暇過ぎ? 駅で50分停車して最大6本の列車に追い越される謎電車を救うのは「日本一入口が狭い」そば屋?【残念な時刻表#003】
3. 50分停車。最大6本の列車に追い越される

この列車は9:42に塩尻駅に到着すると、10:32まで50分も停車します。 あと16〜17分走れば終点の松本駅なのですが、ここで50分も停車させられます。
その間に特急「しなの3号」、特急「あずさ3号」、特急「あずさ5号」と、岡谷方面からやってきた普通列車に追い越されます。 年末年始などの臨時列車が運転される季節には、さらに特急「しなの83号」、特急「あずさ75号」にも追い越されます。
5本の特急と1本の普通、計6本の列車に追い越されるのは、おそらく年末年始のこの列車だけでしょう。
4. (抜かされて、追いつく)変則的なダイヤ

この列車は11:51に塩尻駅に到着すると14分停車。その間に特急「しなの7号」と岡谷方面からやってきた普通列車に追い越されます。
と、ここまでは前述の3本と似たようなパターン。 ですが、この列車、なんと塩尻駅を出発する22分前に出た長野行の普通列車に、松本駅で追いつくのです。
後から来た普通列車に追い越される「残念な列車」であり、先に出発した普通列車に追いつくという変則的な運行ダイヤは、他ではなかなか見ることができません。
なぜ、こんなダイヤが生まれたのか?
なぜ、このような塩尻駅の長時間停車や、普通列車同士の追い越しが当たり前のように起こっているのか。 ハッキリとした理由はわかりませんが、今回あげた4本の普通列車が走る区間に、要因があると推測できます。

松本 〜 塩尻:JR東日本
塩尻 〜 中津川:JR東海
会社の境目と「乗務員交代」
会社が変わるということは、境目である塩尻駅で運転士さんや車掌さんが交代します。その運転士さんや車掌さんの乗務ローテーションの関係で、すぐに出発できないという可能性があります。
「他社の車両」を運転する事情
また、中津川と松本を結ぶ列車には、JR東海の車両が使用されています。 普段運転している車両と仕様が異なる「別会社の車両」を運転するためには、ある程度の訓練が必要となります。
その訓練を終えている運転士さんでないとJR東日本の区間(塩尻〜松本)は運転できないので、運行ダイヤに余裕を持たせたいという事情もあるのでしょう。
「残念な列車」の、意外な楽しみ方
そんなわけで誕生したと思われる、普通列車に追いつかれまくる普通列車。 ですが、この列車には、この列車でしか味わえない(かもしれない)体験があります。
静寂と、日本一入口が狭い(?)そば屋

長時間停車の間に、乗客が1人もいなくなるという、他の列車に乗っていては経験できない静寂な時間を感じることができます。
また、塩尻駅の改札内には「日本一入口が狭い」と言われる立ち食いそば屋があり、そこで(50分もあれば)お腹を満たすことも余裕でできます。
あえて乗ってみる、という選択
6本の列車に追い越されるということも、なかなかできる体験ではありません。
タイムパフォーマンスが重視される今の世の中、あえて「乗り通す意味がない」列車に乗ると、何か見えることもあるかもしれません。 松本方面へ出かける用事がある際、お時間がありましたらぜひ乗っていただきたい列車です。
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