『レディ・プレイヤー1』のライバルは『ポケモンGO』だった? 「映画というジャンルが負けてしまうかもしれない、というスピルバーグの恐怖心が作った映画」
4月29日放送の『岡田斗司夫ゼミ』にて、「ネタバレなしの映画採点」と銘打って、本編の内容をできる限り語ることなく、新作映画の紹介を行った岡田斗司夫氏。
4月20日に公開された映画『レディ・プレイヤー1』について、作品ではなく「監督を務めたスティーヴン・スピルバーグの視点を想像する」という形での解説を行いました。
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『レディ・プレイヤー1』は『ポケモンGO』への恐怖心によって作られた映画
岡田:
おそらく、この映画を通じて、スピルバーグが戦って勝とうとした相手は、他の映画じゃないんですよね。ポケモンGOなんですよ。
これは、ポケモンGOを超えるために、スピルバーグの「ポケモンGOに、映画というジャンル自体が負けてしまうかもしれない!」という恐怖心が作った映画だというふうに思ってください。
そもそも、スティーヴン・スピルバーグという監督は、おそらく「自分自身には個性というのが特にないから、映画の歴史を変えるような表現を作り出し続けないと、忘れられてしまうんじゃないか」という恐怖心を持っている監督なんですね。
90年代、CGを使いこなすことで復活したスピルバーグ
スピルバーグというのは、最初は低予算映画で才能を認められた人なんですよ。初のヒットは1975年の『ジョーズ』。これは“動物パニックモノの元祖”といわれた作品なんですね。
さらに、その2年後の1977年に『未知との遭遇』でメガヒットを飛ばして、1981年の“インディ・ジョーンズ”シリーズの第1作『レイダース 失われたアーク』、82年の『E・T』とメッチャ調子良かったんですよ。
これらの作品で、若くして映画の天才と言われたんですけども、実は、82年に公開された『レイダース 失われたアーク』の後、10年間は大ヒットがなかったんですよ。
もちろん、その10年間に、インディ・ジョーンズシリーズの続編を2本、作ったんですけど、とにかく評論家からはボロクソに言われました。
さらに、『カラー・パープル』でアカデミー賞を狙ったんですけども、評価は低いまま。他にも、『フック』という映画で、再びファンタジー路線の作品を作ったんですけど……この映画を褒めているのは、正直、俺くらいなんですよね(笑)。
なので、1990年代前半におけるスピルバーグはもはや“過去の人”という状態でした。しかし、1993年の『ジュラシック・パーク』で、CGを使いこなし、まさかの大復活を遂げます。
「世界で初めてCGによって描かれた生物を主役級に扱った映画」として、これがメガヒット。この成功がなければ、おそらく『スター・ウォーズ』のプリクエルシリーズも、『アバター』もなかったはずです。
さらには、そこから5年後の1998年に公開された『プライベート・ライアン』。この作品では、完全にCGを使いこなして、もう「あの日のあの事件、歴史上の特定の場所に行ける」というくらいの精度で、過去に本当にあった世界を再現することに成功しました。
スピルバーグ作品には空振りも多かった
けれども、過去の世界は再現できても、未来の世界はそうもいかなかったんですね。2002年に『マイノリティ・リポート』という、完全CGで未来社会を見せるという映画を作ったんですけども、これが大ハズレだったんですよ。
まあ、2005年に作った『宇宙戦争』では、“現実の世界”の中に火星人の円盤兵器が来て、それと戦うというのをやったら、これはまだヒットしたんですが、その後の2008年に、『インディ・ジョーンズ』シリーズの新作として、『クリスタル・スカルの王国』を作成。しかし、結果はダメでしたね。
2011年には、『タンタンの冒険』で、初の3Dアニメを作ったんですけど、これもやっぱり大失敗。そして、最近では2016年に『ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』という、久しぶりのファンタジーモノをやったんですけど、これまた大外しなんですよ。
スピルバーグって、「常に大ヒットしている監督」っていう印象があるんでけど、作品数が多いから大ヒット作品もあるだけで、実はかなりハズレも多い人なんですよね。
そして、さっきも言ったように、「新しい表現をしないと自分は生き残れない」と思っているので、『クリスタル・スカル』にしても、『タンタンの冒険』にしても『ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』にしても、すごく新しい試みをいっぱいやっているんですよ。
だけど、全部、空振りだったんです。『インディ・ジョーンズ』は、4作目でもうダメになったし、『タンタン』はシリーズ化に漕ぎ着けることすらできなかったんです。