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【ネタバレ注意】『都市伝説解体センター』を全クリした民俗学者が語る“ゲームと異界”――「くねくね」も「因習村」も「きさらぎ駅」も、流行った理由は「異界」にあり!【『ネット怪談の民俗学』著者 廣田龍平インタビュー】

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※【ネタバレ注意】本記事では『都市伝説解体センター』に登場する怪異の一部がネタバレされています。

 「ベッドの下の斧男」、「ドッペルゲンガー」、「コトリバコ」など誰もが一度は聞いたことがある「都市伝説」の真実に、プレイヤーが調査員となって迫るアドベンチャーゲーム『都市伝説解体センター』
 その魅力は多くのプレイヤーの心を掴むと共に大きな話題を呼び、インディーズゲームとしては異例の累計販売本数30万本を突破しました。

 本作で特に評価されている点の1つが、「SNSを使った調査」で真実に迫っていくゲームシステムです。
 「SNS」と「都市伝説」を組み合わせた構造は、プレイした人の日常をも浸食し、自分が事件の一部になってしまったような没入感を与えてくれます。

 そんな『都市伝説解体センター』の大きな要素である「SNS」と「都市伝説」。この2つの関係を理解するための副読本として、ファンたちの間でその名を挙げられているのが『ネット怪談の民俗学』です。

 本記事では『ネット怪談の民俗学』の著者であり、ネット怪談研究の第一人者である廣田龍平さんに『都市伝説解体センター』を遊んでいただき、感想を伺いました。

 民俗学的な視点から『都市伝説解体センター』を見てみると、「なぜ人が都市伝説に惹きつけられるのか」「なぜ人は都市伝説を生み出すのか」という、人間の暗部が描写されてることに気が付きます。

 「適当な悪者をでっち上げてしまう心理」や「世界を理解できるものだと思いたい欲望」。そういった誰の心にもある暗い部分が、都市伝説と深く関係している……『都市伝説解体センター』と「現実」との共通点、相違点を民俗学で解きほぐすインタビューです。

取材・文/船山電脳

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『ネット怪談の民俗学』著者 民俗学者 廣田龍平さん

■『ネット怪談の民俗学』の著者に『都市伝説解体センター』を遊んでもらった

――今回のインタビューの前に『都市伝説解体センター』遊んでいただいたわけですが、遊んでみての率直な感想はいかがでしたか?

廣田:
 アドベンチャーとかノベルゲームをあまりしないので、クリックするのに疲れましたね(笑)。

――ボリュームのあるゲームですからね(笑)。

廣田:
 結構ボリュームがありましたね。でも結局、最後まで遊びました(笑)。

 まじめな話をすると、ゲームをやる前に漫画版『都市伝説解体センター異聞』を読んだんです。
 なので『都市伝説解体センター』は、都市伝説を実在する恐怖として描くのではなく、あくまで説明できるものとして解決していく作品なんだなとは思ってました。

都市伝説解体センター 異聞:くねくね 引用元:ジャンプ+

――ゲームを遊んでみて、印象に残ったところはどこですか?

廣田:
 SNS上の反応や、SNSで情報を検索するところがリアルでしたね。
 人の陰の部分が大変リアルに再現されていまして、あそこは本当に感心しました。

 特に面白かったのは、検索で出た投稿のリポスト数が、どんどん増えて拡散されていく演出です。
 現代が舞台で都市伝説をテーマにしたゲームなら、SNSでの拡散は外せない要素ですね。

――登場した都市伝説についてはどう思いましたか?

廣田:
 意外と古典的というか、有名なものがピックアップされてるなという印象を受けました。

 各話ごとに、どんな都市伝説に関わる事件かを見極める「特定」と、事件の真相を明らかにする「解体」の2段階で謎解きが行われる構成になっています。
 「特定」については、もちろん僕が専門家というのもあるんですが「これ、あれだな」というのはすぐに想像できる感じでした。

『都市伝説解体センター』では事件を「特定」「解体」の2段階で解決していく

――『都市伝説解体センター』の中で、民俗学の研究に似てる部分はありましたか?

廣田:
 噂の広がり方や、噂が生まれた背景に漠然とした不安があるところは似ているかも知れません。

 都市伝説を調べるとき、「もしかしたらこういうことじゃないか」ということを漠然とした不安から誰かが言い始めて、少しずつ変化しながら広まっていくというふうに想定するんですよ。

――『都市伝説解体センター』に登場する都市伝説にも、人の不安や暗い感情が関係していると

廣田:
 それはそうでしょうね。
 コロナ禍以降だと思うんですけれども、都市伝説やネット怪談に対する関心が日本では高まってるとすごく感じるんですよね。

――オカルトブームと言われてますね。

廣田:
 実話怪談を話す人もコロナ禍以降、増えたっていう話がありますし、ネット怪談がどんどん映画化されたりもしていますよね。
 そういった流れに乗りながらも、『都市伝説解体センター』は都市伝説を怖がるだけじゃなく、謎解きと言う形で都市伝説に一定の説明を与えていて、なおかつ自分たちが使うネットやSNSが含まれている。

 ゲームの中だけの話でなく「お前は、まさに火中にいるんだぞ」と感じさせるところが、多分、伝えたかったところだと思うんです。

――『ネット怪談の民俗学』は『都市伝説解体センター』の副読本としても楽しまれてますが、どういったところが注目されていると思いますか?

廣田:
 一つは「コトリバコ」や「きさらぎ駅」といったネット怪談の元ネタが一部扱われていて、分かりやすく説明してあるところが読みやすいのかなと思います。

 もう一つは、『ネット怪談の民俗学』はネット怪談が拡散する様子をかなり丁寧に紐解いた本なんです。
 オリジナルの根拠不明な投稿が拡散し、みんなの間で定着して一つの文化となっていく過程を描いている。

『都市伝説解体センター』ではネットによる情報拡散が大きなテーマになっている

 そこが『都市伝説解体センター』に描かれている、噂が事実であるかのように広まっていく流れとシンクロしている。
 だから現実でも、自分たちが何となく聞いたことがあるネット怪談なり都市伝説が、ゲームの中と同じように広まっていったんだということを追体験できるところが楽しまれているのかなと思います。

 あとは最近出た本だから、手に入れやすいのもあるでしょうね(笑)。

■『都市伝説解体センター』と民俗学の違い……「解体」は“しない”

――ゲーム内ではネットで情報が拡散する描写がありますが、現実との違いはありますか?

廣田:
 ゲームではたくさんのアカウントが同じような話題をポストしていたんですけど、現実では噂を拡散するのはごく少数のアカウントだと研究で明らかになってるんです。
 10人とか20人程度の人が何万リポストもされて噂が広がるんですよ。

 そして、拡散はリポストが重要なんです。ネガティブな反応であってもリポストされたら拡散されてしまう。

――現実から一番遠そうな要素だと思うんですが、「解体」についてはどう感じましたか?

都市伝説になぞらえた事件の真相を明らかにする「解体」

廣田:
 「解体」までいくと僕としてはある意味でファンタジーというか、新鮮な感覚になりました。
 『都市伝説解体センター』では都市伝説が先にあって、それになぞらえる形ですよね。

 実際の民俗学や都市伝説研究では、逆に、なんらかの出来事があって、それに尾ひれがたくさんついて都市伝説になるというパターンで考えることがあります。
 例えば「ベッドの下の男」も「口裂け女」も、一部分には元ネタになった実際の出来事があったかもしれないと仮定して調査していくこともあります。

 ただし、その事件が具体的にどの事件か、誰が犯人かを特定するのは仕事ではないんです。
 民俗学者というのは、真相究明はしないんです。

――民俗学の研究では、実際に誰がどんな事件起こしたという話にはならないんですか?

廣田:
 そうですね。『都市伝説解体センター』では都市伝説の定義を「口伝えで伝わる噂話」みたいに説明していて、あくまで「噂」ですよね。
 これは90年代ぐらいまでの定義で、厳密は噂と都市伝説も微妙に違う概念なんですけど。

 どちらにせよ、研究者はあくまで噂や都市伝説を研究する立場なので、実態が何であるかという「解体」までは踏み込まないです。
 真相究明は、ジャーナリストとか警察とか、それこそ「解体センター」の仕事になりますね。

――都市伝説の研究では、どういったことを調べるんですか?

廣田:
 噂が広まる時代背景や、噂によって人の行動がどう変わっていったのかを調べていきます。

 たとえば、人間は、不安を抱えていると適当な悪者をでっち上げて騒ぐことがあります。
 これを「モラルパニック」といって、民俗学だけでなく社会心理学とかでも取り扱われる行動です。

 社会のぼんやりとした不安や、不穏な雰囲気が物語として結晶化・具体化したものが都市伝説だという仮説は、研究の中でも代表的なものです。

――都市伝説には、当時の流行や価値観も影響しますか?

廣田:
 これは難しいところで、例えば「ブティックの試着室で誘拐される」という内容の都市伝説があるんです。
 有名なのは、フランスで「オルレアンの噂」として1カ月の間に一気に広まって、数週間で一気に収まったということがありました。

 オルレアンの噂では「ユダヤ人が経営するブティックが人身売買している」という噂が広まり、そのあと「オルレアンの噂はユダヤ人差別のために流されたデマだ」という、これまた出所の分からない噂が広まって、その後、噂が終息したんです。

――ユダヤ人への差別は世界的な問題ですが、日本では身近に感じない人が多そうですね。

廣田:
 こういった「都市伝説を否定するために流された噂」を「対抗神話」というのですが、ユダヤ人差別に紐づけられたのは時代や地域によるものですよね。

 しかし、こういった都市伝説が当時の風潮によるものだけのせいかと言うとそうではないんです。
 実はその数年前にもフランスの他の地方で似た噂があったし、さらに日本でも、海外旅行でそういう目に遭うという噂が広まったことがあります。

 海外旅行に出かけた夫婦のうち妻が誘拐され両手両足を切断されて見世物小屋に入れられる……という「だるま女」という都市伝説も、試着室で誘拐される都市伝説です。

 フランスの地方都市と日本って、社会背景とか時代背景とか全く違いますよね。
 でも、同じようなパターンの話が広まるんですよ。

――時代や地域に関係なく、似た噂があるんですね。

廣田:
 ここが都市伝説の面白いところで、社会背景とか、時代とか、場所とか、文化とかも、宗教とかも関係なく、同じものが広がってしまうことがあるんですよ。
 具体的に「これが怖い」という話ではないですが、近代化した都市社会に共通した不安があるんですよね。

――噂と言えば「くねくねは熱中症の症状じゃないか」という噂が流れましたよね。

廣田:
 『くねくね』は、双眼鏡で遊んでいた兄が田んぼにいた「白くてくねくねした何か」を見て、おかしくなってしまったというネット怪談ですね。
 「くねくね熱中症説」は、この怪談が最初に話題になった2003年くらいからある話ではあるんですけれど、最近X(旧:Twitter)でまた話題になっていましたね。

――そんな昔から、熱中症説はあるんですね。

廣田:
 20年以上前からあります。
 ですけれども「くねくね」っていう話の肝は「正体がわかった瞬間に狂う」、「理解したら狂う」という部分であって、ただ単に狂うっていう話ではなんです。

――熱で頭がやられる、という切り取り方はしないんですね。

廣田:
 不可解な部分をばっさり切り落としてしまって、説明できる部分だけ残して「熱中症」とすれば、それこそ「解体」できます。
 しかし、民俗学や都市伝説研究では話の全体が大事なわけですよね。

 そこから肝心の「正体を理解したら狂う」を削ってしまうと、結局何を説明したことになるのか分からなくなってしまいます。
 それどころか、それで理解した気になってしまうと、その都市伝説の怖さも面白さも削ぎ落としてしまうと僕は思うんですよね。

 ただし、賛否両論ありながらですが話題になったことからも、科学的・合理的に思える説明に楽しみを感じる人も結構いるだろうなとも思います。

――こういった「解体」を求めるのは、都市伝説への恐怖や不安があるからでしょうか?

廣田:
 そうですね。
 不安というか、「この世界を自分が理解できるものにしたい」という欲望ですね。

 人間が理解できる範囲なんて、本当、知れたもののはずなんだけれども、すべてをとりあえず説明しておきたいって思ってしまうんですよね。

――理解できる範囲の外側に、異界とか不思議なものがあるっていうイメージは人間にずっとある心理なのかも知れないですね。

廣田:
 それは昔からそうですね。
 ただ、今は目に入ってくる情報の規模がもう全く桁違いなので、逆説的に自分がいちいち考えなくてもいいようなものを増やしておきたい、だから自分が既に知ってるもので全部説明しておきたくなってしまう

 陰謀論とかもそうなんですけどもね。くねくねを熱中症で説明するとかも同じ心理ですよね。

――ドッペルゲンガーも「脳腫瘍で幻覚を見ただけ」というような話もありましたね。

廣田:
 そうです、いろいろあります。
 「座敷わらし」も認知症の一種と説明したり、かまいたちは真空のせいだと説明したり。

――人間はいつの時代も変わらないってことでですね。だからこそ、いつの時代でも民俗学を見ると親近感を持つし、面白いと感じるのかも。

廣田:
 それはそうですね。
 ただし、今はロマンチックなものがどんどん、解体されちゃっているように感じることもありますね。

――曖昧なものを、曖昧なまま楽しむのがなかなか難しい時代なのかもしんないですね。

■『都市伝説解体センター』でも描かれた噂の魔力……「ネットの闇」と「モラルパニック」

――何かを悪者にしてしまう「モラルパニック」ですが、もっと身近な……例えば、血液型でも起こりますか? 例えば「大きな事件の犯人は全員AB型」みたいなデマが広まったら、差別が起きたり、学者や警察などが公的に否定することはあり得ますか?

廣田:
 あり得ますね。今だと、性格診断とかもあり得そうです。

――例えばMBTI診断などですか。最近の「サイコパス」という言葉もレッテルのような使われ方をしていると感じます。

廣田:
 最近の話題で言うと、いわゆる「発達障がい」に関して、とある本が炎上したじゃないですか。
 本当はちゃんとした専門医が診断しないといけないはずなのに、自前の基準で判断しちゃって特別扱いしよう、みたいな書き方で批判されました。
 発達障がいという言葉への誤解は、専門家が鎮静化しようと学会で声明出したりしてるんですけど、きちんとした知識を広めるのが大事ですね。

――インターネットが便利に使えて情報が増えた結果、みんな考えるのめんどくさくなってるのかなと個人的に思ってます。

廣田:
 それはあるでしょうね。
 情報があふれてると何を選べばいいか、正しいものとして選べばいいかわかんなくなるから、どんどん流れてくるものを受け止めちゃうんですよね。

――『都市伝説解体センター』でも描かれている部分がありましたが、レッテルとモラルパニックが組み合わさると恐ろしいことになりそうですね。

廣田:
 よくわからないもの、自分と違いそうなものにラベルを貼ってしまう。
 それによって攻撃性が誘発されたり、パニックが誘発されたり、問題を起こしがちですね。

――モラルパニックは現代特有のものなのでしょうか?

廣田:
    いえ、昔からあることです。

 「モラル・パニック」を取り扱っている本はたくさんあります。去年出版された『Social Panics & Phantom Attackers』なんかがまさにそれですね。
 日本でいう「口裂け女」みたいな存在が、19世紀から21世紀にかけてたくさん現れていたと論じた本です。

 この本には載っていませんが、近年で有名なものとして、アメリカで「キラークラウン」っていう子供を狙うピエロが話題になったんです。
 近い時期にはそういった事件はなかったはずだけどハロウィンでピエロの仮装が禁止されたり、警察が注意喚起するような騒ぎがありました。

――ピエロの仮装をした写真が印象的だったことで「キラークラウン」と呼ばれた、ジョン・ウェイン・ゲイシーという連続殺人犯がいますが、50年近く前なので直接的な関係はなさそうですね。

廣田:
 『Social Panics & Phantom Attackers』では子供を狙う存在にまつわる都市伝説の特徴が挙げられていて、一つは、被害を証言しているのは子供しかいないという点。大人がそれを聞いてパニックになったってことですね。

『Social Panics & Phantom Attackers』を開く廣田さん

――子供が被害にあったとなると、パニックになる人は多そうですね。

廣田:
 他にも「スレンダーマン」という例があります。
 「スレンダーマン」は創作された怪異で、Wikipediaにも元ネタへのリンクがあって創作だとはっきり記載されているんです。
 でも、2014年に、それを本気で信じてしまった少女が、友達を殺そうとしたという事件【※】を起こしてしまった。

※スレンダーマン刺傷事件
2014年5月31日、ウィスコンシン州で12歳の少女2人が友人を森の中におびき寄せて包丁で19回刺した事件。被害者は一命を取り留め、加害者2名は心神喪失とみなされ長期間の入院となった。

 で、それは「スレンダーマンを信じたせいだ」となったけども、あの当時、他の事件も全部スレンダーマンに結びつける報道があったらしいんです。
 一部の事件と関連づけて、無関係な事件も「スレンダーマンが悪い」、「インターネットが悪い」と結びつけて「子供がインターネット使うときは、保護者が監視しろ」って論調が高まったんです。

スレンダーマンのイメージイラスト(画像はAIを用いてニコニコニュース編集部が作成)

 子供もスマホを持っている時代に「もう、インターネットを封鎖しろ」みたいな話にまでなってしまった。

――完全にパニック状態ですね。

廣田:
 そう、パニックなんですよ。さすがにすぐに沈静化してましたけれども。

 最終的には、みんな創作として楽しんでいたはずなのに、「全部フィクションです」と、でかでかと書かざるを得なくなっちゃったんですね。

――事情が事情とはいえ、ちょっと無粋ですよね。

廣田:
 そうなんです。野暮なんですけれども、そうせざるを得なくなるだけの力を持っちゃうんですよね。
 他にも「Momoチャレンジ」っていうの、ご存じですかね。

――相蘇敬介さんの『姑獲鳥(うぶめ)』という像の画像に「Momo」と名前を勝手につけて使った都市伝説ですよね。

廣田:
 そのMomoが「自殺をしろ」と迫ってきて本当に自殺してしまった子供がいた、みたいな話ですね。
 実際には誰も自殺してないにも関わらず、アメリカとか世界各国で大騒ぎになったんです。

 実態がないのにみんな何かあったと信じて騒いで、沈静化するために、いちいち言わなきゃいけなくなるっていう。

――ピエロならジョン・ウェイン・ゲイシー、Momoチャレンジなら「Blue Whale Challenge【※】」のように、実際の事件があったからパニックに繋がったんでしょうか?

※Blue Whale Challenge(青い鯨ゲーム)
管理者からの命令を50日間達成し続けるというゲーム。命令は徐々にエスカレートし、最終的に自殺を指示される。2016年に首謀者の一人が自殺教唆などの罪で逮捕された。

廣田:
 原因とまで言えるかは、かなり難しいところがあります。
 でも、パニックを加速させる要因としては大きいでしょうね。

 子供を攻撃する不審者というのはどの時代にもいて、民俗学者の伊藤龍平さんは、そういう存在を「怪人」という言葉でまとめてます。
 妖怪でもなければ、普通の人でもない。中間の存在である怪人には、「口裂け女」、「赤マント」なども含まれます。

 日本でも怪人によるパニックが起きていて、たとえば1939年の「赤マント」だと、警察が繰り返しラジオで「そんな事件は起きていない」と声明を出したり、警察署に子供を呼んで説明したり、その様子を新聞に報じてもらったりして、沈静化させた例があります。

――デマが広まったときに止める方法についての研究もあるんですか?

廣田:
 たとえばSNSだと、大元の一番拡散された投稿を消す、あるいはアカウント削除ぐらいしか効果がないと言われてますね。
 対抗神話を流してもあんまり役に立たないようです。

 あとは、別のバズるものを出すしかないんですよね。
 あと、強いて言うならば、いまだにテレビとかのメディアの力は強いので、地上波で特集を組むとかでしょうか。
 日本だと多分それぐらいしかないと思います。

――公的な組織とか新聞とかが動かないと止まらないくらい、噂には力があるんですね。

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