「レコ大のあとはレペゼン村祭りだ!」漫画家・山田玲司が三代目JSBの買収騒動を語る
2015年末に「日本レコード大賞」を三代目 J Soul Brothersが獲得した裏で、芸能プロダクション「バーニングプロダクション」が所属事務所に対して1億円を請求していたことが明らかになった今回の騒動。
11月9日に放送された『ニコ論壇時評』では、音楽業界の大スクープとして報じられたこの買収騒動と業界全体の今後について、山田玲司が大いに論じました。芸能界におけるタブーのひとつと言われた「レコ大買収」が明るみになった今年、日本レコード大賞は一体どうなるのでしょうか?
芸能界にとって賞レース買収は暗黙の了解
山田:
まず「レコ大ってまだやってたんだ」って思っちゃった(笑)。いやスゲェな、レコ大って1億円の投資に見合うだけの価値がまだ残ってるんだなって。
乙君:
コメントでもあるけど、安いよね。「1億円!?」 って思った。
山田:
安いよな~。その辺の不動産王だったら毎日買えちゃう。
乙君:
だったら、いっそみんなからクラウドファンディングで1億円集めて、実際に買収してみたら面白いのにってちょっと思っちゃった。
山田:
最近のレコ大を誰が獲ってるかって、知ってました?
乙君:
いや〜、ご存知ないな〜。
しみちゃん:
ないですね~。
山田:
ちなみに乙君が生まれたのは、1983年でしたっけ?
乙君:
1981年。
山田:
1981年は、寺尾聰『ルビーの指輪』。
一同:
あぁ~!
山田:
納得ですね!
山田:
しみちゃんは何年だっけ?
しみちゃん:
77年です。
山田:
77年は……。これ、いい曲ですよ〜! ジュリーです。沢田研二の『勝手にしやがれ』。
乙君:
マジで!?
しみちゃん:
おぉ~!
乙君:
だいたいその辺の曲ならいけるわ。
山田:
そこでね、いろいろ調べてみました。
しみちゃん:
はい。
山田:
これ面白いんだけど、2006年、ちょうど10年前って、誰が獲ったと思いますか?
乙君:
2006年……、ORANGE RANGEとかですか?
山田:
氷川きよしなんです!
しみちゃん・乙君:
えぇぇ!
山田:
「そうなの!?」って思うじゃん? その時点でレコ大は俺達の思い出の中にあるわけだよ(笑)。
乙君:
氷川きよしの、何て曲ですか?
山田:
これどう読むの? 「一つの剣」って書いて、いっけんでいいんですかね……? つまりこれくらい、我々は氷川きよしの事を知らないってことです(笑)。
しみちゃん:
そうですね(笑)。
山田:
っていうか、レコ大の事も知らなさすぎだよね。「77年のレコ大は『勝手にしやがれ』」って言われたら「あぁ、あったよね」って言えるのに、今はそう言えなくなってる状況だし。で、問題は2007年以降なんですよ。2007年はコブクロが獲っているんですけど、その後2008年から2010年まで、ずっと同じ方々が受賞していらっしゃいます。
乙君:
まさか?
山田:
そう、まさかの。
乙君:
EXILE!
山田:
そうなんです。EXILEが獲りまくってるんですね。
乙君:
しかし、節操ないねレコ大も。氷川きよし、コブクロ、EXILE、EXILE、EXILEでしょ?
山田:
氷川きよしの前は倖田來未で、その前がミスチル。2001年からは3年間浜崎あゆみ。だから三連覇っていうのも無くはないんですよ。でもEXILE三連覇のあとに、AKB二連覇があって、そこからまたEXILE、三代目、三代目って続く訳です。またこれ三連覇です。
だからね、今年どうすんのかなって。「買えるんだ」ってなっちゃたあとに、番組やるのかな。これでもしまたEXILEが賞獲ったらどうすんのって話よね。結局レコ大獲ったやつが、「あいつ金持ってんな」って思われるだけで(笑)。
乙君:
そうそう。
山田:
「あいつの事務所1億出せるんだ、強ぇー!」って話で、終わんねぇ? これ。
乙君:
終わる終わる。
山田:
音楽的価値は皆無なんですよ、たぶん。
俺、吉田拓郎の対談番組が大好きなんだけど、そこに沢田研二が出た奇跡の回があって。で、その時に吉田拓郎が沢田研二に賞の事を聞いてたんだよね。そうしたら沢田研二は、「いやぁ所詮はパワーゲームじゃないですか」って。それ聞いて、もう「ジュリー超かっこいい!」って思った! 芸能界で1番おっかないって有名なジュリーが言うと、すごい説得力があるじゃん? ザッツ芸能界っていうかさ。結局のところ昔からそんなことはみんな分かってて、「はいはい」って感じなんだなって。あと、「レコ大=到達点」みたいなところがあるのかな、とも思う。バンドなら武道館、高校球児なら甲子園みたいな。
乙君:
日本のグラミー賞みたいなもの?
山田:
「どこかにたどり着かないと終われねえ」みたいなさ。
乙君:
それはあるかもしれないですね。
レコ大の崩壊はお茶の間の崩壊と同時に訪れた
山田:
あとさ、昭和の年末によくあった、「レコ大の会場から今バイクに乗ってNHKホールに向かってます!」ってやつ、覚えてる? あれが日本の年末だったよね。
ああいう風景とか、それこそ名前からしてもレコードなんかもう無いのに『レコード大賞』であることとかを考えても、きっと「昭和の思い出みたいな物を無くしたくない」みたいな気持ちがきっと背景にあって。
音楽業界だってとっくの昔に各ジャンルで村化していて、各村でおのおの戦いをしているような状況なのに、「いまだに全国大会やるんだ」って思うし、逆に言えば、日本はもう全国大会が出来なくなってるのかなって。
いつ終わったかなって考えたんだけどさ、俺は1997年の『 CAN YOU CELEBRATE?』までじゃないかと思うんだよね。で、テレビも電話も家に1台しかなくて、みんなでコタツに入ってテレビを観てたら演歌もチェッカーズも一緒に出るみたいな、ああいうお茶の間が壊れ始めたのは、多分1985年くらいだったんじゃないかなって。
乙君:
え、そんな早いの?
山田:
CDの発売がだいたいその頃なんだよ。
乙君:
レコードが終わった時ってこと?
山田:
そしてウォークマンが安く手に入りだした頃でもある。発売自体はもうちょっと前なんだけどね。で、バブルが85年のプラザ合意からで、それが『積木くずし』の頃なんだよ。
乙君:
『積木くずし』?
山田:
知らないか。
乙君:
ドラマだよね?
山田:
そう、家庭崩壊の物語なんだけど。80年代半ばに経済がグイっと上がるタイミングで、『積木くずし』のように世間の家庭も崩壊して、それと同時にレコ大も崩壊してるのよ。
一同:
あぁ〜。
山田:
俺は紅白歌合戦が終わったのもこの頃だと思ってるんですよ。あとね、ゲーム。家庭用ゲーム機である『ファミコン』が爆発的にヒットして、携帯型ゲーム『ゲームボーイ』が発売したのも同じくこの頃。だからこうなるともう、「さらば家族」、「さらばお茶の間」という感じで進んでいくんだよ。
でも、それから1994年から2000年代初頭くらいまでは、「今年は小室だよね」とか「今年からはつんくになったよね」みたいなものもあったんだけど、2005年に『iTunes Store』が登場して、音楽がMP3で買えるようになったことをきっかけに、完全な音楽村化が始まった。ガジェットの変化によって完全にお茶の間からスマホになってしまったんだよね。
そうなるとみんなそれぞれ好きなものしか聴かないから、AKBグループが200万枚以上売り上げているような曲ですら知らない人が多い、みたいな状況が出来上がってしまったと。乙君、AKBの曲知ってる?
乙君:
まったく知らないです。
山田:
だよね、だって俺らもEXILEで何が流行ってるか知らないじゃん。
乙君:
チューチュートレインじゃないですか?
山田:
ワーオ(笑)。
一同:
(笑)
中年層も今の流行を知りたい
山田:
だけど思うんだけどさ、「今年の曲は何だっけ?」って会話があって、「『勝手にしやがれ』だよね」とか「安室だったね」って言えるのって良くない?
乙君:
それはまぁ良かったけど、でもその時代に戻るのはもう無理でしょう。
山田:
そこで俺考えました!
乙君:
考えたの(笑)?
山田:
この国ってもう、中年の国なわけ。人口分布図で言うと40代くらいが中心で、つまり「おっさん・おばさんの国」なんだよ。ってことは、みんな昔のことなら知ってるんだよ。ほとんどのサイレントマジョリティが、今流行ってることを知らない。「じゃあ、何なら知りたいと思ってるんだ?」と。でもこれ、オポチュニティじゃないですか? これってチャンスなんじゃないですか?
つまり、ヒップホップ村、AKB村、J-POP村とかいろいろある中、それぞれの村のレペゼン、いわば代表を決めちゃえばいいんじゃないですか? 今年のヒップホップレペゼン大賞とか、AKBレペゼン大賞とかを決めるわけ。そしたら各村がどれだけ代表選びで盛り上がることか。絶対に予選は面白くなるよ。
一同:
ほお~。
山田:
で、最終的に「今年はどの村のレペゼンが優勝するのか!」っていうのをやれば良いんじゃない。『M-1 グランプリ』もなくなったことだし、あの名前を頂きましょう。
乙君:
いただきますか!
山田:
漫才ワンのM-1から、ミュージックワンのM-1に。
乙君:
あれ、M-1って復活しなかったっけ?
山田:
マジ?『THE MANZAI』になったんじゃないの? まぁいいや、出来ることなら貰いたいです(笑)。で、その『ミュージックワングランプリ』で、「今年の本物の神曲」っていうのを全国の人が投票できればいいんじゃないかな。そしたらその番組は盛り上がると思わない?
乙君:
だったら、もう義務化すればいいんですよ。義務化っていうか、毎年12月初めの土曜日に国民投票を絶対やるとか。それで投票数多かったやつが「その年の年男」みたいな感じで。
山田:
よし、100万円出そう! 100人に当たって、予算1億円でいいならすげぇ安いじゃん。スマホから投票が出来て、投票した人の中から年末のお小遣いとして100万円が何人かに当たったら良くない?
しみちゃん:
なるほど(笑)!
乙君:
まぁまぁまぁまぁ。
山田:
だって、家でゴロゴロしながらスマホ触ってる奴は暇だから、そんなのあったらとりあえず観るじゃん。その時初めて聴いた演歌で、「やっべぇ~演歌やべぇ~」って言いながら泣いちゃたりして。
乙君:
あ〜、あるかもね。
山田:
俺、演歌って大嫌いだったんだけど、ある年齢になると「演歌が差す」っていうかさ、「魔が差す」みたいな感じで、演歌がささっちゃう時が来るんだよ。みんなはまだ来てない?
乙君:
俺とっくにきてます。
一同:
(笑)
山田:
な! 「肴は炙ったイカでいい~」とか、「だよな〜!」って、酒も飲めないのに思っちゃったりするじゃん?
乙君:
思っちゃう思っちゃう(笑)!
山田:
ほとんどの日本人にそういった時が来てるんじゃないかと。かつては若いやつに焦点絞って音楽ビジネスやったせいで、みんな昔の曲ばっかり歌ってるじゃん。でもカラオケボックスに行って昔の歌を歌うばかりじゃなくて、本当は今のことも知りたい。そこのニーズが実はごっそり空いてる気がするんだよね。
乙君:
なるほどね。仕掛けるやつが出てきてもいいと思うんだけどね。
山田:
だいたいね、今年これだけヒップホップが盛り上がってて、「『レペゼンはこの曲』っていうのを何で決めねぇんだよ!」って思わない?
しみちゃん:
うんうん。
山田:
だったらもうZeebraさんとKダブさんで一緒になって「レペゼン今年のヒップホップ大賞」を選べばいいじゃん。そしたら絶対そっちはそっちで『新木場ageHa』が大変な盛り上がりをみせるから。
一同:
(笑)
山田:
新木場村は新木場村であっていいんだよ。そしたら、そのレペゼン聞きたいじゃん。「あっちでは誰が勝つんだ?」みたいな感じでさ。俺はこういうのを期待しちゃうな。
乙君:
それって玲司さんはヒップホップに寛容だから面白く感じるのかもしれないけど、例えば「今年のタンゴのナンバーワンを決めます」って言われた時に興味ありますか?
山田:
あるある。「タンゴNo.1」気になるじゃん。「タンゴNo.1対JポップNo.1の戦い」が観れるってことでしょ?
乙君:
「戦い」っていうのは何なの、それはどうやって決めるのよ(笑)。
山田:
ハートハート! 仕事で疲れたみんなのハートを少しでも慰めてくれたら良いんだよ。
乙君:
それをニコ生でやればいいんじゃないの?
山田:
いや、ここは「ニコ生村」なの! 俺たちはビレッジピープルなんだよ! ビレプーなんだよ俺たち(笑)。!
一同:
(笑)
山田:
ニコ生もまた、村のひとつなんだよ。俺たちはその村人として幸せに暮らしてるんだけどさ(笑) 。まぁそんな感じで、みんなクロスオーバーしていこうよって話。
乙君:
そうですね。フェスとかもクロスオーバーして、みんなでワーっと盛り上がればいいのにって思いますね。