中国資本が日本の土地を大量購入。一体なぜ? 規制しなくて大丈夫? 政治家に聞いてみた
北海道や長崎県対馬市などで外国人による土地買収が大規模に進行しています。自民党は通常国会で、自衛隊など防衛施設周辺の安全保障上重要な土地の外国人や外国資本による買収の規制に向け、政府が土地取得や利用の実態調査を可能にする法案を進めています。
この話題を受け、自民党参議院議員の山本一太氏がホストを務める「山本一太の直滑降ストリーム」では、同じく自民党参議院議員で「安全保障と土地法制に関する特命委員会」副委員長である北村経夫氏をゲストに迎え、外国人の土地買収について野放しになっている現状や、法改正に向けて抱える大きな問題などを語りました。
外国人の土地取得の規制は、現状なし
山本:
きょう北村さんに来てもらったのは、中国がどんどん日本の土地を買っているという問題に対して、作られた自民党の特命委員会の主要メンバーの一人としてやってもらっている北村さんに解説をお願いしようと思いました。
北村:
きょうも自民党の憲法改正推進本部で九条の改正について熱い議論をやってきたのですが、それと同時に日本の安全保障を考えたら、いまの日本国内でどういうことが起きているのか、そこは我々もちゃんと押さえないといけないと思います。これは昨年出た本なのですが……。
山本:
『爆買いされる日本の領土』。
北村:
私、元々産経新聞にいたのですが、そのときの同僚である宮本雅史さんが書いた本です。本の帯に「外国人の土地取得に規制なし」とあります。書いてある内容は、北海道で東京ドーム1000個分の土地が買収されているというものです。
山本:
北海道だけで東京ドーム1000個分!?
北村:
そうです。長崎県対馬も海上自衛隊の対馬防備隊本部周辺が、韓国資本によってリゾート開発されている実態があります。「日本の土地は外国人の取得に対して規制がかけられない」そういう実態があるんです。
そこを我々は自民党として、どう考えて臨むかというと、規制をかけるかどうかは別にして、このまま外国人が自由に売買できるのは「これで良いのか?」と思います。本にも書いてありますが、水資源周りやキャンプ場、ゴルフ場、太陽光発電……。これはかなり中国がやっているのですが、そういうことが本に書いてあります。大半は中国人の投資です。
山本:
中国政府が裏にある、というよりは、中国の人たちの投資なんですね。
北村:
投資がほとんど……6、7割です。残りはどういう目的で買っているのか、どういう利用のされ方をしているのか、把握できない。「そこを野放しで良いのか?」という問題意識を私どもは持っているわけです。
自民党では新藤義孝【※】先生を中心に、「安全保障と土地法制に関する特命委員会」で議論をして、法案整備に向けて詰めた議論を行っているんですが、その先にある規制ということも、どこかで必要なのかなと思います。
※新藤義孝
自民党議員。総務大臣(第17代)、内閣府特命担当大臣(地方分権改革担当)、内閣府特命担当大臣(国家戦略特別区域担当)等を歴任。安全保障と土地法制に関する特命委員会委員長。
現状、外国人の土地取得は法的にどうなっているかと言うと、大正14年に外国人土地法というのが制定されて、これは旧大日本帝国憲法の中で作られた法律です。現憲法においても、これは適用されている。
時代は変わったのに、いまも法律が適用されているというのが問題の一つなのですが、この法律では、外国人がどういう土地を取得してはいけないという制限の対象、あるいはどういう権利を持ってはいけないというものが定められています。
山本:
国益に直接関係あるものでしたら、当然制限があるはずですからね。
北村:
はい。それを「政令で定める」とされています。しかし、それで政令には定められてないんです。現憲法下においては、それがなかなか難しいということなんです。だからこういうふうに外国人が自由に土地を取得できるという実態になっています。
私権制限、多国間との相互主義……改正に向けて抱える問題
北村:
では外国はどうなっているかと言うと、ほとんどの国で土地に対する規制を行っています。
山本:
たとえば?
北村:
アメリカでは、土地所有権は原則として政府によるその優越領有権、要するに、「政府が最後の判断ができますよ」というものです。 4割の州が州法によって規制がかけられています。つまり、安全保障とか水とか大事なところに規制をかけるという判断をする。オバマ元大統領も中国人が買おうとしたりすると、待ったをかけたことがあります。
山本:
アメリカって州法で制限されているところもありますけれど、必ず議会の段階で遮りますからね。
北村:
問題はそこですね。イギリスでは土地の最終処分権というのは、原則として政府または王室が持っています。ドイツはワイマール憲法で土地所有の原則不自由ということを制定されています。そういうふうに、いま挙げた三カ国は国家として土地に対してすごく敏感になっています。どういう人が取得しているかとか、そういうのを管理しています。
ですから、そういう国に日本も少しずつ近づけていかなければいけません。
山本:
アメリカもヨーロッパも、そうやって安全保障、国家の国益の観点から外国人の土地所有を規制、ある程度制限する法的な枠組みがあって、日本にないのはなぜでしょうか。
北村:
一つは私権制限に対して、ものすごくセンシティブ(敏感)な国民性というのがあります。
山本:
外国人の定義も難しいというのもあるんですか。
北村:
多角的貿易交渉で言うとWTOという自由貿易を促進する機関がありますが、そこの「サービスの貿易に関する一般貿易の協定」といわれるGATS(ガッツ)の内容に問題があります。協定の内容というのは交渉の中で決めていきます。このGATSの交渉のときに、日本政府は土地に関して留保をつけなかった。
外国人に対して規制をかけますよ、ということをしなかった。それは相互主義で多国間ですから、そうするとそれを是正していくためには一カ国ずつ交渉をして、条約を変えていかないといけない。そういう問題があるんです。だから現状ではなかなか難しいですね。
大きな壁はたくさんあります。私権制限の問題、多国間との相互主義という問題もあります。そういうことがあるので、とにかく、そういう問題意識を持って、自民党内で議論をしています。
山本:
中国の人たちなんかは個人的な投資目的でやっているということですが、その中にも国家戦略でやっているみたいな可能性はあるんでしょうか。たまたま安全保障に直結するような場所を買って問題になるということがあるのですが、そのあたりはどうでしょうか。
北村:
なかなか難しいところですね。実態としてなぜ山奥を買ったのか。大きな土地に中国人が大量に入って来たり、移動している地域もあったりするわけです。そうすると何の目的なのか、将来の備えなのか、など、いろいろな見方があるのでしょうが、まだそこは確証を持って言えないですね。