スクショを撮っただけで有罪に!? ――違法DL規制に『魔法先生ネギま!』赤松健と山田太郎議員が提言「パブコメで国民が意識していることが官僚に伝わる」
漫画界の将来が危ぶまれる「リーチサイト」の存在
坂井:
そんな感じで振り返ってきたんですけれど、実はほとんどダウンロード違法化について今年の春は話されませんでした。実は著作権法改正は5、6個のパッケージになっている中で、その中でほとんど声が上がっていなかったリーチサイトについてもいくつか意見があったんです。正直、我々はあまりリーチサイトについては……。
赤松:
意見がありませんでしたね。
坂井:
パブコメではちょっと出したんですけれども。
山田:
著作権課が今回言ってきたことで「えぇ⁉」と思ったのが、「山田先生、リーチサイトについては前回何の議論もなかったので、そのまま原文通りで通させていただきたいと思っています」と言われちゃって、ちょっと待ってくださいと。前回はスクショという話になっちゃったから、それが目いっぱいの議論になっちゃったので正直リーチサイトの話までいきませんでしたと。
なので決してリーチサイトの何の問題もないわけじゃないと思いますよと。しっかりこれはこれで議論してもらいたいということで、当初案と当初のパブコメもリーチサイトについてやらないつもりだったのですが、やるということになりました。
坂井:
ちらっとですがパブコメに入っているんですけれども、それはやっぱり入れてもらったと。
赤松:
僕はあの時点で急に止めましたけれども、その後これが潰れちゃって、今度はちゃんとやろうということで権利者団体にも聞いていろいろな根回しも終わって、パブコメを文化庁が募集しているんですよね。これはみなさんはどういうふうに思っていますかという意見を求めているわけです。これはみなさんに出していただきたい(クリックで、文化庁の募集ページへ)。
これをやって有識者で会議をしてそれから決めていくというわけで、それで決まることでも全然なくて、これからまだ議論がはじまるということですよね。
山田:
だからきょうの番組の見どころはふたつあると思っていまして、リーチサイトに関してが今回の大ポイントで、たぶん赤松先生も含めてリーチサイトはなんとかしなきゃいけないという思いもある。AFEE側はリーチサイトの規制は非常に萎縮効果が高いと考えています。
私もそうなのですが、しっかりとリーチサイトにおける海賊版の研究はちゃんとやらないといけないですよ。それがきょうの大テーマです。2番目はパブコメの用紙を巡って、それぞれだったらどんなふうに書くかということで意見がわかりやすくなるのではないかというところが見どころですね。
赤松:
今回、静止画ダウンロード違法化とか、リーチサイト規制とかっていうふうに言っていますけれど、そもそも海賊版サイトの漫画村はストリーミングでブラウザで見ていたから、たぶん使った人もいるかもしれないですよね。でも一般の人がリーチサイトと言われてもわからないし、ダウンロード違法化とかサイバーロッカーとか、どこから何をダウンロードして、何がリーチなの? ということがわからないと思うんですよ。
私はその辺はすごく詳しいので、まずそれを解説して、なるほどこれがリーチサイトか、これくらいの規模なんだ、こうすればいいんだ、 こんな感じなんだというのをわかってから議論をすると、頭に入ってくるはず。意外と漫画家も知らないですよ。
坂井:
赤松さんはずっと「漫画家に見てほしい」とTwitterで言ってましたもんね。
漫画村などのリーチサイトを潰したい人が山ほどいるのに、潰れないのはなぜか。 | フジイユウジ::ドットネット https://t.co/7mSlrCv4oO ★とてもよくまとまっている記事。
— 赤松 健 (@KenAkamatsu) April 9, 2018
赤松:
漫画家はみんなリーチサイトって知らないですよ。まず海賊版サイトの基礎知識からいってみようかな。
海賊版サイトというのは単純アップロード型、昔の画像貼り付けみたいな。これは常にあまり問題視されないです。2番目、機械収集型。初期の漫画村は「ネット上に落ちている画像を機械で収集して保存しているから我々は保存していない」と。「保存元で非公開にされると見れなくなるので違法じゃないよ」みたいなことを昔言っていたんですね。
「ベトナムにサーバーがあるので、なんとかに加入していない」とかいろいろ主張が変わっているんですけれど、最後は「ダウンロードは違法じゃないんだ」みたいなふうにどんどん主張が変わっていったんですよね。これはダウンロード型とストリーミング型とどちらもあります。
3、ユーザー投稿型。漫画村より前にあったFreeBooksとかdropBooksの主張なんですけれど、建前は「自作の漫画コミック・雑誌・同人誌・小説を自由に投稿して、みんなで共有&読み放題にできるファイル投稿共有サイト」とサイト内に説明がありました。
これはもうないんですけれど、投稿して読めると。YouTube型ですよね。権利者が投稿する建て付けになっている。あとdropBooks。これは二次創作エロ同人ですね。
ダウンロードしまくれるところですが、もうないです。こういうものも権利者と言い張っている人たちがアップロードして、それをダウンロードするようになっています。それに関してはdropBooksもFreeBooksもプロバイダ責任制限法で、「知らなかったんだ」と。「権利者だと思って載せたんだ」と。「我々は賠償責任は負わないんだ」というのがすべての言い分なんですよ。
もちろんYouTubeも同じで、一部の規約には第三者の著作権により保護されたマテリアルや、その他の第三者が財産的権利を有するマテリアルが含まれないことに同意した上でじゃないとアップロードができないと。これがユーザー投稿型ですよね。
海外だとスキャンレター型。スキャンレーションというのはスキャンしてトラストレーションする。違法にスキャンしてそれを翻訳して漫画好きな奴らで楽しんでる海外のスキャンデータ型。これは結構漫画ファンが多くて、違法なことに変わりないのですが、わりと愛のある奴らですよね。
愛のない奴らはスキャンレーション型を勝手に集めたアグリゲイター型というのがあって、MangaFoxとかが向こうでは最大手ですけれども。あそこで一番読まれてるのが海外で一番人気のある漫画だと思って間違いない。『ワンパンマン』とかね。
坂井:
『ワンパンマン』なんですか。
赤松:
今はちょっとわからない。今、一番問題されてるのが6番のサイバーロッカー&リーチサイト。リーチは到達するとかの意味の“Reach”ではなくて“Leech”、ヒルですね。ヒルは血を吸うみたいな、おいしいところだけを吸い付いてチューチューしちゃうような意味ですね。
漫画村が潰れたじゃないですか、あの人も逮捕されちゃって。でも依然として多数の海賊版サイトがあるんです。500以上あるんですけれど月延べ6000万人がまだ利用しているんですよね。トップテンはちょっと映せませんけれども、ちょっと見てもらおうかな……。
上のNyaaはねtorrent(笑)。torrentっていうのは、みなさんわかる? 日本で一番使われているのはBitCometかな。torrentというのはP2Pですよ。そのtorrentファイルを集めているというところですね。
次にこれはリーチサイトなんですけれど、全体のかなり部分がtorrentとリーチサイトで占められている。要するに漫画村を潰したんだけれど、まだまだダウンロード型のサイトがあって、そのほとんどがリーチサイトということになっているんですよね。
torrentはIPが丸見えなので、あまり著作権ガチガチのだと使われないですよね。あと今回関係ないですけれども、スキャンレーション。これは私の作品で問題なんですよ。勝手にスキャンしてトランスレーション する人たちというのはファンが多いです。
こういうチームで作ってることが多いです。ファンがチームで作っていて前の作品も読み込んでいるので、結構愛のあるいい翻訳をしますね。こういうものは原盤がないと作れないじゃないですか。海賊版の原盤は誰が流出させるのか。Cleanerの前にraw providerという存在があるんですね。今は電子書籍ですけれども、昔はスキャナで自炊【※】していたんですよ。
※自炊
自ら所有する書籍や雑誌をイメージスキャナ等を使ってデジタルデータに変換すること。
坂井:
それはイメージが湧きやすいですよね。
赤松:
自炊して汚れたままのやつを上げる場所があって、そこからデータを持ってきて改造してきれいにしたり、翻訳したりする。これはたまに逮捕されるんですよね。誰がこういうものを提供しているかというと、出版印刷所から全国に配送する業者です。
業者の人が流出させちゃっていますよね。『別冊少年マガジン』は水曜日に発売なんですよ。でも前の週の金曜日には編集部にあります。なので土曜日には流出して海賊版もありますね。『少年ジャンプ』なんかも人気ですけれどね。
坂井:
僕らが中学校の頃は月曜日が発売日で日曜日にどこどこの書店に行ったら買えるというのが(笑)。
赤松:
早売りというやつですね。『少年ジャンプ』の早売りはすごく話題になっちゃうので、ほとんど絶滅しました。
坂井:
今はデータで出ちゃうということなんですね。
赤松:
そうです。さて話題のリーチサイトとサイバーロッカーですね。サイバーロッカーはロッカーと同じで、いろいろなデータを入れておくところです。そのURLをまとめたのがリーチサイトです。なぜこんなものが流行るのか。その仕組みを簡単に説明します。
最初のアップロード者は本が好きな人で、昔はいわゆる自炊をしていたんですよ。これをサイバーロッカーにアップロードします。みんなに読んでもらいたいと。やめろ! って感じですけれども(笑)。これを読者がタダで読めるからとダウンロードするんですね。
山田:
これは儲けるつもりはまったくないわけね?
赤松:
いや、これはちょっとあとでお話しますね。これを他のところにアップロードします。
なぜかというのはあとで説明しますね。これを他の人たちもどんどんダウンロードして、アップロードしていって全世界に広まると。
これは10月9日に発売された私の漫画ですけれど、10日には最初のアップロードがありました。
その日のうちに全世界のサイバーロッカーに大体広まってしまいました。これは痛いですよ。1ヶ月とか1年とか経ったならいいですけれど、翌日にアップロードされちゃうと相当痛いですよね。それに関して、あまりにもひどくて売れなくなっちゃうので、漫画家が出版社と一緒に削除要請をします。
すると削除はしてくれるんですよね。次にサイバーロッカーの基本的な構造を紹介します。何かをアップロードするとそれがダウンロードされるごとにお金がもらえる。これがサイバーロッカーの秘密です。
私のこの単行本だと250MBぐらいかな。これが1000ダウンロードされると5ドル入ります。すると最初のアップロード者はダウンロードされると1000回ごとに5ドルもらえるので、結構インセンティブがあると。すると黙っていないのが、ダウンロード&アップロード者という、このラーメンを食べている子ですけど、自分もインセンティブが欲しいですよ。
なのでダウンロードしたものを、そのまま他のサイバーロッカーにアップロードします。他のやつらもダウンロードしたら自分もお金がほしいから、みんなアップロードするんですよ。これが全世界に1日で広まってしまうという秘密です。
我々漫画家はサイバーロッカーに上げられて売れなくなっちゃう上に、我々の漫画を使って大儲けしている奴らが結構いるので2倍悔しいというのが、このサイバーロッカーの秘密ですね。
山田:
このサイバーロッカー社はどうやって儲けているの?
赤松:
プレミアムコースというのがあってすごく早くダウンロードができるんです。あとは広告収益とか、そういうものがあってお金はかなり儲かっている。サイバーロッカーの会社自体は「知らないよ」ということが言い張れるんですよね。
Winny【※】もそうですけれども、こういう仕組みというのは悪用する人たちが悪いんであって、仕組み自体は別にいいんですよ。WinnyだとかtorrentにしたってLinuxのディストリビューションなんかはtorrentで配布されたりもするんです。つまり技術はいいんですが悪用する人たちがいるということですよね。
※Winny
P2P技術を応用したファイル共有ソフト。開発者の元東京大学大学院情報理工学系研究科助手の金子勇氏は、著作権法違反(公衆送信権の侵害)を問われたが後に無罪となった。
きょうはこの本を実際のリーチサイトに行ってどんな具合だかを見ます。原作者はダウンロードしても問題ないです。
赤松:
じゃちょっと坂井さん、やってもらえます?
山田:
坂井さんがやったら違反になっちゃうじゃない。
赤松:
赤松健が坂井さんにダウンロードを許可します(笑)。これはリーチサイトで最も有名なところです。
『UQ HOLDER』の21巻は10月9日に出ています。アップロードは10月10日です。これは悔しいですよ。翌日に上げるなよ! って感じですよ。21巻はZippyshareとZeroshareとUploaded、あとはTakefileとか。RapidGatorなんかは昔からありますよね。一番最初にアップローダーに上げたものと全部同じものです。当然ですよね。右側のほうを見てください。RapidGatorおすすめ度星5とか(笑)。
出版社から苦情が来ると削除率はいいんです。削除率はYouTubeなんかは99%かな。サイバーロッカーも95%。サイバーロッカーは95%くらいは苦情が来たら消して「俺らは悪くないよ、消すよ」って言って消してくれるんです。サイトの安定とかリンクの生存率とかがここに書いてありますけれども、けしからんですよね。
リンクがいつまでも残っているところはみんなが使うというところですよね。ただリンクがすぐに消されるところはわりと誠意のあるところということになりますよね。全部同じ内容なので、じゃ坂井さん、Uploadedを。
坂井:
いいですか(笑)?
赤松:
押して(笑)。
さて、「Free Download」と書いてあるでしょう。これが無料でダウンロードできるやつ。これでダウンロードするとすごいかかっちゃう。だいたい1時間半くらいかかるかな。それで青いほうの「Premium Download」でダウンロードすると、超早いです。30秒でダウンロードできちゃう。同時ダウンロードも無制限。いろいろやりやすくなっている。これがプレミアム会員で、この会費がすごく儲かるんですよね。
全然逮捕されないしプレミアム代で儲かるし、苦情が来ちゃえば消しちゃえば全然いいしということで、サイバーロッカーはなかなか消えないですね。今回「Free Download」を押そうと思ったんだけど1時間かかってしまうので、お料理番組じゃないですけれども私があらかじめダウンロードしておきました(笑)。作者だからいいの(笑)rar形式で圧縮されています。これを解凍してもらいました。ちょっとめくってみてください。
坂井:
いいんですか。
赤松:
いいですよ。
画質は素晴らしくいいです。これは裁断して自炊したものではないですね。網点がすごく精度がいいので、間違いなく電子書籍の画面キャプチャです。トランスレーションはされていないです。なので正規のやつを連続してキャプチャしてデータを作るというイメージですよね。ありがとうございます。
坂井:
いっぱいめくっちゃった。衝撃でした。
赤松:
こういうものが素晴らしい画質で発売日翌日にアップロードされて大したリスクもなく手に入るので、これはあまりにも痛いですよ。こういうものがすごい使われてまくっていて、特に諫山創くんの『進撃の巨人』が今回1位なんですけれど、その量たるや26巻だけで1巻につき何万とかやられているわけですよ。
動画とか音楽とかというものはダウンロードしても違法だと。漫画はダウンロードしてもいいよというようなメッセージをこれ以上出すというものに対して、すごく抵抗を感じているというのが今の私の気持ちなんですよね。
これ、雑誌もありますよ。『別冊少年マガジン』の最新号ですけれど、これもダウンロードできちゃうんですよ。
これの何がさらに痛いかというと、私みたいなベテランは、今まで紙で買ってくれた読者層が買ってくれるんですよ。新人さんたちは雑誌でこうやって読まれちゃって単行本になる前に儲からなくてやる気をなくしちゃうみたいな例がある。やっぱり悔しいしね。
さらに彼らはサイバーロッカーのシステムで儲かって、こうやって新人さんが痛めつけられるというシステムに関しては、ちょっと手を打たないと漫画界の将来に対して随分なダメージがあるんじゃないかという話があるんですよね。そこで前回は静止画ダウンロードに関して反対しました。しかし、その後政府が「海賊版対策は何もやらないよ」と言ってきたというのがあって、ちょっと待ってと。
我々は最初の2月の声明から、「要件を絞ればいいよ」と言い続けているんだと。海賊版の対策はやらなくてもいいということではないと言っているのが現在の私で、裏切りではないわけです。これがだいたいの現状と漫画協会の立場と状況です。
坂井:
他の漫画家さんはどのくらい知ってるものなんですか。
赤松:
知らないと思いますよ。ブラウザで漫画村みたく読まれない限りは、読者も「サイバーロッカーでダウンロードしましたよ」と言うわけがないから(笑)。
坂井:
まあそうですよね。
赤松:
漫画村だったら本当だ! とわかるんだけれども、サイバーロッカーとリーチサイトに関しては今みたく大変なんですよね。みなさん、真似はしないでください。サイバーロッカーには変なトラップがたまにあります。
私の知り合いの大学教授に「ある作品のサイバーロッカーのURLを教えて」と言われて教えたら、案の定「あなたのパソコンはウイルスに感染しました」みたいな広告を押しちゃって。「対策ソフトをダウンロードしたらパソコンが全部消えちゃったのよ」って大学教授が言っていたんです(笑)。
坂井:
ひょっとしたらパソコンの中身が全部出ちゃっているかもしれないですよね。そう思うと大学の研究なんかは怖いですよね。
赤松:
サイバーロッカーに正しい電子書籍が入っているとは限らないです。だからみなさんはやっちゃダメですよ。私は相当慣れているので(笑)。
山田:
何がアップロードされているか、実はわからないですよね。一見、普通の漫画に見えるんだけれども、プログラムされたソフトがあって、それもダウンロードしちゃうかもしれないですもんね。
坂井:
じゃあその中で、ものによってはやばいかもしれないということなんですね。
赤松:
そうですね。中に何か入っていると実行しちゃうかもしれない。rarは自動実行はされないと思いますよ。
坂井:
でもわからないですからね。
赤松:
この仕組みとか画面のきれいさとか、ダウンロードの多さ。量と品揃えを見ると、これは野放しにはできないですよ。それでもやっぱり坂井さんは反対なんですか(笑)?
坂井:
ひとつは漫画にすりゃいいじゃんと思ったわけです。漫画リーチサイト禁止。
山田:
ちょっと論点を言ったほうがいいんじゃないの(笑)。あまりざっくりした話をしちゃうと何を言っているのかわからないので。その論点を坂井さんに説明してもらって、赤松さんのほうから「これじゃだめだ」とか突っ込んでいただいていいですか。
赤松:
わかりました。