―ペルリニエ テーマソング「マギアート」MV公開記念 #コンパス×煮ル果実×革蝉対談! テーマソング&MV作成秘話や楽曲に込めた想いを語る
好きなものを“好き”でい続けることの大切さ
――煮ル果実さんも革蝉さんも多方面でクリエイティブに活動されていますが、お二人の創作論のようなところも聞かせていただけるとありがたいです。キャラクターを生み出す、創り出す際に大事にされていることはありますか?
革蝉:
キャラを作ろうと思って作ってないから、難しいですね。
私がキャラを生み出すときって、気付いたらそこにいるみたいな感覚なんですよ。
若干他人のような俯瞰的な感覚でキャラクターを遠くにいるものとして見ていて。
その輪郭を少しずつ埋めるように考えて、そのままお話が出来上がっていくんです。
人間って対人関係でわからないところが多くても他人を認知していたりすると思うので、私もこのキャラのことをそこまで知らないな、でもこういう人物だな、みたいに輪郭を捉えていくというか。
それで、他人から見えないところは何だろうというところを深掘りしながら、他人には見せない設定を作っていくことが多いです。
煮ル:
キャラクターの産みの親というよりは、友人、知人くらいの距離感なんですね。
革蝉:
でも自分が描くキャラはみんな性格に難があるから、友達にはなりたくないなーって思いながら描いています(笑)。
テレビで見るタレントも画面越しの距離感だから見ていて楽しいんだろうなと、そんな感覚ですね。
キャラとの距離感を大事にしているということなのかもしれません。
煮ル:
説得力あるたとえですね。
僕は絵としてキャラを作ることはないので、小説でのお話になりますが、実は僕もあまりそういうことを意識していません。
自分の中に、怒る自分、喜ぶ自分、苦しむ自分、悲しむ自分、いろいろな自分が存在していて、それらが上手い分配率で抽出されていろいろなキャラが出来上がっていくと思っていて。
それが出来たら、そのキャラが持つ人生の一つの瞬間を切り取って物語を描くという感覚で作品を作っています。
だからどんなキャラを作るかというより、生まれたキャラが持つ一つの感情の区切り、納得とか諦めのような機会を必ず設けることで、物語を帰却させることは大事にしているといった感じですね。
革蝉:
キャラの人生の一瞬を煮ル果実さんが楽曲や小説として切り取っているというか、落とし込んでいるような感じですか?
それがもしかしたら青春真っただ中かもしれないし、死期かもしれないし、みたいな。
煮ル:
そうそう。死期かもしれないし、またそこから続いていく話なのかもしれない。
それはわからないけれど、彼ら/彼女らの切り取るべき部分を作りたいという感覚があるのかもしれません。
――お二人とも創作活動への向きあい方が違って非常に興味深いです。ちなみに、これまでの創作活動の中で思い出深かったことはありますか?
煮ル:
僕は先ほども触れたのですが、最初から“悪いところ”を持っているキャラをすごく好きになってしまいます。
自分が産んだキャラでも、他人が産んだキャラでも。
自分で作った経験が少ないと言いましたが、その中で思い出に残っているのが「ヘブンドープ」という楽曲で、そのMVに登場するジュプタというキャラがかなり印象的な存在でした。
ただただ利己的で最悪で、絶対的な恐怖の存在をイメージして歌詞も作ったのですが、書き進めるうちに誰かにとっての救世主のように見えたり、悪魔のように映ったりする存在になっていって。
MVになると上位存在なのにちょっと人間味も見えたりして、どんどん印象が変わっていくのが不思議で、深みのあるキャラになったと思ったと同時に好きになってしまいました。革蝉さんは何かあります?
革蝉:
思い入れが深いというと、最初に少しニコニコ動画の話題で触れましたが、初めて作ったアニメーションでしょうか。
個人制作のものになってしまうのですが「目がないネコの視界」という作品です。2018年にこのアニメをTwitter(現:X)に載せたことをきっかけにお仕事をいただけるようになって。ずっと真夜中でいいのに。さんやsasakure.UKさんからお仕事を同時にいただいたのを覚えています。
作家・革蝉としての大切な転換点になった、思い入れのある作品ですね。
「目がないネコの視界」
— 革蝉 (@aozukikawasemi) September 6, 2025
数年前はじめて作ったアニメーション作品 pic.twitter.com/QjWBwEXq3w
――いち作家としてお互いに気になっていたことはありますか? ぜひお互いにご質問しあっていただければと思います。
煮ル:
(食い気味に)革蝉さんってどうやって色を決めているんですか?
タッチも独特だと思うんですが、色づかいがめちゃめちゃ特徴的だと感じるんですよね。
ビビッドでカラフルにするというより、ここの色はこうでこうなる、という配色の決め方が繊細で良いなといつも思っていて。
革蝉:
ありがとうございます(笑)。
仰っていただいた形に近いと言いますか、ラフの段階でここにこういう色があるべき、みたいな感じで決めてしまいますね。
本当に感覚でしかなくて、計算があるわけではないのですが。今に至るまでにすごくいろいろなことを考えてきたので、感覚的に出来るようにだいぶ研ぎ澄まされたんだと思います。
例えばキャラの立ち方。重心によってパっと見たときのキャラの性格(の印象)が変わることがあるので、デザインする際に体の重さを意識しながら、ここに色を置けば体重の比率がこの辺に向いているように見えるな、というようなことを無意識でやっているのかなと。
煮ル:
なるほど、プロだ……。
自分が絵に色をつけて描くことをあまりやらない、鉛筆や白黒だけで描くのが多いので、上手い人たちはどうやってそこに至るんだろうというのがすごく気になっていたのでタメになりました。
革蝉:
逆に聞いて良いのであれば、煮ル果実さんがどう音楽を作っているのか聞いてみたくて。
頭の中に最初から最後まで音楽の概念のようなものがあって、それを紡ぎ出しているのか。
それとも蓄積、インプットしたものを組みあわせてアウトプットするのか。どんな感じなんでしょうか?
自分がずっと絵しか描いていないような人間なので、音楽を作られる方の頭の中ってどうなっているんだろうというのは気になっていて。
多分煮ル果実さんも同じことを考えて質問してくださったと思うのですが。
煮ル:
その通りです。ご質問いただいた内容については、どっちもどっちな感じですね。
最初から決まったものが出せることもあれば、最初書こうと思っていたことに少しずつ要素が追加されていったり、逆に削られて別のモノに変異したりすることはよくあるので、曲によってどちらもあるという感じです。
変わってしまったものが変わる前のものからちゃんと面白くなっているか、良くなっているのかはかなり意識しますね。
それで辛くなってくることもあるので。
革蝉:
その場合良くなっていればOK、という感じでしょうか?
煮ル:
そうですね。まずタイトルから決めるタイプなので、枠組みを決めた中で精いっぱい暴れる、みたいなことをいつもしています。
その結果より良いものが出来たならOKで。
他の方とは違うやり方かもしれませんね。
革蝉:
やっぱり音楽を作れる方ってすごいです……。
煮ル:
お互い様じゃないですか(笑)。
それでいうと、革蝉さんって絵を描くのにどれくらい時間がかかるんですか?
革蝉:
多分かなり早い方だと思います。でも今は、若干多忙で……死にかけです。
毎日何枚描いても何枚描いても仕事が終わらない、すごく進んでいるはずなのに……って辛い時期です(苦笑)。
革蝉さんもっと製作期間貰った方が良いよって周りからもよく言われます。
後始末みたいなところは考えないタイプの人間なので……。
でも、このキャラのこのデザイン、ここが描きたいから頑張ろうみたいな感じで、設定したゴール地点に向かって一直線でもあるので、楽しいです。
この表情が見たいからたくさん描いてやろう、みたいな楽しみ方をしています。
煮ル:
自分の癖に真っ直ぐっていうことですね。
最後に困らせたい、苦しませたいからそれまでに楽しいところをいっぱい描く、みたいな。
なるほど、続けるための秘訣ですね。
革蝉:
具体的(笑)。
煮ル:
自分が優位に立ってると思っているキャラの顔が崩れるところを見たいですよね。
革蝉:
あ、それすごく分かります。
悪役として気持ち良い負け方というか、最後までそのキャラが持っているプライドにすがってほしい、みたいな。
最後の最後に訪れるそのシーンを描くまで頑張ろう、と思ってその過程もしっかり描いちゃいますね。
煮ル:
激しく同意します。
――作家の先輩としてお二人から、この記事を読んでいる未来のクリエイターに向けてアドバイスを頂けますか?
煮ル:
ありきたりなことかもしれませんが、まずは自分が夢中になって周りが見えなくなるくらい没頭できる好きなものを見つけてください。
最初はその理想の作品を真似しても良いので、とにかく作品を作ってみましょう。
権利を侵害してお金を儲けようというのは良くないけどそうではなく、あくまでも自分の創作の基礎を培うためです。
それを続けていたら、自分が思う大事なものやワクワクするものに気づけるというか、浮彫りになっていくと思います。
自分が出来る範囲のことから、自分だけの何かをたくさん作ってみてください。
革蝉:
煮ル果実さんと似たような内容になりますが、自分が夢中になれるもの、好きなものがあれば、それをゴール地点に据えれば無我夢中で頑張れちゃいます。
自分が好きなものを出来るだけ捨てずに制作を続けて、自分の好きを見てくれる人に見つけてもらえれば、夢が叶うこともあります。
必ずとは言いませんが、実際私はこうして煮ル果実さんにお仕事を頂けています。
自分が好きなものに素直に取り組んでいただくのが一番良いと思いますので、ぜひ突き進んでください。
煮ル:
自分とは違うものに触れるワクワク感、みたいなものが創作においてすごく大事だなと思っていて。
作品にハマるきっかけってそういうところにあるんじゃないかと。
自分も最近あまりそれを意識出来ていなかったような感覚があったんですが、こうして革蝉さんとお話したおかげで意識を変えていこうと感じています。
革蝉:
ありがとうございます(笑)。
止まらない成長、楽しみにしています。
――最後に、この対談を読んでくださった#コンパスユーザーや、お二人のファンに向けてメッセージをお願いできますか。
革蝉:
―ペルリニエちゃんの世界観と煮ル果実さんのエッセンスを混ぜながら作らせていただいたミュージックビデオを、ぜひゲームと一緒に楽しんでいただけると幸いです。
煮ル:
―ペルリニエちゃんをたくさん使ってください!
音楽も一緒に聞いてくださると嬉しいです、よろしくお願いします。

作詞・作曲・編曲家。主にVOCALOID楽曲のコンポーザーとして活動。
ロックミュージックをベースに多種多様なジャンルを縦横無尽に行き来し、謎が散りばめられた中毒性が高い映像との相乗効果で、独特な世界観の作品を手掛ける。
ずっと真夜中でいいのに。ナナヲアカリ、Sou、Ado等のメジャーアーティストにも精力的に編曲参加・楽曲提供を行っている。

イラストレーター。 キャラクターデザイン、アーティストのミュージックビデオ制作などを中心に活動している。
手描き感を残した線とやわらかな色合いが温かみを感じさせ、鮮やかな色遣いと繊細なタッチが特徴。メッセージ性を感じる世界観が魅力。ずっと真夜中でいいのに。、sasakure. UK等の楽曲MVのイラスト・映像を手掛ける。