「ライアーダンサー」のボカロP”マサラダ”による最新楽曲。自ら制作したMVに注目!『ウルトラトレーラー』
今回は、マサラダさんが11月17日に投稿した「ウルトラトレーラー」を紹介する。
映像に映る心電図の波形は、まだ動いていたが、その音はやがて聞こえなくなった。もうダメかと思った瞬間、うねるギターサウンドとともに、心電図の波形は稲光のように激しく動き出す。まるで、心臓が何かの力によって、蘇ったかのように。
真っ赤に染まった街にそびえたつ高層ビルの影に潜む何者(重音テトを模した主人公)かが、こちらを真っ赤な目で睨みつける。そこで浮かび上がる〈この夏 今世最大の 現実が やってくる!〉の文字が、この映像はこれから始まるストーリーのトレーラーであることを知らせる。〈うーわ 最悪 もうだめだ お前はいつもそうだ ずっとなにやってんだ〉と歌うなかで、ライオン、ワニ、クマの動物たちと、木の枝に跨りガッカリしている重音テトが描かれたイラストは、一見するとカオスで意味不明に見えるかもしれない。しかし、実はこのイラストこそが、予想外にも大きな勇気を与えてくれるストーリーの起点になっている。今の自分自身をどうしても好きになれず、屋台の射的では大好物のフランスパンのひとつもあてられない。落ち込む日々を描く前半。そんななかでも人気アニメの主題歌のように疾走感があり、親近感の沸くメロディになっている。
最も驚嘆すべき事実は、このコミカルなアニメーションMVもマサラダさん自身が制作していること。サビに入ると〈広大な空は逆さになって 無限の底になった!〉と、壮大な世界を映し出した歌詞に合わせ、音域が広がり、高音が力強く響き渡る。想像力豊かな歌詞、起伏に富んだメロディー、目を引くアニメーションのすべてが、マサラダさんの作品に対する並々ならぬ熱意をストレートに伝えてくる。勢いよく迫ってくるフランスパンが重音テトの喉を貫通し、そこで重音テトが突然の死を迎えてしまう間奏では、ものすごい弾幕によって映像が見えなくなる。迫力満点だ。
2番でも、夕日を前に、入院した重音テトが隣の患者の男子に何かを語る青春の匂いがするシーンが流れる。やはりカオスが極まっている。一番の注目どころは、曇天の空から、突然、実写のフランスパンが降臨するシーン。フランスパンを映像に映すためにパン屋さんに許可を取りに行った時のエピソードが、マサラダさん本人のコメントで流れるのも面白い。
〈巨大な理想 世界を埋めて 不幸な思考を奪った!〉〈昨日に止まった空想なんてもういらない〉最後、フランスパンから勇気をもらった重音テトが立ち上がり、赤信号をものともせず、全力疾走するシーンがある。重音テトは、フランスパンに救われ、新たな道を切り拓いていく。この曲はどのフレームも一切無駄のない、見ごたえのあるMVとセットで聴くことを強くお勧めしたい。そこでは想像を超えた世界が貴方の日常を変えるから。
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