コリア・レポート編集長が語る北朝鮮の権力事情「実権を握っているのは金正恩ではなく労働党組織指導部」
7月4日にICBMの発射実験を行い、ますます国際社会からの孤立が進む北朝鮮。
その北朝鮮に君臨する“最高指導者”の金正恩委員長について、 コリア・レポート編集長の辺真一さんが「全ての権力を握っているのは朝鮮労働党組織指導部」と指摘しました。
依然として謎に包まれている事が多い北朝鮮の権力事情について、参議院議員の山本一太さんが辺さんに詳しくお話を伺いました。
国家よりも設立が早かった朝鮮労働党
山本:
何と言っても、今の日本の安全保障の最大の懸案は北朝鮮です。金正日政権の時は、いろいろ情報があったので、誰が周りを支えているかが分かった。でも、金正恩体制になってからは、なかなか情報が入ってこない。辺さんは金正恩委員長はどのような人物で、彼の狙いは何だと考えますか。
辺:
金正恩委員長はまだ年齢も33歳と若いですよね。この人が独裁国家のトップに君臨していて、北朝鮮的に言えば「核とミサイルで対抗している」。それを彼1人で一切合切やっているのかと言うと、私は実際に仕切っているのは朝鮮労働党の組織幹部だと思うんです。
北朝鮮の建国より、朝鮮労働党の方が創設が早いんです。すなわち、労働党が国家作ったんです。金日成氏、金正日氏、金正男氏と3代続いた国家を支え、今日に至る。全ての政策を労働党が練って、最終的に金正恩委員長の決済が下りる。これは父親の金正日政権時と全く同じです。
山本:
今の辺さんの話ですと、「33歳の金正恩氏が、これだけの立ち回りを国際社会を相手にやっているというのは不自然」という見方ですが、金委員長は党の幹部の怪物のような人たちを次々粛清していますよね。
党の中で力を得た邪魔になりそうな人を、金委員長自らの意思で粛清しているのか、それとも、もしかするとインナーサークルのような物があるんでしょうか。
辺:
全ての権力、実権を握っているのは、今申しました通り、労働党組織指導部ですね。
長老たちが金正恩にーー労働党組織指導部が北朝鮮の中央から地方、真っ赤の最後まで、組織を網羅している
辺:
労働党組織指導部は北朝鮮の中央から地方、真っ赤の最後まで、組織を網羅していて、人事から一切合財を握っているんです。組織指導部には、副部長というポジションがあって、その中に第一副部長が3人おり、いずれも年齢は70代の長老です。
金正恩委員長は党から軍、政府まで人事を一切合財、見ていられないんですね。その代わりに、この長老達が、「将軍様、早い段階で粛清した方がいいですよ」って手を打つんです。
たとえば金委員長の大会があって1時間近く演説している。その間に少しでも居眠りをしていないかというのをチェックするんです。
山本:
それだけで粛清されちゃうんですよね。
辺:
そうです。「金委員長の言っていることを聞き流している」、「言葉では『分かりました』と言いながら、実際には侮っている、だからそんな態度を取るのだ」と。
辺:
金委員長の指示命令に軍最高司令官、党幹部はたった一言「かしこまりました」だけ言えばいいと徹底されているんです。
山本:
あまり大きな声で言えませんが、それを日本の国会システムに適応されると大変なことになりますね(笑)。
辺:
日本人に生まれてよかったですね(笑)。それくらい労働党組織指導部が、金委員長を支えているんですね。