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ニコニコ動画における2024年ボカロ曲年間ランキングを発表!『オーバーライド』『メズマライザー』『ラビットホール』…今年の流行曲とその理由を総ざらい

 まもなく2024年も終盤。今年1年の様々な出来事を振り返る機会も増え、音楽シーンでも2024年の総決算があちこちで行われている。
 そんな中、今回様々なジャンルの音楽のランキングがまとめられるビルボードにて、ニコニコ動画におけるVOCALOID楽曲の年間ランキングTOP20が発表された。

 そのラインナップとあわせて、なぜこれらの楽曲が大きな支持を得たのか。
 今年ボカロシーンで起こった様々なトピックスを振り返りつつ、2024年のシーン動向を改めて考察してみよう。

文/曽我美なつめ

■ビルボード 2024年 年間ニコニコ VOCALOID SONGS TOP10

■1位 オーバーライド – 重音テトSV[吉田夜世]

■2位 メズマライザー / 初音ミク・重音テトSV

■3位 混沌ブギ / jon-YAKITORY, 初音ミク

■4位 人マニア – 重音テト

■5位 イガク – 重音テト

■6位 DECO*27 – ラビットホール feat. 初音ミク

■7位 テレキャスタービーボーイ(long ver.) / すりぃ feat.鏡音レン

■8位 好きな惣菜発表ドラゴン / 重音テト

■9位 きゅうくらりん / いよわ feat.可不

■10位 春嵐 / 初音ミク

■11位~20位

 11位 マーシャル・マキシマイザー / 柊マグネタイト feat.可不
 12位 のだ / ずんだもん・初音ミク・重音テト
 13位 wowaka『アンノウン・マザーグース』feat. 初音ミク
 14位 フォニイ – kafu [オリジナル]
 15位 神っぽいな / 初音ミク
 16位 ロウワー / Flower
 17位 ザムザ / てにをは feat.初音ミク
 18位 【GUMI】酔いどれ知らず【Kanaria】
 19位 稲葉曇『ラグトレイン』Vo. 歌愛ユキ
 20位 ラヴィ(Lavie) / すりぃ feat.鏡音レン

※ランキングチャートは動画の再生数や、コメント数、いいね数、二次創作動画の作成数などのデータに、Billboardが独自開発した係数を乗じて生成しています。

■ニコニコ発ボカロ曲2024年年間ランキングを発表!なぜ大きな支持を得たのかを考察

 年間ランキングTOP20の内、上位10曲の内訳を見てみると、「テレキャスタービーボーイ」「きゅうくらりん」「春嵐」の根強い人気の一方で、2024年に入ってからの投稿曲は「メズマライザー」「イガク」の2曲のみ。
 また「オーバーライド」「混沌ブギ」「人マニア」「ラビットホール」「好きな惣菜発表ドラゴン」に関しては、昨年2023年の投稿作となる。

 昨年のビルボード年間チャートTOP10と比較すると、やはり注目したいのは当年&前年投稿曲が大きく増加した点だ(2023年は「強風オールバック」「ラヴィ」「酔いどれ知らず」「新人類」の4曲のみ)。
 過去の人気曲のみならず近年投稿曲への支持も年々如実に大きくなっており、改めてボカロシーンがリアルタイムに盛り上がっていることが読み取れる。

 その上で、上記に示した直近2年の曲についてより詳しく見てみよう。
 まず2023年投稿の5曲は、投稿直後でなく発表から数ヶ月~半年ののちに曲がじわじわ世間へ広がったことも、ボカロに詳しいリスナーならすでに周知の通り。
 バズの震源地となったのは、TikTokやYouTubeなどにおける、「歌ってみた」をはじめとした二次創作動画の数々だ。

 近年は若年層を中心に、歌い手やVTuberといったネットタレントへの支持も高い。特に大勢のファンを持つ人気クリエイターの「歌ってみた」動画などは、原曲へリスナーを流入させたり、彼らに追随するべく該当曲の二次創作動画の投稿ブームを生み出すケースも多々ある。
 「混沌ブギ」「人マニア」に関しては、特に上記の流れが顕著だったと言うべきか。

 重ねて当該チャート1位の「オーバーライド」と「好きな惣菜発表ドラゴン」は、二次創作の中でも「歌ってみた」などとはまた少し異なる形でのムーブメントが起こっていた印象だ。
 楽曲のフォーマットをそのまま引用して、そこに他コンテンツの要素を絡める。いわばMAD動画やオマージュ動画を中心とした形式が、曲人気の火付け役ともなっている。

 当該のような作品はそもそも、昔からニコニコ動画でも根強い人気を誇る文化だった。
 逆に言えば、このような動画は現在数あるSNSや動画サイトの中でも、依然としてニコニコ動画内においての支持率や作品投稿の傾向が特に高い。
 その風潮が、おそらく「オーバーライド」のチャート首位を後押ししたのだろう。

 一方似た形でブームを起こした「好きな惣菜発表ドラゴン」は、そのミニマルな作風も相まって、Xなど本来動画投稿を主流としないSNSでも楽曲や映像が大きく流行。
 ただしその手軽さゆえに、本格的な動画投稿サイトまではそのムーブメントを楽しむユーザーが落ちてこなかった、というところか。

 また「ラビットホール」に関しては曲と併せて、映像内の初音ミクのキャラクターデザインも幅広い層に人気を博していた。
 バニーガール衣装のかわいさはもちろん、中にはややセンシティブ寄りなイラストも時折散見され、それもまた大勢の興味を惹きつけた要因のひとつ。
 またイラストきっかけのバズゆえか、言語の壁を越えて海外からも注目を集めた点もポイントだろう。

 上記のように、様々な二次創作を契機としてのバズが、ここ数年のヒット曲を生み出すひとつの確立された道筋ともなりつつある。
 それを踏まえてチャートインした今年の投稿曲を見てみると、こちらも両曲とも様々な二次創作から人気を拡大した曲と言える。

 特に年間チャート2位を獲得した「メズマライザー」は「ラビットホール」同様、イラストや映像を契機に国内のみならず海外までも人気の届く楽曲に。
 そのためニコニコ動画より海外ユーザー母数の多いYouTubeでは、本曲が1位の「オーバーライド」を凌ぎ、一足早く動画が1億回再生を突破。
 上記はYouTubeに投稿されたボカロ曲としては6曲目の、そして投稿1年以内の楽曲としては史上初の記録ともなった。

 一方5位の「イガク」については、他曲と比べやや異例なケースと言ってもよい。
 今作も確かに、数多の二次創作動画にその人気を支えられてはいる。
 しかしそれ以上にこの曲には、2023年の「人マニア」一大ヒットを経た原口沙輔が、ボカロシーンの大規模なイベント≒The VOCALOID Collectionに初めて大々的に参加した作品だった、という色濃い背景がある。

 そのため元々事前から非常に高い注目度を誇っていたことに加え、「人マニア」のセルフ引用的な要素が満載だった点も、爆発的な再生数に繋がったのだろう。
 事実、楽曲は投稿から1日も経たないうちに異例の速度で10万再生を突破。
 投稿24時間以内に殿堂入りを果たす楽曲が現れたのは、実に3年8ヶ月ぶりのことだ。

 その後も投稿から1ヶ月弱で100万再生を突破。これはUTAUオリジナル曲で歴代最速のミリオン達成となる。
 投稿から2ヶ月半後の今年5月にはダブルミリオンを達成。200万再生に到達した所要時間は、歴代ボカロ曲の中でも3位の短さだった。
 そんな圧倒的な初速が、今回のランクインにも繋がっているのだろう。

 ニコニコ動画内におけるVOCALOID曲の人気指標のひとつとなる、Billboard JAPAN ニコニコ VOCALOID SONGS
 こうして年間チャート結果を見ると、やはり近年のボカロ曲人気には、その曲を元にした二次創作の流行が大きな要素となっている。

 ファンアートや歌ってみた、踊ってみた、演奏してみた、その他多彩な動画制作など。
 クリエイターたちがいかに、様々な二次創作をしたくなる曲か。
 それこそが直近のバズ創出の鍵であると同時に、本家から二次創作への波及には多少時間がかかるため、本格的なブームまでにタイムラグがある点も留意すべき点となる。

 また同時にシーンにおいて、やはりThe VOCALOID Collectionというイベントの影響度は絶大だ。
 特に1年間を通して見た場合、当然時間をかけた方が曲の知名度は浸透していく。
 そのため年の序盤~上半期の動きが年間動向への影響も大きく、その意味では来年2月開催の「The VOCALOID Collection 2025Winter」は、2025年を制したいボカロPにとって特に注力すべきイベントともなるに違いない。

 インターネットカルチャーの中で育まれた様々なコンテンツが大衆化する中、今やVOCALOIDも自シーンの枠組みを超え、多彩な分野・カルチャーへと裾野を広げる音楽ともなる。
 来年2025年は、一体どんなボカロ曲がブームを巻き起こすのか。その動向が今からとても楽しみだ。

■information

【Billboard JAPAN ニコニコ VOCALOID SONGS of the Year 2024】トップ20 詳細はこちら

「The VOCALOID Collection」 公式サイト

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