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アニメ『GODZILLA 怪獣惑星』は“シン・ゴジラ的な興奮”を求めるとがっかりする? 評論家が解説

ゴジラとアニゴジを古典落語にたとえると…

サンキュータツオ:
 僕なりの『ゴジラ』論を聞いて頂きたいんですけども。『ゴジラ』っていうのは、落語の『芝浜』【※】なんですよ。

※芝浜
古典落語の名作。酒ばかり飲んでいる駄目な夫が芝浜で大金の入っている財布を拾うことから物語が始まる。夫が最後につぶやく「よそう。また夢になるといけねぇ」が有名。

サンキュータツオ:
 『芝浜』というのは落語の名人が作った古典で、失われていく東京の景色が閉じ込められていて、歓迎され喜ばれたんですが、『ゴジラ』もそういうコンテンツだったと思うんですよ。いま『ゴジラ』をやるというのは、いま『芝浜』をやることと同じなんです。

 当時の肌感覚と同じ感覚を、現代に蘇らせたいわけです。無印『ゴジラ』の恐怖を現代に蘇らすのに、庵野さんは『シン・ゴジラ』で表現したわけです。そして、アニメでゴジラの強さや凄さをどう表現するかっていうので、今回の『GODZILLA 怪獣惑星』になったんじゃないかと。

 例えるなら、『シン・ゴジラ』が立川談志の『芝浜』だとしたら、アニゴジは『立川談笑』の芝浜なんです。立川談笑の『芝浜』は、酒に溺れた魚屋っていう設定がピンとこないから、覚せい剤中毒になったトラック運転手を主人公にした『シャブ浜』っていう、アレンジした現代の話になっているんです。

 それで今回のアニゴジっていうのは従来のゴジラを求めているんじゃなくて、「あの時代の肌感覚をアニメ的、SF的に料理したらどうなるか」っていう話なんです。だから別物なんですよ。アニメが好きな人、SFが好きな人に向けて作っていて、ゴジラが見たいっていう人向けとはちょっと違うんですよね。

国井:
 僕は、SF感という意味ではクリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』にニュアンスが一番近いと思いました。アニゴジも特撮ではないけど、SFとして非常に面白かったです。

藤津:
 作中でゴジラっていうのが必ず現れる文明のリセットボタンって言ってますよね。なんか大きい生態系の話になるんじゃないかな、というのが僕の想像ですね。だからあれだけ人類が滅びる段取りをしていますよね。ゴジラも登場するのが遅いですし。

サンキュータツオ:
 ゴジラは象徴でしかなくて、描きたいのは人間なんですよね。

藤津:
 全く知らない未来の世界でゴジラが現れて、このゴジラがなんなのかって説明しないといけないですよね。そこに時間をかけていて、おまけに人類側は宇宙人と共存してるっていうのも説明しないといけない。今回は序章だと思っていて、最終的に『風の谷のナウシカ』みたいな話になるんじゃないかと思いますね。

国井:
 最後の、あれを見ると、そう思いますよね。

藤津:
 ゴジラ倒して終わり、って話はどう考えたってならないですよね。

国井:
 ならないですよね。

藤津:
 そうすると、この宇宙の仕組みとどう付き合うか、って話にならざる負えないですよね。主人公が復讐心で動いてるのは分かりやすいからで、今後は変わるでしょうね。でないと、うまくいかないと思います。

スタッフ:
 聞いてて疑問に思ったんですが、どうして最初から3部作って言ってないんですかね。

藤津:
 単純に、数字を言ってしまうと2作目以上に響くからっていうことらしいですね。あと1本目を見た人しか2を見ないってことがあるんで、プロモーションとして数字を打たないやり方みたいですね。

スタッフ:
 コメントにもあるんですけど、ゴジラが主役じゃ無いならタイトルを変えたらって思うんですけども。

サンキュータツオ:
 いちおうGODZILLAは英語表記でタイトルは怪獣惑星ですよ。

藤津:
 タイトルを変えたらって話は、先ほどあった落語の話と同じで、ゴジラっていうキャラクターの持ってる象徴性を使ってるわけですよ。滅茶苦茶に強くて、怖くて、デカイやつという。そのキャラクターが、共通っていうところから企画がスタートしているので、名前変えるわけにいかないですよね。

 これが新怪獣だと難しいですよね。新怪獣でのプロットじゃなくて、ゴジラブランドを再生するために新しいことをやってるのでそこは変えられないんですよね。

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