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『シン・ゴジラ』『君の名は。』『この世界の片隅に』の共通点は“東日本大震災”に対するアンサー? 漫画家が隠されたメッセージを読み解く

 映画『君の名は。』の興行収入が200億円を突破し、歴代のアニメ映画ランキングの3位にランクインというニュースが、今年を象徴する出来事の一つとして挙げられる。

 他にもエヴァシリーズでおなじみの庵野秀明が総監督を努めた『シン・ゴジラ』や、地上波での大々的なプロモーションが無かったにもかかわらず各著名人が大絶賛し、口コミで爆発的なヒットを飛ばした、こうの史代原作の『この世界の片隅に』も話題となった。

 実は、この3作品には共通点があった!? 12月14日放送の『山田玲司のニコ論壇時評』内で漫画家・山田玲司氏が分析した。


3.11に向き合った映画が3つ同じ年に公開されている

山田:
 岡田(斗司夫)さん曰く、今年は大豊作だし、ゴールドラッシュって言われているけど、この3つは共通点が1個あって、『5年経った今、3.11をどう捉えるか』っていうのをアーティスト側からの回答として出した作品なんだ。

 3.11に向き合った映画が3つ同じ年に公開されている、これがなかなか面白いことになったと思う。震災を総括してアーティスト側が「俺達はそろそろあのころに関して考えられるようになったんじゃないか?」「受け止められるようになったんじゃないか?」って。2016年ってそういう年だったんだね。

『シン・ゴジラ』『君の名は。』『この世界の片隅に』を分析

 『シン・ゴジラ』はどうしたかって言うと、ゴジラ自体が原発メタファーでデブリのメタファーになっているんだよね。解決方法は、庵野世代らしく楽観的。「若手エリート頑張れ」なんだよ。上の世代は一瞬でいなくなる。エヴァンゲリオンで戦艦を踏み潰すアスカだよね。上の世代を踏みにじるんだよ。「踏みにじるんだけど利用もするんだよ」って言うのが庵野さん的な考え方で、最終的にはデブリは原発を冷やしたみたいな感じで消えるよねっていう希望的な観測で終わっているんだけど「そうかな?」 みたいなところで、終わっているところが実に庵野さん的な感じがするのが『シン・ゴジラ』。

 『君の名は。』のほうが切ないけど、実はこれどういうことを言っているかっていうと、「なかったらよかったね」っていう話なんだよ。なかったらいいことにする話なんだよ。ずっと信じていたことがあって、ダメかもしれないけど、毎日泣きながら起きるくらいダメかもしれないと思ったんだけど、ダメじゃないよっていうことを言い切ることによって、深海にいた誠がね(笑)。
 あいつは本来、深海で誠を語っているはずだったんだけど、水面に上がってきちゃった。そしたら凄いことが起こっちゃった。

 最後『この世界の片隅に』の、こうの史代さんはどうしたかって言うと「なかったことにはならないんじゃ」「夢みたいなことにはならないんじゃ」っていうのを一発カマすわけですよ。「これがこの国の正体かね」っていう。『シン・ゴジラ』は、まだこの国を信じている。この両方の映画をすずさんは否定している。そこで、すずさんはどうするかっていうと「それでも生きるんじゃ」っていう。これを広島弁でやられるとたまんないでしょ(笑)。

 生き残った我々は、「それでも生きるんじゃ」と言われたら、どうすんのこれって言うね。

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