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「『カーズ』一作目はディズニーピクサー映画の頂点」劇場版最新作『カーズ/クロスロード』も含めてシリーズを総括してみた

監督、ジョン・ラセターが描こうとした「世代交代」

岡田:
 ジョン・ラセターっていう監督でありプロデューサーがいて、『トイストーリー』もそうですけど、『カーズ』とか監督した男なんですけども、こいつがもう本当に凄すぎるんですよね。自らを宮崎駿の一番弟子と言うだけあってですね、もう本当にジブリと同じ状況になっているんですよ。ピクサーにも他に有能なクリエイターがいっぱいいるんだけども、ラセターと比べられるとキツイんですよね。

 それはジブリにも有能な人はいっぱいいるんだけども、宮崎駿と比べられると皆しんどいのと同じでですね、宮崎駿がいるばっかりにやっぱりジブリからは2番手3番手がなかなか育ちにくくて、面白そうな企画は結局宮崎駿がやっちゃう。ラセターもそれを感じてたと思うんですね、やっぱりすごい企画というのはラセターがやっちゃうんですよ。

 今回初めてラセターが自分で考えた『カーズ/クロスロード』のストーリーというのを、これを俺が現場やっていたらダメだ、俺はサポートする側にまわらなきゃダメだと言って、早目の引退宣言ですね。こんなとこでも宮崎駿の弟子なんですよ(笑)。

 その『カーズ/クロスロード』のお話というのが、主人公のマックィーンは偉大だけどもいつまでもそういうわけにはいかない。ロッキーシリーズみたいに後から来るものに座を譲ってマックィーンは現役のレーサーでありながらも、彼等を応援する立場にもなるんだというね。

 なんかね……ラセターの人生一代記みたいな(笑)、そんなのラセターがやれよ! と思うんですけど、それを後輩に監督をやらせることで、どうだ、という感じでやったんですけど、そんなものを任せられた後輩は「はあー?」ですよ(笑)。

感情のアナ雪と、ロジックのカーズ

岡田:
 脳ではわかってるけど身体ではわかってないから、マックィーンが引退する理由とかね。なんで次世代のマックィーンに応援されてレースを走る車があって、交代劇があるのかっていうのが、理屈ではつながっているんだけども、見ている人間の感情レベルで上手くつながっていないんですよね。

画像は『アナと雪の女王 MovieNEX』Amazonより。

岡田:
 あれだけ、とんでもなくいい加減なロジックの説明しかない『アナと雪の女王』があって、雪の超能力を持っているお姉ちゃんが、もう私なんていらないのよ、私はもう雪の世界で生きるの! とか、「寒くはないわー♪」って歌いながら、雪の国を作ったら、そこに、「お姉ちゃん、お姉ちゃん、それは誤解よー」と言って妹が来て、最後は帰ってきて仲良くなって、2人で雪のテーマパークみたいなのを作るみたいな(笑)。

 ものすごいデタラメな話があるんですけども、ストーリーのロジカルは、本当に『アナと雪の女王』って近代稀に見るくらいデタラメなんだけど、感情というか動機はものすごいぴったり合ってるんですよね。

岡田:
 だから見ている人間は歌を聴いて気持ちにシンクロしていたらすんなりと見れるんですよ、だからちゃんと感動もできる。『カーズ/クロスロード』はそれと反対にあらゆるロジカルな部分は整合性があって、セリフも全部それで間違いないんですけども、見ている人間の感情が乗っていかないので、理屈で説得されたみたいな不思議なものになっちゃってる。

 それは多分監督とか作っているスタッフがまだラセターの引退なんか本気で信じてないし、そんなもの引退劇っていっても宮崎駿が結局引退しなかったのと同じようにラセターもどうせ現場に帰って来るだろうと思っていることが、関係してるんじゃないかなと僕は邪推しております。

『カーズ/クロスロード』を見る時は「字幕版」がおすすめ

岡田:
 まあね『カーズ/クロスロード』これから見る皆さんは是非とも英語版で、吹き替え版ではなくて字幕版で見て下さい。とにかく『カーズ/クロスロード』シリーズっていうのは、冒頭のタイトルロゴがめちゃくちゃ格好いいんですよ。

 でも今のディズニー映画っていうのは全て、吹き替えはロゴをカタカナにしちゃってるんですね。カーズっていうのは、アメリカの自動車文化そのものですから、例えばクライスラーのロゴとか、フォードのロゴとか、シボレーのロゴみたいに、カーズのエンブレムっていうのを作っているんです。

画像は『Cars 3 – Official US Trailer』YouTubeより。

岡田:
 だからカーズっていうエンブレムも、昔の黄金期のシボレーっぽいですね。筆記体でキラキラ輝くメタリックの文字で作っていて、死ぬほど格好いいんですけど、それが明朝体でカタカナで「カーズ」になっているのがですね、なんじゃこれは! っていう(笑)。

 もう本当に1からめちゃくちゃカーズのロゴの出方が格好いいから、是非今回の『カーズ/クロスロード』も見て下さい。いろいろ悪口も言ったんですけど、冒頭のスピード、「I’m speed.」っていうセリフ。「俺はスピードなんだ」っていうのが、翻訳不可能な英語のニュアンスなので、やっぱりマックィーンのモノローグのセリフも英語で聞いて字幕で見て、こういう感じなんだ、この感じを彼は言いたいんだっていうニュアンスを掴むほうが楽しいと思います。

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