スプレー缶120本を室内でガス抜きした結果、引火して大爆発 約50名の負傷者を出した「札幌不動産仲介店舗ガス爆発事故」を振り返る
今回紹介する動画は、ゆっくりするところさんが投稿した『【ゆっくり解説】密室で放出された120分のスプレー 給湯器を入れた瞬間に大爆発『札幌不動産店大爆発』【2018年】』。
2018年に発生した「札幌不動産仲介店舗ガス爆発事故」について、音声読み上げソフトを使用して解説しています。
■消防法を無視、ブラック体質が明るみに
魔理沙:
今回紹介するのは「北海道不動産店舗爆発」だ。
霊夢:
不動産屋さんが爆発するの……? 火を使いそうにもないのに、ちょっと想像できないわね。
魔理沙:
これはすこし珍しい事例かもしれない。
2018年(平成30年)12月16日。北海道札幌市豊平区に、とある不動産仲介業者の直営店があった。この不動産業者は、テレビ広告なども打っている大手不動産会社だった。
霊夢:
あっ、なんとなく察しがついたと言うか、思い出したわ。
魔理沙:
この日の午後8時半ごろ。この店舗が入居している、木造2階建ての雑居ビルで、突然爆発が発生した。
霊夢:
イキナリ!?
魔理沙:
この爆発はかなりのもので、不動産屋の店舗は木っ端微塵状態。隣接するほかの建物も巻き込む形で倒壊した。
霊夢:
なんで不動産屋でそんな大規模な爆発が……?
魔理沙:
爆発による火災も発生しており、51名の負傷者を出す大事故になった。このころ、丁度忘年会シーズンだったこともあり、隣接する居酒屋には沢山の客が入っていた。負傷者のほとんどは、この居酒屋の客や従業員達だったという。
霊夢:
時間も丁度飲み会とかやってる時間だしね。
魔理沙:
爆発後、すぐに救急、消防に通報され、隊員が到着。消火活動にあたった。すぐにマスコミ関係者も駆けつけた。事故直後の報道では、この居酒屋から出火したものだと思い込まれており、当日はそういった報道がされていたものの、翌日になり、隣にあった不動産屋からの爆発だったことがはじめてわかった。
霊夢:
確かに、まさか不動産屋さんが爆発を起こすなんて、夢にも思わないもんね。
魔理沙:
この時の爆発は、かなり大きなものだったようで、15キロ離れた場所でもこの時の音を聞いていたという証言もあった。
霊夢:
そんなに遠くまで……。
魔理沙:
ここまで離れていた地点で爆発の音が聞こえていたことから、この事故での爆発は、爆発ではなく、音速を超えた『爆轟(ばくごう
)』だったのでは? という説まであったくらいだ。
霊夢:
音速こえちゃうと、爆発じゃなくて爆轟っていうんだ……。
魔理沙:
それに、周囲の住宅の窓や、車の窓ガラスも割れてしまい、約240戸で停電が起こるという二次災害も出ていた。
霊夢:
そんなにすごい爆発だったんだ……。
魔理沙:
火災が発生していたものの、爆発は1度だけだった。消防の尽力により、この火災は翌日17日の午前2時ごろには鎮火した。
霊夢:
そんなに早く鎮火するなんて、消防って凄いわね。でも、亡くなった人が居なくてよかったよかった。
魔理沙:
ああ。これだけの負傷者を出しながら、誰も命を落とさなかったのは珍しい。最初の爆発から火災が発生するまで、数分のタイムラグがあったためだろう。
霊夢:
でも、どうして居酒屋じゃなくて不動産屋さんが爆発したの?? 居酒屋のほうが火とか使ってるだろうし、普通はそっちが爆発しそうなもんじゃない?
魔理沙:
ああ、普通はそう思うだろうな。先述したが、マスコミも当初はそう思いこんでいたし。しかし、事故後の調査ではこの不動産屋の店舗から爆発が起こっていたことがわかった。
この不動産会社の店舗では、店内に残っていた不要なスプレー缶を廃棄する為に、消臭スプレーを壁に向かって噴射するという作業を行っていた。
霊夢:
ああ、中身が入ってると捨てられないからね。
魔理沙:
このとき、廃棄した消臭スプレーは120本以上にも及んだ。
霊夢:
え、そんなに? よくそんなことできたわね。
魔理沙:
しかも、この作業をしていた場所では、一切換気をしていなかった。
霊夢:
ええええぇぇ……。
魔理沙:
その室内で、作業の手を止め、手を洗おうとして給湯器を作動させた瞬間、あの爆発が起こっていた。
霊夢:
ガスが充満した部屋でスイッチオン……。この前紹介したしゃぶしゃぶ店の爆発にそっくりね。
魔理沙:
ああ、確かににているな。密閉された室内に充満したガスに火が付いたせいで、爆発の規模が大きくなってしまったんだ。
霊夢:
でも、そもそもどうして不動産屋さんに、そんな大量の消臭スプレーがあるわけ?
魔理沙:
そうだな。その疑問はこの事故を知った人みんなが思ったことだろう。
この不動産会社では、契約して入居する際に『消臭・抗菌代』という項目があった。これは15000円以上の費用がかかる、クリーニング代のような物だった。
霊夢:
引っ越しするときに、クリーニング代って項目は見たことあるけど、消臭ってのははじめてきいたわ。あ、まさか……。
魔理沙:
察しの通り、消臭・抗菌代と称して、高額なお金を請求していたが、実際には、管理会社などが手配するハウスクリーニングとは全く違い、不動産屋の職員が、安価な消臭スプレーを噴射するだけ、という内容だったそうだ。
霊夢:
ボッタクリじゃん……。
魔理沙:
後にメディアの取材でわかったことだが、元従業員によれば、スプレーの仕入れ本数が多いと表彰されたり、ノルマが定められていたというケースもあったらしい。
霊夢:
超絶ブラック感……。
魔理沙:
入居者の要望で消臭や抗菌を行っていたが、繁忙期などにはつい忘れてしまうこともあり、未使用のスプレー缶が貯まっていた。といった証言もあった。この、代金を徴収しておきながら、消臭を行わなかったという事実があったというのは、事故後の社長らの記者会見で明らかになっている。
霊夢:
それで大量にあまってたのね……。
魔理沙:
本来であれば、余ったスプレーは本社が回収に来るはずだったらしいが、大量にスプレーが余っていると知れれば、ちゃんと消臭業務をしていないと本社にバレてしまうため、この店舗内で廃棄しようとしていたんだろう。
霊夢:
闇が深すぎる……。でもせめて換気くらいして……。
魔理沙:
換気を行わなかったのは、うっかりではなく、故意だったらしい。
霊夢:
わざと? やってるほうも苦しかったでしょうに。
魔理沙:
それは、大量にでるスプレー缶からの白い煙で近隣に火災の煙と疑われないようにするためだった。もし疑われて通報されれば、ここで何をしていたのかバレてしまうからな。
霊夢:
それで本当に火事を起こしてるんだから、意味ないじゃん……。
魔理沙:
しかも、これは事故後に明るみになったことだが、この店舗が入っていた雑居ビルは消防法に抵触する不備がいくつもあり、以前から消防当局から指導が入っていた。
霊夢:
おまけにビルまで不良……。
魔理沙:
過去12回にわたる指導を受けていたにも関わらず、改善せずに今回の事故を迎えてしまった。こういったビルでも、防火管理者を選定する義務があったが、それも居なく、消防計画、漏電火災警報器、避難器具等も一切設置されていなかった。
霊夢:
な、なにもない。そんなんじゃ、今回の爆発がなかったとしても、いずれ問題を起こしてたでしょうね。
魔理沙:
この不動産会社は、大手であったが、この爆発事故の不祥事が全国に知れ渡ったことで、大幅なイメージダウンとなり、それまでは6億円の黒字が続いていたものの、一転して1億円以上の赤字経営となった。
霊夢:
そりゃそうでしょうね……。
魔理沙:
事故から約1年後。北海道警察はこの不動産仲介業者の店長の男性を、重過失傷害と重過失激発物破裂の疑いで書類送検。札幌地検はこの店長を在宅起訴した。
それと同時に、店舗に隣接していたマンションの住民たちも、この不動産会社の本社に対し、慰謝料など総額5050万円の損害賠償をもとめ、提訴した。そして、2020年にこの店長は、禁固3年、執行猶予4年の判決が言い渡されることになった。
霊夢:
これだけの事故だからね……。
思わぬところから、会社のブラックの実態が明るみに出てしまった事故でした。
この解説をノーカットで聞きたい方はぜひ動画を視聴してみてください。
『【ゆっくり解説】密室で放出された120分のスプレー 給湯器を入れた瞬間に大爆発『札幌不動産店大爆発』【2018年】』
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