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結月ゆかりが奇妙な宿で名物料理「地獄蒸し」を楽しむ ホラーと食レポが融合した怪奇小説のような動画に引き込まれる

 今回紹介するのは、ニコニコ動画に投稿された『結月ゆかりの奇妙な食卓『黄泉比良坂冥土荘の地獄蒸し』』という赤島さんの動画です。

 投稿者メッセージ(動画説明文より)

よもつひらさかと読みます。
ひっそりとした夜に観ると楽しめると思います。

いいねには制作にかかった時間を書きました。
(例年はそれの2倍かかります…)


 この動画は、奇妙な世界に迷い込んだ結月ゆかりがそこで出会った不思議な存在との交流や、食事を楽しむ姿が描かれる「結月ゆかりの奇妙な食卓」という動画シリーズの1作です。

 動画は奇妙なモノローグから始まります。

四つ辻を四度右に曲がり、再び四度左に曲がる。
それから正面に進むと、微かに香ばしい香りが鼻をくすぐる。

 その場所には名前がない。
 しかし誰が誰がつけたか、其処は人知れずこう呼ばれている。

 「黄泉比良坂」と。

 知るはずのない土地の名を、何故か知っている自分を不思議に思いながら、結月ゆかりは奇妙な世界を一人歩きます。

 日は暮れはじめ宿を探し歩く中、真横に違和感を覚えてふと目をやると「冥土荘」と看板を出す建物を見つけます。

 入口を探して中に入り、声をかけると少し遅れて旅館の主人が返事をしました。

 宿について聞くと料金は驚くほど安く、温泉もあるとのこと。素泊まりの宿らしく食事は出ないと言われますが、特別な蒸し器があるようで頼めば食材を販売してくれるそうです。

 空き部屋を探してもらい、離れに泊まることになります。

 通された部屋は想像していたより広く小綺麗な物でした。

 部屋で落ち着いたところ、強い眠気に襲われ気が付くと1時間ほど寝てしまっていました。冷えた身体を温めようと温泉に向かいます。

 十分に温まって温泉から出ると、何やら美味しそうな良い香りが。匂いのもとをたどっていくと炊事場につきました。
 そこでは4人の男性が蒸し器を囲んで話し合っています。

 かまどの中から何か、音がするような……
 そんな話をしながら男性たちは立ち去ります。

 話を聞いてしまったせいで蒸し器の下のかまどが気になった結月ゆかり。近づいて、観察してみます。

 「気になりますか」

 ふいに後ろから主人に声を掛けられました。
 驚く結月ゆかりに、主人はこの蒸し器で作る「地獄蒸し」を強くおすすめします。

 地獄蒸しの説明をしていた主人ですが、突然口をつぐんだかと思うと不気味なことを言い始めます。

 「何か変なモノを声をかけられても、振り返ったり返事したりするな」

 おすすめされたように地獄蒸しを用意してもらうことにして、蒸しあがるの待つ間に館内をぶらついていると少女の可愛らしい声が聞こえました。
 振り返ると、赤い着物の子供が立っています。

 少女は鞠を買って欲しいそうです。鞠からは「しゃらら」と鈴の音が聞こえます。
 今は必要ないと断ると少女は悲しそうな顔。買うと答えると、少女は代金を受け取らず鞠を渡してくれました。

 その場を去ろうとして、ふと少女と一緒に夕飯を食べようかと思いつき振り向きますが、そこには誰もいませんでした。
 鞠もいつの間にか消えていて、少女の顔を思い出そうにもモヤがかかったように判然としません。

 のどのつかえが取れない心持ちで炊事場に戻ると、地獄蒸しと徳利に入ったお酒が用意されていました。

 『黄泉比良坂冥土荘の地獄蒸し』
 高温の蒸気で調理した蒸し料理で、塩やポン酢でいただきます。

 まずはエビから。
 うま味とともに、独特の香ばしさを感じます。例の蒸し器の効果でしょうか。

 蒸しただけとは到底思えない香味に箸が止まりません。

 添えられた日本酒はよく冷えていて、華やかな香りが広がります。

 続いてホタテ、野菜と食べ進めます。

 地獄蒸しに舌鼓を打ちつつ日本酒をいただき、酔いが回ってきました。

 周囲の喧騒が遠のくような感覚の中、祭囃子のような「どんどんどん」という太鼓の音が聞こえます。

 しばらく地獄蒸しと冷酒を楽しんでいると、心地よい酩酊感の中であることをひらめきます。

 ぬるくなってしまった冷酒を、例の蒸し器で熱燗にしたら美味しいのでは……?

 さっそく炊事場に向かい、蒸し日本酒を作ります。
 一口飲むと思った通り。地獄蒸しはお酒にも素晴らしい香りを与え、うま味を引き出してくれました。

 あまりの美味しさに早いペースで飲み進めてしまい、ふらつきながら部屋に戻るとすぐに眠りにつきます。

 その夜、空腹感で夜中に目が覚めました。
 地獄蒸しを堪能したはずなのに。

 炊事場に行けば何か食べるものがあるかもしれません。

 途中の廊下には見覚えのない十字路がいくつもありました。
 右に曲がり、左に曲がりを繰り返して、ようやく炊事場につくと蒸し器を囲んで話をしていた4人組の1人が入っていくのが見えました。

 追うように炊事場に入りますが、そこには誰もおらず、かすかに甲高い笛の音と太鼓のような音が聞こえます。

 音のする方に進むとふたが開いたかまどから、もうもうと蒸気が上がっています。

 かまどからは香ばし匂い。身体は意志に反して、かまどの方へ進んでいきます。
 祭囃子のような音は次第に大きくなります。

 このかまどの中には……穴の底には何があるのか……

 唐突に、風が凪いだように静かになったかと思うと「ひたり」と、かまどから音がしました。

 かまどの中を這い上るような音は、どんどん近づいてきます。
 目を背けたい。それでも身体はかまどを覗き込むように身を乗り出してしまいます。

 こつん、しゃらら。

 後ろで、鈴の音が聞こえました。鈴が入った鞠が、転がったような音です。

 ハッとして振り返ると、つぶれた桃が落ちています。

 ひたり。

 かまどからする音に急いでかまどのふたを閉じ、炊事場から逃げるように立ち去りました。

 次の日、宿を出ると4人組の男のうちの3人が主人に詰め寄っています。

 彼らが言うには朝起きると、連れのうちの1人が荷物もすべておいて、忽然と姿を消していたとのことでした。
 余計なことに首を突っ込みたくない。そう思い、何も言わずに鍵を受付において冥土荘を後にしました。

 宿の主人は、かまどのことを知っていたのでしょうか。
 かまどから這い上がる何かのこと。
 見てはいけないはずだった何かのこと。

 主人は知っていたのでしょう。
 3人になった男たちに詰め寄られながら、その口は「にたり」と奇妙に歪んでいたのですから。

 こうして奇妙な食卓は幕を閉じます。怪奇小説のような独特の空気感と、美味しそうな料理の表現が見どころの味わい深い動画でした。

 語りの間や音の演出も怪しい雰囲気をひきたてており、とても引き込まれました。興味がわいた方はぜひ下記のリンクから元動画をご覧ください。

 視聴者のコメント

だいじょうぶ?食ったら帰れなくならない?
この雰囲気はこのシリーズでしか味わえないよなあ
あの世の食べ物を食べると現世に帰れなくなるからね
手入れの行き届いた古い建物は新築では出せない風情がある
いいなー温泉卵...温泉街で食べる温泉卵は、トクベツ美味しく感じる


▼動画はこちらから視聴できます▼

『結月ゆかりの奇妙な食卓『黄泉比良坂冥土荘の地獄蒸し』』
https://www.nicovideo.jp/watch/sm44039101

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