたい。

 また、番組をタイムリーで視聴できない人のために、対談をまとめた書き起し記事を後日公開する予定なので、そちらも併せて楽しんで頂けると幸いだ。(了)

 

番組のタイムシフト予約は下記バナーから

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