ドイツ『III号戦車』開発に至るまでの歴史。英国で開発された“うすのろのデカブツ”はいかにして第二次大戦で活躍する兵器に変貌したのか
今回紹介するのは、ストロー=クーゲルスタインさんが投稿した『ゆっくりで語る戦車の歴史【黎明期編】』という動画。再生数は12万回を超え、歴史カテゴリで過去最高1位を記録しました。
音声読み上げソフトを使用して、同人ゲーム『東方Project』の博麗霊夢 (はくれい れいむ)と霧雨魔理沙 (きりさめ まりさ)のふたりのキャラクターが、第一次大戦後の戦車開発の歴史について解説を行います。
兵力で押す戦いに終止符を打った、『戦車』の登場
霊夢:
さて戦車は英国で生まれました。ドイツじゃありません。近代戦車ができるまでの歴史を簡単に説明すると英国で生まれ、フランスが完成させ、ドイツが発展させた。って感じかな?
魔理沙:
「やっぱりドイツの技術は世界一ぃぃ!」【※】なんだぜ。※「やっぱりドイツの技術は世界一ぃぃ!」
「世界一ィィィィ!」。『ジョジョの奇妙な冒険』第二部の登場人物、ルドル・フォン・シュトロハイムの台詞。ネットスラング。霊夢:
うーん……凄く偏りのある世界一だけどね。
霊夢:
英国で極秘裏に開発され、実践投入された初めての戦車がこれ!
霊夢:
そもそも戦車は第一次大戦の膠着した戦況を打破する為に生まれたんだ。人間では耐えられない攻撃に耐え、普通の車では越えられない地形を越えて、敵を攻撃する必要があったから、それを実現できる兵器として発明されたんだ。魔理沙:
そうなの? ならもっと前に発明されそうなものだけど。霊夢:
それまでは兵隊をたくさん突っ込ませることで解決出来てたんだ。魔理沙:
「戦いは数だよ」ってやつ?霊夢:
まぁ、そんな感じ。ちなみに一次大戦でもそうやって解決しようとしたんだけど……。
霊夢:
こうして戦場デビューした戦車は敵に大きな衝撃を与えたよ。魔理沙:
銃弾を弾きながら追ってくる鉄の塊が突然現れたらそりゃみんなビビるよな。
機関銃や毒ガス兵器の登場で、戦争の様式が兵の数で押し切るスタイルから変わらざるを得なかった時代に「戦車」の登場は必然だったのかもしれません。コメントでは「機関銃の弾幕に毒ガスのせいで数で押せなくなった」「何の手本も無しで、これを作ったのは凄い」といったものが寄せられました。
イギリスで生まれた戦車がフランス・ドイツへ
霊夢:
そこで、チマチマと戦車を開発していたイギリス以外の国も戦車の開発に力を入れ始めるよ。というわけで農業用トラクターを元にドイツやフランスが開発した戦車がこちら!
霊夢:
さっきのもそうだけど、今の戦車と比べると大分形が違うでしょう?魔理沙:
こんなの戦車じゃないわ、キャタピラーの付いたトーチカ【※】だぜ。※トーチカ
コンクリートで堅固に構築した陣地で、戦線に点在するもの。霊夢:
まだ出来て間もないからね。形が洗練されてないのさ。しかもこの頃の戦車は、同じ車体でも武装が砲だったり機銃だったり両方だったりマチマチで用途がかなり限定されてたよ。だから砲を装備した戦車と機銃を装備した戦車が遭遇すると……。魔理沙:
33-4【※】ですね。わかります。※33-4
33対4。2005年日本シリーズにおける、阪神タイガースと千葉ロッテマリーンズの4試合の総得点数のこと。そこから転じて「大差をつけて勝敗が決していること」を指すネットスラング。
初期の頃の戦車は、今と違って形や装備の面でも洗練されていなかったようです。「移動トーチカやなもう」「こんなのでも最初は対応策がわからなかったという」といったコメントが寄せられました。
霊夢:
さて、ようやく各国出揃ってきた戦車だけど、イギリスやフランスはこれがうすのろのデカブツだってことに気づいたみたいで、これを支援するための快速小型戦車を開発したよ。
霊夢:
それがこれ。正直、支援される側の戦車よりずっと性能のいい戦車だったよ。特にFT-17は優れていて後の戦車の基本形になったんだ。魔理沙:
どの辺が優れているの?霊夢:
足回りの改良で越えられる高さも上がったし、後方にエンジンルームをつくってエンジンを隔離したから中は快適になったし何より車体上に設置した360度回転する砲塔が最高に画期的だったんだよ。魔理沙:
確かに今の戦車は、みんなこの形してるもんな。多分凄いメリットがあるんだろう?霊夢:
今までの車体の前面や側面やらに適当にブッ刺さってた主砲だと限られた範囲しか撃てなかったけど、そんな悩みとはもうおさらば。砲塔ぐるぐる回して好きなところに撃てるんだ。(値段も)少なくともデカブツ達よりは安いよ。大量生産できたし。ちなみにこのFT-17、バージョンアップを重ねながら色んな国に輸出され、その一部は日本に輸出されて、ルノー甲型って呼ばれることになるよ。
魔理沙:
おお、戦車の文明開化って感じがする!
“回転する砲塔”という技術革新を生んだ「FT-17」。キャタピラーや砲塔など、現代の私たちが戦車と聞いて想像する形に大分近づいて来ました。コメント欄では「だいぶ戦車らしいな」「仏側はまだマシなデザインだ」といった意見が寄せられました。
近代戦車の形を決定したドイツIII号戦車
霊夢:
というわけで、ここまでが戦車が“完成”するまでの歴史だよ。さてドイツが戦車を育てる話だけど、実はドイツは一次大戦に負けちゃったから、それ以降戦車を作らせてもらえなかったよ。とは言うものの、ナチスが政権を取るとソ連とつるんでこっそり作り始めるよ。魔理沙:
あれ、ドイツとソ連ってこの後戦争するんじゃ?霊夢:
まぁ……あれだよ。英国人とフレンチが意地悪すぎた結果だよ。そしてドイツが開発した戦車がこれ。
魔理沙:
ドイツ製だけにそこはかとなく格好良さがにじみ出てる。
霊夢:
Ⅳ号戦車は史実でも地味ながら活躍したからね。途中までは技術獲得とか訓練とかを目的に開発されたものだから、今回はスルーしてIII号戦車から説明していくよ。このIII号戦車を以って、近代戦車の形は完成したと言っていいかな。
魔理沙:
いったい今までと何が変わったんだ?
ようやく、現代の私達にも馴染みのある形をした戦車が登場しました。ちなみにアニメ『ガールズ&パンツァー』で活躍していた戦車は後継の『Ⅳ号戦車D型』です。
霊夢:
III号戦車は3人用の大型砲塔を持っているんだよ。FTの砲塔が一人用で、III号戦車が3人用。ところで魔理沙、砲塔の中の人の仕事は何かわかる?魔理沙:
砲塔を回して敵を撃つ?霊夢:
それに加えて、撃った後の再装填と周囲を見渡して的確な判断と指示を行うことが仕事だよ。魔理沙ちょっと一人でやってみて?魔理沙:
無理だぜ。狙ってる間は周りとか見えない……。霊夢:
そう。だから3人用の砲塔を作って中の人に役割分担させたの。こうすることで作戦行動を円滑に行えて、二次大戦初期のドイツの圧倒的な勝利に繋がるんだ。
この3人乗りの砲塔を持った戦車が第二次世界大戦で大きな活躍をすることになります。コメントでは「五人乗りで車長が指揮に専念できる」「ドイツは戦闘室という概念と、無線通信を早く採用した」といった意見が寄せられました。
二人の解説をノーカットで聞きたい方はぜひ動画を視聴してみて下さい。
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