福岡周辺の不吉すぎる事故物件5選――焼身、首吊り…自殺が連続発生する訳ありマンションを大島てるが解説
大手不動産会社に自殺を隠蔽された物件
大島てる:
福岡市には、事故物件界隈においてメジャーな物件がいくつかありまして、こちらは中央区の大濠公園の近くです。
こちらは南区でちょっと博多から南のほうに入ったところです。
爆発事故を起こした某不動産屋です。
松原タニシ:
え! 言ってもうて……。大丈夫なの?
大島てる:
悪いことをしたのでいいんです。爆発したのは札幌ですけれど、こちらは福岡です。もう5年ぐらい経っているんですけども、週刊誌の「FLASH」と朝日新聞がこの件をスクープしました。
発端は、この2つの物件で自殺があったんですよ。賃貸ですから、この件について次に借りて住む人に対して伝える告知義務が法的にあるわけです。ビジネス上の判断なので家賃を下げる必要はないんですが、自殺があったことについては、正直に言わなきゃいけないんです。けれども、それを言わなかったと。
特に大濠公園の近くの物件ですと、ある年の1月に自殺し、そこに4月から住む人が3月に契約しています。つまり自殺から2ヶ月の時点で告知していなかったんです。たとえば何十年も前の自殺だったら話が変わるかもしれませんけれども、2ヶ月前ですよ。しかもその記録もあるのに、告知していないことがバレて国土交通省にも怒られてしまうという事案が起きたんです。
これに関してはいくつも論点があります。たとえばYahoo! のトップニュースにこの件がニュースとして載ったわけですね。
そこで話題になったのは、「なんでいつかバレるような嘘をつくんだ?」ということでした。「鉄筋コンクリートの良さそうなマンションなので、正直に告知して家賃を安くすれば、喜んで契約するのではないか?」ということですね。
しかも上場している会社ですからね。すぐにバレるような嘘をついて、結局バレて役所にも怒られて世間的にもボロクソに叩かれて……何もいいことないがない。だったら、はじめから正直に告知して家賃を安くすれば誰かしら住むのでは? というコメントが多かったんです。
これはYahoo! ニュースだけでなく、Twitter上でもそういうふうにバズっていました。でも、これはまったく話が噛み合っていないんですよ。
タニシさんのような方は事故物件ですと言われて、家賃も下げてもらえれば喜んで住むでしょうけれども、貸す側である大家は何をしたくないかと言うと、家賃を下げたくないんですよ。
ビジネスですから、家賃を下げたくないわけです。家賃を下げたくない人に対して家賃を半額にすれば誰か住むでしょう? っていうのは、これはまったく噛み合わない議論なわけです。この人たちはお金が欲しいから家賃を下げたくなくて「そうだ、自殺がなかったことにしちゃえばいいや」というわけですね。
松原タニシ:
告知義務があるというのは知らないんですか?
大島てる:
告知をしたら「家賃を下げろ」と言われるわけです。事故物件と事故物件じゃないものを比べて、同じ家賃でも事故物件のほうがいいなんていう物好きはいないわけです。同じ家賃で事故物件のほうが人気があるわけないんですよ。
だから大家たちは、お金を稼ぎたいということであれば、当然「自殺はなかった」と言うしかないわけです。嘘をつくのはおまけなんですよ。嘘をつくのが趣味とか、息を吐くように嘘をつくということじゃないんです。そんな趣味があるわけじゃなく、本当は嘘をつきたくない。ただ、お金儲けという主目的のために嘘をつくしかない、という流れなんですね。
なのに世間の人は誤解して、「俺なんか家賃半額だったら喜んで住むのに」「なんですぐバレるような嘘をつくんだろう」と言うんですけども、そうではないということです。
よくある、マンションの中での自殺があって、そして告知義務違反でバレたという案件にすぎないんですけれども、やってしまったのが大手であり、それがスクープでバレたので、非常に印象的な具体例でした。
当然この自殺の当日にニュースで報じられたりとかは、ローカル局でも地元紙でも一切ありませんでした。有名人の自殺ではないですし、殺人事件でもないですからね。報道されているのだから入居時に自分で調べればわかったはず、ということもないわけです。教えてもらわなければ知りようがなかったので、実際に次に住んでいた人は自殺の件を知らなかったそうです。
内部告発をした社員が受けた仕打ちとは?
大島てる:
この事案には、他にも論点がいくつもあります。この件がなぜバレたかと言うと内部告発、簡単に言うとチクリですね。これは見方を変えれば、この不動産屋にも良心のある社員がいたということなんですよ。全員が腐っていたら誰も朝日新聞や「FLASH」にタレ込もうなんて思わないわけですから。
その人はどうやってチクろうと思ったというと、この会社は自殺があった場合は報告書を出す仕組みが出来上がっているんですね。小さな不動産屋でオヤジがひとりでやっているようなところだったら、自殺があったということを隠そうとしたら、報告書なんて作らないで黙っていればいいわけです。でも、大手の会社なので仕組みはあったんですよ。
それがちょっとずさんだったので、「すみません」って言えばいいのに、もうこうなったらなかったことで押し通すしかないとやっちゃったのがミスだったということなんですね。
結局それを良心のある社員さんが告発したと。上司に言っても取り合ってもらえないからメディアにタレ込むという形でバレたわけですから、私はこのままを叩くのは筋違いだと思います。
全員が腐っている会社だったらこうはならなかったでしょうし、表に出たのは良心のある社員がいたからです。自殺があった時は記録に残す仕組みもあったわけで、何もかもがずさんだったら、そんなことさえ残っていなかったでしょう。
たとえば記録にパスワードをかけたりして、限られた社員しかアクセスできないみたいなことをしていたら、やっぱりそれもバレなかったと思うんですよ。
ちゃんと記録を作って社員も目に触れるように、ある意味ちょっとゆるかったんですね。ゆるかったからこそ表に出たというところはちょっと皮肉かなというふうに思います。
そしてなぜこれが時間を食うぐらい長い話なのかというと後日談がありまして、会社の中で誰がメディア、マスコミにチクったんだと犯人探しがはじまったんですよ。
その社員は社宅に住んでいたんですよね。その社宅の郵便箱とかを上司が勝手に「一体誰が報道機関とやり取りをしてるんだ」と。たとえばタニシさんの郵便ポストを開けたら編集者と手紙のやり取りをしているのがわかるわけです。
今はメールが多いですけれど、少しは郵便物のやり取りをしているんじゃないだろうかということで、そういう勝手なことをしたんです。
なぜ勝手なことができるかと言うと社宅だからですよ。民間の家だったらオートロックだったりとかで、なかなかたどり着かないわけじゃないですか。でも社宅なので、その人達も鍵を持っているわけです。
それで結局誰がタレ込んだのかがわかったんですけれど、それと引き換えに上司がそういう悪さをしていることもバレちゃって、そこで「慰謝料を払え」とまた裁判沙汰になったんですよ。
もちろん会社が負けましたと。お金で解決ということでごめんなさいして、慰謝料を払うということなのでそのあとがグダグダなんですよね。なのでここで名前を挙げてボロクソに言ってもいいんじゃないのかなっていう。室内に入って郵便物を持ち出すというのは最低ですよ。
松原タニシ:
だから犯人探しをして、それがわかった理由として郵便物を開けていた、と。上司はバレるということをわかってなかったんですか。
大島てる:
会社ぐるみじゃないんですよね。そのアホな上司がいたという。
松原タニシ:
個人的な行動というか。
大島てる:
ここから先はあくまで私の憶測ですけれど、こういうことがあったら今後は何をするかというと、自殺があったという社内の文章を閲覧できる人を限定しちゃうと思うんですよ。
今までは関係ない部署の社員も見ることができた。たとえば報告書を机の上とかに雑に置いて、だからいろいろな人の目に触れてそのうちのひとりが報道機関にタレ込むということができたわけですけれど、それ以降はおそらくですけれど自殺報告書みたいなのを見ることができる人はこの人とこの人だけみたいな、そっちの方向に本気を出すんじゃないかと。
ある意味、今までのほうがゆるくて良かったんじゃないかなというふうに思いますね。札幌の爆発は関係ないです。このフランチャイズの会社ですから、直接はそんなに関係ないんですね。
松原タニシ:
なんで役割分担したほうが良くないんですか。
大島てる:
そうしたら良心ある人の目に触れる可能性が減っちゃいますから。
松原タニシ:
そうか。そこに会社ぐるみの人を入れてしまえばずっと隠蔽される。それってどうしたらええんやろな。
大島てる:
だいたいそうですよ。たとえばバイトテロってありますよね。Twitter上で騒ぎになりますけど、ああいうことがあると何をするかっていうと、「アルバイトの人は仕事中はスマホを使うな」みたいなことをしたり、あるいは「SNSにアップするな」みたいなそういう方向に締めつけるだけなので、根本的な解決とはまた別のところなんですよ。ということで、福岡といえばこのふたつを挙げざるをえないというところです。
松原タニシ:
なんかまったく……。
大島てる:
笑えない(笑)。
松原タニシ:
笑えないし、よく目にする耳にする社会問題点がすごい現れていますね。
悠遠かなた:
まさに隠蔽ですよね。機密文書みたいな、そういうようなことが目に触れなくなっちゃうっていうのは。借りるのは僕らですからね。
大島てる:
そうですね。
悠遠かなた:
全然降りてこなくなっちゃうと、従業員の方に聞かないと知らないよねってなっちゃう。それをされているのがてるさんだったり。
大島てる:
はい。もっと世の中には腐っているところがあって、それはそもそも記録に残さない、見なかったことにするというところなので、表に出たという時点でかなりまともな組織というふうに私は思っています。
やっぱりいじめとかもそうなんですけれど、いじめが最近増えていると統計上は出ちゃうんですけど、それはなぜかと言うと正直に報告するようになったからなんですよ。だからやっぱり正直に言うと、増えたっていうふうに一見見えちゃうので、そこを叩くのはおかしいですね。
松原タニシ:
なるほどね。
大島てる:
ちなみに「大島てる」サイトではURの事故物件が多いんですけれど、それなぜかと言うとURは正直に特別募集住宅という名のもと、タニシさんも住まれていたと思いますけれど、正直に公表すると。結果うちに情報が集まるということであって、別にURに住んでいる人が自殺しやすいとかそういうことではないんです。正直なところが数が多く見えて白い目で見られるという、その事態は避けたいなというふうに思っています。
松原タニシ:
すごい本質を突いているお話ですね。
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