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可不の可憐さが映えるエレクトロチューン『グレてるの』picco×中村さんそコラボで引き出す“かわいい”と“病み”

 今回は、piccoさんが2025年11月30日に投稿した、中村さんそさんとのコラボレーション曲「グレてるの」を紹介する。

 自身の音楽を「Hyper kawaii Music」と称し、ボカクラなどのDJイベントにも数多く出演するトラックメイカー/ボカロPのpiccoさんと、可愛い×ポップなサウンドを手がけるシンガーソングライター・中村さんそさん。そんな二人の作風に共通する“可愛い”が引き出されつつも、ところどころに“病み”が顔を出すバランス感覚が、コラボレーションならではの産物だ。

文/小町 碧音(こまち みお)


 1番Aメロの<半年romって出た答えはなんか違うんだな><将来性もないし一体君のどこに惹かれてたんだろうね>というフレーズから、同じ糸で結ばれていたはずの二人の関係に徐々にズレが生じてきたことがさっそく伝わってくる。

 フックとして効いているのは、<目を閉じると砂みたいにさらさら>から<床中に散らばる 君とあたしの抜け殻って終わりだな>までが続くBメロだ。人工歌唱ソフトウェア・可不の声色とFXが持つ透明感と歌詞が強く結びつき、星の砂や、弾けた後は音もなく抜けていくだけの炭酸のイメージが自然と浮かび上がってくる展開に。この感覚的でふわふわとした表現こそが、楽曲全体のドリーミーで可愛い空気感を増幅させるポイントになっている。

 全体的にはエレクトロサウンドに包まれたゆめかわな雰囲気をまとっているが、サビに突入した瞬間、病みがはっきりと覗くのも大きなハイライト。例えば、タイトルにもなっているサビの〈グレてるの〉という言葉や、<落ちてるパンは拾って食べない 君だけが不幸になりますように>というフレーズに象徴されるように、可愛さの奥に潜む歪んだ感情がストレートに表出する。

 そうした病みの要素が際立つのは、可不という可憐な歌声とのコントラストがあってこそだろう。<同期中>という言葉が繰り返されるサビの締めくくりも、可愛いと、グレてるという両極の世界観を強くアピールしているように思えてくる。

 楽曲の世界観を視覚的に補強しているのが、白・紫・ピンクを基調とした、イラストレーター・ナコによるゆめかわと病みの要素を押さえたイラストの数々や、ポップな字幕フォントの存在だ。可不だからこそ、メロディーや歌詞に浮かび上がる“可愛い”と“病み”が無理なく共存できる。そのことを示したゆめかわなエレクトロチューンだといえる。

■楽曲配信情報

グレてるの DL先こちら

■information

「The VOCALOID Collection」 公式サイト

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