『冷たい熱帯魚』園子温と『龍が如く』名越稔洋が語る“表現としての暴力とエロス”「殴る蹴るはゲームの創世記の頃からやっている」「暴力とエロスは映画の中心みたいなもの」
『冷たい熱帯魚』『地獄でなぜ悪い』などの作品を手掛けた映画監督の園子温さんと、『龍が如く』シリーズ総合監督の名越稔洋さんのスペシャル対談が椿姫彩菜さんのMCで行われました。
番組では、「表現としての暴力とエロス」というテーマを中心に、椿姫彩菜さんからの質問にお二人が答えます。年々厳しくなる映画・ゲーム業界の規制についてだけでなく、ネット配信の普及に伴うコンテンツ産業の未来にまで話は広がっていき……。
表現としての暴力とエロス
椿姫:
今日はテーマとして「表現としての暴力とエロス」ということをちょっとお二人と膨らませていきたいなと思っていますが。名越さんは『龍が如く』とか色々なタイトルを手がけておられますが、そこらへんのお互いのこだわりといいますか。名越さんはゲーム、園さんは映画でそれぞれどのようなポリシーをお持ちなんですか。
名越:
そうですね……ゲームの場合はどうしても例えが『龍が如く』になってしまうんですけど、元々殴ったり蹴ったりというのはゲームの創世記の頃からやっている話で、段々絵とか音がリアルになっていく中で生々しさが足されていった時に、もう一歩先に伝えるものをどうしていくのか、というなかで『龍が如く』みたいなものも面白いかなと思ってやってきた感じですね。
名越:
それに独自性がとか、そこまで踏み込めているのかは、ちょっと疑問はありますけど。
椿姫:
当時、『龍が如く』くらいまでちゃんと描ききったものはゲームでは少なかったと思いますけどね。園さんは「暴力とエロス」というテーマではどうですか。
園:
映画の中心みたいなものですから、やり始めた頃は日本映画はあんまりそういうのがアメリカとか色んな国に比べて不得意なところにいたので、ちょっと日本でもやってみたいなというのは大きかったですね。
椿姫:
お二方とも日本ではあまり開拓されていなかったところを確立してきたという点でシンパシーもあるのではないでしょうか。
映画とゲーム、それぞれのエロスの表現
椿姫:
園監督作品でも、名越さんの作品であってもエロス、女性の魅力的な演出って大変だと思うんですけどそこらへんのこだわりを伺ってもいいでしょうか。
園:
ぼく実は女性的なところがあって、現場で女性が裸になってもあんまり興奮しないというか、男寄りじゃないんですよね、実際のところのエロスをわかってない気がする。
椿姫:
まったく恥ずかしくない作品を撮っていらっしゃる?
園:
サービスで撮ってなくて、自分がのめり込んじゃってるから……うーん、わかんないなあ。
名越:
(笑)
椿姫:
園監督の作品では女性同士の甘美な表現が描かれたりしますよね。
園:
もちろん、映像で見るんだったらレズの方が撮ってて楽しいですよね。男の裸は気持ち悪い(笑)。
椿姫:
(笑)、ものすごくストレートなコメントをいただきましたが……名越さんはいかがですか。
名越:
僕は実写ではなくて、あえてゲームという意味でCGという言い方をしましょうか。結局CGは偽物なので……世の中には昔からアニメーションで興奮する人もいるわけじゃないですか、それが駄目とも言わないしね。
たまに思うのは、人の延長線上にあるものに興奮するのか、それともフェティシズムなのか、どっちなんだろうと未だに思います。
椿姫:
確かにフェチっていうのは誰しも持っていますよね。
名越:
なんとなくCGで標準的に綺麗な人を作ってね。ボディバランスも肌の色だって自由に作れるから、そこを理解して結論が自分の中で出てないとCGで興奮させるというのは多分、不可能なんじゃないかな、と。
園:
でも、CGだったら演出に歯向かわないでしょう(笑)。
名越:
そりゃあ、言うなりですから。
園:
漫画家の永井豪先生が、「俺には監督よりすごく良いことがあるよ、俺の演出に逆らうやつは一人もいない」って。
名越:
そりゃそうだ。確かに。
椿姫:
素人目線からしたら、ぶつかったから良いものができる、というわけではないんですね。
園:
CGにしろ、漫画にしろ、羨ましいなと思うのは、役者がその作品にしか出ないじゃないですか。作品毎に全く新しい人が出る。当たり前だけど俳優を使っているわけじゃないんで、その作品限りの出演者を使えるのが羨ましいな、素晴らしいなって思います。