地下道でガソリンが引火爆発し、一瞬で町が瓦礫の山に… 1万人以上が住む家をなくしたメキシコの爆発事故「グアダラハラ大爆発」を解説
今回紹介する動画は、ゆっくりするところさんが投稿した『【ゆっくり解説】張り巡らされた下水管が突然大爆発 吹き飛ばされたマンホール・・・一瞬で街は瓦礫の山に『グアダラハラ大爆発』【1992年】』。
1992年にメキシコ・グアダラハラで発生し、250人以上が命を落とした爆発事故について、音声読み上げソフトを使用して解説しています。
■250人以上が犠牲、行方不明者も500人以上に
魔理沙:
今回紹介するのは『グアダラハラ大爆発』だ。
霊夢:
グアダラハラ? 聞いたことのない名前ね。
魔理沙:
グアダラハラというのは、メキシコにある都市の名前だ。北米有数の世界都市でもあり、その美しさから「西部の真珠」とも呼ばれるらしい。
霊夢:
ほんと、きれいなところね。
魔理沙:
1992年4月22日、午前10時6分ごろ。突然、グアダラハラの市街地、地下から大爆発が発生した。
霊夢:
イキナリ!?
魔理沙:
この爆発は地下、下水管を伝っていき、民家や街の施設などを、一瞬にして吹き飛ばした。しかも、この爆発は1度では収まらず、1時間以上連鎖的に次々に発生した。
霊夢:
1時間以上もなんども爆発!? そんなことあるの……。
魔理沙:
道路の真下で爆発が起こっていたため、マンホールの蓋は吹き飛び、道路は何キロにも渡って陥没。美しかったグアダラハラの町は、一瞬にして瓦礫の山になってしまった。
霊夢:
ほんとに一瞬で……。
魔理沙:
あまりに突然の出来事だったため、街の人たちはなんの対処も出来ず、爆発の被害を直に受けてしまっていた。倒壊した家屋と一緒につぶれた人……火災で焼かれた人、吹き飛んだマンホールが激突した人など、その被害には様々なものがあった。
霊夢:
ひどすぎる……もう街がほとんど爆撃でも受けたみたいになってるじゃない。下水で爆発したから、こんなに広範囲で被害が出たのね……。
魔理沙:
下水管は様々な場所に繋がっている、いわば血管の様に張り巡らされているからな。この爆発は、最終的になんと4時間以上も続き、約13kmに渡って街は破壊され、250名以上が命を落とし、1400人以上が重軽傷を負い、1万5000人以上が住む家をなくした。
霊夢:
そ、そんなに沢山の人が……。
魔理沙:
行方不明者も500人以上居るといわれているから、実際にはもっと沢山の人が亡くなっていたと言われている。
霊夢:
こんなに大規模なら、そういう人も出てくるかもね……。
魔理沙:
身元の特定が難しい人も居ただろうしな……。直接的な被害も相当なものだったし、街自体が壊滅状態になってしまったために、二次的な被害も多かった。推定では、この被害総額は10億ドルとも言われている。
霊夢:
でも、どうしてイキナリ地下で爆発が起こったのかしら? なんか工事とかしてたの?
魔理沙:
いや、当日爆発に繋がるような工事などは特に行われていない。しかし、実はこの爆発の原因は、調査前から多くの人には察しがついていた。
霊夢:
え、どういうこと?
魔理沙:
爆発が起こる3日ほど前。グアダラハラの住民から、「トイレや排水管から変な臭いがする」という訴えが、役所や消防署に届いていた。別の場所にあった飲食店では、「変な臭いがする。ガス漏れしてるんじゃないか?」という騒ぎになり、ガス会社を呼び出して点検を行っていた。
霊夢:
異臭騒ぎ……?
魔理沙:
しかし、この時の点検ではなんら問題がなく、ガス漏れが起きている様子は一切なかった。
霊夢:
ガスが漏れてないのに異臭騒ぎ……? なんなのかしら。
魔理沙:
だがこの後も、マンホールからガスが出ているという目撃証言や、住民からの異臭に対する苦情が後を絶たなかった。しかし、ここグアダラハラでは、下水管からの悪臭は日常茶飯事であり、決して珍しいことではなかった。
霊夢:
え、普段からそんなに臭いがしてたの?
魔理沙:
当時の背景として、グアダラハラというのは、短期間で急速に経済発展した都市であり、産業規則などを無視し、下水に産業廃棄物を垂れ流す企業が多かったんだ。
霊夢:
なんか経済成長の闇の部分って感じね……。
魔理沙:
この異臭騒ぎは、グアダラハラ各地で相次いで発生していて、事故発生の前日、「水道からも異臭がする」という苦情が多く、この異常な件数の苦情を受け、やっと水道局が調査を開始した。現場の調査では、確かに異臭を確認できた。水道の水を調べると、水道水にガソリンが混じっていることが判明した。
霊夢:
水道にガソリン……?
魔理沙:
しかし、その汚染源が特定できなかった。次に水道局は下水管の調査を開始した。すると、下水管にはガスが充満していて、今にも爆発する危険性があることがわかった。そのため、水道局はすぐに市へ連絡、対応するように警告したが、市はこの警告をまともに聞かず、ただ待機するように命じるだけだった。
霊夢:
えぇ……爆発の危険があるっていわれてるのに放置してたの?
魔理沙:
結局、適切な対応はされず、現場はそのまま事故当日を迎えてしまった。事故当日も、グアダラハラの多くの住民が異臭について、消防署にも苦情を寄せていた。しかし、消防署長は「爆発の可能性は低い」と回答し、やはり適切な対応はされなかった。
霊夢:
ちょ、みんなちゃんと考えてよ……。
魔理沙:
その一方で、水道局だけは現場をその目で視て、危険性を認識していたので、当日も調査を続けていたが、水道局には避難命令を出す権限がないので、ただ役所にそれを要請するしかなかった。だが、市はこの要請を簡単には聞き入れず、そうこうしているうちに爆発が発生してしまったんだ。
霊夢:
爆発前にそんなことがあったのね……。もう少し避難とか早くしていれば……。
魔理沙:
事故直後の調査で、当初はグアダラハラ市内にある、食用油の製造工場が垂れ流していた、可燃性の液体が原因だとされていた。しかし、真相は違った。ここグアダラハラの地下には、下水管のほかに、鋼鉄製のガソリンパイプラインが通っていた。
これはメキシコ国営の石油会社「ぺメックス」という企業が管理運用しているパイプラインだった。このぺメックスの工場付近の地下に通っているパイプラインの一部に、破損している箇所を発見した。
霊夢:
そこからガスが??
魔理沙:
これは異なるいくつものパイプ同士が接触していたために、その部分に腐食が起きて脆くなってしまい、そこからガソリンが漏れ出し、下水管や水道管に混ざっていた。
このガソリンを送るパイプラインが設置されているところに、新規に亜鉛メッキの銅製排水管が接触する形で設置されていたため、腐食が発生していたんだ。これは「局部電池腐食」といって、電池のプラスとマイナスのようになる化学反応によって、腐食するというものだった。
霊夢:
そんなことあるんだ……。
魔理沙:
こういった危険性を無視した設置によって、地下にガスが充満する事態になってしまった。
霊夢:
それが異臭の原因だったのね……。
魔理沙:
ああ、この漏れ出していたガソリンの量は、推定でも最低60万リットルという、膨大な量だった。
霊夢:
60万リットルって、ちょっと想像できないくらいの量ね。そんな量が水道に少しずつでも混ざってたら、異臭騒ぎにもなるわ……。
魔理沙:
しかも、ガソリンは非常に気化しやすいものだ。この気化したガソリンが地下に充満していたんだ。
霊夢:
じゃあ、地下そのものが大きな爆弾みたいな状態だったのね……。
魔理沙:
それに加えて、事故当時の気温は30度を超える猛暑日。そしてガソリンの沸点は30度。漏れていたガソリンは凄まじい勢いで気化して充満していた。だから、いつ爆発してもおかしくない状態だったんだ。
霊夢:
そういえば、爆発を起こしたきっかけはなんだったの?
魔理沙:
爆発のきっかけは、皮肉なことだが、事故当日に調査を続けていた水道局の調査員が、マンホールの蓋を開けた際、微量の火花が飛び散っていて、それが引火して発生していたんだ。
数千人以上の被害者を出し、街を破滅させたこの大爆発は、グアダラハラ史上最悪の災害となった。事故後、ガス爆発の危険性を警告されていながら、住民を避難させなかった市長、水道局、ぺメックスの責任者などが逮捕され、その後ガソリンパイプラインは、市街地をさけ、遠く離れた場所に移設され、ガス検知器などが設置されることになった。
霊夢:
市が早めに避難命令でも出していれば、ここまでの被害にはならなかったと思うと、悔やまれるわね……。
魔理沙:
それに、他の事例でもそうだが、こういった短期間で急速な経済成長をした国や地域というのは、どうしても裏側に杜撰な部分が出てきてしまうものだな。
霊夢:
利益を追求しようとすると、どうしても安全がおろそかになりがちになっちゃうものなのね……。
魔理沙:
そして、こういった事故が起きてから、反省して安全基準や規制が設けられるんだな。
霊夢:
やっぱり、どこの国でも人間って大変なことになってからじゃないと学ばないものなのね……。
魔理沙:
そうかもしれないな。だからこそ、こういった過去の失敗は風化させちゃいけないってよく言われるんだろうな
短期間で急速に経済発展した都市・グアダラハラが一瞬にして瓦礫の山になってしまった悲惨な事故でした。
この解説をノーカットで聞きたい方はぜひ動画を視聴してみてください。
『【ゆっくり解説】張り巡らされた下水管が突然大爆発 吹き飛ばされたマンホール・・・一瞬で街は瓦礫の山に『グアダラハラ大爆発』【1992年】』
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