『ジョジョ』出演という“人生の夢”を叶えたファイルーズあいは、これからどこへ向かうのか? 「やりたいことが多すぎて時間が足りない!」と語った彼女の“次なる目標”【人生における3つの分岐点】
分岐点3:『ダンベル何キロ持てる?』に出演
──話を今日のテーマに戻すと、『ジョジョ』と出会い、声優になる夢を持ったのが2つ目の分岐点。そして最後の3つ目が、『ダンベル何キロ持てる?』にご出演されたことでした。2つ目の分岐点から、『ダンベル何キロ持てる?』に辿り着くまでにも、いろいろあったんじゃないですか?
ファイルーズ:
そうなんです。「徐倫のために声優になるぞ!」と決心しても、なかなか上手くはいかないわけですよね(笑)。
さきほど親がなんでもやらせてくれたと言いましたけど、習い事のたぐいはどれも長続きしなくて。親に「声優になりたい」と言っても、「また勢いで言ってるな」と思われてしまったんです。
しかも仕事となると、習い事とはレベルが違って、人生を左右されるじゃないですか。だからとても反対されたんです。
──ここまでうかがってきた話だと優しくて素敵な親御さんですけど、そこは厳しさがあったのですね。
ファイルーズ:
だから高校を卒業したあと、グラフィックデザイナーの専門学校に行って、絵の仕事に就こうとしました。絵を描くのは楽しかったので。でも「趣味で描いている方が楽しいな」と思ってしまったんですよね。
それで専門学校の三年生になったとき、改めて母親に「本気で声優になりたい」と言ったら、「あなたは就活したくないから言ってるんでしょ? 就活して、正社員として一年間の職務経歴を作りなさい。それで貯めたお金で養成所に行くならいい」と返されたんです。
──うーむ……厳しいですけど、正論ですね。
ファイルーズ:
それで、言われた通りに頑張ったんですよ。
もうね、就活を体験された方なら絶対に気持ちがわかると思うのですが、「『お祈り』するなら、内定くれよ!!」って感じの毎日でした……(笑)。
──お祈りメールは心を削られますよね。
ファイルーズ:
だからこそ頑張りました。
それに、声優って顔を出さずに、声だけでお芝居をするからこそ、女性が男性にもなれるし、男性が女性にもなれるし、もっと飛躍して犬にも宇宙人にもなれる。それが声優という仕事の魅力だと思ってたので、実力のある人間になろうと思いました。
──頭の切り替えが素敵ですね。そのためにどうされたんですか?
ファイルーズ:
養成所に入ってからは、誰よりも努力しました。そうやって、自信を持って言えるくらい努力しましたね。
『ジョジョ』に出たいという黄金のような夢があるし、『ジョジョ』をきっかけに出会った友達にとって「誇れるような自分」でありたいという、強い気持ちにも支えられて。
おかげで無事、養成所を卒業してから事務所に所属できたんですが、そこからがもう、さらに大変で。
声優としての「ファイルーズあい」を形作った『ダンベル』
──事務所に所属してから、本当に大変な日々がはじまったと。
ファイルーズ:
とにかくオーディションに受からないんですよ。
当然、他にも上手く行かないこともたくさんあって、そうすると自信がなくなりますよね。
──就活がエンドレスで続くような感じでしょうか。ツラいでしょうね。
ファイルーズ:
そんなときに、気にしないようにしようと思いながらも色々と考えてしまったりもして…。例えば、自分のファッションがダメなのかな、とか……。
──ファッションとは、どういうことですか?
ファイルーズ:
新人の女性声優は大体、髪色だったり、メイクや服に関して控えめな方が多いと思うんです。
でも私はもともとそうした格好をして来なかったので、それを選ぶと、私が私じゃなくなってしまいそうな気がしていました。
鏡を見たときに、自分らしい自分がそこにいる。それだけはどうしても曲げたくなくて。
そんな悩みを抱えたままがんばり続けていて、初めてオーディションで合格をもらったのが、『ダンベル何キロ持てる?』の紗倉ひびき役でした。奇跡だったと、今でも思います。
──だから3つ目の分岐点がそこになるんですね。
ファイルーズ:
受かっただけでも本当にうれしかったですし、それまで趣味でやっていた筋トレの知識も活かせる内容でしたし、イベントで筋肉自体も活かすことができた(笑)。
やっぱり、「好きなことは得意なことなんだな」って、改めて思えた作品でしたね。
ニコニコニュースオリジナルさんで以前取材していただけたのも、『ダンベル』がきっかけでしたし、いろんなご縁がここから一気に繋がった。この作品には、感謝してもしきれないです。打ち上げの最後の挨拶で、壇上で号泣してしまったくらい、思い入れのあるタイトルなんです。
──それまでの人生が全部つながって、肯定されたような作品だったわけですね。
ファイルーズ:
本当にひびきに出会えて良かったです。役柄としても、好きなタイプでしたし。私、実はひびきに出会うまで、あんまり元気っ子を演じるのが得意だと思っていなかったんですよ。どちらかというと、ふわふわしたロリータ系のキャラが得意だと思っていたんです。
でもお仕事をコンスタントにいただけるようになってから、元気っ子やギャルをやらせていただくことが多くて。自分がそうした役柄が得意なこと、演じていて楽しいことが見つかった作品でもあるんです。
声優としての「ファイルーズあい」を形作ってくれたのは、ひびきとの出会いだったと思います。
「筋トレ」と「メイク」
──そんな『ダンベル』から3年。『ジョジョ』もそうですし、それ以外の活動でも、怒涛の勢いで夢を叶え続けている印象です。
ファイルーズ:
本当に人に恵まれました。自分で言うのもなんですが、生い立ちのせいで人より辛い幼少期とかを過ごしてきたのもあって、「明日が来なきゃいいのにな……」と考えることもあったんですよ。
そんな幼少期の私に、今の私の姿を見てほしいですね。
──やってきたことが報われたと伝えたいですよね。
ファイルーズ:
はい、勇気を出して行動すれば、必ず結果になるよって。結果にならなかったとしても、努力した過程は別の場所で絶対に活きてくるよ。って。
──そんな数々の経験を乗り越えてきた現在のファイルーズさんが、いま大切にしていることはなんですか?
ファイルーズ:
「自分を愛すること」です。自分を愛していないと、他人にもきつく当たってしまう。鏡を見る度に、どんどん負のループに入ってしまう。昔の私がそうだったので、わかるんです。そして私は、もうあの頃には戻りたくない。
でも自分を愛するって、簡単なようで難しいんですね。自分に対する理解も深めていかないといけないし。
──自分を愛するために、どんなことを心がけています?
ファイルーズ:
小さなことからでいいので、自分が好きな人に対して、自分が持っているイメージに近づけるように努力することですね。そうすれば、自分の好きなところがだんだん増えていくじゃないですか。そういう風にひとつずつ、何かを積み重ねることです。
──養成所時代のお話を思い返しても、努力を積み重ねることで自信をつけてきたと仰ってましたよね。
ファイルーズ:
そのときもですし、筋トレもそうでしたね。
筋肉っていきなりはつかないじゃないですか。でも、続けることで確実に変わっていく。
昔も今も自分の体型を完璧だとは思っていないんですが、努力すると体型が変わることも、それだけ自分が努力できる人間なんだってことも、自分の体が証明してくれているんです。
そういう、変えられる自分のことを愛しています。
──まさに『ダンベル』の紗倉ひびきのような。
ファイルーズ:
それからメイク。これも誰かのためにやるんじゃなくて、自分のためにメイクすることで、どんどん自分のことが好きになっていく。
これは私が出させていただいた、『トロピカル~ジュ!プリキュア』のテーマでもありました。誰かのためのメイクじゃなくて、自分に気合いを入れるためのメイク。とても共感できて、大好きな作品でした。
そうやって自分を愛していれば、他人から何を言われようが、「でも、自分は自分のことを好きだしな」って思えるんです。
──筋トレとメイク。ファイルーズさんが仰ると、すごく説得力があります。
ファイルーズ:
「自分を愛する」という単語を反芻するようになったきっかけが、Netflixで配信している『ル・ポールのドラァグ・レース』っていう、アメリカのリアリティ番組なんです。
ホストを務めるドラァグ・クイーンのル・ポールさんが、必ず番組の最後で「自分自信を愛せなければ、他の人も愛せない。OK?」みたいに締めるんですね。ルーさんはこの「自分を愛しなさい」というメッセージを、20年くらい前からずっと発してるんです。
それを聞いたとき、私はお尻に肉がついてるとか、瞼の幅が右と左で違うとか、髪の毛がボサボサとか、そんなのどうでもいいんだなって思えたんです。
不完全な自分ごと愛して、強くなって、ほかの人にも愛を与えることが人間なんだって思えるようになった。めちゃめちゃ感謝しています。
ル・ポールさんは、いつかお会いしてみたい方ですね。
死ぬまでに終わらないんじゃないかってくらい、夢がたくさんある
──最後にこれからの未来のお話も伺いたいです。今のファイルーズさんの目標はなんですか?
ファイルーズ:
原作者になることです!
──わ、即答ですね。しかも意外なお答えです。
ファイルーズ:
今、12年来のオタク友達と一緒にアイデアをまとめているんです。最初は軽い気持ちで始めたことだったんですけど、形になってきたら、これ、いいんじゃない? と。
いつかちゃんと発表できたらいいなと思っています。
──夢がありますね! 3年前におっしゃっていた「忙しくなりたい」とか「徐倫を支える役をやりたい」両方叶えてしまわれたので、正直なところ、燃え尽き症候群のようになられているかもしれないと勝手に危惧していたんです。でもそんな想像は浅はかでした。
ファイルーズ:
いやいや、燃え尽きなんて全然ないですね。常に目標がいっぱいあるんです。
「原作者になりたい」以外にも、「個展を開きたい」とか、「アメリカに旅行したい」とか、死ぬまでに終わらないんじゃないかってくらい、夢がたくさんあるので、燃え尽きることはないと思います。
もちろん、声優のお仕事はいちばん大事。
それは当然で、徐倫はもちろん、演じさせていただく役のことはこれまでも、これからも、ずっと大切にします。その上で、声優としての枠に縛られず、常に新たな道を切り開いていきたいんです。
──ファイルーズさんは表現者なんですね。
ファイルーズ:
そうあれたらいいなと思います。いろんな作品、人との出会いで「ファイルーズあい」はできていると思っていて。
影響与えてくれた全てのものに感謝しながら、自分もそうやって人に影響を与えるものを生み出し続けていく存在になりたいです。
──最後の最後のまで素敵なお言葉、ありがとうございます。……じゃあ、今日の取材はそんなところですかね?
ファイルーズ:
そうですね……あ! やりたいこと、具体的にもう一個ありました! ファッションです。
ファッションブックを作ったり、アパレルブランドができたらいいなとも思っているんです。柄は私がデザインしたりして……。着てくれる子たちの、心の「鎧」になれるような服を、送り出せたらいいですね。
ああ〜、もう、やっぱり時間が足りない!!
当たり前のことをいうようだが、声優さんの声はよく通る。実際に演技をする際には、声が部屋全体に反響し、体にビリビリと音が響いてくるような感覚になる。
その反動からか、インタビュー時など普段の声優さんは、声のトーンを落として話されるかたが多いように思う。
一方で、この日のファイルーズさんは、ハキハキと、背筋がピンと張ったような、よく通る声で終始お話しされていた。「声にパワーがある」というと陳腐に聞こえるかもしれないが、とにかく聞いているだけでパワーをもらえそうな声なのだ。
そんなファイルーズさんが「自分を愛することが大切」だと言うと、なんだか私も自分を愛してみようかなと思わせる、そんな影響力のある声だった。
このパワーはきっと、本インタビューで語られたような苦労と努力の果てに身に付けたものなのだと思う。改めて、ファイルーズさんがいま数々の作品で重要なキャラクターを演じていている理由がわかった気がした。
これからも「声優・ファイルーズあい」は、きっと作品を通して多くの人々に勇気とパワーを与えてくれるはずだ。
ファイルーズあいさん直筆サインをプレゼント!
インタビュー後、ファイルーズあいさんに直筆サインを書いていただきました。今回はこの直筆サインを1名様にプレゼントします!
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「ファイルーズあいさん直筆サイン」を1名様にプレゼント🎁
— ニコニコニュース (@nico_nico_news) June 10, 2022
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締切:2022/6/17(金)23:59 当選はDMでお知らせします。 pic.twitter.com/eZycRFPODS
ファイルーズあいさん撮りおろしフォトギャラリー
インタビュー後、ファイルーズあいさんのフォト撮影を行いました。
記事とあわせて、ぜひお楽しみください。