「アニメ業界どうなってんの?」『とんかつDJアゲ太郎』監督・大地丙太郎と『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズ演出・山本寛が語る“ダメなプロデューサー”が増えた理由とは
制作費の流れが変わり、制作会社の立場が弱くなっている
大地:
まあまあ、ダメなやつだったけど、こんなに完璧にダメになるとは思わなかったというのを見て、「どうしちゃったんだ?」と。
要するに現場のことをうまく様子を見つつ、川をこっちに流してやっていたのが、もうなんかそれもできなくなっているんだよね。
それはなんとなく、アニメの制作費の流れみたいなとことか、制作会社のトップが変わるでしょ、最近。むちゃくちゃな制作費の使い方をして赤字が膨らんで救済の会社が入ると、そこに逆らえないんで。それが大きいかもしれないなあと思って。だから、自分がこの現場を担っていくぞっていうビシッという指示ができない。それを言ったら怒られる(上に指を指しながら)。で、簡単にクビになる。わからない。これは想像だけど。
山本:
制作会社そのものが弱くなっている、今も老舗の会社が色々ありますけれども、たとえばシンエイ動画という本当にもう歴史の長い、『ドラえもん』を延々作り続けてきた会社がありますが。
あそこもちょっと内乱というようなものがあったような、なかったようなと聞いていますから。
大地:
あったよ。派閥的なやつはあったよね。でも当時、俺がいる時は正しい派閥だった。今はちょっと付き合ってないんでわかんないけど。面白かったけどね。それと違うのか?
山本:
(今制作会社は)派閥以前に、本当にバラバラですね。それぞれが、いがみ合いながらちゃんと作品を作っていればそれでいいんですけど。
大地:
うん。
山本:
ええ。最近よく多いのが、派閥争いじゃなくて、出ちゃうんですよ。ほいっと。で、新しい会社を立ち上げちゃうんですよ。
大地:
それ結構あるね。
山本:
プロデューサー、制作デスク、制作進行、だいたい、こういう上下関係にあるんですけど、その制作デスクあたりが、ある日フワッといなくなって、会社を立ち上げたりするんですよ。これ最近、本当に流行っているんです。
大地:
流行っているね。
山本:
これはいかなるものなのかっていうことですね。で、僕の知り合いというか、まあ元部下とか元同僚とかも同じようにフワッと独立して、フワッと会社作って。それだけ制作会社が増えると制作会社には、アニメ今やっぱり本数が多いから仕事が来るんですよ。仕事が来るから、仕事受けられた、「お金が入ってきたわーい」ってなるんだけど、一番の問題はクリエイターがいないんですよ。
10社が20社になったらクリエイターが倍になるかといったら、なるわけじゃないんだから、10社が20社に増えた、10本が20本になった。でも(一本あたりの)クリエイターは2分の1になるんです。それをウワーって食い合っているのが今ですね。
最近の現場はモチベーションが上がらない
大地:
女性の、アニメーターの方の記事がネットに乗っていましたけど。やっぱり同じことが書いてあったね。
大きい会社から分かれるんだけど、増えるんじゃなくて、ここからスタッフも分かれているから人数は変わっていないんだと。で、分かれる理由は、やっぱり経営方針が合わないということが、まず多いと思うんだよね。
山本:
監督が、今完全に宙ぶらりんの状態で、全然公表されていない中でも、僕の知り合いとか友人とかが、本当にくたびれている。振り回されている状態が、すごく。
大地:
くたびれた。俺も、くたびれたよ。
山本:
聴きますよ。
大地:
本当に現場はくたびれる、昔からくたびれるんだけど、プロデューサーさんが頼むわと言ったら、「やります。やります。」と。その代り、プロデューサーも一緒にやるよね。やるから「共に、一緒にやりましょう!」となるけど、今はそうじゃないから。
社長みたいな、小さい孫請けみたいなところの会社の社長が、「やってくれる?」と言って帰っちゃう。
山本:
モチベーションが、あがるわけもなくてということですよね。
大地:
結局俺は、監督の立場だから、チームがあって、俺の演出を支えてくれる現場があるから、そこの連中は一生懸命なんとかしようと思ってくだらない話から何からしながら打ち合わせをして、現場も「大地さんのためだったら、もう少し頑張れます!ただしこれが限界ですよ。」「これとこれはあきらめるから、これだけは抑えといて。」という話しが出来る。
そこにプロデューサーがいないんだよね。5人くらいいる、タイトルに出ているプロデューサーが1人もいないんだよ。なんか企画制作プロデューサー、プロデュースみたいな、誰かよくわからないみたいな。
もちろん全部じゃないよ、俺も掛け持ちすごく一杯やっているけど、全部じゃないので。