警察が証拠を隠蔽し無実の青年が有罪に…奇跡の逆転無罪のキッカケは「実話ナックルズ」だった? 裁判ウォッチャー・阿曽山大噴火が法廷で目撃した“衝撃の裁判”を語る
アウトロー系雑誌が決定的な証拠を押さえていた
阿曽山大噴火:
別に俺は応援とかはないけれど、納得いかないなら弁護士さんと相談して控訴したらいいんじゃないって言ったんです。事件は2009年なんですけれど、2010年の3月に控訴審があったんですよ。弁護人としては同じ証拠で戦ってもしょうがないじゃないですか。ということで、新しい証拠を見つけてきたんです。
吉田:
証拠になるような歌舞伎町の資料があったってことですか?
阿曽山大噴火:
そう。その資料っていうのが……「実話ナックルズ」という雑誌なんですよ。警視庁24時とか歌舞伎町24時みたいなページで。
吉田:
はいはい、歌舞伎町の喧嘩とエロみたいなカラーページ。
阿曽山大噴火:
そう、女の子がパンツを出して寝ているだとか。
吉田:
ホストがボコボコにしているとかね。
阿曽山大噴火:
そうそうホスト同士が喧嘩している写真をいっぱい載せているグラビアページがあったじゃないですか。それを見たら、なんと被告人が写っていたんですよ。
吉田:
へえ! そのバイオレントなシーンが。
阿曽山大噴火:
何枚か写っていて。それを証拠で出したら採用されたんですよ。
久田:
そうなんですか(笑)。
阿曽山大噴火:
たまんないでしょう? 俺、1年がかりで見てきたから、やった! と思って(笑)。
久田:
どんな感じの写真だったんですか?
阿曽山大噴火:
そこにいたライターさんが撮ったんじゃないんですか。
吉田:
ちょっと聞いたことがあるのが、「実話ナックルズ」で歌舞伎町で写真を撮っている人は本業がちゃんとあって……みたいな話でしたよね。
久田:
主に3人が撮っていて、そのうちのひとりはヤクザとも親しくなっちゃうほどすごく歌舞伎町に行っている人なんですけど、韓国人で兵役にも行っているから強い人なんですよね。
吉田:
どこまで言っていいかわからないですけれども、●●●(とある朝の早い自由業)の人が朝が早いから歌舞伎町で暴力とエロみたいな写真を撮って、そこから真面目に本業の仕事をするって話を聞いたことがあります(笑)。
久田:
それは篝一光さんという人なんですけれど、歌舞伎町の近くに住んでいらっしゃって。仕入れの前に撮ってます(笑)。歌舞伎町って朝方がいちばん怖いので。でもこれは篝さんじゃないと思うけれど……。
阿曽山大噴火:
時期的に久田さんが編集長かなって思ってた。弁護人は雑誌も証拠で出したんですけれど、「ネガがあるはずだ」って言って「編集長のところまで行った」って言って。他の写真も持ってきたんです。
久田:
10年前は僕、局次長か何かになっていたから、編集長は部下がやっていたかもしれませんね。僕は違う管理職的な感じでした。でも面白いですね。
阿曽山大噴火:
そう。被告人の友達が「載ってるじゃん!」って言ってネガをもらったら他の写真もあって。第一審では「警察の帽子が飛んで、ファイルが落ちた」と警察官がみんな同じ証言をしているわけですが、それがもう完全に嘘だ、って。
吉田:
警察怖いなー(笑)。
久田:
すごい怖い! 警察怖い! ドラマみたいですね。
阿曽山大噴火:
判決が出たのが2010年の事件から1年3、4ヶ月後の8月17日。原判決を破棄、逆転無罪と。
久田:
逆転無罪!? めずらしいですね。
阿曽山大噴火:
よしきた! と思いましたよ。
久田:
逆転無罪はめずらしいですよ。
阿曽山大噴火:
そのときに動画の配信をやっていたんですよ、Ustreamとか。被告人をゲストに呼んで。
一同:
(笑)
阿曽山大噴火:
無罪が出たからやろうよって(笑)。
隠蔽に口裏を合わせ……「警察官の話がひとつも信用できない」
吉田:
その被害者の人もちょっとアウトローな感じの人だったんですか?
久田:
僕が想像するに絶対にアウトローな人ですよ(笑)。
阿曽山大噴火:
名前は出さないですけれど、歌舞伎役者が麻布で何かあったじゃないですか。
吉田:
バリバリにアウトローじゃないですか(笑)。
阿曽山大噴火:
もろにその人じゃないですよ。ちょっと知り合いがいて、みたいな。たぶん誕生日会の10人のひとりに入っていたのかもしれないです。
久田:
絶対に間違いないでしょう。だって歌舞伎町で警官20人を相手する人ってだいたい……。
吉田:
歌舞伎町で深夜にそのレベルの誕生日パーティをやって暴れるといったら、その界隈の人しか。
阿曽山大噴火:
いや、誕生日パーティなら10人くらいはいるでしょう(笑)。警察が20人くらい来てって。別に殴ったわけじゃないですよ。被告人は抑え込まれて、2ヶ月の怪我を負わされて。だから被害者とされる警察官の話が、その写真を元にすると全然本当だとは思えない。本当だと思える部分を足したとしても、被告人の主張が正しい。
目撃していた警察官、援護してきた警察官の話がひとつも信用できないっていう判決の内容なんです。
久田:
本当にドラマになりそう。
阿曽山大噴火:
単なる無罪判決じゃなくて、警察はとんでもないんですよ。都合よく編集するんですよ。
吉田:
一週間で証拠が消されるのが前提で。
阿曽山大噴火:
そう。
久田:
編集するし、口裏を合わせる。
阿曽山大噴火:
打ち合わせはどの事件でもやっているだろうけれど、防犯カメラをそんな都合よく使うんだと。すげえ怖いですよ。
久田:
被告人の方がアウトロー系の方だと思うから、それも含めて有罪にしてしまったというのはあるかもしれないですね。印象で見てって。
阿曽山大噴火:
一審の裁判官は結構質問しない人で、決めつけの人なんですよ。
久田:
印象で見ちゃったと思うんですよね。イメージで。
吉田:
アウトロー雑誌の歌舞伎町の記事も役に立つんですね。
阿曽山大噴火:
そうですよ。役に立っているということが言いたいんですよ。
吉田:
あの喧嘩写真を山ほど載せているやつ。
久田:
いろいろ載せることでトラブルはいっぱいありましたけれどね。
吉田:
なんで勝手に俺のことを載せてるんだって、絶対にありますよね。アウトロー系。
久田:
「来い」って言われて大久保の喫茶店に行ったら「これ俺なんだよね」とか言って。「ああそうですか」なんて言いながら金なんだなと思いながら。「ちょっとお金払えないんですけどでも」って、ちょっと謝って帰っていくというのが結構ありましたね。
吉田:
メンツを立てればいい感じなんですかね。
久田:
そうですね。編集長が行くと「編集長が来てくれたんだ」っていう感じのメンツがありますよね。
吉田:
「お金は払えませんけれどもすいません」ぐらいの感じが出れば、まあよしっていう。
阿曽山大噴火:
そこまでの人が出てきてくれたっていう。
久田:
そういうふうに思ってくれれば。それもダメな人はもうしょうがないですけれどね。暴れたいだけなんだったら、もうしょうがないけれども被害届を出すしかないですよね。それで一発ですけれどね。
阿曽山大噴火:
役に立ってるケースもあるっていう。
久田:
(笑)
阿曽山大噴火:
●●●(とある朝の早い自由業)さんが撮ったやつかもしれないし、誰か知りませんけれども、ああいう雑誌も意味があるんですよ。
久田:
逆転無罪はすごいですね。なかなかないですね。
吉田:
篝一光さんの写真はしょっちゅう見ていたから。あれが●●●(とある朝の早い自由業)さんだと聞いてびっくりしました。
久田:
僕もなんでこんなに撮れるのかな? と思った。
吉田:
なんでこんな時間にいつもいるんだろう(笑)。
久田:
なるほどな、と思いましたね。
阿曽山大噴火:
逆転無罪自体がそうそうないですからね。
久田:
控訴審か。なるほど。
阿曽山大噴火:
一審が有罪ですから。東京高裁で無罪です。
久田:
なかなかないケースですね。
阿曽山大噴火:
警察をちゃんと批判してくれる判決文で。
久田:
これはすごいですね。いい話です。
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