「ロケット団」キャスト陣が語るムサシ・コジロウ・ニャース・ソーナンスの信頼関係とポケモン愛【林原めぐみ×三木眞一郎×犬山イヌコ×うえだゆうじ】
TVアニメ「ポケットモンスター」の主人公のサトシとピカチュウの前に立ちふさがるロケット団の 4 人の目標はひとつ。「ボスのサカキ様に認められて、組織のなかで偉くなること」だ。
彼らは基本的に、サトシのピカチュウをはじめとして、トレーナーたちからポケモンを奪おうと企む悪役として登場する。
しかし、ムサシたちロケット団は自分たちのポケモンにとても愛情を注ぐ。また、サトシであろうが誰であろうが「困っている人を放っておけない」という、人情味あふれる面を見せることがある。
非人道的な行為を行うロケット団の別団員と対立することさえあるのだ。こうした、彼らが活躍するエピソードはファンからの人気も根強い。
彼らが多くの支持を集める理由は、悪役でありながらどこか憎めず、組織の下っ端として一生懸命働き、人情味があり、ポケモンを大切にする。そんな、まさしく「ラブリーチャーミーな敵役」だからこそだろう。
今回は、ロケット団のメンバーを演じ続けるムサシ役の林原めぐみさん、コジロウ役の三木眞一郎さん、ニャース役の犬山イヌコさん、ソーナンス役のうえだゆうじさんにインタビューを行うことができた。
数々の人気作に出演し、とても忙しい日々を送っているであろう4名だが、なんとこれまで「ロケット団の4人が揃わないとアフレコしない」というぐらい、ワンチームで作品作りに取り組んでいたそうだ。
コロナ禍により同じブース内で揃ってアフレコすることは難しくなったそうだが、今回、ロケット団の4人が久しぶりに集結することになり、まるでロケット団のやりとりをそのまま見ているような、おおいに盛り上がったインタビューとなった。
インタビューは、1997年のTVアニメ「ポケットモンスター」放送初期の思い出から、アフレコの裏話、それぞれのお気に入りのエピソードにまで話が及んだ。
正直、筆者も「ここまで作品とキャラクターに愛情を持っているのか……!」と驚いてしまったほど、熱のこもった話をたくさん聞くことができた。
ロケット団ファンのあなたも、そうでないあなたも、きっとこの記事を読めばより彼らを好きになるのではないかと思う。
最強の4人組のキャラクターと作品愛に溢れまくった本音トーク、ぜひ楽しんで欲しい。
取材・文:金沢俊吾
──本日は、ロケット団の歩みを皆様に振り返っていただきたいと思います。よろしくお願い致します。
林原めぐみ・三木眞一郎・犬山イヌコ・うえだゆうじ:
よろしくお願いします!
──ロケット団の4人は、ひたすらサカキ様のために頑張ってるのが大きな魅力のひとつだと思うのですが、忠誠心と一生懸命さって、一体どこからきてるんでしょうか?
三木(コジロウ役):
あれはね、4人だから頑張れるんですよ。1人じゃ絶対に途中で諦めてると思うな。
林原(ムサシ役):
もちろんサカキ様のためになんだけども、根本的に、ムサシは負けず嫌いなんだと思う。
ダメだったことは悔しいからもう一回チャレンジする、それを繰り返した最終目的地に、頑張ったっていうことを褒めてくれる人がいるっていうのはモチベーションになってると思いますね。
──今のお話聞いていても思ったんですけど、みんな、本当はピカチュウを捕まえなくてもいいと思ってるんじゃないかと思ったのですが。
三木(コジロウ役):
何を言ってるんですか! 捕まえたいですよ!
林原(ムサシ役):
捕まえたいとは心の底から思ってるんですよ。でも、それだけじゃないんだよね、やっぱりね。
──ニャースは、サカキ様に溺愛してほしいっていう分かりやすい目標があると思うんですけど、ムサシとコジロウはなぜ頑張ってるのかな? って昔からずっと疑問だったんですよ。
林原(ムサシ役):
ムサシは幹部昇進とか、ちょっとかっこいいキャリアウーマンのトップになるみたいな欲望はあると思いますよ。
でも、今は上司にあの眼鏡女【※】がいるじゃない。それはもうムサシ的には許せないよね。ぜったいに引きずり下ろしたいと思ってるはず!(笑)。
※ロケット団のボス・サカキの秘書、マトリのこと。
三木(コジロウ役):
コジロウに関して言えば、居心地が良いからロケット団にいるんだろうな。出世よりは、自分の知らない世界を知りつつ、自分自身が成長したいと思ってる部分もあんだろうなって。
林原(ムサシ役):
コジロウはそうだろうね。ムサシやニャースから頼られてる、期待されてることに、ちゃんと応えようとしてるもんね。
うえだ(ソーナンス役):
ソーナンスはどうやらムサシさんのことが大好きで一緒にいますね(笑)。ニャースはロケット団のパイセンという認識で行動を共にすることが多いですけど。
ロケット団の人間らしさはいつから?
──ここからはロケット団の歴史をちょっと振り返ってみたいと思います。初期は「エリートでちょっと冷酷」っていうイメージで、少しずつ人情味が出てきたと思うのですが、こうした変化の実感はありますか?
林原(ムサシ役):
そうですね。どのあたりから、エリートキャラが崩れていったんだろうね?
三木(コジロウ役):
『あらしのサイクリングロード』(TVアニメ「ポケットモンスター」第36話)とかかな?
──サイクリングロードに、なぜか一輪車に乗って登場するという(笑)。コミカルな一面が見れた回でした。
三木(コジロウ役):
マイク前にいる僕たちが何とかしようっていうことではなくて、台本自体がそういう感じになっていったんだよね。
林原(ムサシ役):
うん、面白く演技したというよりは、台本がそうなっていったと思う。ムサシが看護学校に通っていたってエピソードが出てきて「そうだったのかよ!」って私も思ったり。
犬山(ニャース役):
そうそう。ロケット団の生い立ちみたいなものが徐々に語られるようになって、余計に人間らしさが出てきたよね。
三木(コジロウ役):
このメンバーでよかったのは、「笑わせよう」ってコトをしないっていうところがすごいあるんだよね。あくまでロケット団は、自分たちの使命を全うするために一生懸命頑張ってるだけなので。
──本当に、いつも組織のためにマジメに頑張ってますよね。
三木(コジロウ役):
あとね、サトシたちに負けて飛ばされて、空中で反省会するじゃないですか。その時、誰にも責任をなすりつけないっていうのがステキだなと思うんだよね。
「ニャースのせいよ!」とか言わなくて、「きー、悔しい!」って。自らを戒めてて、いい奴らだなって思う。まぁ、場合にもよるけれどね(笑)。
アフレコ後はよくご飯に行っていた
──台本によってキャラクターの方向性が定まって行ったということですが、アフレコの雰囲気はどのような感じだったのですか?
三木(コジロウ役):
初期の頃は特に、番組作る雰囲気っていうか、スタッフ同士の距離が近かったんですよ。その中でロケット団同士の「人となり」もお互いがどんどん理解していったような気がするな。
うえだゆうじ:
そういう雰囲気って、林原さん、三木さん、犬山さんのお三方の現場内外での普段のやりとりから生まれてきていて、そのコンビネーションが演技に心地よく反映されているんです。
キャラクターを作り上げるにしても、スタッフ側と演者側で練り上げ合った結果が、現在のロケット団みたいな。
林原(ムサシ役):
今はこんなご時世だから無理だけど、前は収録後によくみんなでご飯食べに行って「ああでもない、こうでもない」って話したよね。番組の話だけじゃなく、お互いの近況も含めて話し合ったりとかしてて。
三木(コジロウ役):
そうそう。だから、お互いが感じた違和感とかもすぐ共有して、改善できたんだよね。
うえだ(ソーナンス役):
あー、そうでしたね。そこは今、少々難しくなっているね。
犬山(ニャース役):
いやーコミュニケーションは大事だなあ、一緒にものを作るっていうのは、やっぱコミュニケーションからだねぇ。
三木(コジロウ役):
そうそう。僕の中で、ロケット団はみんなで会話して作り上げていくっていう感じなんだよね。
──そうやってコミュニケーション取る中で、それぞれのキャラクターの共通認識がどんどんできあがっていったっていう。
三木(コジロウ役):
けんかすることなく、みんなが理解して前に進むっていうか、頭ごなしにダメ! ではなくて、なぜダメなのかっていうことを話し合える現場なんだと思っています。
林原(ムサシ役):
例えば、台本にあるムサシのセリフに「ん? あれ?」って違和感があると、三木さん、犬山さん、うえださんも、同じことを思っているんですよ。
台本を変えること前提じゃなくて、じゃあ変えるならどういう方向がいいかな? ってみんなで話す。「これだといいんじゃない? あれだといいんじゃない?」って、お互いが納得できることを探ってみるんです。
うえだ(ソーナンス役):
ササーって打ち合わせしちゃいますよね(笑)。
犬山(ニャース役):
うん。「ここはこういうふうに言ったらいいんじゃない?」とか、「だったら次のセリフはこう受けたほうがいいよね」っていうのが、割と瞬時にできちゃうかもしれない。
三木(コジロウ役):
素敵なお芝居をされる人がいたときに、ロケット団メンバーが一斉にうなずいてみたりとかね。
──それはロケット団のシーンに限らずですか?
林原(ムサシ役):
そうそう。誰かがいいお芝居してると、「いいねいいね!」って私たち4人が頷き合ってる気がする。
犬山(ニャース役):
だから感覚がすごく一緒な感じがしますよね。
三木(コジロウ役):
この4人の受信機というか、感覚が非常に近いんだよね。それぞれ発信するモノは全然違うのに。それが面白いよね。
──セリフに対して議論が起こるということですが、台本との折り合いはどのように付けてるんでしょうか?
三木(コジロウ役):
まず、台本にあるセリフを否定することは全くないんです。
林原(ムサシ役):
そうそう。もちろん台本ありきです。ただ、ムサシっぽさ、コジロウっぽさとか、「なるほどニャース」だなっていう言い回しみたいなものは、やっぱり私たちの中にあって。ソーナンスはちょっと分からないけど。
うえだ(ソーナンス役):
そんな。ソーナンスっぽいのありますよ! 恐らく……。
一同:
(笑)
ソーナンス加入!
──うえださん演じるソーナンスは、2000年放送の『ソーナンスとポケモンこうかんかい!!』からロケット団に加入しました。アニメ放送開始から3年たって、チームができあがってる中で、途中から参加していかがでしたか?
うえだ(ソーナンス役):
そうですね。僕はずっとタケシ役で作品には参加していたんですが、やっぱり「ロケット団の完成度」というか、3人のチームワークは傍から眺めていてよだれが出る程うらやましいチームでしたね。
──おお、それはサトシチーム側にいても感じられてたんですね。
うえだ(ソーナンス役):
そうですね。
林原(ムサシ役):
よくスタジオで「いいなあロケット団」っていろんな人に言われるよね。
うえだ(ソーナンス役):
だから、「期せずしてロケット団に入れた!」ってとても嬉しかったの覚えてますね。
犬山(ニャース役):
ピカチュウがロケット団に混ざるエピソード(TVアニメ「ポケットモンスター アドバンスジェネレーション」第89話『ピカチュウ、ロケット団に入る!?』)があるんですけど、ピカチュウ役の大谷育江ちゃん、本当に楽しそうにやってました。育ちゃんは、ホントは悪役をやりたいんじゃないかなってぐらい(笑)。
ロケット団の「ポケモン愛」と「正義」
──ロケット団って、サトシのリザードンとか、サトシ側のポケモンを応援したり、協力する回が実は多いんですね。ポケモンに対する愛情が深いのかなって思うんですけど、そういう愛情ってどこから来ると思います?
林原(ムサシ役):
ムサシは、目の前の衝動に正直なんですよ。困ってる人ほっとけないみたいな、そういう、ちょっと猪突猛進すぎるところがあると思っています。
──ああ、困ってる人を放っておけない、っていうのはすごくわかる気がします。
林原(ムサシ役):
よくロケット団って「正義の悪」って言葉を使うんですけど、コジロウ、ムサシ、ニャース、それぞれの中に「正義」と「悪」があるんです。サカキ様の命令は「やっていい悪」なんだけど、でも「やっていい悪」以上に、個々に揺らがない正義が絶対にあって、そこが多分3人共通してるんだと思うんですよね。
──なるほど、「やっていい悪」と「正義」をそれぞれ持っているから、サトシたちの敵役であり、たまに助けることもあるという。
林原(ムサシ役):
4人とも、それぞれ表現の仕方が違うけど、そういう核になっている部分は同じだから、ずっと一緒にいるんだろうなって。
ムサシの行動を、ソーナンスに止められたことなんてないですからね。「ムサシが行くならいいよ」って思ってくれてるんだと思う。
──あと、ニャースはポケモンと会話できるじゃないですか。サトシのリザードンやヒコザルに共感したり、ニャビーを応援したりとか、やっぱりニャースの力が大きいかなと思っているのですが。
犬山(ニャース役):
たぶん、受け取ってる情報はムサシとコジロウより多いからいろいろ大変(笑)。
でも、みんな根本は同じで、「愛と義理と人情」をすごく持ってると思う。
──そういった面が根本にありつつ、でもやっぱりサカキ様のために悪役も頑張ってるところが、人間らしくてとてもいいですよね。
犬山(ニャース役):
そうそう! 泣かせたと思ったら、急にすげえ悪くなったりもするんですよね。
──個人的に、モクローを一方的に攻撃するシーン(TVアニメ「ポケットモンスター サン&ムーン」第112話『新種発見!メルタン、ゲットだぜ!!』)はちょっと辛かったです(笑)。
犬山(ニャース役):
それはゴメンナサイね(笑)。
登場シーンの口上は毎回新録していた
──ロケット団といえば、やっぱり「登場シーン」が欠かせないですよね。
三木(コジロウ役):
そうですね! 初期の頃、ロケット団の登場シーンがバンクじゃなかったんですよ。
──バンクじゃないというのはつまり、近年はロケット団が登場すると同じ映像が流れますけど、初期は毎回、映像が違ったということですね。
三木(コジロウ役):
はい。絵が使い回しじゃなくて、毎話そのシチュエーションに合わせたものを作ってくださっていました。今思えば贅沢な話ですよね。
林原(ムサシ役):
衣装も毎回違ったりね。
うえだ(ソーナンス役):
自由にいろいろやらせてもらっていた。
林原(ムサシ役):
ちなみに、バンクになってからも、登場シーンのセリフは、毎回必ず新録してます。
──えええ、そうなんですか!? セリフはほとんど一緒ですよね……? 毎回、微妙に演技も変えてるということでしょうか?
うえだ(ソーナンス役):
そうですね。登場までのシーンの流れに乗っかった状態に。その回ごとのニュアンスを合わせていますよね。
林原(ムサシ役):
スッとクールに現れたのか、怒りながら登場するのかで、演技は違うもんね。
犬山(ニャース役):
ヤケクソに登場する時は、すごくヤケクソな感じでやってみたり。
三木(コジロウ役):
絵の収まる範囲で、ギリギリの振り幅のところで、そこまでの流れを汲むんですよ。
──それは「今回はこういう流れだからこうしよう」って話し合うんですか? それとも、それも阿吽の呼吸でやってしまうんでしょうか?
犬山(ニャース役):
相談はないですね。
結局、ロケット団の口上はムサシの「なんだかんだと聞かれたら」から始まるじゃないですか。ムサシの出方で流れが決まるよね。後の3人は、もうムサシのテンションを受け継ぐ。
林原(ムサシ役):
そうなのよね。
三木(コジロウ役):
だから、口上の順番もうまくできてると思う。まずムサシが発進して、コジロウがちゃんと合わせて、それでニャースがいつもの感じに落ち着けて、最後にソーナンスがなんか締めるっていう。
一同:
(笑)
──最後のソーナンスは、「ソーナンス!」 の一言ですけど、そこは皆さんのテンションに影響されるわけですか?
うえだ(ソーナンス役):
もちろん! 短いときもあるし、「ソーー」がやたら長いときもあるし。
人気回『ニャースのあいうえお』
──ロケット団が活躍するエピソードは、人気のものがすごく多いですよね。例えば『ニャースのあいうえお』(TVアニメ「ポケットモンスター」第72話)は、ニャースが人間の言葉を喋れるようになった過去が明かされる人気回ですが、犬山さん、何か印象に残っていることはありますか?
犬山(ニャース役):
いやー、これは録った時はすっごい斬新で、「こんなしゃべり方で大丈夫かな?」ってすごい思いながらやった記憶が強く残っています。
普通のニャースとちょっと違う、モノローグというか語りみたいなのを、こんな渋いトーンでやって大丈夫なのかな? って思ったんだけど。でも今も多くの人に観てもらえる記念すべき作品となりまして、ありがとうございます! って感じです。
──初期のシリーズではちょっと異質な、大人っぽいストーリーですよね。
犬山(ニャース役):
そうなんですよ。だから、こんなに丁寧にニャースを描いてくれて、本当に個人的にもすごく愛おしい作品ですね。
屋根裏で言葉を勉強するシーン、自分でやっといて何だけど、何回見ても泣けてくる。
うえだ(ソーナンス役):
人間の言葉を扱える理由がわかる話でありながら、その話が非常に情緒深く描かれているのがスバラシかった。
三木(コジロウ役):
何か映画っぽい作りになってるよね。 これは本当に面白かったな。
──林原さんもご自身のブログで、この回が好きだと言及されていましたよね。
林原(ムサシ役):
ええ、何度でも見たい、何度でも見られます。新しい気持ちで泣けます(笑)。
──ニャースといえば『おニャースさまのしま!?』(TVアニメ「ポケットモンスター」第98話)という回も素晴らしくて。とある島でニャースが崇められて、ムサシとコジロウは、「ニャースはここにいたほうがしあわせだ」ってニャースを置いていくんですね。でも、やっぱりムサシとコジロウと一緒にいることが自分にとってのしあわせっていうことにニャースは気づいて、仲間に戻るっていう非常に泣けるお話なんですけど。
犬山(ニャース役):
離れてみて、初めて大事さがわかるっていうことですよね。
三木(コジロウ役):
この回は、見る人の年齢によって受け取り方が全く違ってくる話なので、そういうのができる作品っていうのも素敵だなって思いますね。
──ロケット団って、誰かが脱退するエピソードが何回かあって、これはそのハシリだと思うんですけど。
三木(コジロウ役):
そうですね。失って初めて居場所の大切さに気がついて、ちゃんとまた戻れるっていうところが、ロケット団はなんかすごくいいなって思います。
ポケモンとの別れ回
──ロケット団は、ポケモンとの別れのシーンがとにかく感動的だと思うんです。『ロケット団!みだれひっかきでサヨウナラ!!』(「ポケットモンスター アドバンスジェネレーション」第6話)とか、『マネネ登場!休息の館!』(「ポケットモンスター アドバンスジェネレーション」第147話)、『ナタネとサボネア!さよならは誰のため!』(「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール」第54話)も素晴らしくて。
三木(コジロウ役):
もう本当に、ポケモン愛と人間味で溢れてますよね。
林原(ムサシ役):
ポケモンって、例えばモンスターボールで交換もできちゃうわけじゃないですか。ロケット団はそのセオリーからちょっとずれてるというか、ポケモンを育てて交換するとか、もうそういう感覚ではない。
三木(コジロウ役):
ニャースなんて、ゲットもしてないし、ただ一緒にいるだけなんですよね。
犬山(ニャース役):
確かにそうだ!
林原(ムサシ役):
モンスターボール入ってないしね。だからもう、自分たちのポケモンは家族みたいな感じだから。
三木(コジロウ役):
そうか、ポケモンは人間の家族だっていう感覚があるから、サトシたちのポケモンも放っておけないのかもしれないですね。他人のポケモンが苦しんでると、もうツラくて見ていられないんだろうなって。
──家族だと思うからこそ、別れを受け入れることもあるんですね。『ナタネとサボネア!さよならは誰のため!』では、本当は離れたくないけど、コジロウがサボネアのためにと思って別れを決断するっていう。それも家族だからこそなんだなって今思いました。
林原(ムサシ役):
本当にそうだね。ムサシがドクケイルと別れる『さよならドクケイル!』(「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール」より第73話)もそうだよね。
三木(コジロウ役):
そうそう、だから、やっぱりめちゃめちゃ人間臭い人たちなんですよ。
いい人エピソードが続々と
犬山(ニャース役):
わしは、ミミッキュとムサシが活躍する『ミミッキュのばけのかわ!』(「ポケットモンスター サン&ムーン」第38話)がすごく好きなんだ。
林原(ムサシ役):
ムサシがミミッキュの被りものを縫ってあげたんだよね。
犬山(ニャース役):
それまで知らなかったムサシの新しい顔が見れて、新鮮だったなあ。
林原(ムサシ役):
そうだね。ミミッキュのためにヤミカラスを追いかけて。おっかさんみたいなところありましたね。
──個人的にすごく好きなエピソードが『ロケット団解散!?』(「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール」第117話)で、過去にムサシとコジロウが、仕事がうまくいってないロケット団の後輩隊員に、ラーメン屋に連れていって励ましていたことが明かされるんですけど。
林原(ムサシ役):
おお、めちゃくちゃいい人たちじゃん!(笑)。
三木(コジロウ役):
そうなんだよ。自分たちだってお金あるわけじゃないのに(笑)。
新シリーズで4人の会話が増えた
──2019年からTVアニメ新シリーズ「ポケットモンスター」が始まり、ロケット団はこれまでのように手持ちのポケモンがいなくなって、毎回ランダムでバトルするポケモンが登場するようになりました。
三木(コジロウ役):
それによって、ロケット団の4人組がブレなくなったんですよ。4人での会話が増えたから、それはそれでありかなって思っていますね。
うえだ(ソーナンス役):
そうだね。会話がすごく増えてる。
三木(コジロウ役):
手持ちのポケモンがいると、エピソードに振れ幅が出るのかもしれないけど、今は逆に4人の密度の高さが出てると思っているので。
犬山(ニャース役):
今回の、ガチャでポケモンが出てくる方式だと、そのポケモンとのエピソードとかないもんね。
──ガチャでモンスターボールが出てくるシーンも新鮮ですよね。現代っぽい演出だなと思いました。
林原(ムサシ役):
ガチャ方式になって、ムサシがそのポケモンの技をすぐ使えるわけがないって思ったんですよ。だから、多分、最初アドリブで、私のセリフだけちょっと変えちゃったんだよね。
犬山(ニャース役):
「何かやっちゃって!」 みたいなね。
林原(ムサシ役):
そうそう。そしたら、そのうちガチャの中に、技の説明メモが入るようになって、それ見ながら言うようになったんですけどね。
三木(コジロウ役):
思いっ切り、読みながら技言ってるもんね。
──台本上は、ムサシもスムーズに技を使ってバトルしていたんですか。
林原(ムサシ役):
そうそう、コジロウはちゃんと言えるんですけど、ムサシはいきなり出会ったポケモンの技とか絶対知らないよなって。
だって、ソーナンスにでさえ何か、カウンターみたいな技……なんだっけ?
うえだ(ソーナンス役):
ミラーコート!
林原(ムサシ役):
ミラーコートか。私自身も区別よくついてないのに、初めてのポケモンなんて無理無理!
一同 :
(笑)
三木(コジロウ役):
そういう膨らませ方っていうか、キャラクターに血と肉を持たせるのは、みんなすごく上手いというか、それがロケット団を作ってると思うんですよね。
犬山(ニャース役):
血と肉、通い合ってるよね!
チームであり、家族であり
──今日お話を聞いていて、本当に4人のチームワークの良さを感じるんですけど、皆さんの関係性ってどうして生まれたんでしょうか?
三木(コジロウ役):
うーん、別にお互い探ってるわけじゃないよね。
うえだ(ソーナンス役):
そうなんだよね。探ってく、って感じじゃない。なんだろう?
林原(ムサシ役):
バレーボールってポジションは決められていたとしても、誰がレシーブしてトスしてアタックするかって、来た球によって多少動きが変わるじゃないですか。多分、私たちもそれに似てるというか。
誰かが動いたら、それに合わせて誰かが動き出すっていう。助け合いじゃないですけど、一丸となって戦ってるんです。そういう意味では本当にチームなんだなって思いますね。
──なるほど、「チーム」という言葉がめちゃくちゃ説得力がありますね。こうしたチームを長年かけて築き上げてきて、ロケット団って皆さんにとってどういう存在でしょうか?
うえだ(ソーナンス役):
ソーナンスは、最初の持ち主に交換で差し出されて来たわけですけど、もう間違いなく、その先に得た家族だと思います。
──先ほど、ロケット団チームに入れて嬉しかったって仰っていましたけど、うえださんにとって、ロケット団チームが家族みたいな存在だったりするんでしょうか?
うえだ(ソーナンス役):
って解釈していただいても良いです(笑)。
ロケット団が役者としてのベースになっている
──三木さんはいかがですか?
三木(コジロウ役):
僕にとっては、癒やしとリハビリだな。
──癒しはなんとなくわかるんですが、 リハビリというのはどういうことでしょうか?
三木(コジロウ役):
もう、この作品ってハンパない人たちが作ってるんですよ。演出もそうだし、ロケット団のメンバーも、もちろん他の役者さんもそうだし。
だから、この作品でのやりとりが自分の役者としてのベースになって、他の現場から戻ってきたら反省したりとかするんです。
──もう長年、色々な作品で活躍されている三木さんが、この現場をベースにされているっていうのはすごいお話ですね……。
三木(コジロウ役):
だから、今もこのメンバーでできることが僕にとってすごいうれしくて、安心感があって癒やされたりもするっていう。とにかく、僕にとってすごく大事な存在です。
犬山(ニャース役):
わしもね、似たカンジなんですけど、でも……「言葉にするのもちょっと何か悔しいぜ」っていう感じで、何かもうとにかく大事なんですけど、でも言うと安っぽくなっちゃいそうで。
林原(ムサシ役):
そうね。言葉にするとちょっとね。
犬山(ニャース役):
そうなの。だから、「宝です」っていうのは、そうなんだけど。でもねえ(笑)。
林原(ムサシ役):
わかるわかる。照れるっていうわけじゃないけど、そういう言葉遣いをつらつら使わないところも私たち似てるわ。
犬山(ニャース役):
そうそう(笑)。まあ、もはやニャースはわしの一部なんで、私自身から切り離せない存在です!
ロケット団でしあわせ
──最後に林原さん、言葉にできないということではありますが、いかがでしょうか。
林原(ムサシ役):
画面上のロケット団の4人から元気をもらうのはもちろんなんですけど、本当にこのキャスト4人でよかったなって。この4人だからこのロケット団になったので。
例えば、ちょっと学校で席替えがあっただけで、何か空気が変わったりするじゃないですか。席替えが無くて、ずっと4人で近くにいれたという。ロケット団はそういう感じなんです。
──林原さんはそれこそ有名キャラクターを多数演じられていますが、その中でもムサシは、林原さんにとってどういう存在ですか?
林原(ムサシ役):
よく「キャラクターに似る」みたいな話がありますけど、でも、ここまで似ることもあるのか!っていう。
ムサシの、もう本当にバカじゃないの? って思っちゃうようなところも愛しさ可愛らしさを感じるし、元気をくれるし、演じれば演じるほど相乗効果で私が調子良くなっていくみたいな。そんなキャラクターが、自分の仕事の中にいてくれるのは、とてもありがたいですね。
犬山(ニャース役):
もう何度も言ってるんだけど、こんだけ20数年間一緒にいても、マンネリしないんだよね。
林原(ムサシ役):
うん、飽きないもんね。
うえだ(ソーナンス役):
全然飽きない。今日もなんか新鮮だったし。
三木(コジロウ役):
もう本当にそうだね。
野望はスクリーンデビュー!
──では最後に、今後のロケット団の展望をお聞きしたいと……。
林原(ムサシ役):
ロケット団が主役の劇場版!
犬山(ニャース役):
即答!(笑)
三木(コジロウ役):
決まってるじゃないですか。 劇場版をやりたいって太字で書いてくれれば、僕はそれでいいです。
林原(ムサシ役):
それでまとめてください。スクリーンデビューしたいんですよ。
犬山(ニャース役):
でもさ、数年前からずっと言い続けてるんですけど、どうも実現しないんだよね。
三木(コジロウ役):
全然作ってくれないので、これを機になんとかしてください。
──しっかり書いておきます(笑)。
犬山(ニャース役):
でね、同時上映でタケシの短編もやってもらってね。
うえだ(ソーナンス役):
そうですね。劇場版タケシも同時上映させてください(笑)。
三木(コジロウ役):
ロケット団とタケシの同時上映、二本立てで。そのために明日からも頑張ります。
──では、劇場版が決まった時は、またインタビューさせてください。今日はお忙しい中、長時間ありがとうございました!
林原・三木・犬山・うえだ:
ありがとうございました!
三木(コジロウ役):
あ、劇場版決まらなくても、ちょこちょこ話聞きにきてくださいね(笑)。
ここまで読んでくださった方にはバレていると思うが、筆者は生粋のポケモンマニアで、ロケット団のファンだ。
だからこそ、この取材が決まった時は飛び上がるほど嬉しかったが、同時に不安もあった。
「筆者の想いほど、キャストの方々は作品に想い入れがなかったらどうしよう」という気持ちがあったからだ。
もちろん、役者さんは仕事で役を演じているわけで、ファンと同じように愛情を持っているとは限らないし、実際にそういう例も多いだろう。
まして、この4人は国民的アニメに多数出演している方々だ。
しかし実際に取材をしてみて、「ここまで作品とキャラクターに愛情があるのか!!」と衝撃を受けた。
彼らにとって、ロケット団は、宝であり、家族であり、役者としてのベースだったのだ。
ファンとしてこんなにうれしいことはない。
ちなみに、取材にあたり、ロケット団の活躍回を資料にまとめていったのだが、
資料が必要ないほど、4人ともロケット団の24年に渡る活躍を詳細までよく覚えていた。
本当に、彼らは家族のようにロケット団の仲間と共に今日まで歩んできたのだなと思う。
必ず来るであろう『劇場版ロケット団』の放送を楽しみ待ちつつ、これからもTVアニメ「ポケットモンスター」を楽しみたいと思う。
Info
TVアニメ「ポケットモンスター」
テレビ東京系にて毎週金曜よる6時55分から放送中!
6月11日(金)放送予定の第70話「おねがい!モルペコゲットして!!」
では、ロケット団が大活躍します!ぜひご覧ください。
※一部地域では放送日時が異なります。
※放送内容は変更になる場合があります。
© Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku © Pokémon