スクショを撮っただけで有罪に!? ――違法DL規制に『魔法先生ネギま!』赤松健と山田太郎議員が提言「パブコメで国民が意識していることが官僚に伝わる」
どこまでが対象? 罰則は? 著作権改正のポイントと論点
坂井:
論点とポイントという話ですね。前回の3月にどんな法律が出てきたのかという話と、それに対してどんなような論点が今後考えられるのかというようなところを、ダウンロード違法化とリーチサイト規制というところで少し説明したいと思います。これが著作権のダウンロード違法化についての話です。
民事と刑事というのが大きくふたつに分かれています。刑事というのがわかりやすいですね。警察に捜査されて、逮捕されて、裁判起こされて刑務所に入れられちゃうというのが、わかりやすく言うと刑事。民事というのはその権利を持ってる人に、これだけの賠償損害を我々が被ったので、その部分を賠償してくださいよとか。そういうのが民事というものになります。
先ほど赤松さんからあったように、今までは対象が映画と音楽だったんですね。今回は漫画も含む著作物全部ですから、小説とか論文とかそういったようなもの全部に対象は広がっています。ただ刑事だけは少し狭くて、有償なもの。タダの物は入っていません。それから二次創作というものも入っていないというこの2点が、民事と刑事でちょっと違っています。
なんでかと言うと、警察がいきなり来て捜査されるというのは怖いので、刑事のほうが要件というか対象を絞っているという場合です。この主観要件と書いてあるところなんですけれども、これはどういう場合違反になるかというところですね。違法にアップロードされたと知りながらダウンロードする場合。これを違法としています。
除外されているのは違法と知らなかった場合とか、適法・違法の評価を誤った場合。これはちょっと難しいんですけれども、たとえばTwitterのアイコンをダウンロードした時に、このアイコンは確か作者から許諾をもらって使っているはずだと。だからこれは違法にアップロードされた画像じゃないというふうに信じてダウンロードした場合は違法にはならないというふうに書いてあります。
それからひとつ飛ばして常習性ですね。これは継続又は反復なので、継続してやったりとか何回も繰り返して反復してやるという場合には、これは違法になります。提訴と書いてあるところで、親告罪とあるのですが、これはどういうことかと言うと、親告罪の逆は非親告罪というやつですね。
親告罪というのは権利者が訴えた場合にのみ、警察が捜査する。厳密には起訴できる、できないなんですけれども、警察が捜査して刑事事件化すると。そうじゃない非親告罪というのは、「被害にあったよ」と権利者から言われなくても、誰かから告発があったら警察が自主的に捜査をして対応することができるというようなところで、これは親告罪なので非親告罪と比べると警察の力というのは弱いというのがひとつになります。
では論点というところにいきますか。今度、今のようなものに対して先ほど赤松先生からもあったように、本当に今のままでよかったのか。前回はみんな反対しましたけれども、どういう場合に限定すれば海賊版というものが防げるのかというところがいくつか論点があります。
「原作のまま」「まるごと」というのは、たとえば漫画の一部について、漫画の1コマのセリフを変えるみたいな。そんなようなものであったり、その1ページだけダウンロードするとか。そういったものを違法にするのか、しないのか。
山田:
二次創作とかパロディを対象外にするという効果もあるね。
坂井:
「まるごと」というのは、たとえば100ページものの1ページだった時にどうなのかという評価があるという話ですね。2番目の「著作権者の利益を不当に害する場合」というは、本来であれば電子書籍が売れていた場合に、その売上が少なくなったと言ったら、それは明らかに著作権者の利益を不当に害しているというふうに言えると思いますが、そうじゃない場合というのもあると思います。そういう場合は限定されるのか、されないのか。
海賊版サイトからのダウンロードに限定されるのか、されないのか。先ほども少しありましたけれど、漫画・アニメのダウンロードですね。たとえば小説とか論文とかプログラムとか、こういったようなものまで含めるのか、含めないのかということもあります。
民事も有償著作物だけに絞るのかとか。あとはちょっと議論があると思いますけれども、出版権を設定されるものに限る。これは漫画とか本に限ると。ちょっとここは赤松先生にも教えてほしいなというふうに思っているんですけれども。
あとは正当な目的ですね。何をもって正当な目的? というのはあるんですけれども、裁判の証拠収集とか研究とか、そういったような時に違法にアップロードされたものをダウンロードする行為というのは違法にするべきなのか、しないのかみたいなところも議論があります。
注意点というふうに書いてあるんですけれども、スクリーンショットの写り込みが違法になったりとか、Twitterのアイコンダウンロードが違法になったりというところがあるのは、やっぱりちょっと考えなきゃいけないんだろうなと。あとはそもそも、立法事実は何か実効性はあるのかを考えなきゃいけないかなと思っています。
立法事実というのは、特に刑事罰をつけるというのは人の自由を法律で制約することなので、何かの利益を守りたい、何かの権利を守りたい、誰かの権利を守りたいみたいなそんなような事実がなければ、法律は作れません。もうひとつ実効性というのは、この法律ができたんですけれども実際にその守ろうと思った権利が守られなかったということになってしまうと、それは何のための法律なのか意味がわからないので、どうなのかと。
もうひとつが罰則をつけないというやつですね。民事措置のみにする。違法は違法なんだけれども、警察には逮捕されないという曖昧というか、違法なんだけど逮捕されないというような位置づけにする。「刑事プロセスに事前の警告を入れる」というふうに書いてあるのは、これはみなさんからの懸念である「本当にこれが違法なのかよくわからない」と。それで、やっちゃったと。
でもその前に「あなたがやっていることは違法ですよ」「もうやっちゃダメですよ」と警察からの警告があれば、そういったところは防げるんじゃないのというところですね。それから本法律の実効性と書いてあるんですけれども、海賊版対策というのは実は政府としては10項目くらい考えているメニューがあります。
それが先ほどあったフィルタリングとかブロッキングとかそういったものも含めてなんですけれども、それ以外にももしかしたら本当に海賊版対策ができるものがあるのであれば、それも検討していかなければいけないんじゃないかみたいなところが、今後の著作権法改正を実際に法律を作っていく上でポイントと今のところ考えています。このあと、リーチサイトの紙も2枚ほどあるんですけれど……。
赤松:
ちょっと一旦ここで。こういうふうな要件の絞り込みをすればAFEEとしてもOKみたいな感じなんですか。
坂井:
そうですね。だって海賊版を許しているわけではないので。
赤松:
私がTwitterで「どんなに大量でも何度でも毎日でも延々やっていても合法なんだみたいなメッセージを送ることは、なかなか難しい」というようなことを言ったら、「そういう極端な例を出して」というような反論もあったんですけれども。
坂井:
AFEEとしては思っていないです。
赤松:
スイスで基本的にダウンロードは全部合法になったというニュースがあって、そういうのを目指している人たちがもし批判をしてきているのであれば、それは問題じゃないですか。
山田:
あれも勘違いしちゃっているのは、合法になったのではなくて違法性を問うていないだけなのであって。
坂井:
日本のこの3月の状態と一緒なんです。違法という議論になったんだけれども、それが先送りになった。
山田:
だから別に合法でどんどんやれと言っているわけじゃないですよね。これも国際的にどこの国も問題であるのは間違いがないと。
赤松:
なるほど。するとダウンロードが違法化に関しては特に我々は議論の余地はないんですか(笑)。
山田:
どの程度絞り込むかというところについては実効性なのか……となると思うんですよ。僕はふたつ論点があると思っていて、ひとつは刑事罰なし。結局訴えたいほうは赤松先生もそうだと思うんですけれども、民事駆動があるからできるのであって、なんで最終的にみんな怖いかというと、勝手に警察が差し合う。
「ダウンロードしてるらしいよ」とかなんとかって、要は著作権トロール【※】みたいな問題になっちゃうんだったら非常に怖いから、警察駆動にしたくないと。警察だって権利者に相談もせずにはできないんだから、結局は民事ということで刑事罰なしというところからスタート。ただこれは映像の時とも同じなんだけれども、様子を見て、もしそれでも刑事罰をつけなければ効果がないというのなら、また議論はできるはず。
※著作権トロール
著作権を自身の著作物の保護のために行使するのではなく、訴訟による賠償金獲得を目的として行使すること、あるいはそれを行う者のこと。
赤松:
昔は動画と音楽も刑事罰はなかったですよね。
坂井:
そうですね。昔はなかったですね。
山田:
もちろんそのあとで刑事罰がついたのは議員立法で強引だったとも言われているんだけれども、ただ厳しく作っちゃったものをまた緩和するということは、とてつもなく難しい話になっちゃうので、段階としてやるならやるだし、いずれにしても事実をとるとすると、たぶん警察に任したって警察にはできないよと。だったらいわゆる刑事罰なしという形でまずダウンロード違法化ということを進めて、これは教育的配慮にもなる。
つまり「違法なものをダウンロードというものはしちゃいけないんだよ」というメッセージは当然伝わるだろうというのがひとつ。それから対象物をしぼるというのは、元々は漫画とかアニメの話からスタートした話で、漫画・アニメ・ゲームにまずは絞れないかと。漫画・アニメ・ゲームはきょうこうやって赤松先生が説明してくれた通り、極めてクリアに海賊版の話があるんだけれど、これが論文になったらどうなるのか、なんとかになったらどうなのかと。
たとえば僕はビジネスをやっていたから、ビジネスでコンサル会社がパワポを作るのに、引用の部分を越えてダウンロードして使っている可能性が高いかもしれない。それがわからなかった時に、世の中が混乱しちゃうんじゃないのと。
赤松:
なるほど。
山田:
もちろんスクショのことも、いろいろ細かい話をやると何時間でもできるんだけれど、たとえば30条の2項というのがあって映り込みでいけないかどうかということを言っているんだけれど、どこまでが映り込みかどうかというのもわからない。
漫画・アニメ・ゲームにしぼるという議論をしたら、漫画・アニメ・ゲームの定義をしなきゃいけないと。
赤松:
それも難しいですよね。
山田:
「漫画」と書いてしまって、漫画・アニメ・ゲームで争いがあったときに判例で絞っていくやり方もあるにはある。議論しなきゃ進まないのであったら、実際の判例でもって争ったっていいのがひとつ。
それから出版権という話が出たんですよ。これは日本技術会議の中で、大学の先生とか弁護士の人が集まって、私もそこに行ったんですね。
赤松:
出版権はこういうやつですよね。講談社と私が出版の時に対する契約書ですよね。
坂井:
その中に公衆送信権は入っていないですか。
赤松:
ありますよ。今、新しくなっていて電子書籍に関するやつも別に結ぶんですよ。だから一概には言えないですけれども、そうです。
山田:
出版権というものを設定すれば、スクショ違反というのはまったくなくなるし、いろいろこれはすごいんですよ。ぶっちゃけ言うと疲れちゃうくらい。たとえば漫画協会さんが出した三要件とかという議論もあったんだけれども、「著作者の利益を不当に害することとなる場合」なんていうのは逆に言うと、「この程度は不当には害しないから、ダウンロードOKと思って判断してやった」ということについてはどうなっちゃうのかなとか。
赤松:
そういう会議だったんだ(笑)。
山田:
そうそう。だから条文ベースでやらなきゃいけないというのはそういうことで、ポンチ絵(概要)ではなんぼでもできるんだけれど、条文に寄せた場合に実効性を持つかどうかというのは、例外の問題であったり解釈の問題ということを細かく決めて書かなきゃいけない。強く作ってしまうと、今度は想像もしないところに波及してしまうこともあると。
坂井:
新しいビジネスだってありますからね。
山田:
ということなので、対象物をしぼる形にロジックとして作っていかないと。手段だとかプロセスに対して何か網をかけるとなると、他のわけのわからないものにまで網がかかっちゃう可能性がある。対象物をしぼるとすると、しっかりと契約書になってるかどうかは別として、結局は出版権というのがあるはずだから。
そうしたら今度は何が起こっちゃったかというと、「これについて期待しているのは、実は論文のほうの業界からもみんなこれに対して期待している」とか言い出しちゃったりなんかしてるので、これって本当に立法事実があるんですか? ということをごちゃごちゃやっていたりするというのが、今のステータスなんですよ。
坂井:
本当にやらなきゃいけなかったらやればいいし、やる必要がなければやらなくていい。
赤松:
この契約書自体、ここ数年なんですよ。それまでは漫画家は雑誌に載るときには契約がないんですよ。だから雑誌が急にやめたり、急にどこかに移ったりすると基本的には問題ないんですよ。契約なしで連載しているから。
単行本のときだけこういうふうな契約をします。なので雑誌に載っているやつに関しては、実はすごく微妙な立場で弱いとも言える。昔、手塚治虫先生のW3事件【※】みたいなのがあって、それ以降は専属契約で縛ることにしたみたい。
※W3事件
手塚治虫が漫画『W3』の掲載誌を『週刊少年マガジン』から『週刊少年サンデー』に切り替えた事件のこと。
坂井:
出版権の場合は、たとえば二次創作とかの場合はどうなっちゃうんだとか、そういうところは少し考えないといけない。
赤松:
これを結んでいない作家はやっていいのね? ということになっちゃうので、出版権はナイスアイデアと思ったけれどもダメかな(笑)。
山田:
あと、見えないの。出版権が結ばれているかどうかがわからないから、使うほうとしても問われちゃうか問われないかがわからないから、確かに対象物は絞れるんだけれど、きっとなんかの合わせ技でやらないと難しい。
真面目に学術会議とかの偉い先生たちもどういうふうにこれを絞り込めばいいかと日夜検討しているということで、私も全部丁寧に集めて、これはできるかできないかということを交わしているんだけれども、たぶんポイントとしては、まず萎縮側からしたら何が萎縮効果で一番怖いかといえば警察駆動。
やっぱり差し合いが起こるんじゃないかと、どうしてもそこがあるし、スクショぐらいのところで警察が飛んできてというのはかなわんと。でも権利者から言ったら権利者が駆動するから、はじめて進む。
赤松:
ないですけれども、我々に無断で警察官が勝手に起訴できるわけです。だから権利者としてはちょっとムカつきます(笑)。
山田:
一応これは親告罪ではあるんだけれども、もう少し寛容にすると、ここはまずは刑事罰なしでスタートするのがひとつの論点です。これもいろいろな人に聞かないといけないんですけれども、権利者としてはどうですか。たとえばダウンロード違法化に関して刑事罰なし。捕まえろよと。罪にして懲役もかけろと。
赤松:
ちょっと……漫画協会の常務理事として公式な意見は差し控えさせていただきたい(笑)。僕が今やっているのはリーチサイトの前段階の静止画のダウンロードに関することですけれども、コメントではAFEEも「要件を絞り込めば静止画ダウンロード違法化はあり」だというふうに言っていますけれど、コメントしている人たちはそれでいいんですか。
坂井:
アンケートとってみましょうか。
赤松:
さっき私がサイバーロッカーとリーチサイトの現状を見せましたけれど、巧妙さとこれを取り締まれないというのと、画質のきれいさを見て、こういうふうな形で新人さんたちがきつい目にあっても……。
坂井:
ちょっと先にアンケートをやりましょうか。
赤松:
とにかくどんな要件でしぼっても反対なんだという人たち。
山田:
要件をしぼればOKなのか、まったくだめなのか。
スタッフ:
三択にしましょう。
山田:
でも議論だから、実際の権利者の話を聞いてゆらぎながら正直に答えるのは民主主義じゃないですか。だってイズムになっちゃうよ。最初から答えが出ていて賛成だ、反対だというのは今はもうそんな時代じゃないから双方いろいろ事実をぶつけながら議論していくために番組をやっているので。
赤松:
ネットでは「昔こんなことを言っていただろ」とかいって叩かれちゃいますけれど(笑)。
スタッフ:
ではアンケートの準備ができました。
山田:
ダウンロード違法化に関しての部分ですね。要件をしぼれば違法化あり、要件をしぼっても何であろうとだめなんだと、それからわからないと。
坂井:
AFEEの立場だと用件を絞ってもダメかな。というか、もっと他にやることをやって欲しいというそういう立場ですね。
山田:
僕は政治家ですから、双方の意見を聞くまでわからない。
坂井:
割れましたね。
山田:
僕、正直「わからない」が一番多いと思ったんだけれども、結構いろいろとあるんだね。
スタッフ:
めずらしいですね。
赤松:
まっぷたつという感じですね。
坂井:
これは政治家が一番大変な割れ方ですね(笑)。
赤松:
どっちにしても叩かれるっていう(笑)。
山田:
多数決がきかないっていう。確かに決められないね。もっと議論がいるということだね。