平成のアイドル史を総ざらい! モー娘。ももクロ、AKB…アイドル冬の時代から現在に至るまでの30年を徹底的に解説【話者:久田将義・南波一海・吉田豪】
ベストテンがあった頃は、「普通の人が嫌でもアイドル好きになる時代だった」
久田:
そうすると、アイドルって結構深いですよね。僕の『ナックルズ』とかの編集長のときって、どっちかというとアイドルとか、見てたたく側だったんですけど、考えてみれば自分の子どもの頃って、やっぱフィンガー5【※】だったんですよね、アイドルが。そこから始まっちゃうんですけど。
※フィンガー5
日本の男女混合歌謡アイドルグループ。1973年に世志凡太氏がプロデュースした「個人授業」を発売すると、ミリオンセラーとなり一気に知名度が上がる。その後「恋のダイヤル6700」「学園天国」などをリリース、いずれもミリオンセラーとなった。
吉田:
だいぶ世代が違いますね、ボクとも。
一同:
(笑)
久田:
あんま変わんないだろ。
吉田:
いやいや。この微妙な年齢差でそんな違うんだ。
久田:
ピンク・レディー【※】……。
※ピンク・レディー
1970年代後半に活躍したデュオのアイドル。ミー(現:未唯mie)とケイ(現:増田恵子)の2人組で構成され、多くの楽曲の作詞を阿久悠氏、作曲を都倉俊一氏のコンビが手がけた。
(画像はピンク・レディーのペッパー警部 Amazonより)
吉田:
ピンク・レディー、キャンディーズは直撃してるんですが、フィンガー5ではないんですよ。
久田:
だから、もうフィンガー5も覚えてないぐらいの世代か。
吉田:
うん。ずうとるびぐらい【※】ですよ、かろうじて(笑)。
※ずうとるび
1974年から1982年の間に活動した男性アイドルグループ。日本テレビの番組「笑点」のコーナー「ちびっ子大喜利」にて、山田隆夫が座布団10枚を獲得したことがデビューのきっかけとなった。代表的なヒット作品には、『みかん色の恋』『恋があぶない』『初恋の絵日記』など。
(画像はずうとるびセカンド みかん色の恋 Amazonより)
久田:
ずうとるびか。ピンク・レディーで、『ザ・ベストテン』【※】があって、松田聖子とか小泉今日子ですよね、ちょっと上になって。
※ザ・ベストテン
1978年~1989年まで放送されたTBS製作の音楽番組。最高視聴率41.9%を記録。
吉田:
だから、普通の人が嫌でもアイドル好きになる時代だったんですよ、ボクらの頃は。テレビを見てれば、いろんなバラエティ番組でアイドルがみんな歌っていて。
久田:
そう。だから、どっちかっていうと僕、ノンフィクション系の人と親しいわけなんですけど、ジャーナリストの人とかと話すじゃないですか。青木理さんという人とか(アイドルを)、「ダサいじゃん」とか言うんだけど、でも絶対はまっていたでしょ、小学校のときはって思うんですよね。
吉田:
青木さんはアイドルに対して手厳しいんですよね。
久田:
手厳しいというか、もう……そうね。手厳しいどころじゃないよね。
一同 :
(笑)
吉田:
(コメント)「アイドルとプロレスに厳しい青木理」(笑)。ボクの好きなものに厳しいという(笑)。
久田:
「だってプロレスは八百長でしょ?」
吉田:
なんだろう。一言で言うと、それって一番頭の悪い感想なんですよ(笑)。プロレスはショーという前提で、そのうえで何が行われるかを見るものなので。アクシデントも起こるし、そんな単純なものじゃないんですよ。
久田:
「でも勝負決まっていんでしょう?」とか言うからさ。「八百長じゃん」つって(笑)。めんどくさいから言わないと思って。
吉田:
ものすごい雑な感想ですよ。
久田:
そうそう。僕も考え変わりましたよ。AKBとか見ているときに、ちょっとそんなに小さな女の子とかが応援しているから、ちょっと見方変えましたね。昔はたたく側だったと思うんですよね。ちょっと変わりました。
プロレスとアイドルは世間からなめられやすいジャンル!?
吉田:
よくボクが言うのが、「プロレスとアイドルは通じる部分がある」ってことなんですけど、どっちも世間からなめられやすいジャンルっていう。
久田:
そうですね、確かに。バカにされやすいというか。
吉田:
ベースが偏見。格闘技とかアーティストと比べて劣っているという前提で叩かれがちという。
南波:
しかも今、またそうなりそうな流れになっていますからね。
吉田:
再び今、冬の時代が訪れつつある状態です。
久田:
そうなんですか。
南波:
いや、これだからアイドルは、みたいな世論になりつつあるじゃないですか。「そんなんやめちまえ」みたいな流れになっているから。
久田:
オタをバカにする風潮みたいなのもあると思うんですが、今はそうなんですかね。AKBの公演とか行くと、結構、おじさんの人ばっかなんですよ、ファンがですけど。オタっていう人だと思うんですけど。「その年になってアイドル?」という、バカにした風潮ってあるんですかね。
歴史が20年あるハロプロはじっちゃん率が高い!?
吉田:
ただ、それを言い出したら、ハロプロのほうが圧倒的におじいちゃんは多いんですよ。
(画像は「ハロー! プロジェクト」オフィシャルサイトより)
南波:
(笑)
久田:
そうなんだ。
吉田:
白髪率の高さっていうのが。
久田:
白髪率(笑)?
南波:
もう歴史が20年とかになっているから。
吉田:
そうそう。ずっと追っていると、自然と白髪になったりはげたりするんですよ。じっちゃん率の高さは尋常じゃないんですよ。AKBとかの比じゃない。ハロー! はすごいんですよ。
南波:
しかも、辻希美、加護亜依【※】が復活とかになると、もうすごい壮大な物語ができているから。
※辻希美、加護亜依
2004年にハロー!プロジェクトを卒業した、辻希美と加護亜依の2人によって女性アイドルデュオ「W(ダブルユー)」が結成され、2007年に事実上解散となった。
(画像は恋のバカンス | W Amazonより)
吉田:
白髪の人たちが現場に泣きに来るんですよ。
一同:
(笑)
久田:
復活するんですね。(コメントを見て)じっちゃんって(笑)。
吉田:
そう。若い層もついているけど、ベテラン層も残っているから。「じっちゃん」って、工藤遥が言っていたんで。
久田:
そうなんだ。
吉田:
それからじっちゃんって呼び方をしているんですけど。それは行かなきゃってなりますよ、昔のメンバーが帰ってきたら。
南波:
なりますよね。歴史がいろいろあるから。
吉田:
AKBはあんまりそういう歴史を踏まえたことやってくれないですよね。
南波:
でも、確かにそうですね。やればいいのに。結構上がると思うんですよ。前田敦子さんとか。
吉田:
AKB10年隊みたいなとかね。
久田:
だから、本当の「神7」って、今みんな神7っていうじゃない?
吉田:
今、神7って言い方もないですもんね。
久田:
でも、一応言うのよ、ファンは。
吉田:
神感ないし(笑)。
久田:
(笑)。そうそう。指原さんがまだ19位ぐらいのときのが神7って言われているんだけど、そういうのやればいいかもしれませんよね。(「50代は若手だよ」というコメントを見て)50代若手なんだ。そうなんだ。
南波:
そうですね。それこそ、タワーレコードの嶺脇社長が……。真野恵里菜【※】さんのファン層というのが、飛び抜けて年齢が高くて。当時嶺脇さんも40半ばぐらいだったと思うんですけど、ファンのことマノフレっていうんですけど、「自分は全然マノフレエッグですよ」とか言っていて。
※真野恵里菜
2006年「ハロプロエッグ」の第2期メンバーになり、「2008 ハロー!プロジェクト新人公演 3月 〜キラメキの横浜〜」を最後に、ハロプロエッグの研修を修了。2009年『乙女の祈り』でメジャーデビュー。
(画像の乙女の祈り(初回生産限定盤A) | 真野恵里菜 Amazonより)
一同:
(笑)
南波:
40代じゃ全然エッグ扱いって。
吉田:
というような人と、ピンチケ的な若い層とは、それはもう考え方は全然違います。白髪組はアイドルとつながろうって発想がまずないですから。
南波:
見守る感じですもんね。お金出す人ですよね、多分ね。
吉田:
だから、昔のハロー! は、接触が極端になくて、よくネタにしていますけど、2ショット撮るのも大変だったわけですよ。ハロー! が提携しているクレジットカード【※】があって、それを300万円ぐらい使うと、2ショットが撮れるという。
※提携しているクレジットカード
Hello! Project ゴールドカード。スペシャル会員のサービスが存在し、クレジットカードを1,000円利用するごとに1ポイント貯まり、3000ポイント分使用すると2ショット写真と直筆サイン色紙を貰える。
久田:
300万円(笑)?
吉田:
そのためにひたすら打ち上げとかでどっか飲みに行ったときに白髪のオタが、「会計僕がまとめるんで!」みたいな感じでカードを使って、それでどんどん使って、300万円いったら2ショットを撮るみたいな。
南波:
やっと2ショット(笑)。
久田:
まじっすか。全然違うじゃん。
吉田:
だから、ある段階でハロー! のオタが地下とかに流れた理由というのは、「こんなに気軽に2ショットを撮れるんだ」ってことだったんですよ(笑)。
南波:
「1000円でいいんだ」って。
吉田:
「え? 安」という。あと、ハロー! には子どもがいっぱいいて、それでハロー! の子どもを追っかけた人が、地下にも子どもいっぱいいるって気づいて流出したとか、いろんなことがあったんですよ。
ただ、それぐらいしか選択肢がなかったから、みんなそこでひたすら使うしかなかったから。今、平和になりましたよ、いろんな選択肢があるんで。
南波:
(コメント)「握手するのはハワイまで」
吉田:
そうそう。みんなハワイに行っていた。
南波:
ファンクラブツアーね。
吉田:
基本握手会やらなかったけど、ハワイでは接触できるみたいな。そうするとハワイに行くしかなくなるけど(笑)。ものすごい商売していましたよ、当時のハロー! は(笑)。
久田:
本当だね。すごいね。
吉田:
でも、基本お金を払った本人は満足しているんで、全部それに尽きるんですよ。AKBの握手会商法とか、同じCD何枚も買うの異常だとか叩かれたりするけれど、でも本人が満足している限りは、勝手にやりゃいいじゃんって話なんですよ。
久田:
俺もそう思うけどね。
吉田:
全部そう。好きでやってて誰にも迷惑かけてないことに介入する必要ないんですよ。
久田:
例えば僕の友人のオタも、10万ぐらいはAKBのを買って、それを全く後悔してないんだよ、彼は。