「ハロ/ハワユ」など投稿されたボカロP”ナノウ”5年ぶりの新曲「演劇」
「ハロ/ハワユ」や「文学少年の憂鬱(Ver.2)」など、生き辛さに寄り添う楽曲を投稿してきたほえほえPことナノウ氏。2018年8月31日の「ハッピーホロウと神様倶楽部」公開から約5年。ボカロ新曲が投稿された。
文/泡沫たんぽぽ
新曲「演劇」は、ゲームアプリ「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」(以下:プロセカ)に登場する高校生ユニット「25時、ナイトコードで。」への書き下ろし楽曲。
プロセカでは、イベントストーリー毎に曲が書き下ろされます。ナノウ氏が担当したのは『仮面の私にさよならを』という朝比奈まふゆ(25時、ナイトコードで。のメンバー)が主人公のストーリー。
「演劇」はそのタイトル通り、一つの劇を見終えたような気持ちになる作品です。演劇を演劇たらしめているのは、曲の音数の変化が大きく関わっている。
まず、冒頭は初音ミクの歌とピアノのみで始まる。それはまるで独白のようで、舞台の中央に一人きりでスポットライトを浴びている主人公が思い浮かぶ。
静かなAメロからサビへ向かうにつれ、伴奏の音が増えていく。それにより、迫力が増し、そのままさらに盛り上がる予感を与えたところで、ふっと音がなくなる。感情の爆発を思わせる音を挟み、サビに入る構成は聴き手を惹きつけることだろう。
また、厚みのある伴奏と対になるように繊細な初音ミクのメロディは、淡々としている。それはまるで誰にも届くことのない静かな叫びのよう。また、<呼吸さえも忘れるほど>の<呼吸さえも>の後の曲中で最も小さなブレス(息継ぎ)もハッとさせられる。
ドラマチックな展開を見せる「演劇」。その変化を感じてほしい。
また、歌詞は朝比奈まふゆの人生をなぞって描かれています。ですが、与えられた役割に苦しんでいるのは、きっと彼女だけではないはずです。
自分らしくありたい。でも、それができない。そもそも自分とは何かわからなくなってしまった。求められているキャラクターを演じる必要のある場面は、きっと誰にでもあることでしょう。この曲は、自分を演じて苦しんでいる人に寄り添ってくれる暗闇を指す一筋の光になりえるかもしれません。
―あわせて読みたい―